1問1答 論文 歯周病

フロスか歯間ブラシか、同じ人で3か月試した

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase4 メインテナンス

隣接面に何を使ってもらうか。フロスと歯間ブラシの比較は昔から結論が割れていました。1991年、Kigerらは同じ30名に、歯ブラシのみ・+フロス・+歯間ブラシを1か月ずつ順番に使わせ、同じ部位で比べています。

論文
A comparison of proximal plaque removal using floss and interdental brushes
著者
Kiger RD, Nylund K, Feller RP
掲載
Journal of Clinical Periodontology 1991;18(9):681-684
種類
3方向クロスオーバー試験(歯周治療後のメインテナンス患者30名・隣接面109部位・各1か月ずつ3か月・検者盲検)
PMID
1960236

結論が割れていた質問

「フロスと歯間ブラシ、どちらを勧めますか」——衛生士から聞かれる場面です。1990年頃までの文献を並べると、答えは見事に割れていました。

Gjermo & Flotraは、健康な24名では三角楊枝が最も有効だったが、鼓形空隙の開いた歯周リコール患者16名では歯間ブラシが優れていたと報告Wolffeは歯周患者35名の同様のクロスオーバー試験で、隣接面プラークスコアに差はなかったと結論Maurielloらもラバーチップ・フロス・歯間ブラシで差なし。一方Nayak & Wadeは、開いた鼓形空隙では歯間ブラシが優れると結論していました。

この食い違いを解きにいったのが本研究です。同じ患者に3つの方法を順番に試させる(クロスオーバー)という設計で、個人差という最大のノイズを消しにかかりました。

先に結論: 隣接面プラークスコアは、歯ブラシのみ2.32、+フロス1.71、+歯間ブラシ1.22歯間ブラシはフロスにも有意に優った(p<0.05)30名中23名が歯間ブラシで最良の成績ただし歯肉炎指数と頬舌側プラークには差がなかった

同じ人が、3つを1か月ずつ

対象は、ロマリンダ大学歯学部の大学院歯周病クリニックでメインテナンスに入っている成人30名(男性20・女性10)全身疾患・オーバーハング・隣接面う蝕を除外し、歯間ブラシが通る開いた鼓形空隙が複数あることを確認しています。

試験部位は「歯間ブラシが無理なく通るほど開いた鼓形空隙」に限定し、できるだけ複数の歯列区分から選択20名が4部位、9名が3部位、1名が2部位を提供し、計109隣接面となりました。

手順はこうです。評価 → プロフィー → 3つのうち1つの用具に無作為に割り付け → 詳細な口腔衛生指導 → 1か月使用 → 再評価。これを3回繰り返し、3か月で全員が3つすべてを経験します。

  • ①標準の歯ブラシのみ
  • ②歯ブラシ+ワックスなしデンタルフロス
  • ③歯ブラシ+歯間ブラシ

歯磨剤は全員同じものを支給評価は単一の検者が行い、その検者は各患者がどの群にいるかを試験期間を通じて知らされていません指標は、隣接面プラークにWolffe index、頬舌側プラークにTuresky変法Quigley-Hein index、炎症にGingival Index(試験部位に隣接する歯間乳頭のみ)軟組織の外傷と歯質の喪失も評価しています。

差がついたのは隣接面だけ

0 0.9 1.7 2.6 隣接面プラークスコア(Wolffe index) 1.9 2.3 1.7 1.2 ベースライン 歯ブラシのみ +フロス +歯間ブラシ スコアが低いほどプラークが少ない。+フロスは歯ブラシのみに対しp<0.01、+歯間ブラシは歯ブラシのみに対しp<0.001・フロスに対しp<0.05で有意。隣接面清掃をやめた「歯ブラシのみ」期にはベースラインより悪化している
隣接面プラークスコア。歯間ブラシがフロスにも有意に優った

隣接面プラークスコアは、ベースライン1.92±1.03、歯ブラシのみ2.32±0.69、+フロス1.71±0.85、+歯間ブラシ1.22±0.72+フロスは歯ブラシのみに対して有意(p<0.01)、+歯間ブラシは歯ブラシのみに対してp<0.001、フロスに対してもp<0.05で有意さらにベースラインに対してもp<0.01で有意でした。

ここで見落としたくないのが「歯ブラシのみ」期にベースラインより悪化している点です。著者らは、ベースラインのスコアには患者がそれまでの指導で行っていた隣接面清掃が反映されており、それを中断した歯ブラシのみの期間にスコアが目立って上がったのだと説明しています。隣接面清掃をやめると1か月で悪くなる——それ自体が使える所見です。

