1問1答 論文 エンド

根管洗浄の次亜塩素酸ナトリウム、濃くする?温める?かき混ぜる?——牛の筋肉片を液に5分浸した実験室研究で、組織の溶け方(重さの減り)は濃度と温度で大きくなり、界面活性剤なしの製品の2%と5.8%を室温でピペットでかき混ぜた実験では時間が長いほど溶けた。毎分15秒の比較で超音波・音波・ピペットの間に有意差は認めなかった(Stojicic 2010)

1問1答 論文 エンド

エンド|牛の筋肉片(約68mg)をビーカーの次亜塩素酸ナトリウム10mLに5分浸し、重さの減りを比べた実験室研究。かき混ぜなしで1%・2%・4%・5.8%(3製品)を室温・37℃・45℃で、毎分15秒の超音波・音波・ピペットを2%と5.8%で室温と45℃で、ピペットのかき混ぜ時間を通常品Bの2%と5.8%で室温で比べた(Stojicic・Zivkovic・Qian・Zhang・Haapasalo 2010・Journal of Endodontics)

次亜塩素酸ナトリウムで組織を溶かす力を上げたいとき、濃度・温度・かき混ぜのどれがどれほど効くのか。Stojicic らは2010年、牛の筋肉片をビーカーの液10mLに5分浸し、重さがどれだけ減ったかを各群5片で比べました。減りは濃度とともに大きくなり、温めても大きくなりました。かき混ぜでも大きくなり(5.8%の室温では有意差の印が付かない組み合わせもあり)、ピペットでかき混ぜる時間を延ばすほど溶け(界面活性剤なしの製品の1つの2%と5.8%を室温で試した)、毎分15秒の比較では超音波・音波・ピペットの間に有意差は認めませんでした。1%は室温の5分で重さがむしろ増え、界面活性剤を加えた5.8%の製品は通常品より減りが大きかった一方、根管の中での効果や安全性は調べていません。

論文
Tissue Dissolution by Sodium Hypochlorite: Effect of Concentration, Temperature, Agitation, and Surfactant
著者
S. Stojicic、S. Zivkovic、W. Qian、H. Zhang、M. Haapasalo(カナダ ブリティッシュコロンビア大学歯学部 歯内療法学、セルビア ベオグラード大学歯学部)
掲載
Journal of Endodontics 2010;36(9):1558-1562
種類
実験室研究(in vitro)。冷凍した牛の筋肉を4×4×2mm(68±3mg)に切った片を、次亜塩素酸ナトリウム1%・2%・4%・5.8%(通常品2つと界面活性剤入り1つ)の液10mLに5分浸し、重さの減り(%)を測った。室温・37℃・45℃、かき混ぜなしでは全濃度を室温・37℃・45℃で比べ、かき混ぜ(超音波・音波・ピペット。毎分15秒。チップとピペットの先は片から5mm離す)は2%と5.8%を室温と45℃で、ピペットのかき混ぜ時間(25%・50%・100%)は通常品Bの2%と5.8%を室温で比べた。各群5片。対照は蒸留水と滅菌水道水。抜去したヒトの歯の根の象牙質で接触角も測った(各液6回)。一元配置分散分析とTukeyの多重比較
資金・利益相反
資金と利益相反の記載は見当たらない(製品名とメーカー名は記載あり)
PMID
20728727

①次亜塩素酸ナトリウム、濃くする?温める?かき混ぜる?

根管洗浄の次亜塩素酸ナトリウム。歯髄の残りや壊死組織を溶かす力を上げたいとき、濃度を上げるか、温めるか、超音波などでかき混ぜるか。どれがどのくらい効くのかを、同じ条件で並べて比べた研究は多くありませんでした。

この3つと、界面活性剤を加えた製品を、同じ実験の中で比べたのが、Stojicic・Haapasalo らが2010年に Journal of Endodontics に出した研究です。

