1問1答 論文 保存修復

ジルコニア円板の強度は、焼結時間の短縮でも熱処理の繰り返しでも変わらなかったが、「着色」では下がった——試験管内で3秒浸けただけで1132→885〜918 MPa(D4を除く4色)、しかも焼結収縮まで変わっていた

1問1答 論文 保存修復

イットリア部分安定化ジルコニアについて、焼結時間・着色・熱処理といった製作工程の処理が強度と表面硬さ・相変態に影響するか、また手動コピーミリングの個別アバットメントが既製品と同等の強度と適合をもつかを4本の研究で調べた博士論文(Hjerppe 2010・トゥルク大学)

ジルコニアは強い。だから製作工程の細かな違いは気にしなくていい——本当でしょうか。焼結時間を縮める、液に浸けて色をつける、陶材を焼き付けるために何度も炉に入れる。フィンランド・トゥルク大学の博士論文が、こうした「普段の工程」を1つずつ切り分けて測りました。多くは影響しなかった。ただ、はっきり強度を落とした処理がありました——着色と、引張側に焼き付けた薄い陶材層です。

論文
The Influence of Certain Processing Factors on the Durability of Yttrium Stabilized Zirconia Used as Dental Biomaterial
著者
Jenni Hjerppe(Department of Biomaterials Science, Institute of Dentistry, University of Turku/指導 Pekka Vallittu, Timo Närhi)
掲載
Annales Universitatis Turkuensis, Ser. D, Medica-Odontologica, Tom. 919. Turku, 2010(博士論文。構成研究Ⅰ〜Ⅳのうち Ⅰ=Dent Mater 2009;25:166-71、Ⅱ=Acta Odontol Scand 2008;66:262-7、Ⅲ=Silicon 2010 印刷中、Ⅳ=Int J Oral Maxillofac Implants 2010 印刷中)
種類
in vitro 実験研究4本をまとめた博士論文(材料はいずれも3 mol%イットリア部分安定化ジルコニア〔ICE Zirkon, Zirkonzahn〕のグリーンステージ〔半焼結〕ブロックをミリングしてから焼結。研究Ⅰ=焼結時間〔通常:3時間昇温+1500℃2時間/短縮:1時間40分+1時間〕×熱サイクル2万回の有無・各n=14・厚さ1.6 mm。研究Ⅱ=着色液5色〔A3・B1・C4・D2・D4〕×浸漬時間〔メーカー指示3秒/延長1分〕・各n=10〔対照n=9〕・厚さ0.8 mm。研究Ⅲ=熱処理の回数と薄いウォッシュ/グレーズ陶材層・厚さ1.2 mm。いずれもピストン・オン・スリーボール法の二軸曲げ強さ、ビッカース硬さ、SEM、X線回折。研究Ⅳ=手動コピーミリングの個別ジルコニアアバットメントと既製品〔Astra ZirDesign/Xive Cercon〕を45°方向の静的荷重で破壊)
PMID
なし(博士論文)。構成研究のPMID:Ⅰ=18632146、Ⅱ=18645687、Ⅳ=21365048(Int J Oral Maxillofac Implants 2011)。ⅢはPubMed未収載

「ジルコニアは強いから、工程の違いは気にしなくていい」のか

イットリア部分安定化ジルコニアは、補綴で最もよく使われるセラミック材料のひとつになりました。曲げ強さは800〜1500 MPaと報告され、「とにかく強い材料」という印象があります。

ただ、技工の現場では同じジルコニアでも工程はさまざまです。焼結時間を短縮するプログラムがある。半焼結の段階で着色液に浸けて色をつける。前装陶材を焼き付けるために何度も炉に入れる。そして既製のアバットメントではなく、手動のコピーミリングで個別アバットメントを作ることもある。

フィンランド・トゥルク大学のJenni Hjerppeは、こうした製作工程の処理が材料の性質を変えるのかどうかを、4本の研究に切り分けて調べ、博士論文にまとめました。

