1問1答 論文 エンド

根管洗浄の次亜塩素酸ナトリウム、2%と6%で違う?何分当てれば足りる?——ヒトの抜去歯の象牙質片の象牙細管に1種類の菌を入れた実験室研究で、6%次亜はどの時間でも2%次亜と2%クロルヘキシジンより有意に多くの菌を死なせ、死んだ菌の割合の増え方は10分を過ぎるとわずかで、6%次亜を30分当てても全部は死ななかった(Du 2014)

1問1答 論文 エンド

エンド|ヒトの抜去歯の根の象牙質片48個の象牙細管にエンテロコッカス・フェカーリスを遠心で入れ、1日または3週育ててから、滅菌水・2%クロルヘキシジン・2%次亜塩素酸ナトリウム・6%次亜塩素酸ナトリウムを3分・10分・30分滴下し、死んだ菌の体積の割合を共焦点レーザー顕微鏡で比べた実験室研究(Du・Wang・Shen・Ma・Cao・Haapasalo 2014・Journal of Endodontics)

根管洗浄の次亜塩素酸ナトリウム(次亜)は、濃度を上げるべきか、時間を延ばすべきか。Du らは2014年、ヒトの抜去歯の象牙質片の象牙細管に1種類の菌を入れ、液を象牙質の上に滴下して、死んだ菌の割合を比べました(菌の育成期間と液ごとに6片。時間別の片数は記載なし)。6%次亜は3分・10分・30分のどれでも、2%次亜と2%クロルヘキシジンより有意に多くの菌を死なせ、2%どうしの間には有意差を認めませんでした。死んだ菌の割合は時間とともに増えましたが、増え方は最初の3分が最も速く、10分を過ぎるとどの群も1分あたり0.4%を下回りました。6%次亜を30分(5分ごとに新しい液)当てても、死んだ菌の体積の割合は平均で1日育てた菌88%、3週育てた菌78%で、全部は死にませんでした。患者の根管の中で洗った研究ではありません。

論文
Effect of Long-term Exposure to Endodontic Disinfecting Solutions on Young and Old Enterococcus faecalis Biofilms in Dentin Canals
著者
Tianfeng Du、Zhejun Wang、Ya Shen、Jingzhi Ma、Yingguang Cao、Markus Haapasalo(中国 華中科技大学同済医学院 同済病院、カナダ ブリティッシュコロンビア大学歯学部 歯内療法学、中国 武漢大学口腔医学院)
掲載
Journal of Endodontics 2014;40(4):509-514
種類
実験室研究(in vitro)。矯正のために抜いた単根のヒトの歯24本から、根の象牙質の半円柱の片48個(約4×4×2mm)を作り、エンテロコッカス・フェカーリス(VP3-181株)を遠心で象牙細管へ入れて1日または3週育てた。滅菌水(対照)・2%クロルヘキシジン・2%次亜塩素酸ナトリウム・6%次亜塩素酸ナトリウムを50μL滴下し、3分・10分・30分(10分と30分は5分ごとに新しい液)当てた。菌の育成期間と液ごとに各6片(時間ごとの片数の記載なし)。割断面を生死の染め分けで染め、共焦点レーザー顕微鏡で各面5か所を撮影し、死んだ菌の体積の割合を出した。一変量の分散分析と事後の多重比較
資金・利益相反
利益相反は無いと明記。筆頭著者は中国国家留学基金(China Scholarship Council)の支援を受けた
PMID
24666901

①次亜塩素酸ナトリウム、2%と6%で違う?何分当てれば足りる?

根管洗浄の次亜塩素酸ナトリウム(以下、次亜)。濃度は何%にするか、どれくらいの時間、液を当て続けるか。象牙細管の奥に入りこんだ菌まで届かせたいと思うほど、迷うところです。

この2つ、濃度と時間を、象牙細管に菌を入れた同じ実験の型で比べたのが、Du・Haapasalo らが2014年に Journal of Endodontics に出した研究です。

