エンド|再根管治療で古い根管充填材(ガッタパーチャ・シーラー)を取り除くとき、手用ファイル・NiTiロータリー・レシプロ、ソルベント、洗浄液の活性化はそれぞれどこまで効くのか。micro-CTで残った充填材を測った実験研究22本を整理したシステマティックレビュー(Rossi-Fedele 2017・Journal of Endodontics)
再根管治療で最初にぶつかるのが、古い根管充填材をどこまで、何で取るかという問題です。著者らは、micro-CT(高解像度の研究用CT)で充填材の残り方を測った研究をPubMedと主要なエンド専門誌5誌から探し、345本から22本を選んで整理しました。結論は、どの器具・手順でも充填材は「効率よく、しかし完全には」取れないということ。NiTiのロータリーとレシプロは同じくらいの除去能力で、再治療専用ファイルに通常のファイルを上回る利点は見られませんでした。偶発症(ファイル破折・穿孔)の報告が無かったのは手用ファイルだけ。ソルベントは早い段階で使うと作業長への到達は速くなるが清掃は良くならず、器具操作のあとで使うと残りを減らしうる。洗浄液の活性化の効果は研究によって割れていました。ただし集められたのはすべて抜去歯を使った実験で、数値をまとめて統合する解析はしていません。
①古いガッタパーチャ、何で取るのがいちばん取れる?
再根管治療。アクセスを開けると、前医のガッタパーチャとシーラーが詰まっている。手用のHファイルでかき出すか、NiTiの再治療用ファイルか、レシプロか。ソルベントは垂らすべきか——毎回少しずつ迷うところだと思います。
このレビューは、その問いにmicro-CTで残った充填材を実際に測った研究だけを集めて答えようとしたものです。
結論を先に言います。どの器具・手順でも、充填材は「効率よく、しかし完全には」取れませんでした。そしてNiTiのロータリーとレシプロの除去能力は同じくらい。偶発症(ファイル破折・穿孔)の報告が無かったのは手用ファイルだけでした。
②なぜ「取りきれたか」がわかりにくいのか
再治療では、古い充填材を取り除くことがほぼ必ず必要になります。汚染された根管の中まで器具と洗浄液を届かせるため、そして辺縁から細菌や毒素が入り込んだかもしれない充填材そのものを取り除くためです。根尖まで穿通し、できるだけ根尖近くまで清掃を広げることは、根尖部の治癒に関わる因子として報告されています。
ところが、根管の中にどれだけ充填材が残ったかは、口の中では見えません。従来の研究でよく使われた歯を透明化する方法や、歯を切って断面を見る方法は、同じ歯を処置の前後で繰り返し調べることができませんでした。
③今回の一手:micro-CTで測った22本の実験を並べて読む
・重複を除いて345本 → 題名と抄録で320本を除外 → 全文を読んだ25本のうち22本を採用
・2名の著者が独立に評価し、話し合って結果をまとめた
・採用された研究は、いずれも抜去歯の根管を充填し、再治療の手順で除去してmicro-CTで残りを測った実験(原著の表の歯種・根の形の記載から判断)
・数値をまとめて統合する解析(メタアナリシス)は行わず、研究ごとの結論を並べて読む質的なまとめ
比べられていた内容は、手用ファイル対NiTi(ロータリー・レシプロ)が7本、ロータリーを調べたものが3本、レシプロを調べたものが3本、ロータリー対レシプロが8本。これに加えて、ソルベントの使いどころと洗浄液の活性化(超音波・音波・レーザー)が論じられています。
④結果①:どの方法でも、完全には取れない
まず大前提です。採用された研究の手順は、どれも充填材を効率よく取り除いていました。それでもほとんどの研究で充填材は残っていました。
残った充填材の平均の割合は、研究によって43.9%から0.02%までと大きく開きがあり、大半の研究は10%を下回る値でした。
⑤結果②:器具で見ると、ロータリーとレシプロは同じくらい
手用ファイル対NiTiは、研究によって結果が割れました。ProTaper Universal RetreatmentよりKファイルのほうがよく取れた研究、Hファイル・ProTaper Universal Retreatment・D-RaCeを比べてHファイルより有意に残りが少なかったのはD-RaCeだけだった研究、号数をそろえたHファイルよりProTaper Universal Retreatmentのほうがよく取れた研究、湾曲根管でHファイルとReciprocに差が無かった研究、楕円の根管でReciprocのほうが残りが少なかった研究、HファイルのほうがFlexMasterより残りが少なかった研究があります。著者らは、ProTaper Universal Retreatmentと手用ファイルの成績は、最終の拡大号数がそろっていれば同じくらいと読んでいます。
