1問1答 論文 エンド

細い#8 Kファイルでも穿通しない狭窄根管、エンジンに替えると通る?——根尖病変のある狭窄根管85根管の臨床比較で、トライオートZX2+のOGP2とNiTiファイルの組み合わせは穿通率87%(手用ファイル35%)、グライドパス形成も平均約41秒(手用は約2分44秒)だった(2024年)

1問1答 論文 エンド

エンド|#8 Kファイルで根尖まで穿通できなかった、根尖病変のある狭窄根管85根管を、手用ファイル群とトライオートZX2+のOGP2モード+グライドパス用NiTiファイル群に振り分け、穿通できた割合・穿通までの時間・グライドパス形成時間を比べた臨床研究(牛窪 2024・日本歯内療法学会雑誌・1医院・1人の術者)

エックス線写真でもCBCTでも根管がはっきり見えず、細い#8 Kファイルでも根尖まで届かない。そんな狭窄根管に、紹介先の専門医院で手用ファイルで粘るのと、エンドモーターの往復運動(トライオートZX2+のOGP2モード)でNiTiファイルを使うのとでは、どちらが通るのか。根尖病変のある狭窄根管85根管を2群に振り分けて比べた臨床研究です。穿通できた割合は手用ファイル35%(14/40根管)に対して、OGP2群は87%(39/45根管)。穿通までの時間は平均約39分に対して約4分、グライドパス形成は約2分44秒に対して約41秒で、いずれも有意差がありました。ただし1医院・1人の術者による研究で、OGP2群は動かし方(モーター)とファイル(NiTi)の両方が手用群と違います。治療の成績(病変が治ったか)は調べていません。

論文
根尖病変を有する狭窄根管においてトライオートZX2+と手用ファイルを用いた場合の穿通性とグライドパス形成時間の比較検討(A comparison of glide path preparation times and establishment of apical patency using Tri-Auto ZX2+ and hand files in constricted canals with periapical lesions)
著者
牛窪敏博(医療法人晴和会 U’zデンタルクリニック)、長谷川智哉、田中雅士、木方一貴、堺ちなみ、河野哲(朝日大学歯学部 歯科保存学分野)
掲載
日本歯内療法学会雑誌 2024;45(2):106-111(原著)。doi:10.20817/jeajournal.45.2_106
種類
臨床研究(1医院・1人の術者)。2023年1〜10月に根管治療困難として紹介された患者のうち、#8 Kファイルで根尖まで穿通できなかった54人・58歯・85根管(根尖病変あり・画像で根管が明確に見えない狭窄根管)を、ブロックランダム化で手用ファイル群40根管とOGP2群45根管に振り分けた。穿通の可否(制限時間60分)、穿通までの時間、作業長決定後のグライドパス形成時間を比較(χ2検定・t検定、有意水準5%)。朝日大学倫理審査委員会承認
PMID
なし(国内誌のためPubMed未収載。J-Stage掲載)

①#8 Kファイルでも届かない狭窄根管、次の一手は?

エックス線写真でもCBCTでも根管がはっきり見えない。根尖には病変がある。細い#8 Kファイルを入れても根尖まで届かない。こうした狭窄根管では、手用ファイルで少しずつ粘るのが一般的な進め方でした。

この研究は、そんな狭窄根管を手用ファイルで穿通を試みる群と、エンドモーター「トライオートZX2+」のOGP2モードでグライドパス用NiTiファイルを動かす群に振り分け、根尖まで穿通できた割合・穿通までの時間・グライドパス形成の時間を比べた臨床研究です。

結論を先に言います。穿通できた割合は手用ファイル35%に対してOGP2群87%。穿通までの時間(平均約39分→約4分)も、グライドパス形成の時間(約2分44秒→約41秒)も、OGP2群のほうが有意に短い結果でした。

②なぜ狭窄根管の「穿通」が大事なのか

加齢やう蝕・咬耗などの刺激で、根管の中には修復象牙質が添加されたり、象牙質粒ができたりして、根管が細く狭くなります。こうなると、根管形成はもちろん、根尖まで細いファイルを通すこと(根尖部穿通)もできなくなることがあります。

・穿通できないと、いちばん深く入った長さがそのまま作業長になり、根尖病変がある歯では根管内の細菌を十分に減らせないおそれがある
・一方で、無理に通そうとして本来の根管から外れると、レッジや穿孔につながり、修正はとても難しい
・従来は手用ファイルでのグライドパスが一般的。近年はNiTiファイルをエンドモーターで動かすメカニカルグライドパスが紹介されている

