1問1答 論文 保存修復

根管治療した臼歯、コンポジットレジン充填でもつ?——咬頭を残せる2級窩洞・平均8.6年で、失活歯の成功率は76.8%(生活歯は98.97%)。単一術者の後ろ向き研究

1問1答 論文 保存修復

保存修復|根管治療した臼歯と生活歯の、直接法コンポジットレジン2級充填。同じ術者・同じ材料で最長13年を振り返った後ろ向き研究(Lempel ほか 2019・Dental Materials)

根管治療を終えた小臼歯・大臼歯。クラウンで覆うか、コンポジットレジン(CR)で詰めて済ませるか。ハンガリー・ペーチ大学のグループは、1人の術者が同じ材料で入れた臼歯部2級CR 597本(生活歯485本・根管治療歯112本)を、平均8.6年後に診査しました。対象は、咬頭が欠けておらず、残る壁の厚みが2.5〜3mm以上ある窩洞に限っています。成功率は生活歯98.97%に対し根管治療歯76.8%。根管治療歯でも年間失敗率は1.78%でしたが、失敗の中身は歯根の垂直破折や咬頭破折が目立ちました。

論文
Long-term clinical evaluation of direct resin composite restorations in vital vs. endodontically treated posterior teeth — Retrospective study up to 13 years
著者
Edina Lempel, Bálint Viktor Lovász, Edina Bihari, Károly Krajczár, Sára Jeges, Ákos Tóth, József Szalma(ペーチ大学 保存修復・歯周病学講座ほか/ハンガリー)
掲載
Dental Materials 2019;35(9):1308-1318. DOI: 10.1016/j.dental.2019.06.002
種類
後ろ向き臨床研究(単施設・単一術者)。2004〜2011年に臼歯部2級の直接法CR(Filtek Z250+Adper Single Bond)を受けた成人245人・597修復を、2018年に改変USPHS基準で診査。平均観察期間8.6±2.3年
PMID
31278018

根管治療した臼歯、CRで詰めて終わりでいい?

根管治療を終えた臼歯。「失活歯は脆いからクラウンで覆う」と習った一方で、咬頭がしっかり残っていれば、コンポジットレジン(CR)で詰めて様子を見たくもなります。実際どのくらいもつのか。

この論文は、同じ術者・同じ材料で入れた臼歯部2級CRを、生活歯と根管治療歯で最長13年まで振り返りました。結論を先に書くと、咬頭を残せる大きさの窩洞に限れば、根管治療歯のCRも観察期間6〜13年(平均8.6年)の成功率が76.8%(年間失敗率1.78%)。ただし生活歯の98.97%(同0.08%)には明らかに届かず、失敗には歯根の垂直破折や咬頭破折が含まれていました。

「失活歯は脆い」は本当か

根管治療歯は生活歯より失敗しやすい、というのが一般的な見方です。一方で著者らが引用する実験室研究では、失活そのものより、アクセス窩洞や根管拡大で歯質が失われることが歯の強さを下げる主因とされています(例:咬合面の修復で剛性が20%、MOD修復で63%低下したという Reeh ほか 1989 の報告)。

さらに根管治療では次亜塩素酸ナトリウムやEDTAを使うため、象牙質のコラーゲンが減り、接着にも不利になりうる。とはいえ、根管治療歯の直接法CRを長期に追った臨床研究は少なかった、と著者らは述べています。

今回の研究:1人の術者が入れた597本を振り返った

研究の骨格:ハンガリーのペーチ大学の診療記録から、2004〜2011年に臼歯部2級の直接法CRを受けた成人を抽出し、2018年に呼び出して診査した後ろ向き研究
対象:245人・597修復(生活歯485本/う蝕の一次治療、根管治療歯112本/歯髄炎・根尖性歯周炎で根管治療後)。
そろえた条件:窩洞の頬舌幅が咬頭間距離の2/3以内(残る壁の厚み2.5〜3mm以上)、マージンはエナメル質上、咬頭の欠損なし、天然歯と咬み合い、両隣の天然歯と接触していること。術者は1人、材料は全例 Filtek Z250+Adper Single Bond(エッチ&リンス)。根管治療歯は根管口と髄室床をフロアブルレジンで覆ってから充填。
評価:2人の較正済み診査者による改変USPHS基準。Charlie(交換が必要)と再介入をすべて失敗とした。根管治療そのものや歯周病による失敗は、垂直破折を除いて対象から外している。平均観察期間は8.6±2.3年