4つの工程を、別々の実験で測る

共通する材料: 3 mol%イットリア部分安定化ジルコニア(ICE Zirkon, Zirkonzahn)。グリーンステージ(半焼結)ブロックをミリングしてから焼結する方式で、焼結で約20〜25%収縮する。
研究Ⅰ(焼結時間)… 通常(3時間かけて1500℃・2時間保持)と短縮(1時間40分・1時間保持)の円板を、それぞれ半数は5℃/55℃の熱サイクル2万回にかけた(各n=14・厚さ1.6 mm)。
研究Ⅱ(着色)… VitaクラシックのA3・B1・C4・D2・D4の5色の着色液に、メーカー指示の3秒延長1分浸け、30分乾燥して焼結(各n=10、無着色の対照n=9・厚さ0.8 mm)。
研究Ⅲ(熱処理)… 熱処理の回数(1回・2回)と、10 μm未満の薄いウォッシュ/グレーズ陶材層を引張側または圧縮側に焼き付けた条件(厚さ1.2 mm)。
Ⅰ〜Ⅲはいずれもピストン・オン・スリーボール法の二軸曲げ強さ、ビッカース硬さ、SEM、X線回折(正方晶→単斜晶の相変態)で評価した。
研究Ⅳ(アバットメント)… 既製のAstra ZirDesign・Xive Cerconと、それを手本に手動コピーミリングした個別アバットメントを、45°方向の静的荷重で破壊し、SEMで適合を見た。

まず、変わらなかったもの——焼結時間と熱処理

研究Ⅰ。焼結時間の短縮も、熱サイクル2万回も、二軸曲げ強さに統計的な差を生じませんでした(p>0.05・各群おおむね1060〜1130 MPa)。ビッカース硬さも1478〜1532で群間差なし。短縮焼結のほうが結晶粒径はやや小さく(平均0.77〜0.83 μm 対 0.98〜1.05 μm)、差は有意ではありませんでした。

ただしX線回折では、熱サイクルと水中保管で表面の単斜晶が増えていました。強度が変わらなかったことから、相変態は表面にとどまったと考えられています。そして短縮焼結の試料のほうが、熱サイクル後の単斜晶の割合が低かった——粒が小さいほど相変態しにくい、という既知の関係と一致する所見です。

研究Ⅲ。熱処理を1回・2回と繰り返すと、二軸曲げ強さはわずかに上がったが有意差はなしでした。著者は、焼結後に削り出す方式では熱処理で強度が落ちるという他の報告を引きつつ、グリーンステージでミリングする方式ではその影響が見られなかったことが、この方式を支持すると書いています。

結果その二——着色は、3秒でも強度を下げた

0 433.3 866.7 1300 二軸曲げ強さ(MPa) 1132 1132 898 798 918 809 885 793 897 812 1007 934 無着色(対照) A3 B1 C4 D2 D4 3秒浸漬(メーカー指示) 1分浸漬(延長) 研究Ⅱ・円板試料(直径19 mm・厚さ0.8 mm)・各群n=10(対照n=9)。対照は無着色の単一群なので両系列に同じ値を置いた。標準偏差は対照162、3秒群81〜121、1分群84〜159。本文では「3秒着色の試料は対照より有意に弱く、1分に延ばすとさらに低下(p<0.05)」とされ、D4は着色群で最も強く「対照と統計的な差がなかった」とされているが、表6の有意差記号は対照(a)とD4 3秒(b)で異なり、原著内で記述が揃っていない
研究Ⅱの二軸曲げ強さ。無着色の対照(灰)に対し、3秒浸漬(濃い棒)でも1分浸漬(薄い棒)でも低下した

無着色の対照は1132(SD 162)MPa。これに対してメーカー指示どおり3秒浸けた群は、A3 898・B1 918・C4 885・D2 897 MPaで、本文は「3秒着色の試料は、無着色の対照より統計的に有意に弱かった」と書いています。浸漬を1分に延ばすとさらに低下し(本文ではp<0.05。ただし表6の記号では同じ色の3秒と1分に差が付いておらず、本文と表で記述が揃っていない)、A3 798・B1 809・C4 793・D2 812 MPaでした。

興味深いのはD4です。3秒で1007 MPaと着色群で最も強く、1分でも934 MPaで、他の色の3秒群と同じ水準にとどまりました。本文は「D4は対照と統計的な差がなかった」と書いていますが、表6に付された有意差の記号は対照(a)とD4 3秒(b)で異なっており、原著の中で記述が揃っていません。いずれにしても「D4だけは下がり方が小さかった」ことは確かです。

