今日の1本 — エビデンスを臨床に
奥歯のジルコニア、10年もつ?
「削り出し一体」と「築盛」を比べた初の10年データ
奥歯のジルコニアクラウン。10年後、どれくらい残っているのでしょう。
削り出し一体(モノリシック)と、ポーセレンを盛ったタイプ——長く付き合えるのはどっち?
福岡歯科大が10年分の症例で、初めて正面から比べました。
①なぜ気になる?──「欠ける」を避けたくて生まれた削り出し
かぶせ物の長期実績といえば、長らくメタルセラミックが標準でした。でも金属由来の色の出にくさや金属アレルギーの懸念がある。そこでメタルフリーのジルコニアが広がりました。
ところがジルコニアにポーセレンを盛るタイプ(PFZC)は、表面の陶材が「欠ける(チッピング)」弱点がある。これを避けるために、陶材を盛らずジルコニアを削り出して一体にしたタイプ(モノリシック=MZC)が登場しました。強くて割れにくい。理屈はそうですが、「本当に10年もつのか」の臨床データが乏しかったのです。
②今回調べたこと
福岡歯科大が、2011〜2021年に奥歯へ入れたジルコニアクラウンを後ろ向きに追跡。235名・255冠を、削り出し一体(MZC・116冠)と築盛(PFZC・139冠)に分けて、生存率・成功率を比べました。平均観察期間は約80か月(最長10年)。
③結果①:10年の「生存率」
まず生存率(=割れて作り直しになっていない=機能している)。10年で、削り出し一体が86.0%、築盛が71.0%。削り出しが上回りました。
PFZC(ポーセレン築盛)
④結果②:「成功率」も同じ傾向
もう一段きびしい成功率(=一度も外れず・欠けず、無傷で機能)でも同じ並び。10年で削り出し85.1%、築盛68.0%。築盛は陶材の大きな欠けが目立ちました。
PFZC(ポーセレン築盛)
⑤むしろ効いたのは「種類」より「場所」
面白いのはここ。壊れやすさに効いたのは、クラウンの種類(削り出し/築盛)ではなく”どの歯か”でした。
⑥明日の臨床へ
奥歯のジルコニアは、削り出し・築盛のどちらも平均10年は信頼できる選択肢。特に削り出し一体は陶材チッピングの心配がないぶん安定しています。
これは後ろ向き・非ランダム化の研究で、どちらの材料を選ぶかは術者判断=選択バイアスが入ります。脱落も10.9%。
そして「有意差なし」は「差がない」とイコールではない点に注意(症例数が増えれば差がはっきりするかもしれない)。”削り出し有利の傾向”として、続報を待ちたいところです。
今日のひとこと
奥歯のジルコニアは、削り出しも築盛も「10年使える」段階に来た。
数字は削り出し有利だが、言い切るには追試待ち。むしろ予後を分けるのは「どの歯に入れるか」——大臼歯・上顎・第二大臼歯の厚みに、いつもより一段の配慮を。
J Prosthet Dent. 2025;133:1475-1483. PMID: 39984403.
※本記事は論文の要点を歯科医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


