光重合型のガラス繊維強化コンポジット(FRC)2製品の棒状試験片を、手持ち照射器のみ/光重合炉を追加の2条件で固め、37℃の水に30日浸けて吸水量・曲げ強さ・曲げ弾性率を測り、別の試験片でレジンセメント(Panavia F)の剪断接着強さと繊維の中身を比べた実験研究(Lassila ほか 2005・Acta Odontologica Scandinavica)
接着ブリッジ、動揺歯の固定、技工所で作るブリッジ——ガラス繊維で補強したコンポジット(FRC)の使いどころは広がっています。ただ、製品ごとに樹脂の組成も繊維の本数も違うのに、同じ条件で比べた独立したデータは少ない、と2005年当時の著者らは指摘していました。フィンランドと日本の研究グループが、樹脂の性質が異なる2製品を実験室で並べて測りました。
①FRC、どの製品を選んでも同じ?
ガラス繊維で補強したコンポジット(FRC)は、技工所で作る単冠やブリッジのほか、チェアサイドでの動揺歯の固定、接着ブリッジ、ポストコア、矯正にまで使われています。あらかじめ樹脂をしみ込ませた繊維(プリプレグ)が出てきたことで、扱いやすくなりました。
ところが製品によって、しみ込ませる樹脂の中身が違います。架橋するジメタクリレートだけのものもあれば、架橋しない線状ポリマー(PMMA)を混ぜた半相互侵入網目(semi-IPN)のものもあります。著者らは、樹脂の組成は吸水、ひいては長期の強さや接着に効くはずなのに、材料を並べて測った独立データが足りない、と述べています。
そこで、当時発売されたばかりで情報の少なかったBR-100(UTMA系の高架橋樹脂)と、semi-IPN樹脂のeverStick C&B(試作版)を、同じ条件で比べました。
②棒状の試験片を2通りに重合し、水に30日
乾燥させてから37℃の水に30日浸け、1・3・7・14・21・30日目に重さを量って吸水量(wt%)を出した。30日後、同じ試験片で3点曲げ試験(支点間20 mm)を行い、曲げ強さと曲げ弾性率を測った(各群6本)。
接着は別の試験片で調べた。重合したFRCの表面を研削し、リン酸エッチング→クリアフィルSEボンドのプライマー+ポーセレンボンドアクチベーター→ボンド(5分なじませてから光照射)→Panavia Fを直径3.6 mmで盛って光照射。24時間後に5〜55℃の温度サイクル5,000回を加え、剪断接着強さを測った(各群15本)。結果はワイブル解析(63%の試験片が壊れる応力=特性強度)で示した。
断面をSEM/EDSで観察し、繊維の太さ・面積割合・成分を調べた。統計は二元配置分散分析(製品×重合条件)とTukey法。
③結果その一——曲げ強さで有意差が出たのは重合条件、製品では有意差なし
曲げ強さは、everStick C&Bが手持ち照射器のみで559 MPa、光重合炉を追加して796 MPa、BR-100が547 MPa・689 MPaでした。
二元配置分散分析では、重合条件の影響は有意(p<0.001)で、製品の影響は有意ではありません(p=0.221)でした。Tukey法でも、照射器のみの2群どうし、炉を追加した2群どうしは有意差なしに分類されています。平均ではeverStick C&Bがどちらの条件でもやや高めでしたが、著者らも結論で「わずかに高いが有意ではない」と書いています。
曲げ弾性率は、everStick C&Bが26.1・26.7 GPa、BR-100が24.2・25.5 GPaで、製品間の有意差はありませんでした(p=0.494)。
④結果その二——吸水量は、製品ではっきり分かれた
30日後の吸水量は、everStick C&Bが1.86%(照射器のみ)・1.94%(炉を追加)、BR-100が1.07%・1.17%でした。分散分析では製品の影響が有意(p<0.01)で、重合条件の影響は有意ではありませんでした。
どちらの材料も吸水の大半は最初の1週間で起き、everStick C&Bのほうが速く飽和に近づきました。ただし著者らは、この大きさの棒状試験片が完全に水で飽和するには少なくとも1か月かかると述べています。
⑤結果その三——接着強さは同等、繊維の中身は違った