理由について著者は、EDX分析でD4の着色液にだけカルシウムが含まれていたことを挙げ、他の色の着色液は浸漬中に構造を膨潤させ、焼結時に気孔や密度低下を招いたのではないかと推測しています。ただし「結晶構造の変化はこの方法では確認できず、さらなる検討が必要」と明記しています。X線回折では、着色による相変態は見られませんでした

ビッカース硬さは1352〜1481で、A3とD4は他の着色群より有意に低い値でした(浸漬時間は影響せず)。

着色は、寸法まで変えていた

この論文でいちばん臨床に響くのは、強度よりこちらかもしれません。

強さが最も高かったD4と最も低かったC4で寸法変化を測ると、焼結収縮(直径)は無着色が19.8%、着色では19.4〜19.5%と、着色したほうが縮み方が小さく、差は有意でした(p<0.05)。直径にして平均0.08 mmの差です。着色液に浸けた直後は重量が15%増え、焼結後、無着色の対照は着色群より0.12 wt%多く重量が減りました——色素の粒子がジルコニアの結晶構造の中に残っていることを示しています。

著者は考察でこう書いています。「着色した構造物は無着色とは辺縁の精度・適合・セメント層の厚さが異なる。この収縮の差は、構造物が大きいほど大きくなる」。円板試料での差は80 μm。細菌の直径が平均2 μm未満であることを引き、適合の差は小さく保つべきだと述べています。

結果その三——薄い陶材1層が、引張側にあると強度を落とす

製作工程の処理は、ジルコニアの何を変えたか(グリーンステージでミリング後に焼結する方式)

強度は変わらなかった 研究Ⅰ 焼結時間の短縮(1時間40分+1時間) 研究Ⅰ 熱サイクル2万回(5℃/55℃) 研究Ⅲ 熱処理の繰り返し(1回・2回) 研究Ⅲ 薄い陶材層を圧縮側に置いた場合 研究Ⅳ 個別コピーミリングのアバットメント (既製品と同等の破壊荷重 412〜624 N) 熱サイクルでは表面の単斜晶が増えたが、強度には影響せず

変わった 研究Ⅱ 着色 → 二軸曲げ強さが低下 対照1132 MPa → 3秒で885〜918(D4は1007) 1分に延ばすと793〜812(D4は934) 研究Ⅱ 着色 → 焼結収縮が減少 無着色19.8% → 着色19.4〜19.5%(直径で平均0.08 mm) 研究Ⅲ 薄い陶材層を引張側に置いた場合 10 μm未満の層でも強度が有意に低下 研究Ⅳ 個別アバットメントの適合は既製品に及ばないことがある

著者の結論(要旨) ジルコニアは強い歯科修復材料であり、製作工程のいくつかの通常の処理は材料の性質に影響しない。 ただし着色は寸法変化を起こし、グリーンステージで作る構造物を着色する際には考慮が必要である。 個別アバットメントの辺縁適合は、既製品ほど満足できるものではないかもしれない。 研究Ⅰ〜Ⅲは円板、Ⅳはアバットメント形状。いずれも静的荷重の試験管内研究

4本の研究で「変わらなかったもの」と「変わったもの」

研究Ⅲの二軸曲げ強さは553.0〜1019.4 MPaの範囲でした。10 μm未満の薄いウォッシュ/グレーズ陶材を引張側に焼き付けると、強度が有意に低下しました。同じ層を圧縮側に置くと、対照と同じ水準でした。

著者の説明はこうです。焼結前の研削で表面に残った微小な傷に、溶けたウォッシュやグレーズが粘弾性の液体として入り込み、冷却で固まる際に熱膨張の違いから応力を抱え込む。それが割れの起点になりやすい——という推測です。X線回折でも、反対側にコーティングした熱処理試料の表面に小さな単斜晶のピークが見られました。SEMでは、薄い層にもかかわらず陶材層の剥離が観察されています。

研究Ⅳ。個別コピーミリングのアバットメントは、既製品と同等の最終破壊荷重を示しました(群1〜5で412〜624 N・有意差なし。短く体積の大きい改良型のみ1099 Nと有意に高い)。ただし適合は既製品ほど満足できるとは限らず(形を変えた2群で辺縁の隙間が有意に広い)、コピーミリングの一部では辺縁の隙間が22 μmまで広がったとされています。破壊様式はインプラントのデザインに依存し、アバットメントスクリューの曲がりも観察されました。

