1問1答 論文 エンド

NiTiファイルの断面、ねじれに強いのはどの形?——コンピュータ模型(有限要素解析)で三角形・正方形・長方形・S字を比べたら、断面に内接する円の割合が大きいほど応力のかかりやすさ(係数C)が小さく、係数Cは正方形が最小・長方形が最大だった(2025年)

1問1答 論文 エンド

エンド|NiTiロータリーファイルの断面の形は、ねじれへの強さにどれだけ効くのか。材料・先端径をそろえて断面の形だけを変えた16本のファイルをコンピュータ上で作り、有限要素解析でねじる力をかけたときの最大せん断応力を計算した研究(Nanthaprathip 2025・European Journal of Dentistry・チュラロンコン大学)

NiTiファイルの断面には三角形・正方形・長方形・S字などがありますが、形だけの効果を取り出して比べたデータは多くありません。タイのチュラロンコン大学のグループは、材料と先端径をそろえ、断面の形だけを変えた16本のファイルをコンピュータ上で作り、有限要素解析でねじる力をかけました。その結果、最大せん断応力は「係数C×トルク×等価半径÷極断面二次モーメント」という式でよく表せ、形ごとの係数Cは正方形で約1.4、長方形で約2.0でした(まるい棒は1)。さらに、断面に内接する円(内芯円)の割合が大きいほどCは小さく、長方形系ではCが約2.6から約1.4へ下がりました。ただしコンピュータ模型での計算で、実物のファイルを折った実験ではありません。

論文
Effect of Cross-sectional Designs on Torsional Resistance of Endodontic Nickel–Titanium Files: A Finite Element Study
著者
Natchaphon Nanthaprathip, Sarita Morakul, Sirawut Hiran-us, Pairod Singhatanadgid(チュラロンコン大学 工学部機械工学科・歯学部保存修復学講座)
掲載
European Journal of Dentistry 2025;19(2):513–522. doi:10.1055/s-0044-1791785(オンライン公開2024年11月7日)
種類
有限要素解析(コンピュータ模型による計算)。三角形・正方形・長方形(縦横比2:1)・S字の4断面×テーパー4%/6%×ねじ山5/10の計16モデル(刃部16 mm・先端径0.25 mm・同じ性質のNiTi合金)をCADで作り、D3を固定してシャフトにトルクをかけ、D4〜D16の最大せん断応力を計算。さらに長方形系・三角形系の断面を各7段階に変えて、内芯円の割合(R)との関係を調べた。実物のファイルでの実験・臨床での評価は含まない
PMID
39510523

①NiTiファイルの「断面の形」、ねじれへの強さに関係ある?

NiTiロータリーファイルのカタログには、三角形・正方形・長方形・S字……と、さまざまな断面の形が並んでいます。でも、どの形がねじれに強いのかを、形だけを取り出して比べたデータはあまりありません。

この研究は、タイの工学部と歯学部のグループが、有限要素解析(コンピュータ上の模型で力のかかり方を計算する方法)を使って、断面の形だけを変えたファイルにねじる力をかけ、内部にどれだけのせん断応力(ねじれで生じる内部の負担)が生じるかを計算したものです。

結論を先に言います。断面に内接する円(内芯円・内接円)が断面全体に占める割合が大きいほど、形ごとの係数C(同じトルク・同じre/Jあたりのせん断応力のかかりやすさ)が小さく、ねじれに強い計算になりました。4つの形では係数Cは正方形が最小、長方形が最大でした(実際の応力の値そのものは、断面の面積の違いも効くため三角形が最大です)。ただしこれはコンピュータ模型での計算で、実物のファイルを折ったわけではありません。

②なぜ「断面の効果」はわかりにくかったのか

NiTiファイルの根管内破折は、曲げを繰り返して起きる疲労破折と、先端が根管壁に食い込んだままモーターが回り続けて起きるねじれ破折に分けられます。ねじれ破折は、先端がうっかり象牙質に噛み込んだときに起きやすいとされます。

・ねじれへの強さを調べた実験室研究はたくさんある
・ただし多くは市販のファイルどうしを比べており、材料・断面・テーパー・サイズなどが全部まとめて違う
・そのため、断面の形がどれだけ効いているのかは、はっきりしなかった
・先行研究では、断面の極断面二次モーメント(J:断面がねじれに抵抗する力の指標)が最も大事だと報告されていた