トライオートZX2(モリタ)には、根尖部穿通とメカニカルグライドパスのためのOGP(Optimum Glide Path)という動かし方が入っています。手用ファイルのウォッチワインディングとバランスドフォースの動きを、モーターで再現したものです。2023年発売のトライオートZX2+には、改良型のOGP2が加わりました。

OGP2は、150°正回転→60°逆回転をくり返して正方向に360°回ったら、今度は150°逆回転→60°正回転で逆方向に360°回る、という往復運動です。抜去歯での研究はありましたが、実際の患者さんの狭窄根管でOGP2を確かめた報告はなかった、と著者らは書いています。

③今回の一手:#8で通らなかった85根管を2群に分けて比べた

・対象:2023年1〜10月に「根管治療困難」として紹介された患者410人のうち、抜歯と診断された300人を除いた110人・141根管。まず#8 Kファイルで試し、根尖まで通った56根管は除外。通らなかった54人・58歯・85根管が研究の対象(大臼歯が52歯・79根管とほとんど)
・どの歯も、デンタルエックス線写真とCBCTで根管がはっきり見えず、根尖病変があることを確認
・ブロックランダム化で2群に振り分け。治療は1人の歯科医師が担当
・共通の下準備:隔壁・ラバーダム・歯面消毒ののち、細い手用ファイル(C+ファイル#6・#8・#10)と潤滑剤(RCプレップ)でスカウティング。根管口をNiTiファイル(RE-CX)で拡げ、超音波チップでストレートラインアクセス。洗浄にはナノバブル水・17% EDTA・3%次亜塩素酸ナトリウムを使用
・手用ファイル群(40根管):C+ファイルとステンレスKファイル(#6・#8・#10)を交互に、ウォッチワインディングで。穿通後のグライドパスはKファイル#10→#15
・OGP2群(45根管):Race(ISO #10/.02と#10/.04)をトライオートZX2+のOGP2で。穿通後のグライドパスはProGlider(#16)をOGP2で
・作業長は電気的根管長測定でApexから1 mm短く。穿通の制限時間は60分。時間は洗浄を含み、ファイル交換の時間は含まない

つまり比べているのは、「手用ファイル」対「NiTiファイル+OGP2」というやり方のセットです。動かし方(手かモーターか)だけでなく、ファイルの材質や形、グライドパスの最終サイズも違う点は、読むときに押さえておきたいところです。

④結果①:穿通できた割合は35%と87%

0 33.3% 66.7% 100% 根尖まで穿通できた根管の割合(%) 35% 87% 手用ファイル(40根管) OGP2+NiTiファイル(45根管) 原著 表1。手用 14/40根管、OGP2 39/45根管(χ2検定 p<0.05)。いずれも#8Kファイルで穿通できなかった根尖病変のある狭窄根管
根尖まで穿通できた根管の割合(原著 表1)。どちらも#8 Kファイルで穿通できなかった狭窄根管

根尖まで穿通できたのは、手用ファイル群で14/40根管(35%)、OGP2群で39/45根管(87%)でした(χ2検定でp<0.05)。本文の割合から計算すると、穿通できた割合の比(リスク比)は約2.5です。

穿通できなかった32根管はすべて大臼歯でした。内訳は近心根24根管・遠心根6根管・口蓋根2根管(手用群26根管、OGP2群6根管)。著者らは、大臼歯で穿通できない理由として根尖の分岐やアピカルデルタが関わっている可能性を挙げた報告を紹介しています。

⑤結果②:穿通までの時間とグライドパス形成の時間

0 15分 30分 45分 穿通までにかかった時間(分・平均) 39.2分 4.3分 手用ファイル(14根管) OGP2+NiTiファイル(39根管) 原著 表3(39分09.50秒±4分31.06秒 と 4分16.38秒±1分11.41秒を分に換算)。穿通できた根管だけの平均。t検定p<0.05・制限時間60分
穿通までにかかった時間(原著 表3を分に換算)。穿通できた根管だけの平均

穿通できた根管で、穿通までにかかった時間は、手用ファイル群が平均39分09.50秒(±4分31.06秒)、OGP2群が平均4分16.38秒(±1分11.41秒)でした(t検定でp<0.05)。

0 60秒 120秒 180秒 グライドパス形成にかかった時間(秒・平均) 163.6秒 40.8秒 手用 Kファイル#10→#15(14根管) OGP2+ProGlider(39根管) 原著 表3(2分43.64秒±1分10.95秒 と 40.84秒±10.83秒)。作業長決定後の時間で根管洗浄を含み、ファイル交換の時間は含まない。t検定 p<0.05
作業長決定後のグライドパス形成時間(原著 表3)。根管洗浄の時間を含み、ファイル交換の時間は含まない