結論を先に書きます。
・牛の筋肉片(約68mg)を次亜塩素酸ナトリウム10mLに5分浸し、重さがどれだけ減ったかを測った実験室研究(各群5片)。根管の中で洗ったものではなく、歯髄でもない
・濃度:濃いほど重さの減りが大きかった。かき混ぜなし・室温の平均で、通常品の5.8%は27〜30%、2%は4%前後。1%ではむしろ重さが増えた
・温度:温めると減りが大きくなった(平均の例:通常品Bの5.8%は室温27.28%→45℃ 48.18%)
・かき混ぜ:2%と5.8%を室温と45℃で、超音波・音波・ピペット(毎分15秒)でかき混ぜると、減りが大きくなった(2%では全ての組み合わせに有意の印。5.8%の室温では、かき混ぜなしとの差の印が付かない組み合わせもあった)。3つの方法の間に有意差は認めなかった(著者ら)。ピペットでかき混ぜる時間を長くするほど減りが大きく(時間を変えたのは通常品Bの2%と5.8%・室温・ピペットだけ)、2%を連続でかき混ぜた時の減りがかき混ぜなしの12.7倍(著者らの計算)になった
・界面活性剤入りの製品:5.8%では、通常品より減りが大きく、象牙質の上での接触角も小さかった
・著者らは「濃度・温度・液の流れ・表面張力を整えれば、溶かす力を高められる」と結論した

②なぜこの研究が必要だったか

次亜塩素酸ナトリウムは、抗菌と組織を溶かす働きから、最もよく使われる根管洗浄液です。ただし濃い液は根尖の組織に害がありうること、2.5%や5.25%に触れた根の象牙質の硬さが下がり表面が粗くなったという報告があることを、著者らは引用文献をもとに挙げています。

溶かす力を上げる手段として、pHや温度を上げる、超音波で動かす、作用時間を延ばす、といった方法が報告されてきました。しかし、温度・濃度・かき混ぜのどれがどれほど大事なのかは、研究ごとに条件が違うためはっきりしない、と著者らは書いています。そこで、これらを1つのそろった条件で比べることにしました。

③何をどう比べたか

・組織:冷凍した牛の筋肉を4×4×2mmに切った片(重さ68±3mg。開始時の重さに群の間の有意差は認めなかった)。歯髄ではない
・液:次亜塩素酸ナトリウム 1%・2%・4%・5.8%。製品は3つ=通常品A(6%の原液を薄めたもの)、通常品B(5.8%)、界面活性剤を加えた製品(Chlor-Xtra、5.8%)。1〜4%は原液を蒸留水で薄めた。対照は蒸留水と滅菌した水道水
・浸し方:あらかじめ温めた液10mLを入れたビーカーに1片ずつ5分浸し、水気を拭いて重さを量り、減った割合(%)を出した。各群5片
・温度:室温・37℃・45℃(水槽で保温)
・かき混ぜ:超音波(細い金属のチップ)・音波(EndoActivator、樹脂のチップ)・ピペットで液を動かすの3つ。5分の間、毎分15秒。超音波と音波のチップは液に10mm沈め、片から5mm離して触れない位置。ピペットの先も片から5mm。2%と5.8%(3製品)を、室温と45℃で試した(37℃と1%・4%ではかき混ぜていない)
・かき混ぜの時間:通常品Bの2%と5.8%で、室温でピペットのかき混ぜを毎分15秒・毎分15秒×2回・連続(5分のうち25%・50%・100%)と変えた
・接触角:抜去したヒトの上顎犬歯と下顎小臼歯の根の象牙質を磨いた面に、1%と5.8%の液を1.5μL落とし、30秒以内に測った(各液6回)
・統計:一元配置分散分析とTukeyの多重比較(p<0.05)