結論を先に書きます。
・ヒトの抜去歯の根の象牙質片に、1種類の菌(エンテロコッカス・フェカーリス)を遠心で象牙細管へ入れ、1日または3週育ててから、液を象牙質の上に滴下した実験室研究(菌の育成期間と液ごとに6片。時間別の片数は記載なし)。患者の根管の中で洗ったものではない
・濃度:6%次亜は、3分・10分・30分のどの時間でも、2%次亜と2%クロルヘキシジンより有意に多くの菌を死なせた。2%次亜と2%クロルヘキシジンの間には有意差を認めなかった
・時間:死んだ菌の割合は3分より10分・30分で有意に多かった。ただし増え方は最初の3分が最も速く、10分を過ぎるとどの群も1分あたり0.4%を下回った
・菌の層の育ち具合:3週育てた菌は、1日の菌より死ににくかった(消毒液の群はどれも有意)
・6%次亜を30分(5分ごとに新しい液)当てても、死んだ菌は1日の菌で88%、3週の菌で78%(死んだ菌の体積の割合の平均)。全部は死ななかった

②なぜこの研究が必要だったか

象牙質は象牙細管のある多孔質の組織で、細管の中に入りこんだ菌は、根管の中の洗浄液や貼薬から守られやすい、と著者らは引用文献をもとに書いています。エンテロコッカス・フェカーリスは、根管治療後も根尖病変が残る歯からよく見つかる菌で、象牙細管に入りこみ、菌の層(バイオフィルム)を作ることが、洗浄液や貼薬への強さにつながるとされています。

同じ研究グループは、遠心で菌を象牙細管に詰めこみ、生きた菌と死んだ菌を色で染め分けて顕微鏡で数える実験の型を作っていました。ただ、その型を使ったこれまでの研究は1分・3分と短い時間だけで、6%次亜でも死んだ菌は1分で35%、3分で61%にとどまっていました(引用された研究)。もっと長く当てれば、もっと死ぬのか。そこを3分・10分・30分で確かめたのが今回の研究です。

③何をどう比べたか

・試料:矯正のために抜いた、むし歯の無い単根のヒトの歯24本。根の象牙質を長さ4mmの筒に切り、根管を1.5mmに広げてから縦に2つに割り、48個の半円柱の片(約4×4×2mm)にした。スミヤー層は5.25%次亜と6%クエン酸の超音波洗浄で除いた
・菌:エンテロコッカス・フェカーリス(VP3-181株)の液を、片ごと遠心(毎分5000〜10000回転を段階的に)して象牙細管へ入れ、1日(24片)または3週(24片)育てた
・液:滅菌水(対照)、2%クロルヘキシジン、2%次亜、6%次亜。根管の壁にあたる面に50μLを滴下し、10分と30分の群では5分ごとに新しい液を50μL足した。時間は3分・10分・30分
・群:菌の育成期間(1日・3週)と液ごとに、各6片を無作為に割り付けた(時間ごとの片数は原著に記載が無い)
・測り方:液を当てたあと、片を根管に沿って割り、新しく出た割断面の象牙細管を、生きた菌は緑・膜の壊れた菌は赤に染める試薬で染め、共焦点レーザー顕微鏡で各面5か所を立体で撮影した。死んだ菌の割合=赤の体積÷(緑+赤)の体積
・統計:一変量の分散分析と事後の多重比較(p<0.05)

④結果1:どの時間でも、6%次亜で死んだ菌の割合が最も高かった

原著の表1を、全てのセルそのまま(平均±標準偏差と有意差の記号)表にしました。

表:死んだ菌の体積の割合(%、平均±標準偏差と有意差の記号)。原著の表1の全セル 液と菌を育てた期間 3分 10分 30分 滅菌水(対照)1日 2±4 a 4±2 a 3±1 a 滅菌水(対照)3週 4±2 a 5±3 a 4±3 a 2%クロルヘキシジン 1日 34±9 c 64±7 efg 68±7 fg 2%クロルヘキシジン 3週 24±8 b 53±9 d 57±11 de 2%次亜 1日 35±8 c 65±9 efg 71±12 gh 2%次亜 3週 26±10 b 52±8 d 59±7 def 6%次亜 1日 63±9 efg 82±10 ij 88±8 j 6%次亜 3週 53±12 d 72±11 gh 78±10 hi 英字は原著の記号。同じ文字を1つも共有しない群どうしに有意差がある(p<0.05) 1日・3週=象牙細管に入れた菌を育てた期間。次亜=次亜塩素酸ナトリウム。オレンジは6%次亜 値=死んだ菌の体積の割合(赤い染色の体積÷緑と赤の体積)。原著は0.34のような比で示し、ここでは%に直した 実験室研究:ヒトの抜去歯の象牙質片に菌(エンテロコッカス・フェカーリス1種類)を遠心で入れ、液を象牙質の上に 滴下した。菌の育成期間と液ごとに6片(時間別の片数は記載なし)。各片5か所を共焦点レーザー顕微鏡で撮影
表:死んだ菌の体積の割合(%)。原著の表1の全セル。英字は原著の有意差の記号で、同じ文字を1つも共有しない群どうしに有意差がある(p<0.05)。