そこで著者らは、材料も先端径もそろえて、断面の形だけを変えたファイルをコンピュータ上で作り、比べることにしました。

③今回の一手:形だけ変えた16本の「コンピュータ模型」

・断面:三角形(正三角形)・正方形・長方形(縦横比2:1)・S字の4種類
・テーパー4%か6%、ねじ山(らせんの数)5か10を組み合わせ、各形4本ずつ計16モデル。刃部の長さは16 mm、先端(D0)の径はすべて0.25 mm
・材料:すべて同じ性質のNiTi合金として計算(弾性率36 GPa)
・条件:先端から3 mmの位置(D3)を固定し、シャフト側にねじる力(トルク)をかける。国際規格ISO 3630-1のねじり試験にならった設定

そのうえで、3つの問いを順に調べました。

・問い1:トルク2.5 N·mm(=0.25 N·cm)をかけたとき、D4〜D16の各断面の最大せん断応力は、断面の「等価半径÷極断面二次モーメント」(re/J)とどう関係するか
・問い2:トルクを1〜5 N·mmに変えると、D8の最大せん断応力はどう変わるか(テーパー6%・ねじ山5の4モデル)
・問い3:断面の形を少しずつ変えて内芯円の割合(R)を動かすと、ねじれへの強さはどう変わるか(長方形系7種類・三角形系7種類)

ここでいう内芯円(内接円)は、断面の中にぴったり収まる最大の円(図中の点線の円)です。Rは、その円の面積が断面全体の面積に占める割合です。たとえば正方形なら約78.5%、細長い長方形ほど小さくなります。等価半径(re)は、断面と同じ面積をもつ円の半径です。

④結果①:いちばん負担がかかるのは「内芯円が輪郭に接する点」

D8の断面の応力分布を色で見ると、どの形でも中心(ファイルの軸)では応力がゼロで、内芯円が断面の輪郭に接する点で最大になりました。

面白いのは、三角形や正方形の角、S字の先端のように、内芯円の外にはみ出した部分は、中心から遠いのに応力が低かったことです。まるい棒(円柱)なら、中心から遠いほど応力は大きくなります。非円形の断面では、はみ出した部分が力をあまり負担せず、そのぶん内芯円の内側に負担が集まる、と著者らは説明しています。

同じ2.5 N·mmをかけたときのD8の最大せん断応力(原著Figure 4の色の目盛りの最大値)は、三角形 約195 MPa、長方形 約145 MPa、S字 約118 MPa、正方形 約86 MPaでした。ただしこの差には、形の違いだけでなく断面の面積の違いも含まれています。

⑤結果②:応力は「係数C×トルク×re/J」で予測できた

最大せん断応力は、どの形でもre/Jに比例し(決定係数R²は0.9985〜1)、トルクにも比例しました。そこで著者らは、まるい棒のねじりの公式に形ごとの係数Cを掛けた式にまとめました。

最大せん断応力 = C × トルク × re ÷ J

Cは、まるい棒のねじりの公式(C=1)に対する形ごとの補正係数です。re/Jにはそのファイル自身の断面の値を使うので、Cが小さいほど、同じトルク・同じre/Jで生じる最大せん断応力が小さい(=ねじれに強い)ことを意味します。

0 0.8 1.6 2.4 係数C(小さいほど最大せん断応力が小さい) 1 1.41 1.72 1.93 2.07 円柱(基準) 正方形 S字 三角形 長方形 原著Table 2(テーパー6%・ねじ山5)。円柱はねじりの公式どおりC=1。有限要素解析(コンピュータ模型)での値
断面の形ごとの係数C(テーパー6%・ねじ山5)。原著Table 2の値。まるい棒(円柱)はC=1

Cは正方形で約1.4、長方形で約2.0と、形によって大きく違いました。原著は、長方形の断面はまるい棒のほぼ2倍せん断応力を受けやすい、と表現しています。一方、同じ形ならテーパー(4%か6%)やねじ山の数(5か10)を変えても、Cの差は小さい結果でした(著者らは「5%未満」と述べており、Table 2では長方形の組み合わせで最大約5%)。応力を左右するのは、主に断面の形だということです。

⑥結果③:内芯円の割合が大きいほど、Cは小さくなった

0 1 2 3 係数C(長方形系の断面・ねじ山5) 2.6 1.4 内芯円の割合 31.4% 内芯円の割合 78.5% 原著本文とFigure 7A。7段階のうち両端の2点だけを表示(縦横比2.5の長方形=31.4%、正方形=78.5%)。まるい棒はC=1
長方形系の断面(ねじ山5)で内芯円の割合を変えたときの係数C。7段階のうち両端の2点だけを示す(原著本文とFigure 7Aの概数)

