ペリオ|Phase4 メインテナンス
悪くなったところを見つけて治す。それを毎年きちんと繰り返していれば、患者の口は守れているはずだ——1978年、AxelssonとLindheは、その前提を成人480名の3年間で検証しました。答えは「守れていなかった」です。
①「毎年診て、悪いところは治している」で足りるのか
年に1回は来てもらって、視診とレントゲンで見て、う蝕があれば詰める。歯石があれば取る。多くの患者にとって、これが「定期的に歯医者に通っている」状態です。
この形に効果があるのか——1970年代半ば、その問いは意外なほど検証されていませんでした。プラークが う蝕と歯周炎の主要な病因であることは当時すでに広く受け入れられていましたが、成人で「口腔衛生習慣の確立が、う蝕と歯周病の両方にどう効くか」を追った縦断研究は発表されていなかったと著者らは書いています。
そこでAxelssonとLindheは、スウェーデン・カールスタッド市(人口10万人)で成人を集め、2つの群に分けました。片方には徹底した口腔衛生プログラムを、もう片方には従来型の年1回の歯科診療を。3年後に何が変わったかを比べた研究です。
②2か月に1回の30分と、年1回の治療
1971年に成人を募集し、375名をテスト群、180名を対照群に割り付けました。3年を完遂したのはテスト群324名(脱落14%)、対照群156名(脱落13%)。年齢で3群に層別しています(群Ⅰ=35歳以下、群Ⅱ=36〜50歳、群Ⅲ=50歳超)。
ベースラインでは両群に差はありませんでした——社会経済状態、口腔衛生状態、歯肉炎の頻度、う蝕経験のいずれも同等です。そのうえで全員に、う蝕処置と不適合修復物の調整、症例説明、プロフィラキシスを行ってからスタートしています。
ここからが分かれ道です。
- テスト群:最初の2年は2か月ごと、3年目は3か月ごとに来院。1回30分、歯科衛生士が担当。染め出し → 個別のブラッシング指導(バス法)→ フロスとトゥースピックによる歯間清掃の指導 → スケーリングとルートプレーニング → 回転式ラバーカップとブリッスルブラシ、歯間チップによるPMTC(モノフルオロリン酸ナトリウム含有ペースト使用)。縁下のスケーリングとルートプレーニングは、多くの場合3〜4回のアポイントを要した
- 対照群:口腔衛生プログラムには一切参加せず、12か月後と24か月後に公的歯科診療所へ呼ばれ、担当歯科医が必要と判断した治療を受けた。そこでは口腔衛生法についての話し合いは行われず、改善を促されることもなかった
つまり比べているのは、「積極的な予防プログラム」と「当時ごく普通に行われていた年1回の対症治療」です。対照群は放置されたわけではなく、きちんと診療を受けている——ここがこの研究の要点です。
③3年で、う蝕は50分の1になった
3年間で新たに生じたDF歯面は、テスト群が0.1(群Ⅰ)・0(群Ⅱ)・0(群Ⅲ)。対照群は4.6・2.7・0.4でした。さらに再発う蝕(修復物の周りの二次う蝕)が、テスト群0・0.3・0.2に対し、対照群は5.3・5.7・4.8。
両者を足すと、対照群は3年で9.9(群Ⅰ)・8.4(群Ⅱ)・5.2(群Ⅲ)歯面のう蝕を経験し、テスト群は0.1・0.3・0.2にとどまりました。成人集団では再発う蝕が主役であり、その大半が隣接面に発生していたと著者らは指摘しています。
アタッチメントレベルは、テスト群では3年間まったく変化しませんでした(全群・全部位で+0.1mm)。対照群は群Ⅰで0.5mm、群Ⅱで0.8mm、群Ⅲで0.9mmを失っています(いずれもP<0.001)。年あたりに直すと0.17mm・0.26mm・0.30mm。年齢が上がるほど失う速度が速い傾向がありました。
他の指標も同じ方向を向いています。
- プラーク陽性歯面:テスト群 62.4%→17.4%(Ⅰ)、61.9%→19.1%(Ⅱ)、63.0%→17.8%(Ⅲ)。対照群は3年間ほぼ不変
