1問1答 論文 エンド

XP-endo Shaper、作業長に届いてから15回で足りる?——下顎大臼歯の楕円形の遠心根管で25回に増やすと、器具が触れていない壁は4.13%→2.35%に減り、削る象牙質は2.95→3.54mm³に増えた(2021年・抜去歯のmicro-CT研究)

1問1答 論文 エンド

エンド|XP-endo Shaper(XPS)はメーカーの手順では、作業長(WL)に届いてから長いストロークを15回。これを25回に増やすと形成はどう変わるのか。下顎大臼歯の楕円形の遠心根管を、同じ根管で15回→25回と続けて形成し、micro-CTで比べた抜去歯の研究(Poly 2021・European Endodontic Journal)

XP-endo Shaper(XPS)は、体温で蛇のようにくねる形に変わり、楕円形の根管の壁に広く触れることをねらったファイルです。メーカーの手順は作業長に届いてから長いストロークを15回。では、あと10回足して25回にしたら何が変わるのか。著者らは下顎大臼歯の楕円形の遠心根管(抜去歯・計12根)を使い、同じ根管を15回→25回と続けて形成してmicro-CTで比べました。25回にすると、根管全体で器具が触れていない壁は4.13%→2.35%に減り(有意差は根管全体と歯冠側1/3。中央と根尖側は有意差なし)、削り取った象牙質は2.95→3.54mm³に増えました(全体と3部位すべてで有意)。比較対照のProTaper Next X3では、触れていない壁は16.85%でした。ただし抜去歯の実験室研究で、細菌の減り方や歯の破折しにくさ、治療成績は調べていません。

論文
Micro-Computed Tomographic Analysis of the Shaping Ability of XP-Endo Shaper in Oval-Shaped Distal Root Canals of Mandibular Molars
著者
Ane Poly, Wei-Ju Louis Tseng, Fernando Marques, Frank Carsten Setzer, Bekir Karabucak(ブラジル・米国)
掲載
European Endodontic Journal 2021;6:271-277. doi:10.14744/eej.2021.44153
種類
抜去歯を使った実験室研究(in vitro・micro-CT)。下顎大臼歯の遠心根(単根管・Vertucci I型・中等度の湾曲10〜20°・根尖から6mmで長径/短径が2を超える楕円形)133本から、形の似た12根を選び、XP-endo Shaper群とProTaper Next群にランダムに割り付け(各群の本数は本文に明記なし)。XPS群はメーカー推奨の15回(XPS15)で形成→撮影→同じ根管にさらに10回(計25回・XPS25)→再撮影。PTN群はX1→X2→X3で形成。37℃の温水に浸けて口の中の温度を再現。評価は削り取った象牙質の量と、器具が触れていない根管壁の割合(根管全体と歯冠側・中央・根尖側の各1/3)。XPS15とXPS25は対応のあるt検定、XPSとPTNは対応のないt検定(有意水準5%)
PMID
34967337

①XP-endo Shaper、作業長に届いてから何回動かしていますか?

XP-endo Shaper(XPS)を作業長(WL)まで進めたら、長いストロークで上下に動かす。メーカーの手順では、その回数は15回です。では、そこで止めずにあと10回足したら、根管の形成はどう変わるのでしょうか。

この研究は、下顎大臼歯の楕円形の遠心根管を使い、同じ根管を15回→25回と続けて形成して、micro-CTで比べました。

結論を先に言います。25回にすると、根管全体で器具が触れていない壁は4.13%→2.35%に減りました。その代わり、削り取った象牙質は2.95→3.54mm³に増えています。つまり「よく触れる」と「歯質が減る」が一緒に動いた、という結果です。

②なぜ楕円形の根管が問題になるのか

根管の多くは、断面が丸ではなく楕円形です。ところが一般的なNiTiファイルは根管を丸く削るので、元の断面の形に沿いません。

・楕円の長いほうは削り残しやすい(器具が触れない壁が残る)
・楕円の短いほうは削りすぎやすい(不要な歯質を失う)
・緒言で引用されている過去の研究では、楕円形の根管を丸いファイルで25/.06まで形成しても、根管壁の80%もの面積が触れられないまま残ったと報告されている

器具で根管を形成する目的は2つあります。洗浄液が届くように根管を広げることと、感染した象牙質の層やバイオフィルムを直接削り取ることです。触れていない壁が多いと、この2つめが弱くなります。

そこで登場したのがXPSです。先端径27・テーパー.01の細いファイルですが、熱処理されたNiTiで、体温(約35℃)になると蛇のようにくねる形に変わります。回転しながら根管の断面に合わせて広がったり縮んだりして、楕円形の根管の壁に広く触れることをねらった設計です。

