ペリオ|Phase2 歯周外科
根分岐部病変にフラップを開け、徹底的にデブライドメントする。それで十分でしょうか。2020年、Jepsenらが20のRCT・787の根分岐部を統合したところ、フラップ単独の改善率は6%。再生療法では51〜100%でした。
①根分岐部II度、掃除だけで終わっていないか
根分岐部病変を持つ複根歯は、持たない歯より失われやすい——これはNibaliら2016以来、繰り返し確認されてきた事実です。
そして厄介なのは、その解剖学的な複雑さが、そもそも適切なデブライドメントを妨げるという点。非外科的治療の効果は限られ、外科的デブライドメント(OFD)でも臨床パラメータの改善は「わずか」にとどまると報告されてきました。
では再生療法を足すと、どれだけ変わるのか。そして数ある術式——非吸収性膜、吸収性膜、骨補填材、EMD、その組み合わせ——のどれが良いのか。ここまでは、直接比較の試験が少なく答えが出ていませんでした。
Jepsenらは、直接比較のないもの同士を間接的につないで順位づけできる「ベイジアン・ネットワークメタ解析」をこの領域に初めて持ち込みました。
②2,303件から、20試験だけを残す
PROSPEROに登録(CRD42019124466)したうえで、PRISMA-NMA拡張声明に沿って実施されています。電子検索2,299件+ハンドサーチ4件の計2,303件から、最終的に19論文20試験が残りました。
絞り込みが厳しい。組み入れは「追跡12か月以上のRCT」かつ「被験者10名以上」。3名の著者が独立に選定・データ抽出・バイアスリスク評価を行っています。
対象は575名、787本の根分岐部病変を持つ大臼歯(年齢31〜80歳)。15試験が下顎(頬側/舌側)のみ、3試験が下顎と上顎(頬側)の両方、1試験が上顎頬側のみ。I度を扱った試験は1つもなく、III度は1試験のみ、残りはすべてII度でした。9試験がスプリットマウス、残りは並行群間。
介入は非吸収性膜によるGTR(ePTFE)11試験、吸収性膜によるGTR 10試験、EMD 3試験、骨補填材(BRG)単独2試験、GTRとBRGの併用6試験、EMDとBRGの併用1試験。5試験がOFDを非再生の対照としていました。
③フラップ単独の6%という数字
まず押さえるべき事実がひとつ。歯の喪失は、20試験のどれにも報告されていませんでした。著者らは「12か月という観察期間は、この重要なアウトカムを評価するには恐らく十分でない」と述べています。
根分岐部の改善(FImp)=完全閉鎖またはII度からI度への転換の割合は、OFDで55病変中3(6%)。対して骨補填材63%(19/30)、EMD 83%(48/58)、EMD+BRG 86%(12/14)、非吸収性膜60%(68/114)、非吸収性膜+BRG 51%(23/45)、吸収性膜65%(113/173)、吸収性膜+BRG 59%(22/37)、吸収性膜+BRG+EMD 100%(10/10)でした。
ベイジアン標準メタ解析(3RCT)では、再生療法全体のOFDに対するオッズ比は20.91(90%信用区間 5.81–69.41)。報告された実数を単純に合計すると再生療法65.5%(315/481)対OFD 5.5%(3/55)=リスク比 約12倍(本文の実数から計算。試験デザインを跨いだ粗い合計であり、メタ解析の推定値ではありません)。
連続量のアウトカムも、いずれも再生療法が優位です。水平的な臨床的付着レベル(HCAL)の獲得は1.6mm(90%CrI 0.79–2.39・3RCT)、垂直的な付着(VCAL)は1.34mm(0.58–2.08・4RCT)、ポケット深さの減少は1.29mm(0.3–2.26・4RCT)。
さらに非吸収性膜+BRGに限ると、OFDに対するHCAL獲得は2.49mm(90%CrI 2.44–2.54・2RCT)と、いっそう大きくなりました。
④どの術式が良いのか——順位はアウトカムで変わる
ネットワークメタ解析の見どころは、「何を良くしたいか」で最良の術式が変わることです。
水平的な骨レベル(HBL)の獲得では、骨補填材(BRG)が最良である確率61%(次いでEMD 19%、吸収性膜+BRG 15%)。SUCRAはBRG 64%、吸収性膜+BRG 51%、EMD 41%。
