エンド|湾曲根管の再根管治療(リトリートメント)で、熱処理の違うNiTiファイル(M-wire・CM-wire・従来のNiTi)と手用ファイルは、根管充填材をどれだけ取り除けるのか。3本のファイルを順に使い、1本ごとにマイクロCTで残りを測った抜去歯の実験研究(Rodrigues 2016・Journal of Endodontics)
再根管治療で「どのファイルで除去するか」を考えるとき、ファイルの合金(熱処理)の違いは気になるところです。著者らは、根尖が20〜35°曲がった上顎側切歯30本に側方加圧で根管充填をしてから、10本ずつ3つの手順で除去しました。1本目は往復運動ファイル(Reciproc=M-wire、ProDesign R=CM-wire)か手用ファイル、2本目は回転ファイル(Mtwo=従来NiTi、ProDesign Logic 40/.05=CM-wire)か手用40号、3本目は50号・テーパー1%のProDesign Logic 50/.01か手用50号。1本使うごとにマイクロCTで残った充填材の割合を測っています。結果、合金の違うファイルどうしで除去量に有意差はありませんでした。2本目の回転ファイルでも有意には減らず、3本目にLogic 50/.01を使うと、根尖部(根尖から1〜5mm)の残りが往復運動ファイルの後より有意に減りました(例:ProDesign R群の根尖1〜3mmで中央値33.55%→0.84%。Reciproc群の根尖1〜3mmは有意差なし)。ただし完全に取り切れたのは30本中3本だけで、残りは根尖側に集中していました。
①再根管治療、ファイルの「合金」で除去量は変わる?
再根管治療でガッタパーチャを除去するとき、往復運動か回転か、M-wireかCM-wireか——NiTiファイルの選択肢は年々増えています。とくに湾曲根管では「しなやかな合金のほうが安全で、よく取れるのでは」と考えたくなります。
この研究は、根尖が曲がった上顎側切歯で、合金の違うファイルを3本ずつ順に使い、1本ごとにマイクロCTで残った充填材を測りました。
結論を先に言います。合金の違いで除去量に有意差はありませんでした。差が出たのは合金ではなく、最後に50号・テーパー1%のファイルで根尖部を仕上げたかどうかでした。
②なぜ合金が気になるのか
再根管治療では、根管内の消毒と根尖周囲の治癒のために、充填材をできるだけ取り除くことがすすめられています。ところが湾曲根管は、再形成のときに段差(レッジ)・穿孔・ファイル破折が起きやすい難しい場面です。
そこで注目されてきたのが、NiTiの熱処理です。
・CM-wire(コントロールドメモリー):ほぼマルテンサイト相で、形状記憶を抑えた合金。とてもしなやかで、繰り返し曲げに強く、湾曲根管での段差や破折を減らすとされる
・従来のNiTi:Mtwoなど
著者らによれば、CM-wireのファイルで充填材を除去した研究は、それまで見当たらなかったといいます。
③今回の一手:3本のファイルを順に使い、1本ごとにマイクロCTで測る
・群1:Reciproc R25(M-wire・往復運動)→ Mtwo 40/.04(従来NiTi・回転)→ ProDesign Logic 50/.01(CM-wire・回転)
・群2:ProDesign R 25/.06(CM-wire・往復運動)→ ProDesign Logic 40/.05(CM-wire・回転)→ ProDesign Logic 50/.01
・群3:ゲイツグリッデン+手用ファイル(根尖30号)→ Kファイル40号 → Kファイル50号
同じ術者が手術用顕微鏡(5倍)で、壁に充填材が見えなくなり、壁が滑らかになるまで各ファイルを使いました。溶剤(オレンジオイル系)は最初だけです。
各歯を充填後と、ファイルを1本使うごとに(計4回)マイクロCTで撮影し、根尖1(根尖から1〜3mm)・根尖2(3〜5mm)・中央(5〜7mm)・歯冠側の4か所で、残った充填材を初めの体積に対する%で出しています。同じ歯を追いかけるので、「2本目・3本目を足すとどれだけ減るか」も見られる設計です。
比べたいのは2点でした。①合金が違っても除去力は同じか(Reciproc対ProDesign R、Mtwo対Logic 40/.05)、②細いテーパーの50号(Logic 50/.01)を足すと根尖部の除去が増えるか。
④結果①:合金による差は見られなかった