0 8.7名 17.3名 26名 最も良い成績が出た用具(30名の内訳・名) 23名 3名 4名 歯間ブラシ フロス どちらも同等 同じ患者が3つの用具をすべて試したうえでの内訳。30名中23名で歯間ブラシが最も良い隣接面プラーク減少を示した
同じ患者が3つを試したうえで、どの用具で最も良かったか

個人単位の内訳も示されています。30名中23名が歯間ブラシで最良の隣接面プラーク減少を示し、フロスが最良だったのは3名、どちらも同等だったのが4名クロスオーバーだからこそ出せる数字です。

一方で差が出なかった指標もあります。歯間乳頭の歯肉炎指数は、ベースライン0.31、歯ブラシのみ0.37、+フロス0.36、+歯間ブラシ0.32で有意差なし頬舌側プラークも0.66・0.64・0.62・0.51で有意差なし安全性については、どの用具でも歯質の摩耗や喪失は認められず、軟組織の外傷も孤立した部位に限られ、フロスや歯間ブラシの使用とは無関係でした。

なぜ歯間ブラシが勝ったのか

著者らは断定を避け、2つの可能性を挙げています。

ひとつは技術と手先の問題繰り返し指導を受けていても、患者にとってフロスは難しく、技術的な要求が高いのかもしれない。もうひとつはフロスは、開いた鼓形空隙の清掃には思われているほど有効ではないのかもしれないという可能性です。

試験後に「歯間ブラシのほうが使いやすく快適だった」と述べた患者がいたことにも触れ、それがより頻繁で効率的な使用につながった可能性を指摘しています。「これが動機づけによるものか、技術・器用さによるものかは不明である」——ここまでが著者らの言い切る範囲です。

また誠実なのは「どちらも完全には落とせていない」と明記している点です。フロス期の1.71も歯間ブラシ期の1.22も、隣接面からのプラークの不完全な除去を意味するWolffeが、歯間ブラシを1週間使った患者でも隣接面プラークの推定50%しか落とせていなかったと示したことと一致するとしています。

明日の臨床へ

第一に、鼓形空隙が開いている患者には歯間ブラシを第一選択にしてよい。この試験の対象は歯周治療を終えて鼓形空隙が開いた患者であり、まさに日々のメインテナンスで会う層です。30名中23名で歯間ブラシが勝ったという内訳は、説明の材料としても強い。

第二に、狭い部位には外挿しない試験部位は歯間ブラシが無理なく通る部位に限定されており、著者ら自身が「この選択が結果にバイアスを持ち込みうる」と認めています。歯間ブラシが入らない部位でどちらが優れるかは、この論文では答えていません。

第三に、「やめると1か月で戻る」を伝える隣接面清掃を中断した期間に、スコアはベースラインより悪化しました。習慣が途切れることの代償を、具体的な数字で示せます。

ここだけ、冷静に補助線。30名・各期1か月の小さな試験で、評価した指標のうち有意差が出たのは隣接面プラークだけ——歯肉炎指数には差がありませんでした。1か月では炎症の差が出るには短い可能性があります。また臨床評価の時刻や、患者が最後に清掃してからの時間が統制されていないため、著者らも「用具ごとの清掃能力を厳密に測ったものとは解釈できない」と書いています。そして本研究はOral-B社の支援を受けており、比較された歯間ブラシも同社製品です。それでも、同じ患者・同じ部位で3つを回し、検者を盲検化した設計は、当時割れていた文献の中では筋が通っています。

今日のひとこと

歯周治療を終えてメインテナンスに入っている30名(男性20・女性10)に、①歯ブラシのみ ②歯ブラシ+ワックスなしフロス ③歯ブラシ+歯間ブラシを、1か月ずつ順番に使わせたクロスオーバー試験試験部位は歯間ブラシが無理なく通る開いた鼓形空隙のみ・計109隣接面。各期の終わりに評価し、そのつどプロフィーをして次の用具へ)。隣接面プラークスコア(Wolffe index)は、ベースライン1.92±1.03、歯ブラシのみ2.32±0.69、+フロス1.71±0.85、+歯間ブラシ1.22±0.72歯間ブラシは歯ブラシのみ(p<0.001)にもフロス(p<0.05)にも有意に優った30名中23名が歯間ブラシで最も良い成績を出し、フロスが最良だったのは3名、同等が4名一方で歯肉炎指数(0.32対0.36)と頬舌側プラーク(0.51対0.62)には有意差がなかった歯質の摩耗・喪失はどの用具でも認められていない

出典:Kiger RD, Nylund K, Feller RP. A comparison of proximal plaque removal using floss and interdental brushes. J Clin Periodontol 1991;18(9):681-684. PMID: 1960236
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。