温度サイクル後のPanavia Fの剪断接着強さ(ワイブル特性強度)は、everStick C&Bが21.9 MPa(照射器のみ)・20.1 MPa(炉を追加)、BR-100が23.1 MPa・23.7 MPaで、製品でも重合条件でも差は見られませんでした(ワイブル係数は2.16〜3.04)。
SEMでは、どちらも樹脂が繊維によくしみ込み、空隙は見つかりませんでした。一方で、繊維1本の太さはeverStick C&Bが20.2 μm、BR-100が9.8 μm。BR-100は繊維の多い部分と樹脂の多い部分に偏り、everStick C&Bは断面に均一に分布していました。画像から出した繊維の面積割合はeverStick C&B 59.2%、BR-100 46.3%です。焼いて残った無機成分の重量割合は66.0%と65.5%でほぼ同じでしたが、BR-100には樹脂側にシリカ成分が含まれていたため、著者らは実際の繊維の割合はeverStick C&Bのほうが高いとしています。繊維の成分(SiO₂・CaO・Al₂O₃が主)は両製品で似ていました。
⑥なぜこうなったのか——著者らの説明
吸水の差について著者らは、everStick C&Bの主成分bisGMAが水酸基(-OH)を2つ持つのに対し、BR-100のUTMAのウレタン基はそれより極性が低いことを挙げ、樹脂の組成の違いによる可能性があると述べています。
光重合炉で強くなった理由は、炉での追加重合によって重合度が上がったためと説明しています。ただし重合度そのものは本研究では測っておらず、根拠は以前の研究です。
接着について著者らは、当初「semi-IPN樹脂のeverStick C&Bは、接着材が架橋していないPMMA部分にしみ込む(相互拡散接着)ぶん有利なはず」と仮説を立てていましたが、確認できませんでした。理由として、Panavia F系の接着材がこの相互拡散を起こせなかった可能性と、研削した表面にはガラス繊維が多く露出しているため、樹脂の組成より表面のガラスの量と、リン酸エステル系モノマー(MDP)の働きが接着を左右した可能性を挙げています。そのうえで、歯面に繊維を広げて接着ウイングを作るような樹脂部分の多い使い方では、再び樹脂の組成が効いてくるかもしれないと述べています。
⑦明日の臨床へ
②炉を使わないチェアサイドの使い方に、この数字はそのまま当てはめられない。本研究の「照射器のみ」は、Mylarフィルムとガラス板で圧接した2×2 mmの棒を、型の2か所×両面から40秒ずつ照射した条件で、口の中で繊維を歯面に沿わせたときの重合や強さは調べていない。使ったeverStick C&Bも技工用の試作版である。
③吸水量には製品差があった。everStick C&Bは1.86〜1.94%、BR-100は1.07〜1.17%。ただ、著者らは粒子型のコンポジットの吸水量もこれらと同程度としており、この差が長期の強さや変色にどう効くかは、この研究では確かめていない。
④研削したFRC面へのPanavia Fの接着は、2製品で同等だった。著者らは、樹脂部分が多い接着ウイングのような使い方では結果が変わりうると述べている。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
37℃の水に30日浸けた棒状試験片の3点曲げ強さは、everStick C&Bが手持ち照射器のみで559 MPa・光重合炉を追加して796 MPa、BR-100が547 MPa・689 MPaで、二元配置分散分析では重合条件の影響が有意(p<0.001)、製品の影響は有意ではなかった(p=0.221)。曲げ弾性率(24.2〜26.7 GPa)にも製品間の有意差はなかった。吸水量は製品の影響が有意で、everStick C&Bが1.86〜1.94%、BR-100が1.07〜1.17%。温度サイクル後のPanavia Fの剪断接着強さ(ワイブル特性強度)は4群とも20.1〜23.7 MPaで、差は見られなかった。繊維はeverStick C&Bが太く(20.2 μm対9.8 μm)、断面の繊維の面積割合も高かった(59.2%対46.3%)。——ただし実験室の棒状試験片での結果で、実際のブリッジや固定の長期成績を見たものではない。


