数字が出たあとが本番。「なぜ」を考えないと、データはただの報告書になる
現状を知るコストはAIで下がりました。空いた力を、その先の「なぜ」に使いたい。

棚卸しは、まず「知る」ためにやる
いま院内でいろいろな数字の棚卸しを進めています。項目を細かくしすぎて入力が大変になってしまい、さっそく作り直したところなのですが、そもそも棚卸しを何のためにやるのかというと、現状を正しく知るためです。
たとえばユニットの稼働率。何パーセントなのかが分かっていないと、上げにいくべきなのか、もう限界なのかの判断がつきません。一般には90%を超えていればほぼ上限で、そこからさらに上げるのはコストに見合わないと言われます。逆に60%くらいなら、まだいくらでも手の打ちようがある。同じ「稼働率」でも、数字を知っているかどうかで打ち手がまったく変わります。
そして最近ありがたいのは、これまで人が毎日集計していたような数字を、AIが勝手に出してくれるようになったことです。知るためのコスト(認知コスト)が、はっきり下がりました。

数字が良く見えても、その裏を疑う
ただ、ここで終わると意味がありません。
ホームページの流入者数が増えた、というデータが出たとします。一見すると順調に見えて、「よし、うまくいっているな」で終わってしまいがちです。でも実際には、同じ時期に予約数のほうは減っていた、ということが起こり得ます。流入は増えたけれど、それは記事を読みに来た人が増えただけで、来院にはつながっていなかった——そういうことが普通にあるわけです。
「増えました、オッケー」で止めてしまうと、せっかく数字を出した意味がなくなります。なぜ増えたのか、増えた先で何が起きているのか。そこまで見て初めて、次の一手が決まります。

よそのやり方を、そのまま真似しない
これは、他院でうまくいっているらしい取り組みを取り入れるときも同じです。うまくいっている形だけを真似ても、なぜそれがうまくいっているのかが分かっていなければ、同じ結果にはなりません。
始めたあとも同じで、その施策が本当に届いているのかを確かめないまま続けてしまうと、やっていること自体が目的になってしまいます。もちろん、確かめるのにもコストはかかります。だからこそ、何を知りたくてやっているのかを最初にはっきりさせておく必要があるのだと思います。

診療でも、まったく同じことをしている
そしてこれは、経営の話に限りません。日々の診療でもやっていることは同じです。
「右下に自発痛がある」と聞いて、反射的に「じゃあ歯髄炎だ」と当てはめてしまうのではなく、なぜその症状が出ているのかを一度考える。そこを踏むかどうかで、見えてくる本質が変わってきます。データも症状も、目の前に出てきた事実そのものが答えではなく、答えにたどり着くための入口だということです。


