ペリオ|⑥Phase4 メインテナンス
年1回きちんと診て、必要な治療をする。それが「ふつうの歯科医療」でした。1971年にスウェーデンで始まった試験は、成人456名をその「ふつう」と、2〜3か月ごとの予防プログラムに分け、6年後を比べています。対照群で1年に失われたアタッチメントは0.13〜0.26mm。予防群では、6年を通じて有意な変化がありませんでした。
①「ふつうの歯科医療」を、6年間つづけると
年に1回、きちんと診る。う蝕があれば治す。不適合の修復物は直す。これは、多くの国で長らく標準とされてきた歯科医療の姿です。
この試験のユニークさは、その「ふつう」を対照群として置いたことにあります。対照群は6年間、いかなる歯科保健プログラムにも参加しませんでした。ただし年に1回だけ公的歯科診療所へ呼ばれ、検査を受け、担当医が必要と判断した治療を受けています。放置ではなく、当時の標準治療です。
そして両群とも、スタート時点は揃えられています。ベースライン検査ののち、すべてのう蝕を治療し、不適合修復物を調整し、詳細な症例説明と歯面清掃を1回受けました。ベースラインのDF面数にも、両群で有意差はありません(テスト群48.1/56.3/52.6、対照群42.6/49.1/46.3)。
違うのは、そのあとの6年間だけです。
②456名を、2か月ごと・3か月ごと
1971〜72年、テスト群に375名、対照群に180名が登録されました。最初の3年で51名(テスト)と24名(対照)、次の3年でさらに14名と10名が脱落し、6年を完遂したのはテスト群310名・対照群146名です。
年齢で3群に分けられています。
- グループI:35歳未満(テスト129名・対照45名)
- グループII:36〜50歳(テスト121名・対照51名)
- グループIII:50歳超(テスト60名・対照50名)
介入の中身は、次のとおりです。
- テスト群:最初の2年間は2か月ごと、その後の4年間は3か月ごとに、(1)口腔衛生技術の指導と実習、(2)入念なプロフェッショナル清掃を受けた
- 対照群:症例説明と口腔衛生指導を1回受けたのみ。その後6年間は歯科保健プログラムに参加せず、年1回、公的歯科診療所で検査と対症的な治療を受けた
評価は、口腔衛生(染め出しによるプラーク保有歯面の頻度)、歯肉炎(プロービング時の出血ユニットの割合)、ポケット深さ(Hu-Friedyのフラットプローブで各歯4面)、アタッチメントレベル(セメントエナメル境から臨床的ポケット底まで、頬側・舌側・近心)、そしてう蝕(バイトウィング4枚と臨床診査)。ベースラインと3年後・6年後の3時点で記録されました。6年後の検査前には、10名を無作為に選んでアタッチメントレベルとう蝕の二重記録を行い、観察誤差を確認しています。
③ポケットは減り、そして増えた
まずプラークです。テスト群では3つの年齢群すべてで、プラークスコアが約60%から15〜20%へ低下しました。対照群では、各検査時点のあいだで口腔衛生水準の明らかな改善は見られていません。歯肉炎スコアも、テスト群では非常に低く、対照群では6年を通じて目立った変化がありませんでした。
そのうえでポケットです。
- テスト群の「3mm超」の頻度:ベースライン3.5%(I)/8.3%(II)/8.4%(III) → 3年後0.3%/0.5%/0.4% → 6年後0.4%/0.2%/0.6%
- 対照群:ベースライン2.2%(I)/6.6%(II)/10.6%(III) → 6年後7.6%/11.7%/18.0%
年齢群IIIの対照群では、6年後に検査した全ユニットの18%が3mmを超えていました。一方、同じ年齢群のテスト群は0.6%です。
深いポケットの分布にも一貫した傾向がありました。頬側・舌側より隣接面に多く、小臼歯や前歯より大臼歯に多い。この傾向は両群に共通しており、対照群では6年後、隣接面での深いポケットの割合が頬側・舌側よりさらに大きくなっています。
アタッチメントレベルは、テスト群では観察期間中に有意な変化がありませんでした。対照群では3群とも、臨床的アタッチメントレベルが徐々に根尖側へ移動しています。年間の平均アタッチメントロスは、グループI 0.13mm、グループII 0.23mm、グループIII 0.26mm。
6年で計算すると、それぞれ0.8mm・1.4mm・1.6mm。ゆっくりですが、確実に進んでいます。