④結果1:濃いほど、温めるほど、溶けた

原著の表1の全行を、平均だけを抜き出して表にしました。かき混ぜなしで5分浸したときの、重さの減り(%)です。

表:5分後の重さの減り(%)。かき混ぜなし(原著の表1の全行) 液 室温 37℃ 45℃ 蒸留水(対照) −0.87 1.40 10.91 滅菌水道水(対照) −2.26 2.36 8.26 1% 通常品A −3.21 −0.27 1.16 1% 通常品B −5.52 −0.29 1.72 1% 活性剤入り −6.51 1.19 4.74 2% 通常品A 4.41 10.72 14.61 2% 通常品B 3.95 8.25 14.18 2% 活性剤入り 7.75 13.07 21.10 4% 通常品A 20.52 26.63 36.26 4% 通常品B 18.13 24.93 33.61 4% 活性剤入り 28.19 37.90 49.17 5.8% 通常品A 29.93 40.68 49.10 5.8% 通常品B 27.28 38.31 48.18 5.8% 活性剤入り 41.55 59.05 67.28 オレンジのマイナスは、重さが増えたことを示す(1%の室温など) 実験室研究:牛の筋肉片(68±3mg)を次亜塩素酸ナトリウム10mLに5分浸し、重さの減り(%)を測った。 各群5片。平均だけを載せ、標準偏差は省いた 製品:通常品A(6%の原液から作った)、通常品B(5.8%)、活性剤入り(製品名 Chlor-Xtra)=界面活 性剤を加えた5.8%の製品。1〜4%は原液を蒸留水で薄めた 蒸留水との比較で p<0.001 だったのは、室温では2%の活性剤入りと4%・5.8%の全製品(原著の印) 原著は「活性剤入りは全ての温度・濃度でほかの2製品より有意に多く溶かした」と書くが、表1の1%の行に は差の印が無い
表:濃度・温度・製品ごとの、5分後の重さの減り(原著の表1の全行。平均。各群5片)。オレンジはマイナス=重さが増えた値。

重さの減りは濃度とともに大きくなりました。室温では、4%と5.8%(3製品とも)と2%の界面活性剤入りが、蒸留水の対照より有意に大きく減りました(p<0.001)。1%では室温で重さがむしろ増えました。著者らはこれを、溶け始めた肉が水を吸ったためだろうと推測しています。また2%の通常品は、室温の5分では表1で水の対照との有意差の印が無く、著者らは「水の対照と同程度(equal)」と書いています。ただし5分を過ぎても減り続けた(データは示されていない)とも書かれています。

温めると減りは大きくなり、室温からの増え方は濃度・温度・製品によって30%から300%までだった、と報告されています。たとえば通常品Bの5.8%の平均は、室温27.28%、37℃ 38.31%、45℃ 48.18%でした。なお、45℃では水の対照も10.91%(蒸留水)・8.26%(滅菌水道水)減っています。

⑤結果2:かき混ぜると溶けた。ピペットで長くかき混ぜるほど溶けた(通常品B・室温)

毎分15秒のかき混ぜの結果(原著の表2)も、平均だけを全行そのまま表にしました。

表:かき混ぜ方ごとの5分後の重さの減り(%)(原著の表2の全行) 液 室温 無 室温 US 室温 EA 室温 P 45℃ 無 45℃ US 45℃ EA 45℃ P 蒸留水 −0.87 2.35 1.86 2.18 10.91 10.50 10.90 11.91 滅菌水道水 −2.26 1.78 2.67 1.48 8.26 10.03 8.58 11.04 2% 通常A 4.41 11.76 12.76 20.56 14.61 29.85 29.01 37.31 2% 通常B 3.95 11.39 12.83 17.80 14.18 29.15 26.07 33.95 2% 活性剤 7.75 16.96 16.25 20.65 21.10 38.37 35.17 40.90 5.8% 通常A 29.93 36.28 34.19 35.94 49.10 74.99 69.96 73.00 5.8% 通常B 27.28 34.00 32.76 39.16 48.18 75.51 68.82 71.68 5.8% 活性剤 41.55 48.03 47.76 48.91 67.28 81.38 78.26 87.93 無=かき混ぜなし、US=超音波、EA=音波(EndoActivator)、P=ピペットで液を動かす かき混ぜは5分のうち毎分15秒。超音波と音波のチップは液に10mm沈め、片から5mm離して触れない 実験室研究:牛の筋肉片(68±3mg)を次亜塩素酸ナトリウム10mLに5分浸し、重さの減り(%)を測った。各群5片。平均 だけを載せ、標準偏差は省いた 製品:通常A・通常B=通常品2つ、活性剤=界面活性剤を加えた製品 かき混ぜは2%と5.8%を室温と45℃で試した(37℃と1%・4%では試していない)。ピペットの先も片から5mm 原著の印:‡=かき混ぜなしと比べて p<0.001、§=通常品Aと比べて p<0.001 *(p<0.05)と†(p<0.01)は比較の相手が書かれていない 2%:全ての組み合わせに‡(通常Bの室温のUSだけ†) 5.8%の45℃:通常A・Bの全てと活性剤のPに‡。活性剤のUSは†、EAは* 5.8%の室温:‡は通常BのPだけ。通常AのUSとPは* 5.8%の室温で、通常AのEA、通常BのUS・EA、活性剤の3方法は、かき混ぜなしとの差の印なし 3つのかき混ぜ方の間に有意差は認めなかった(著者ら)
表:かき混ぜ方ごとの、5分後の重さの減り(原著の表2の全行。平均。各群5片)。かき混ぜは5分のうち毎分15秒。