往復運動のReciproc(M-wire)とProDesign R(CM-wire)、回転のMtwo(従来NiTi)とLogic 40/.05(CM-wire)、そして2つの群のLogic 50/.01どうし——どの組み合わせでも、除去量に有意差はありませんでした(P>.05)。
著者らは「Reciproc群のほうがProDesign R群よりわずかに残りが少なめだったが、統計的な差はなかった」としています。著者らは「CM-wireはM-wireや従来NiTiよりしなやかだが、充填材を取る力は同じだった」とまとめています。
もう1つ意外なのは、2本目の回転ファイル(Mtwo・Logic 40/.05)を足しても、どの部位でも有意には減らなかったことです。
⑤結果②:50号・テーパー1%で仕上げると、根尖部の残りが減った
差がはっきりしたのは、3本目のProDesign Logic 50/.01です。往復運動ファイルの後と比べて、根尖部の残りが有意に減りました(P<.05)。
・群1(Reciproc→…→Logic 50/.01):根尖2で20.70%→2.20%と有意に減少。根尖1は18.42%→1.48%で、有意差はつかなかった
・群3(手用30→40→50号):根尖1は32.84%→5.58%→5.29%と下がったが、群内で有意な差はなかった
中央・歯冠側は、どの群も1本目の時点で中央値0〜2.10%とほとんど残っていません。残りは、どの群でも根尖1・根尖2に集中していました。
そして、完全に取り切れた歯は30本中3本だけ(Mtwo・群2のLogic 50/.01・手用40号の各1本)。どの方法でも、充填材はほとんどの歯に残りました。
⑥なぜ「50号・テーパー1%」が効いたのか
最初の形成はProTaper F1(先端20号)まで、1本目の往復運動ファイルは25号。そこへ先端50号のファイルで根尖部を一回り大きく削り直すと、壁に残ったガッタパーチャやシーラーが削り取られる——考え方としてはシンプルです。著者らも、根尖部をきれいにするには初めの形成より太い号数まで広げる必要があるという過去の研究を挙げています。ただし、手用ファイルを50号まで上げた群3では有意な減少は見られなかったので、「50号にすれば取れる」とまでは言えません。
一方で、太く広げれば歯質も削れます。たとえばReciproc R50のようにテーパー5%の50号では、象牙質を削りすぎるおそれがあります。Logic 50/.01は先端は50号でもテーパーは1%と細いので、著者らは「歯を弱めずに根尖部を仕上げるのに向いているようだ」と考察しています(歯質の削除量そのものは、この研究では測っていません)。この研究ではファイル破折は1本も起きませんでした。
湾曲根管でうまくいった理由として、CM-wireのしなやかさや疲労への強さが役立った可能性も、著者らは推測として挙げています。
⑦明日の臨床へ
・残りやすいのは根尖から1〜5mm。中央・歯冠側が取れても、根尖側には残っていると考えておく。
・根尖部は、初めの形成より号数を上げて仕上げるという選択肢。この研究では50号・テーパー1%のファイルを足すと根尖部の残りが減った。
・顕微鏡で見えなくなっても、充填材は残っていることが多い(完全除去は30本中3本)。
・ただし、どこまで拡大するかは歯質の厚み・湾曲・破折リスクとの天秤。50号がどの歯にも適切という結論ではない。
著者らは、根尖部をさらにきれいにする補助として、次亜塩素酸ナトリウムや溶剤の超音波活性化、レーザーなども挙げています(この研究では調べていません)。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
この研究の湾曲した上顎側切歯(抜去歯)では、M-wire・CM-wire・従来のNiTiという合金の違いで、充填材の除去量に有意差はありませんでした。2本目の回転ファイル(Mtwo・Logic 40/.05)でも有意には減らず、3本目に50号・テーパー1%のProDesign Logic 50/.01を使うと、根尖部の残りが往復運動ファイルの後より有意に減りました(Reciproc群の根尖1〜3mmは有意差なし。手用の50号では有意差なし)。一方で完全に取り切れたのは30本中3本だけで、残りは根尖1〜5mmに集中していました。ファイルは合金より「根尖をどこまで仕上げるか」で考える——これがこの研究からの持ち帰りです。ただし1群10本の抜去歯での実験で、再治療後の治癒を見た研究ではありません。