- 歯肉炎(プロービング時の出血):テスト群 22.2%→1.7%、20.6%→1.3%、24.7%→2.0%。対照群では明らかな改善が見られなかった
- ポケット深さ:テスト群 2.0→1.5mm、3.1→1.4mm、3.2→1.5mm。減少は隣接面で最も大きく、対照群では逆に0.5〜0.6mm増加した
1〜2%という歯肉出血スコアは、テスト群の歯肉が臨床的に健康だったことを示していると著者らは書いています。
④効いたのは「歯ブラシ」ではなく「全部の面を触ること」
この研究がう蝕にも効いた理由について、著者らは踏み込んだ書き方をしています。
当時、WHOの専門委員会は「ブラッシングやその他の補助器具が う蝕予防手段として効果を持つ可能性は、プラークの蓄積をコントロールできる範囲に限られ、その範囲はいまだ不明である。公衆衛生上のう蝕予防策として過大評価すべきでない」という見解を出していました。それに対して著者らは、「歯を磨くこと(toothbrushing)と、歯をきれいにすること(proper tooth cleaning)は同義ではない」と反論しています。
多くの場合、歯ブラシで適切に清掃されるのは頬側と舌側だけで、隣接面のプラークは手つかずのまま残る。だから そこに う蝕と歯肉炎が生じる——本研究のプログラムが、フロス・トゥースピック・歯間チップを含めて「すべての歯面」からプラークを除去する設計だったことが、う蝕にまで効いた理由だという論理です。
実際、う蝕の主戦場は隣接面でした。対照群で生じた新規う蝕の大半は隣接面であり、再発う蝕も同様です。2か月ごとに歯科衛生士が30分かけて全歯面を触り続けたこと、そして患者自身の歯間清掃が習慣として定着したことが、両方の疾患を同時に止めたと読めます。
⑤明日の臨床へ
第一に、「年1回の対症治療」は予防プログラムの代わりにならない。対照群は毎年きちんと診療を受け、必要な治療を受けています。それでも3年で5〜10歯面のう蝕を生じ、0.5〜0.9mmのアタッチメントを失いました。著者らは同時期のBjörn(1974)の報告を引き、「毎年受診群と散発受診群で歯科疾患の発生はほぼ同じだった」という結果とも一致すると述べています。診療の頻度ではなく、中身が問われている、ということです。
第二に、成人のう蝕対策は「再発う蝕」に照準を合わせる。対照群の3年間のう蝕のうち、新規より再発のほうが多い年齢群がありました(群Ⅱ:新規2.7に対し再発5.7、群Ⅲ:新規0.4に対し再発4.8)。成人集団では再発う蝕が重要な問題であり、その大半は隣接面に生じる——修復物の隣接面をどう管理するかが、成人の予防の中心になります。
第三に、患者に伝える言葉を「磨く」から「取り切る」へ変える。著者らの反論はそのまま患者説明に使えます。歯ブラシだけでは隣接面に届かない。プログラムがう蝕にまで効いたのは、すべての歯面を対象にしたからでした。
今日のひとこと
テスト群は最初の2年は2か月ごと、3年目は3か月ごとに、歯間清掃を含む口腔衛生指導とプロフェッショナルクリーニング(スケーリング・ルートプレーニングを含む30分のセッション)を受けた。対照群は年1回、公的歯科診療所で「必要と判断された治療」だけを受けた(口腔衛生の指導は一切なし)。3年後、新たなう蝕と再発う蝕を合わせた歯面数は、テスト群0.1〜0.3に対し対照群5.2〜9.9。アタッチメントレベルはテスト群が3群とも+0.1mm(維持)だったのに対し、対照群は0.5〜0.9mm失った(年0.17〜0.30mm)。歯肉炎(出血部位)はテスト群で22.2%→1.7%・20.6%→1.3%・24.7%→2.0%まで下がり、対照群は明らかな改善なし。ポケットはテスト群で2.0→1.5mm・3.1→1.4mm・3.2→1.5mmに減り、対照群では0.5〜0.6mm増えた。著者らの結論は「対症的な歯科治療は、う蝕と歯周病を治す手段としては極めて非効率(highly ineffective)である」。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