2群の年齢・性別・上下顎・大臼歯と小臼歯の比率・MODの割合・咬合ストレスのある患者の割合に、有意差はありませんでした(表1)。

結果:根管治療歯は失敗が多く、その中身が重かった

0 33.3% 66.7% 100% 観察期間中の成功率 (%) 98.97% 76.8% 生活歯(485修復) 根管治療歯(112修復) 成功率=1−失敗数÷修復数(本文の式。観察期間は修復ごとに異なり、Kaplan–Meierの何年生存率ではない)。年間失敗率は論文記載の値で生活歯0.08%、根管治療歯1.78%
観察期間中の成功率(本文の値。生活歯485修復中5件、根管治療歯112修復中26件が失敗)

生活歯485本のうち失敗は5本(1.03%)、根管治療歯112本のうち26本(23.2%)。観察期間中の成功率は98.97% vs 76.8%、年間失敗率は0.08% vs 1.78%で、Kaplan–Meier生存曲線にも有意差がありました(Log-rank検定 p<0.001)。ただし、この成功率の差は、ほかの条件をそろえていない単純な比較です。

数字以上に目を引くのは、失敗の中身です。

0 3.3% 6.7% 10% 失敗した修復の割合 (%) 8.9% 0% 4.5% 0% 0.9% 0.6% 6.3% 0.4% 2.7% 0% 歯根の垂直破折 咬頭破折 修復物の破折 二次う蝕 脱離 根管治療歯(112修復) 生活歯(485修復) 表2・表3より。濃い棒=根管治療歯(失敗26件)、淡い棒=生活歯(失敗5件)。各群の修復数に対する割合
失敗の原因ごとの割合(表2の件数・表3の割合)。根管治療歯の失敗26件の内訳は、垂直破折10・二次う蝕7・咬頭破折5・脱離3・修復物の破折1

生活歯の失敗は、修復物の破折3件と二次う蝕2件だけでした。一方、根管治療歯では歯根の垂直破折が10件(8.9%)、咬頭破折が5件(4.5%)。垂直破折は抜歯につながる失敗です。修復物そのものの破折は、生活歯0.6%・根管治療歯0.9%で有意差がありませんでした。

BravoまたはCharlieの評価がついた劣化も、根管治療歯で多く見られました。辺縁の適合の劣化は生活歯11.3%/根管治療歯33.9%、辺縁の着色は22.3%/31.3%、色調適合は13.2%/29.5%、表面の粗さは3.5%/15.2%(いずれも有意差あり)。解剖学的形態だけは差がありませんでした。

失敗と関連した因子(ほかの因子を同時に入れて調整したCox回帰・共有フレイルティ付き・表4)
ブラキシズムに関連する咬合ストレスあり:ハザード比 37.1(95%CI 8.4–163.7・p<0.001)
根管治療歯であること:ハザード比 25.3(95%CI 9.7–66・p<0.001)
・性別、2面か3面か、充填からの年数、大臼歯か小臼歯か、上顎か下顎か:いずれも有意差なし

表4の表題は「根管治療歯の生存」ですが、生活歯か根管治療歯かも変数に入っており、どの歯を対象にした解析かは論文から読み取りにくい点に注意が要ります。行の表記は vital vs. non-vital ですが、考察では根管治療歯のハザードとして扱っています(ほかにも、性別のハザード比0.1が信頼区間0.3–4.9の外にあるなど、表に不整合があります)。咬合ストレスの有無は、歯ぎしり・食いしばりの問診票と、咬耗や咬筋肥大などの診査で判定しています。信頼区間の幅がとても広い点は、⑦で触れます。

なぜ根管治療歯で壊れやすいのか(著者らの推察)

著者らは、ここまでの結果を次のように読んでいます。まず、根管治療で使う薬液が象牙質を変質させ、接着界面が弱くなる。そこへアクセス窩洞で窩洞が深くなり、咬頭のたわみが大きくなる。たわみが界面に剪断の力をかけ、辺縁の劣化や微小な亀裂を生む。こうした説明は、同じ論文内の検証ではなく、著者らが引用した実験室研究(次亜塩素酸処理で象牙質の接着強さが下がる、根管治療後にMOD窩洞の咬頭のたわみが増える、など)にもとづく推察です。

根管治療歯で辺縁の劣化・色調・表面の粗さが悪かったことは、この推察と矛盾しない、と著者らは述べています。また緒言では、根管治療後に固有感覚が落ち、とくに歯ぎしりのある患者では力の影響が大きくなりうるという文献を引いています(これも引用文献にもとづく推測で、この研究で確かめたものではありません)。