表2の印のうち、かき混ぜなしとの比較だと書かれているのは ‡(p<0.001)だけです。§ は通常品Aとの比較(p<0.001)で、* (p<0.05)と † (p<0.01)は、何と比べたかが書かれていません。2%では、室温でも45℃でも、3製品とも、どのかき混ぜ方でも ‡ が付きました(通常品Bの室温の超音波だけは † )。5.8%の45℃では、通常品2つの全ての方法と界面活性剤入りのピペットに ‡ が付き、界面活性剤入りの超音波は †、音波は * でした。5.8%の室温で ‡ が付いたのは通常品Bのピペットだけで、通常品Aの超音波とピペットは *、残り(通常品Aの音波、通常品Bの超音波・音波、界面活性剤入りの3方法)には、かき混ぜなしとの差の印がありませんでした(例:通常品Bの平均で、超音波34.00%・音波32.76%、かき混ぜなし27.28%)。著者らは本文で、かき混ぜると2%で p<0.001、5.8%で p<0.01 と有意に多く溶けたと書いています。超音波・音波・ピペットの3つの方法の間には、有意差を認めなかったと著者らは書いています。

かき混ぜる時間を変えた実験(原著の表3)は、通常品Bの2%と5.8%を室温で、ピペットでかき混ぜた場合だけで試されています(超音波・音波では時間を変えていません)。時間の割合を増やすほど減りが大きくなりました(図)。

0 25% 50% 75% 5分後の重さの減り(平均 %) 2.71% 29.94% 14.51% 39.11% 24.56% 50.36% 34.68% 63.14% かき混ぜなし 毎分15秒(25%) 毎分15秒×2(50%) 連続(100%) 2% 5.8% 濃い棒=2%、淡い棒=5.8%。時間を変えたのは通常品B(界面活性剤なし)・室温・ピペット(先は片から5mm)の実験だけ。牛の筋肉片を5分浸した実験室研究(各群5片)
図:ピペットでかき混ぜた時間の割合と、5分後の重さの減り(原著の表3。通常品B・室温。ピペットの先は片から5mm。平均。各群5片)。2%の3つの時間と5.8%の50%・100%には「かき混ぜなしと比べて p<0.001」の印(†)。5.8%の毎分15秒(25%、39.11%)の印(*)は p<0.05 だが、比較の相手は書かれていない。

この実験(通常品B・室温・ピペット)で、かき混ぜなしから連続のかき混ぜまでで、減りは2%で12.7倍、5.8%で2.1倍になったと著者らは報告しています(表3の平均から筆者が計算すると、34.68÷2.71=約12.8、63.14÷29.94=約2.1)。この表3のかき混ぜなしの値(2% 2.71%)は、表1・表2の同じ条件の値(3.95%)とは別の実験の値です。

⑥結果3:界面活性剤入りの製品と、接触角

5.8%の界面活性剤入りは、どの温度でも通常品2つより減りが大きく(平均の例:室温 41.55% 対 29.93%・27.28%)、毎分15秒のかき混ぜを45℃で加えた条件では平均87.93%(ピペット)と、この研究でいちばん大きな値でした。

象牙質の上での接触角(各液6回の平均)は、5.8%では界面活性剤入りが36.25°と最も小さく(通常品A 71.92°・通常品B 54.58°)、1%では製品の間に有意差を認めませんでした(41.42°〜52.17°)。著者らは、界面活性剤で組織の表面になじみやすくなり、新しい液と入れ替わりやすくなったことが一因かもしれない、と推測しています。

ただし、著者らは本文で「界面活性剤入りは全ての温度・濃度の組み合わせで、ほかの2つより有意に多く溶かした」と書いていますが、表1で界面活性剤入りにほかの製品との差を示すとみられる印(‖=通常品Aと比べて p<0.001、比較の相手が書かれていない‡・§)が付いているのは、4%・5.8%の行と2%の45℃だけです。1%の行には印が無く、1%の室温ではむしろ重さがいちばん増えていました(−6.51%)。