ロータリー対レシプロでは、4本の研究でレシプロはロータリーの再治療システムと同等に取れたと報告されています。どちらでも、充填材を完全に取りきれたシステムはありませんでした。また2本の研究では、号数の大きいレシプロ(Reciproc R50など)のほうが、ロータリーの再治療システムより残りが少なかったとされています。
・再治療専用ファイルに、通常のファイルを上回る利点は見られなかった
・拡大を大きめにすること、ハイブリッド法を使うことで、残りが少なくなる傾向がある
・ただし除去のしやすさは、根管の形(丸いか楕円か、まっすぐか湾曲か)や、前医の充填材・拡大号数といった、術者が再治療の時点で知りようのない条件にも左右される
(ハイブリッド法は、原著では定義されていません。表の研究でいえば、ProTaper Universal Retreatmentのあとに別のファイルやSAFを足すような複数の器具を組み合わせる手順を指すとも読めますが、原著の表には根管充填法としての「hybrid obturation technique」という用例もあり、どちらの意味かは断定できません=筆者の補足)
⑥結果③:偶発症の報告が無かったのは手用ファイルだけ
手用ファイルはロータリー・レシプロより時間がかかりました。ただしその差は1根管あたり多くは数分程度。一方で、手用ファイルでは処置中の偶発症は報告されていません。
NiTiの側では、湾曲根管でファイル破折や側方穿孔が報告されています。ある研究では、ProTaper Universal RetreatmentとProTaperで歯冠側1/3に側方穿孔が3件起き、Reciprocの群では起きませんでした。ただしファイルの破折は、どちらのシステムも20本中1本でした。
⑦結果④:ソルベントは「使う段階」で働きが変わる
器具操作の早い段階で使ったソルベントは、作業長に届くまでの時間を短くしました。しかし根管のきれいさは良くなりませんでした(2本の研究)。クロロホルムを使った研究では、作業長には早く届いたものの、充填材を取りきり根管を整えるまでには、ソルベントを使わない群よりかえって時間がかかりました。著者らは結論で、初期のソルベントは清掃を妨げうるとまとめています。
一方、器具操作のあとにキシレンを使った研究では、残った充填材が減りました。キシレンを超音波で動かすと、除去の割合がわずかに上がったという研究もあります。根尖から押し出されるソルベントの量は毒性の許容量を下回るという報告がある一方、超音波で動かしたり器具操作のあとで使ったりしたときの安全性は、さらに確かめる必要があると著者らは書いています。
⑧明日の臨床へ
・ロータリーかレシプロかで悩みすぎない。除去能力は同じくらいだった。大きめの拡大などで残りが少なくなる傾向も報告されている。
・再治療専用ファイルだから安心、ではない。通常のファイルを上回る利点は見られなかった。
・湾曲根管のNiTiでは、破折と穿孔の報告がある。手用ファイルは時間がかかるが、偶発症の報告は無かった。
・ソルベントは使う段階を意識する。最初に垂らすと作業長には早く届くが、清掃は良くならなかった。
著者らは、今の手順に限界がありながらも、再根管治療そのものは比較的高い成功率を上げていることにも触れています。充填材の除去は、洗浄・貼薬・再充填と合わせて根管内の環境を変え、バイオフィルムを壊すための一工程、という位置づけです。
⑨ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
micro-CTで測った22本の実験では、どの器具・手順でも根管充填材は完全には取れませんでした(残った割合は研究により0.02%〜43.9%、大半は10%を下回る)。NiTiのロータリーとレシプロの除去能力は同じくらいで、再治療専用ファイルに通常のファイルを上回る利点は見られず、大きめの拡大とハイブリッド法で残りが少ない傾向でした。偶発症の報告が無かったのは手用ファイルだけ。ソルベントは使う段階で働きが変わり、洗浄液の活性化の効果は定まっていません。「完全に取る」ではなく「できるだけ取り、洗浄と貼薬(と再充填)で補う」——これがこのレビューから見える再治療の考え方です。ただし抜去歯での実験を集めたもので、治癒などの臨床成績を比べたものではありません。