同じ値を、菌を育てた期間ごとに棒グラフにすると、液の差と時間の差がひと目で分かります。

0 25% 50% 75% 100% 死んだ菌の体積の割合(平均 %) 2% 4% 3% 34% 64% 68% 35% 65% 71% 63% 82% 88% 滅菌水(対照) 2%クロルヘキシジン 2%次亜 6%次亜 3分 10分 30分 1日育てた菌。各液の3本の棒は左から3分・10分・30分(右ほど淡い色)。原著の表1の平均。抜去歯の象牙質片の実験室研究(菌の育成期間と液ごとに6片、時間別の片数は記載なし)
図:1日育てた菌での、死んだ菌の体積の割合(原著の表1の平均)。各液の3本は左から3分・10分・30分。
0 25% 50% 75% 100% 死んだ菌の体積の割合(平均 %) 4% 5% 4% 24% 53% 57% 26% 52% 59% 53% 72% 78% 滅菌水(対照) 2%クロルヘキシジン 2%次亜 6%次亜 3分 10分 30分 3週育てた菌。各液の3本の棒は左から3分・10分・30分(右ほど淡い色)。原著の表1の平均。抜去歯の象牙質片の実験室研究(菌の育成期間と液ごとに6片、時間別の片数は記載なし)
図:3週育てた菌での、死んだ菌の体積の割合(原著の表1の平均)。各液の3本は左から3分・10分・30分。

6%次亜は、3分・10分・30分のどれでも、ほかの液より有意に多くの菌を死なせました(著者らの記載では53〜88%)。2%次亜(26〜71%)と2%クロルヘキシジン(24〜68%)の間には有意差を認めませんでした。滅菌水の対照では、死んだ菌は2〜5%でした。

菌の層の育ち具合でも差が出ました。3週育てた菌は、1日の菌より死んだ割合が少なく、消毒液の群はどれも有意でした(1日の菌34〜88%、3週の菌24〜78%)。著者らは、育った菌の層では、菌が作る基質の壁や、生きているが培養では育たない状態の菌、薬に強い一部の菌(パーシスター)が抵抗の強さにつながると考察しています。

⑤結果2:最初の3分が最も速く、10分を過ぎると上乗せはわずか

どの消毒液でも、死んだ菌の割合は3分より10分・30分で有意に多くなりました。ただし、増え方は時間とともに鈍りました。著者らが計算した1分あたりの増え方は次のとおりです。

・0〜3分:1分あたり8%(2%クロルヘキシジン・3週の菌)〜21%(6%次亜・1日の菌)
・3〜10分:1分あたり2.7%(6%次亜・1日と3週の菌)〜4.3%(2%次亜・1日の菌)
・10〜30分:どの群も1分あたり0.4%を下回った

表1の有意差の記号を見ると、10分と30分の差は、どの液・どちらの菌でも同じ文字を共有しており、有意ではありませんでした(筆者が表1の記号から読んだ。たとえば6%次亜の1日の菌は82%〈ij〉と88%〈j〉)。液は5分ごとに新しくしていたので、著者らは、効き方が鈍ったのは液が弱ったためとは説明できないとし、液が象牙質の奥まで届きにくいこと、象牙質や菌の塊で液が働きを失うこと、薬に強い一部の菌の存在を理由に挙げています(いずれも著者らの推測で、この研究では確かめていない)。