⑦著者らの結論と、結果の読み方

著者らは、①濃度と温度を上げると溶かす力が大きく上がる、②かき混ぜ(できれば連続。連続のかき混ぜは通常品Bの2%と5.8%を室温でピペットだけで試した)で液を入れ替えると効果がはっきり上がる、③高い温度とかき混ぜは足し合わさる、④界面活性剤入りの製品は全ての濃度と温度で最もよく溶かした、と結論しています。抄録では「かき混ぜの効果は温度より大きかった」とも書いています。

読み方として大事なのは、これはビーカーの中で、牛の筋肉片を5分浸した実験室の結果だという点です。超音波と音波のチップは片から5mm(ピペットの先も5mm)離しており、著者ら自身、キャビテーション(気泡の崩壊)が直接当たる効果は見ていないと書いています。根管のような細い管の中や、根尖・フィンの奥で同じようになるかは、この研究では調べていません。また、かき混ぜと温度の効果を直接比べた検定は示されておらず、通常品2つの5.8%では、かき混ぜなしの45℃(48.18%・49.10%)のほうが、室温での毎分15秒のかき混ぜ(32.76〜39.16%)より大きい値でした(表1・表2の平均の見比べ)。

⑧明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・溶かす力は、濃度だけで決まらない:同じ次亜塩素酸ナトリウムでも、温度とかき混ぜで5分後の溶け方が大きく変わった(牛の筋肉片の実験室研究)
・かき混ぜ方の違いより「液を動かす時間」が目立った:超音波・音波・ピペットの間に有意差は認めず(毎分15秒の比較)、ピペットでかき混ぜる時間が長いほど溶けた(通常品Bの2%と5.8%を室温で試した)
・薄い液は、5分では溶けにくい:1%は室温の5分で重さがむしろ増え、2%の通常品は室温の5分で水の対照との有意差の印が無かった
・根管の中での効果・安全性は別の問題:根管の中での溶け方、根尖の組織への害、温めた液の扱いは、この研究では調べていない

なお、著者らは温めた次亜塩素酸ナトリウムの安定性について他の研究を引き、全ての実験を1時間以内に終えたと書いています。臨床で液を温めたり濃くしたりするときは、この研究とは別に、安全性の情報を確かめる必要があります。

ここだけ、冷静に補助線(1)実験室研究です。牛の筋肉片を、ビーカーの液10mLに5分浸したもので、歯髄や根管の中の組織ではありません。
(2)規模が小さいです。各群5片で、組織の重さの減りという1つの指標だけを見ています。
(3)超音波と音波のチップもピペットの先も片から5mm離しており、根管の中のような狭い場所での効果は再現していません(著者らも認めている)。
(4)本文と表の食い違いがあります。界面活性剤入りが「全ての組み合わせで有意に多く溶かした」とする本文に対し、表1の1%の行には差の印がありません。表の印の一部(表1の*・‡・§、表2の*・†、表3の*)は、何と比べたかが明記されていません。
(5)臨床の成績、組織への害、象牙質への影響は評価していません。
(6)製品名とメーカー名の記載はありますが、資金と利益相反の記載は見当たりませんでした。

今日のひとこと

この実験室研究では、次亜塩素酸ナトリウムの組織の溶け方は、濃度だけでなく温度とかき混ぜで大きく変わり、かき混ぜは方法の間に有意差を認めず、ピペットでかき混ぜる時間を延ばすほど溶けました(界面活性剤なしの製品の1つの2%と5.8%を室温で試した)。ただし牛の筋肉片をビーカーで5分浸した結果で、根管の中での効果や安全性は調べていません。「濃さ・温度・液の動き」を溶かす力の3つの軸として持ちつつ、臨床への当てはめは別の根拠で確かめる、というのがこの論文に合った読み方です。

Stojicic S, Zivkovic S, Qian W, Zhang H, Haapasalo M. Tissue dissolution by sodium hypochlorite: effect of concentration, temperature, agitation, and surfactant. J Endod. 2010;36(9):1558-1562. doi: 10.1016/j.joen.2010.06.021. PMID: 20728727
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。