明日の臨床へ

①着色ジルコニアは、無着色より弱くなりうる。メーカー指示の3秒でも有意に低下し、浸漬を延ばすとさらに下がった。「濃く出したいから長めに浸ける」は、この材料の試験管内の結果では強度を削る操作になりうる。
②色によって下がり方が違う。この研究ではD4の低下が最も小さかった。技工所に使う着色液と浸漬時間を確認する意味はある。
③着色は焼結収縮を変える。無着色19.8%に対して19.4〜19.5%。ブリッジのように大きな構造物ほど差が大きくなる。適合の確認を省かない。
④前装やグレーズの位置に意識を向ける。薄い層でも、引張側にあると強度が落ちた。円板試験の結果なので実際の補綴物にそのまま当てはまるとは限らないが、引張がかかる面にどう陶材を置くかは技工所と話題にする価値がある(ここは筆者の推論)。
⑤焼結時間の短縮・熱処理の繰り返しは、この方式では強度を落とさなかった。ただしグリーンステージでミリングしてから焼結する方式での結果であり、焼結後に削り出す方式には当てはまらない可能性がある。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、これは4本の試験管内研究をまとめた博士論文です(構成研究ⅠとⅡはDent Mater・Acta Odontol Scandに掲載済み、ⅢとⅣは執筆時点で印刷中)。第二に、強度はすべて円板試料の静的な二軸曲げ試験で、著者自身が「クラウン形状の試料で繰り返し荷重をかければ臨床をよりよく再現でき、異なる結果が出たかもしれない」と書いています。静的荷重は疲労荷重より高い値が出やすいことも考察で触れられています。第三に、試料の厚さが研究ごとに0.8〜1.6 mmと異なり、著者は方法論上の欠点として認めています。第四に、材料は1社(Zirkonzahn)の1製品と、同社の着色液で、他社の材料や着色液にそのまま外挿はできません。なお謝辞には、Zirkonzahn・AstraTech・Dentsply Friadent から研究材料の一部の提供を受けたと記されています(研究費は財団などの助成)。第五に、D4の有意差については本文と表の記号が一致しておらず、読み手が判断を保留すべき点です。研究Ⅳではチタンではなくステンレス製のインプラントレプリカとアクリルレジンの試料台(骨の代わり)が使われ、骨の弾性は再現されていません。それでも著者の結論は穏当で、「ジルコニアは強い歯科修復材料であり、製作工程のいくつかの通常の処理は性質に影響しない。ただし着色による寸法変化は考慮する必要がある」——普段の工程のどこに注意を払えばよいかを、1つずつ切り分けて示した点で実用的な論文です。

今日のひとこと

焼結時間を縮めても、熱サイクル2万回をかけても、二軸曲げ強さは変わらなかった(研究Ⅰ・p>0.05)。熱処理を繰り返しても変わらなかった(研究Ⅲ)。強度をはっきり下げたのは着色だった。無着色の対照が1132(SD 162)MPaだったのに対し、メーカー指示どおり3秒浸けただけで、A3・B1・C4・D2は885〜918 MPaに低下し、3秒着色群は対照より有意に弱かった(本文)。浸漬を1分に延ばすとさらに下がり、793〜812 MPa。例外はD4で、3秒では1007 MPaと着色群で最も強く、本文は「対照と統計的な差がなかった」と書いている(ただし表6の有意差記号は対照と異なっており、原著内で記述が揃っていない)。着色は寸法も変えた。焼結収縮が無着色の19.8%から着色では19.4〜19.5%に減り(p<0.05)、直径で平均0.08 mmの差になった。一方で引張側に10 μm未満の薄いウォッシュ/グレーズ陶材を焼き付けただけで強度は有意に低下し、同じ層を圧縮側に置いた場合は対照と同等だった。個別コピーミリングのアバットメントは破壊荷重が群1〜5では412〜624 Nで既製品と有意差がなく(短く体積の大きい改良型は1099 Nと有意に高い)が、辺縁の隙間は形を変えた2群で既製品より有意に広く、適合は既製品ほど満足できるとは限らなかった。

Hjerppe J. The influence of certain processing factors on the durability of yttrium stabilized zirconia used as dental biomaterial. Doctoral thesis. Annales Universitatis Turkuensis, Ser. D, Tom. 919. Turku: University of Turku; 2010.
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。