ペリオ|Phase4 メインテナンス
予防プログラムは、ずっと2〜3か月間隔で続けなければいけないのか。1991年、AxelssonとLindheは、カールスタッドの成人317名を15年追い、最初の6年は2〜3か月、その後の9年は年1〜2回に間隔を延ばしたうえで何が起きたかを報告しました。
①2〜3か月間隔を、ずっと続けるのか
予防プログラムの効果は、1970年代からの一連の研究で示されていました。Axelsson & Lindheは、2〜3か月ごとのプロフェッショナルケアとフッ化物応用によって、歯肉炎が消退しう蝕と歯周炎の進行が著しく抑えられることを、3年後・6年後に報告しています。
ただ現実には、その頻度を一生続けるのは患者にも医院にも重い。そこで6年目の再評価のあと、著者らは間隔を「個別の必要性に応じたもの」へ変える決断をしました。その後の9年間、参加者の約95%は年1〜2回しか来院していません。
この論文は、その状態で15年を走り切った317名に何が起きたかの報告です。
②375名を15年、途中で間隔を変える
1971〜72年に成人375名を登録し、ベースライン検査のあと全員にスケーリング・ルートプレーニングと通常のう蝕処置を行いました。年齢で3群に層別(20〜35歳=群1、36〜50歳=群2、51〜70歳=群3)。対照群180名も置かれています。
プログラムの中身は3つです。
- 自分で行う歯磨きの指導と実践(とくに歯間清掃を重視)
- スケーリングとPMTCを含む歯科的プロフィラキシス
- フッ化物の局所応用
間隔は、最初の2年が2か月ごと、続く4年が3か月ごと。6年目の再評価後、個別の必要性に応じた間隔へ切り替えました。結果、65%が年1回、30%が年2回、そして5%の「リスク被験者」だけが年3〜6回となります。リスク被験者の定義は、直前の6年間に1歯面以上で1mmを超えるアタッチメントロスを生じた、または直前の12か月に2か所以上のう蝕を生じた人——約15名です。
対照群は倫理上の理由から6年目で終了し、公的歯科サービスの予防プログラムへ移行しました。6年間の対照群では、う蝕が年2.3歯面・被験者あたり増え、アタッチメントは平均1.2mm(0.2mm/歯面/年)失われていました。
1987年の再検査に戻ったのは317名(84%)。脱落58名の内訳は、6年目で興味を失った8名、死亡10名、カールスタッド市外への転居44名で、研究と無関係な理由が中心です。
③15年で0.2本
15年間の正味の喪失は1人あたり平均0.2本。最も若い群で26.9本→26.8本、中間群で25.5本→25.3本、最年長群で19.3本→18.8本です。
317名中258名は1本も失わず、51名が1本、5名が2本、2名が3本、1名が4本を失いました。大臼歯の喪失が小臼歯・前歯より多く、34名が1歯以上の大臼歯を失っています。
原因の内訳が、この論文でいちばん語られる部分です。失われた71歯のうち64%にあたる48歯は歯根破折。しかもそのすべてが、1971〜72年のベースライン検査以前に根管治療を受け、キャストポストを装着されていた歯でした。う蝕の再発による喪失は2歯、根分岐部病変のあった大臼歯に歯周膿瘍が生じて抜歯されたのが6歯です。
歯周組織の指標はどれも良好でした。歯肉炎(プロービングで出血する部位)は1972年の20〜25%から1987年には2〜3%へ。プラーク陽性歯面は約60%から10〜20%へ。ポケット深さは、頬舌側で約1mm、隣接面で2mm。アタッチメントレベルは15年で平均0.3mmの獲得——隣接面で最も大きく、群1・2で0.5mm、群3で0.4mmでした。
CPITNで見ると、1972年には75〜78%の歯肉ユニットが治療を要していたのに対し、1987年には2%未満の歯面しかプラークコントロールの改善を必要とせず、縁下デブライドメントや外科を要する歯面はゼロでした。
④それでも全員が守られたわけではない
この論文が信頼されるのは、良い数字だけを出していないからです。
う蝕については、165名(50%超)が15年間で新たなう蝕を生じませんでした。群1では約80%、群2では55%、群3では30%がう蝕発生ゼロ。一方で34名は2歯面を超える新たなう蝕を生じ、2名(サンプルの0.6%)は15年で10か所を超えるう蝕を経験しています。
興味深いのは、どの年齢群でも二次う蝕(再発)が一次う蝕より多かったことです。一次う蝕が15年で0.1〜0.3歯面だったのに対し、二次う蝕は0.7〜0.9歯面。予防プログラムが効いた集団で残る問題は、新しい穴ではなく、修復物の周りだったということです。
アタッチメントも同じ構造です。全体では獲得しているのに、一部の歯面は1972〜87年のあいだに追加のアタッチメントロスを起こしています。1mm超を失った部位の頻度は、上顎で頬側2.7〜3.5%・隣接面0.7〜1.4%、下顎でも頬側が最多。頬側が最も多いことについて、著者らは疾患の進行というより清掃習慣に関係するのではないかと述べています。
そして著者らはこう締めます。「プラークコントロールとフッ化物の局所応用は、とくに疾患感受性の高い少数の被験者においては、う蝕と歯周病を排除するには十分でないかもしれない」。
⑤明日の臨床へ
第一に、リコール間隔は「一律」でなく「必要に応じて」でよい。最初の6年で口腔衛生の水準を作り込んだあと、95%は年1〜2回まで落として、それでも低い水準が9年間保たれました。著者らは「自分で行う清掃の質が、必要な処置の減少に決定的な影響を与えた」と書いています。ただし年3〜6回に残す5%を見極める仕組みは要る——本研究のリスク基準(6年で1mm超のアタッチメントロス、または12か月で2か所超のう蝕)は、そのまま使える具体性があります。
第二に、この集団で歯を失わせたのは歯周病ではなく歯根破折だった。71歯中48歯、しかもすべて既根管治療+キャストポストの歯。予防プログラムが歯周病とう蝕を抑え込むほど、失活歯の破折が相対的に前面に出てくるという構図です。メインテナンスの記録に、失活歯とポストの有無を残しておく理由になります。
第三に、二次う蝕を見に行く。一次う蝕0.1〜0.3歯面に対し二次う蝕0.7〜0.9歯面。修復物の縁は、予防が効いている患者でこそ主戦場になります。
今日のひとこと
1971〜72年にスウェーデン・カールスタッドで375名を登録し、プラークコントロールとフッ化物局所応用を柱とする予防プログラムを行い、317名(84%)が15年を完遂した縦断研究(最初の6年は2〜3か月ごと、6年目の再評価後に間隔を延ばし、以降9年は約95%が年1〜2回。65%が年1回、30%が年2回、5%の「リスク被験者」だけが年3〜6回)。15年間の喪失歯数は1人あたり平均0.2本。317名中258名は1本も失わず、51名が1本、5名が2本、2名が3本、1名が4本。失われた71歯のうち64%(48歯)は歯根破折が原因で、いずれも登録前に根管治療とキャストポストを受けた歯だった。歯周膿瘍で抜歯されたのは根分岐部病変のあった6歯のみ、う蝕は2歯。アタッチメントレベルは15年で平均0.3mmの「獲得」。歯肉炎は1972年の20〜25%から1987年には2〜3%へ、CPITNで治療を要する部位は75〜78%から2%未満へ。ただし165名(50%超)は新たなう蝕を生じなかった一方、2名(0.6%)は15年で10か所を超えるう蝕を経験している。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


