NIPSA(non-incised papillae surgical approach)とMISTの比較
乳頭を切らない術式が出てきても、歯肉溝の中には刃が入ります。辺縁の組織は動かされ、術後に少し下がる。——では、辺縁にまったく触れずに骨欠損へ届く道はないのか。骨頂より根尖側の粘膜を一本だけ切る、という答えが出されました。
①乳頭を切らなくても、歯肉溝には刃が入っている
乳頭に触れない術式が出てきても、歯肉溝の中には刃が入ります。辺縁の組織は剥がされ、動かされ、術後にわずかに下がる。前歯部では、その「わずか」が問題になります。
では、辺縁にまったく触れずに骨欠損へ届く道はないのか。
②入口を、骨欠損より根尖側へ下ろす
Moreno Rodríguezらの答えは単純でした。骨皮質の上の粘膜に、水平または斜めの切開を1本だけ置く。
その位置は辺縁組織から離れ、欠損を画する骨頂の縁よりも根尖側です。切開より歯冠側の組織を全層で挙上し、術前の辺縁組織と乳頭の構造をそのまま保ったまま、下から欠損へ入ります。
縫合は二重の線で行います。乳頭の基部に内側水平マットレス、乳頭の歯冠側に内側垂直マットレス——閉鎖を2段階で担保する設計です。
③結果——付着は同等、退縮だけが違った
深い骨縁下欠損をもつ30名を後ろ向きに解析し、NIPSA 15名とMIST 15名を比べています。適応基準もプロトコルも同一で、違うのは軟組織の扱いだけです。
1年後、両群とも付着獲得とポケット減少に有意な改善が得られました(いずれもP<0.001)。つまり治る力は同等です。
差が出たのは軟組織でした。NIPSAでは歯間乳頭の先端の退縮が、MISTより有意に少なかった(P<0.001)。触らなければ下がらない——それが数字になりました。
もうひとつ。喫煙は両術式とも早期治癒を悪化させていました(P<0.05)。術式を変えても、この因子は消えません。
④明日の臨床へ
審美領域では、0.5mmの乳頭の退縮が結果を分けることがあります。付着の獲得が同等なら、「どちらが下がらないか」で術式を選ぶ理由が立ちます。
一方で、根尖側から入るということは視野が限られるということでもあります。欠損の形を術前に読み切れているか、器具が届くか——選ぶ前に確かめることが増えます。
今日のひとこと
骨頂より根尖側の粘膜を一本だけ切り、辺縁と乳頭には触れない。付着獲得もポケット減少もMISTと同等で、乳頭先端の退縮だけが有意に少なかった。