⑥結果3:濃度を上げることと、時間を延ばすこと

表1の記号でもう1つ読めることがあります。6%次亜の3分と、2%次亜の10分は、1日の菌でも3週の菌でも同じ記号を共有していました(1日の菌 63%〈efg〉と65%〈efg〉、3週の菌 53%〈d〉と52%〈d〉)。これは筆者が表1の記号から読んだもので、著者ら自身はこの組み合わせに触れていません。また、有意差を検出しなかったというだけで、同じ効果だと示されたわけではありません。

それでも、この実験の型の中では「濃度を上げる」と「時間を延ばす」が、死んだ菌の割合に対して似た向きに働いていたことは読み取れます。

⑦著者らの結論と、結果の読み方

著者らは、①象牙質の中の菌が死ぬ割合は当てる時間に左右される、②ただし最初の10分を過ぎると上乗せはわずか、③濃い次亜(6%)は2%クロルヘキシジンと2%次亜より効いた、④6%次亜を30分くり返し当てても象牙細管の菌は全部は死ななかった、と結論しています。あわせて、濃い次亜に長く浸すと象牙質の弾性や曲げ強さが下がりうるという別の研究を引き、殺菌の力と象牙質への影響の兼ね合いが大事だと述べています。

読み方として大事なのは、これは割った象牙質片の上に液を滴下した実験室の結果だという点です。器具で削りながら液を流す根管の中の洗浄とは、液の届き方も入れ替わり方も違います。また、「死んだ菌」は膜の壊れた菌を赤く染めて数えたもので、著者ら自身、傷んだだけで生きている菌が赤く数えられる可能性を認めています。

⑧明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・濃度と時間はセットで考える:同じ時間なら6%次亜で2%次亜・2%クロルヘキシジンより有意に多く死に、6%の3分と2%の10分は有意差を検出しなかった(象牙質片の実験室研究)
・時間の上乗せには頭打ちがある:この実験では、死んだ菌の割合の増え方は10分を過ぎるとわずかだった
・長く当てても全部は死ななかった:この実験では、6%次亜を30分(5分ごとに新しい液)当てても、3週育てた菌で死んだ菌の体積の割合は平均78%だった
・濃い液を長く使う時は、象牙質への影響も見る:象牙質への害はこの研究では調べておらず、著者らは別の研究を引いて注意を促している

なお、この研究の3分・10分・30分は、割った象牙質の上に液を置いた時間です。根管の中で液を当てる時間の目安として、そのまま数字を持ちこむことはできません。

ここだけ、冷静に補助線(1)実験室研究です。ヒトの抜去歯の象牙質片に、1種類の菌だけを入れたもので、複数の菌が混ざった状態は再現していません(著者らも、今後は複数の菌の型で調べるとしています)。
(2)液は割った象牙質の上に滴下しただけで、器具操作や液の流れ・かき混ぜは無く、根管の中の洗浄を再現したものではありません。
(3)規模が小さいです。菌の育成期間と液ごとに各6片で、3つの時間にどう分けたかは書かれていません。
(4)「死んだ菌」は膜の壊れた菌を赤く染める方法で数えており、傷んだだけの菌も含みうる、と著者らは書いています。
(5)象牙質への害や臨床の治りは評価していません。
(6)利益相反は無いと明記されています。筆頭著者は中国国家留学基金(China Scholarship Council)の支援を受けています。

今日のひとこと

この実験室研究では、象牙細管の菌に対して6%次亜は2%次亜と2%クロルヘキシジンより有意に多くの菌を死なせ、死んだ菌の割合の増え方は10分を過ぎるとわずかで、6%次亜を30分当てても全部は死にませんでした。ただし割った象牙質片に1種類の菌を入れ、液を滴下した結果で、根管の中での洗浄や象牙質への害は調べていません。「濃度と時間を併せて考える。この実験では、10分を過ぎてからの時間の上乗せはわずかだった」と読み、臨床の手順は別の根拠と合わせて決める、というのがこの論文に合った読み方です。

Du T, Wang Z, Shen Y, Ma J, Cao Y, Haapasalo M. Effect of long-term exposure to endodontic disinfecting solutions on young and old Enterococcus faecalis biofilms in dentin canals. J Endod. 2014;40(4):509-514. doi: 10.1016/j.joen.2013.11.026. PMID: 24666901
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。