う蝕も同じ方向でした。6年間で新たに生じたう蝕面は、対照群で平均7.4面(I)・5.4面(II)・4.2面(III)。「ごく一部の個人を除いて、テスト群の患者は6年の試験期間中にう蝕病変を発生させなかった」。若い年齢群ほど新生う蝕が多く、その差は主に隣接面での発生によるものでした。
二次う蝕(再発う蝕)は、テスト群ではごく少数の患者にしか見られませんでした。対照群では、とくにグループIで、二次う蝕の数が一次う蝕を上回る傾向がありました。6年後の検査から算出した二次う蝕面の平均は、対照群で7.5(I)・9.8(II)・7.7(III)です。
④「治療してもらっている」のに進む理由
対照群は、放置されていたわけではありません。年1回は診てもらい、必要な治療も受けています。それでも歯周炎とう蝕は進みました。
著者らはこう書きます。「テスト群で得られた結果を対照群の所見と比べれば、従来型の歯科医療が成人集団におけるう蝕と歯周疾患の進行を防がないことは明らかである」。
そしてこの結論は、彼らだけのものではありませんでした。「このような結論は、Björn(1974)とSöderholm(1979)が報告した所見を裏づける。彼らはスウェーデンの造船所の従業員集団におけるう蝕と歯周疾患の発生を追跡し、従来型の歯科治療を定期的に受けていたにもかかわらず、9年以上にわたって歯列が徐々に悪化したと報告した」。
さらに、Söderholm(1979)はその後、口腔衛生の評価と再指導、スケーリング、ルートプレーニング、研磨を3か月ごとに3〜4年間繰り返す——本研究とよく似た設計の予防重視プログラムを導入し、こう結論しています。「この歯科医療プログラムは歯科的健康を有意に改善し、予防的ケアに費やした時間と労力の増加は、修復治療の必要性の減少によって埋め合わされた」。
予防にかけたコストは、治療の減少で回収された。この一文が、6年という時間軸の意味を言い当てています。
⑤明日の臨床へ
第一に、「年1回の健診」を予防と呼ばない。この試験の対照群は、まさに年1回の検査と対症治療を受けていました。それで6年後に18%のユニットが3mm超になり、年0.26mmずつアタッチメントを失っています。検査の頻度ではなく、そこで何をするかが結果を分けました。
第二に、間隔は「詰めてから延ばす」。テスト群の設計は、最初の2年が2か月ごと、その後の4年が3か月ごとです。習慣が定着するまでは短く、定着してから延ばす。この順番は、そのまま自院の設計に移せます。
第三に、年齢で予後が変わることを見込む。対照群の年間アタッチメントロスは、35歳未満で0.13mm、50歳超で0.26mmと2倍の開きがありました。深いポケットも高齢群ほど多い。一方、テスト群では年齢群による差がほとんど出ていません。年齢が高いほど、介入の有無で結果が大きく変わる——そう読むこともできます。
今日のひとこと
ベースライン検査ののち、両群ともすべてのう蝕を治療し、不適合修復物を調整し、詳細な症例説明と歯面清掃を1回受けた。対照群はその後6年間、いかなる歯科保健プログラムにも参加せず、年1回だけ公的歯科診療所に呼ばれて検査を受け、担当医が必要と判断した治療を受けた。テスト群は、最初の2年間は2か月ごと、その後の4年間は3か月ごとに、口腔衛生技術の指導と実習、そして入念なプロフェッショナル清掃を受けた。プラークスコアは、テスト群では3つの年齢群すべてで約60%から15〜20%へ低下し、対照群では明らかな改善が見られなかった。歯肉炎スコアはテスト群で非常に低く、対照群では6年間で目立った変化がなかった。3mmを超えるポケットの頻度は、テスト群でベースラインの3.5%/8.3%/8.4%(年齢群I/II/III)から6年後には0.4%/0.2%/0.6%へ低下した。対照群では6年後に7.6%/11.7%/18.0%へ増加した。アタッチメントレベルはテスト群で6年を通じて有意な変化がなく、対照群では3群とも根尖側へ移動した。年間の平均アタッチメントロスは0.13mm(I)・0.23mm(II)・0.26mm(III)だった。6年間の新生う蝕面は、対照群で平均7.4面(I)・5.4面(II)・4.2面(III)。テスト群では、ごく一部の例外を除いてう蝕は発生しなかった。著者らの結論は「適切な口腔衛生習慣を身につけるよう促す予防プログラムは、成人において歯周疾患とう蝕の進行を防ぎうる。一方、従来型の歯科医療は、成人のう蝕と歯周炎の進行を防がなかった」。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