作業長を決めたあとのグライドパス形成は、手用ファイル群(Kファイル#10→#15)が平均2分43.64秒(±1分10.95秒)、OGP2群(ProGlider)が平均40.84秒(±10.83秒)で、こちらも有意差がありました(p<0.05)。

なお、時間の比較は穿通できた根管だけ(手用群14根管、OGP2群39根管)で行われています。手用群では穿通できなかった26根管が比較に入っていない点は、数字を読むときの前提です。

⑥なぜOGP2群のほうが通りやすかったのか——著者らの見立て

著者らは、手用ファイルでのマニュアルグライドパスはメカニカルグライドパスより時間がかかり、トランスポーテーションも起こしやすいという過去の報告を挙げ、同じグループの抜去歯を使った研究とも同じ傾向だったとしています。

穿通に先端が#16のProGliderではなく、Raceの#10(.02と.04)を使ったのは、穿通には#15より#10の細いファイルのほうがトランスポーテーションが少ないという見解を踏まえたもの、と説明されています。また、OGP2は累積の回転角度が360°を超えないため、ファイル破断の危険は低いと著者らは考えています。

ここからは筆者の読みです。この研究では、どの要素(モーターの往復運動、NiTiファイルの形、テーパーのついた#10/.04など)が効いたのかは切り分けられていません。「OGP2という動かし方だけで穿通しやすくなる」とまでは言えず、「このやり方のセットで通りやすかった」と受け取るのが素直です。

⑦明日の臨床へ

・#8 Kファイルで通らない狭窄根管でも、NiTiファイルをモーターで往復させる穿通が次の選択肢になりうる
・ただし著者らは、機械的な穿通にはトランスポーテーションや、人工の根管を本来の根管と思い込んでの穿孔の危険があると強調。術前のエックス線写真・CBCT、術中のファイル試適のエックス線写真、電気的根管長測定で確かめながら進めるよう勧めている
・狭窄根管や石灰化根管では、スクリューイン(ファイルが引き込まれる)によるファイル破折にも注意がいる
・穿通できたからといって治療が成功するとは限らない。穿通と成功率の関係は報告によって分かれ、根管の1/3までしか治療できなくても62.5%が成功したという報告もあると著者らは紹介している

「通らなければモーターで押し切る」ではなく、本来の根管を外れていないか確かめながら使う道具がひとつ増えた——このくらいの距離感がちょうどよさそうです。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは1つの専門医院で、1人の歯科医師が治療した臨床研究です。紹介患者を1人の術者が治療した成績なので、一般化には注意がいります。盲検化についての記載はなく、必要な症例数の計算についての記載もありません。また、解析の単位は根管(54人・85根管)で、同じ患者さん・同じ歯の根管どうしは互いに独立でない可能性があります。
また、比べているのは「手用ファイル」対「NiTiファイル+OGP2」のセットで、グライドパスの最終サイズ(Kファイル#15とProGlider)も違います。時間の比較は穿通できた根管だけで行われ、手用群はそのうち14根管と少数です。調べたのは穿通の可否と時間までで、トランスポーテーション・レッジ・穿孔・ファイル破折といった偶発症や、根尖病変が治ったかどうか(治療成績)は報告されていません。
それでも、#8で通らなかった実際の患者さんの狭窄根管85根管を振り分けて比べた臨床データは多くありません。手用で行き詰まったときの選択肢を考える材料として、読む価値のある一本です。

今日のひとこと

#8 Kファイルでも根尖まで届かない、根尖病変のある狭窄根管で、OGP2(エンドモーターの往復運動)とNiTiファイルの組み合わせは、手用ファイルより穿通できた割合が高く(87%対35%)、穿通までの時間もグライドパス形成の時間も短い結果でした。ただし1医院・1人の術者の成績で一般化には注意が要ります。またモーターの動きとファイルの材質・形の両方が違う比較です。治療成績やトランスポーテーションなどの偶発症は報告されておらず、著者ら自身もスクリューインによる破折に注意を促しています。持ち帰るのは「手用で通らない狭窄根管でも、機械的な穿通という次の手がある。ただし画像と電気的根管長測定で本来の根管を外れていないか確かめながら」という視点です。

牛窪敏博, 長谷川智哉, 田中雅士, 木方一貴, 堺ちなみ, 河野哲. 根尖病変を有する狭窄根管においてトライオートZX2+と手用ファイルを用いた場合の穿通性とグライドパス形成時間の比較検討. 日本歯内療法学会雑誌. 2024;45(2):106-111. doi:10.20817/jeajournal.45.2_106(J-Stage: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jeajournal/45/2/45_106/_article/-char/ja)。PMIDなし(PubMed未収載)
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。