明日の臨床へ

著者らの結論(この後ろ向き研究の範囲で):残る咬頭の厚みが2.5〜3mmある2級窩洞なら、根管治療した臼歯の直接法CRも、6〜13年の経過で臨床的に許容できる。ただし成功率は生活歯より低く、咬合ストレスがあると生存が下がる。
補足(筆者の読み):
・この研究が示したのは、咬頭が残り、窩洞が咬頭間距離の2/3以内という条件を満たした歯での成績です。著者らの医院では、それを超える窩洞は咬頭被覆(直接法または間接法)に回していました。「根管治療歯はどれもCRで十分」という話ではありません。
・根管治療歯の失敗の約6割(26件中15件)は垂直破折と咬頭破折でした。CRで済ませるなら、歯ぎしり・食いしばりの問診と咬耗などの診査を先に行い、患者さんにも「割れるリスク」を含めて説明しておきたいところです。
・一方、この研究にはクラウンで修復した根管治療歯の群がありません。「クラウンにすれば垂直破折が防げた」かどうかは、この研究からは分かりません。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、後ろ向き研究です。記録上の対象714人のうち参加に同意したのは557人で、組み入れ基準を満たした245人が解析対象でした。術者は1人で、著者ら自身が「社会経済的に恵まれ口腔衛生のよい患者が多かった」と述べており、一般の診療所にそのまま当てはまるとは限りません。また、根管治療や歯周病による失敗(垂直破折を除く)は数えていないため、歯そのものの生存はこれより低い可能性があります。年間失敗率(0.08%/1.78%)の計算式は論文に書かれていません。失敗割合を最長の13年で割った値と一致し、平均8.6年で割ると根管治療歯で約2.7%・生活歯で約0.12%になります(筆者の計算)。観察期間の記載にも食い違いがあり、最低6年・平均8.6±2.3年とある一方、表1の「充填からの年数」は11年台(11.5±1.3年/11.1±1.5年)です。第二に、群の大きさが485本と112本で違い、生活歯の失敗は5件しかありません。そのため著者らも、生活歯で0件だった項目(垂直破折・咬頭破折・脱離)の相対リスクは信頼できないと明記しています。ハザード比37.1(95%CI 8.4–163.7)も、区間の広さから大きさの目安にとどめるのが無難です。また、成功率の差・Kaplan–Meier曲線・表3の相対リスクはほかの因子で調整していない比較で、調整済みなのは表4のハザード比だけです。表1で2群の背景に有意差はありませんでしたが、根管治療歯はアクセス窩洞のぶん窩洞が深く、ハザード比25.3には失活そのものと歯質の量の差が混ざっています。第三に、表3に載っている相対リスクの値は、同じ表の割合を単純に割った値と一致しない項目が多く(一致するのは修復物の破折くらい)、計算方法も書かれていません(例:二次う蝕は0.4%と6.3%で相対リスク13.1、考察では13.8)。この記事では、割合の数字を中心に紹介しました。第四に、エックス線写真は根管治療歯では全例、生活歯では必要なときだけ撮影しており、二次う蝕の見つけやすさが群で違った可能性があります(これは筆者の読み)。第五に、咬合ストレスは問診と視診による判定で、客観的な測定はしていないと著者ら自身が限界に挙げています。資金は大学の研究助成と記載されています(利益相反の申告欄はありません)。それでも、「咬頭を残せる根管治療歯のCRは、6〜13年の観察で約4分の3が機能していた。ただし壊れ方は重い」という数字は、CRを選ぶときに、成績と割れるリスクを患者さんへ説明する具体的な材料になります。

今日のひとこと

著者らの結論:この後ろ向き研究の範囲では、咬頭を残せる大きさの2級窩洞なら、根管治療した臼歯の直接法CRも6〜13年の経過で臨床的に許容できる成績だった。ただし成功率は生活歯(98.97%)より根管治療歯(76.8%)で明らかに低く、根管治療歯の失敗には垂直破折・咬頭破折が含まれた。調べた危険因子のうち、根管治療歯のCRの生存を下げたのはブラキシズムに関連する咬合ストレスだった。

Lempel E, Lovász BV, Bihari E, Krajczár K, Jeges S, Tóth Á, Szalma J. Long-term clinical evaluation of direct resin composite restorations in vital vs. endodontically treated posterior teeth — Retrospective study up to 13 years. Dent Mater. 2019;35(9):1308-1318. PMID: 31278018. DOI: 10.1016/j.dental.2019.06.002
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。