垂直的な付着(VCAL)の獲得では、非吸収性膜+BRGが最良である確率75%(次いで吸収性膜+BRG+EMD 19%)。SUCRAは76%。
ポケット深さの減少でも、非吸収性膜+BRGが最良である確率56%(次いで吸収性膜+BRG+EMD 14%、EMD 13%)。SUCRAは77%。
つまり骨補填材が絡む術式が、総じて高い成績と結びついていた。これが著者らの結論の第3項です。
一方で、膜の種類そのものには差がありませんでした。6RCTを統合したベイジアン標準メタ解析で、吸収性膜と非吸収性膜のHCAL獲得の平均差は−0.01mm(90%CrI −0.64–0.6)。術後に二次手術で取り出す必要のない吸収性膜を選んでも、水平的な付着の獲得で不利になる根拠はないということです。
患者の負担についてのデータは、1試験(Jepsenら2004)のみ。術後1週間で「痛みなし」がEMD群62%対吸収性膜(PLA)群12%、「腫れなし」が44%対6%でした。
⑤明日の臨床へ
①II度根分岐部は、切除やめる前に再生を検討する材料が揃った。 著者らの結論は「II度根分岐部の再生外科はOFDに優る」。FImp(完全閉鎖またはI度への転換)は大多数の病変で期待できると書かれています。
②ただし「完全に閉じる」ことを患者に約束しない。 完全閉鎖の頻度は0〜60%とばらつきが大きく、判定方法も再入手術での実測から「12か月時の水平CALが2mm以下」まで試験ごとにまちまち。著者らは「利用できるデータに基づくと、再生療法後の根分岐部の完全閉鎖は予知性のあるアウトカムとは考えられない」と明言しています。バイアスリスクが低く参加者数の最も多い2つの多施設試験では、GTRまたはEMDによるI度への転換率は52〜60%——ここが現実的な目安です。
③骨補填材を組み合わせる価値がある。 骨の水平的な獲得ならBRG、付着とポケットなら非吸収性膜+BRG。「骨補填材を、バリア膜の有無を問わず用いる手技は、より良い結果を示す確率が高い」のが著者らの読みです。
④膜の種類で悩みすぎない。 吸収性と非吸収性で水平的付着の獲得に差はありません。二次手術の負担・露出リスク・費用で選んでよい領域です。
⑤III度には、まだ手がない。 組み入れ基準を満たしたIII度の試験は1つだけ(Gantesら1991)で、12か月後の軟組織閉鎖は対照14病変中1、DFDBA移植13病変中3。著者らも「III度根分岐部の状態改善はきわめて限定的」としています。
今日のひとこと
2,303件をスクリーニングし、追跡12か月以上・被験者10名以上のRCTだけに絞って19論文20試験(575名・787の根分岐部病変・年齢31〜80歳)を統合したレビュー(19試験がII度・1試験のみIII度・I度の試験はゼロ)。最重要アウトカムである歯の喪失は、どの試験でも報告されていませんでした。根分岐部の改善(FImp=完全閉鎖またはI度への転換)は、フラップ単独(OFD)で55病変中3(6%)だったのに対し、再生療法では51〜100%。ベイジアン標準メタ解析では、再生療法全体のOFDに対するオッズ比は20.91(90%信用区間 5.81–69.41)。報告された実数を単純合計すると65.5%(315/481)対5.5%(3/55)=リスク比 約12倍(本文の実数から計算)。付着レベルは水平方向で1.6mm(90%CrI 0.79–2.39)、垂直方向で1.34mm(0.58–2.08)、ポケット深さは1.29mm(0.3–2.26)、いずれも再生療法が優位。ネットワークメタ解析では、水平的骨レベルの獲得は骨補填材(BRG)が最良である確率61%(SUCRA 64%)、垂直的付着とポケット改善は非吸収性膜+BRGが最良である確率75%・56%(SUCRA 76%・77%)。吸収性膜と非吸収性膜の水平的付着獲得には差がありませんでした(平均差 −0.01mm)。ただし完全閉鎖の頻度は0〜60%とばらつきが大きく、著者らは「完全閉鎖は予知性のあるアウトカムとは言えない」と明言しています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