長方形系の断面を、縦横比2.5の細長い形(R=31.4%)から正方形(R=78.5%)まで7段階に変えると、Cは約2.6から約1.4へ下がりました。三角形系でも、辺を内側にへこませた形(R=47.4%)から外側にふくらませた形(R=92.2%)へ変えるほど、Cは同じように下がりました。

著者らはここから、内芯円の外にはみ出した面積が少ない断面ほど、ねじれに強いと結論づけています。具体的には、

・三角形系なら、辺がへこんだ形より、ふくらんだ形
・長方形より正方形
・S字なら、縦横比が1に近い形(S字は内芯円の割合を変える計算に含まれておらず、著者らの推測)
のほうが、より大きなねじる力に耐えられる計算になる

⑦なぜ内芯円の割合が効くのか

まるい棒では、内芯円と外形が同じなので、断面のどこでも中心からの距離に比例して応力が分担されます。ところが非円形の断面では、内芯円の外にはみ出した部分は応力が上がりにくく、力をあまり受け持ちません。

その残りの負担を、内芯円の内側の部分が引き受けることになり、最大せん断応力が高くなります。つまり、はみ出しが大きい断面ほど「働かない面積」が多く、内側に負担が集中しやすい——これがCの違いの正体だ、というのが著者らの説明です。

⑧明日の臨床へ

・ファイルの断面図を見るとき、「断面に内接する円がどれだけ大きいか」という見方がひとつ加わる
・同じ形ならテーパーやねじ山の数よりも、断面の形そのものがねじれの負担を左右する、という計算結果
・著者らは、この知見がねじれ破折のリスクが小さいファイル選びや、メーカーの設計に役立つとしている
・ただし著者ら自身、ファイルの評価には曲げの応力・疲労・しなやかさ・切削効率も合わせて考える必要がある、と書いている

筆者の補足ですが、内芯の割合が大きい断面は、一般に肉厚でかたくなりやすく、切りくずを逃がすすき間も小さくなりがちです。「ねじれに強い断面=いちばん良いファイル」と読むのではなく、ねじれ破折が心配な場面で断面を見る視点が1つ増えた、くらいの距離感がちょうどよさそうです。

⑨ここだけ、冷静に補助線

これは有限要素解析(コンピュータ模型での計算)で、実物のファイルをねじって折った実験でも、臨床研究でもありません。実験で計算結果を確かめる工程も含まれていません。また、計算上の最大せん断応力が小さいことは、ねじれ破折が減ることを直接示したものではなく、著者らも「リスクを減らす可能性がある」という書き方にとどめています。
ここからは筆者の読みです。材料は弾性率とポアソン比だけで表した同じ性質の合金として計算しており、NiTi特有の超弾性や熱処理の違いは入っていません。固定したのはD3の1か所で、実際の根管のように壁に何度も当たる状況や、曲がった根管での曲げとの組み合わせも扱っていません。内芯円の割合を大きくすると断面は肉厚になり、しなやかさや切削効率は落ちる可能性がありますが、この研究では調べていません。それでも、材料やテーパーをそろえて「断面の形」だけの効果を取り出し、簡単な式にまとめた点は、ファイルの断面図を読む手がかりになります。

今日のひとこと

材料と先端径をそろえて断面の形だけを変えたコンピュータ模型では、最大せん断応力は形ごとの係数C×トルク×re/Jで表せ、Cは正方形で約1.4、長方形で約2.0でした。そして断面に内接する円の割合が大きいほどCは小さく、ねじれに強い計算になりました。テーパーやねじ山の数の影響は小さく、著者らは5%未満としています。ただし計算だけの研究で、破折が減ることを実物や臨床で確かめたものではなく、しなやかさや切削効率は調べていません。持ち帰るのは「ファイルの断面図を見るとき、内接する円の大きさという見方がひとつ加わる」という視点です。

Nanthaprathip N, Morakul S, Hiran-us S, Singhatanadgid P. Effect of cross-sectional designs on torsional resistance of endodontic nickel-titanium files: a finite element study. Eur J Dent. 2025;19(2):513–522. doi:10.1055/s-0044-1791785. PMID: 39510523
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。