ただ、メーカーの15回に回数を足すと形成がどう変わるかは、楕円形の根管ではまだ調べられていませんでした。

③今回の一手:同じ根管で15回→25回と続けて撮る

対象=下顎大臼歯の遠心根(抜去歯)。単根管(Vertucci I型)・中等度の湾曲(10〜20°)・根尖から6mmの位置で長径/短径が2を超える楕円形のもの。133本から形の似た12根を選び、XPS群とProTaper Next(PTN)群にランダムに割り付け
・XPS群:WLに届くまで最大5回(振幅5〜7mm)→ WLで長いストローク15回(振幅7〜9mm)=XPS15。ここで撮影し、同じ根管にさらに10回足して計25回=XPS25。もう一度撮影
・PTN群(比較対照):X1(17/.04v)→X2(25/.06v)→X3(30/.07v)=PTNX3
・根を37℃の温水に浸けて、口の中の温度を再現。XPSは900rpm・1Ncm
・評価:形成前後のmicro-CT像を重ね合わせ、削り取った象牙質の量と、器具が触れていない根管壁の割合を、根管全体と歯冠側・中央・根尖側の各1/3で計算

ポイントは、XPS15とXPS25が同じ根管だということです。根管の形の違いに左右されず、「追加の10回」の効果だけを取り出せる設計になっています。

④結果①:触れていない壁は4.13%→2.35%に

0 6% 12% 18% 根管壁のうち器具が触れていない面積(%) 4.13% 2.35% 16.85% XPS 15回(メーカー推奨) XPS 25回(+10回) ProTaper Next X3 原著Table 2(根管全体の平均値)。15回→25回は同じ根管での比較で有意差あり(P<0.05)
器具が触れていない根管壁の割合(根管全体・原著Table 2)。XPS 15回と25回は同じ根管での比較

根管全体で、器具が触れていない壁はXPS15で4.13%、XPS25で2.35%。この差は有意でした(P<0.05)。比較対照のPTNX3は16.85%で、XPSの2群より有意に多く残っていました。

部位別に見ると、差が出た場所は限られます。

・歯冠側1/3:XPS15 3.12% → XPS25 1.19%(有意差あり)/PTNX3 13.66%
・中央1/3:XPS15 3.68% → XPS25 1.95%(XPS同士は有意差なし)/PTNX3 19.21%
・根尖側1/3:XPS15 5.74% → XPS25 5.10%(有意差なし)/PTNX3 22.52%(XPSとPTNの間も有意差なし)

つまり、追加の10回が効いたのは根管全体と歯冠側1/3。根尖側1/3では、15回と25回の間に有意差はありませんでした。著者らは、ProTaper Nextと比べたとき、XPSの強みが断面がより楕円形になりやすい歯冠側・中央で出ていると考察しています。

⑤結果②:削る象牙質は2.95→3.54mm³に増えた

0 1.5 3 4.5 削り取った象牙質の量(mm³) 2.95 3.54 1.56 XPS 15回(メーカー推奨) XPS 25回(+10回) ProTaper Next X3 原著Table 2(根管全体の平均値)。15回→25回は全体と3部位すべてで有意に増加(P<0.05)
削り取った象牙質の量(根管全体・原著Table 2)

削り取った象牙質は、根管全体でXPS15が2.95mm³、XPS25が3.54mm³。追加の10回で有意に増え、歯冠側・中央・根尖側の3部位すべてで増えていました(P<0.05)。

PTNX3は1.56mm³でしたが、XPS25とPTNX3の有意差は歯冠側1/3だけでした。

形成にかかった時間(洗浄の時間を除く)は、XPS15が90秒、XPS25が116秒、PTNX3が112秒。XPS15はXPS25・PTNX3より有意に短い結果でした。

⑥なぜ回数で変わるのか

XPSは、くねった形のまま回転し、楕円の長いほうへ伸びるように、また広い場所では先端が偏心して揺れるように動くことで、丸いファイルが届かない壁に触れていく、と著者らは説明しています。緒言では、根管の中で動かす時間が長いほど、元の根管の形に合わせて形成の太さやテーパーが大きくなりうることも紹介されています。

回数を足せば、それだけ壁に触れる機会が増え、同時に削る量も増える。今回の結果は、この両面がそろって出たものと読めます。

なお、同じXPSでWLでの作動時間を45秒延ばすと形成の効率が上がったという別の研究(丸い根管が対象)があり、著者らは今回、時間ではなくメーカーの説明書と同じ「回数」で条件をそろえた、と説明しています。

⑦明日の臨床へ

・楕円形になりやすい根管(今回は下顎大臼歯の遠心根)では、XPSのストロークの回数が形成の出来を左右しうる。回数を足すかどうかを考える材料になる。
・ただし回数を増やすと、削る象牙質も増える。著者らは、残った歯質が多いほど破折に強いという関係を挙げ、回数を増やして機械的な清掃を取るか、少ない回数で歯質を残すかは慎重に考えるべきとしている。
・触れていない壁の割合は、根尖側1/3では15回と25回の間に有意差がなかった(一方、削る象牙質の量は根尖側でも有意に増えた:0.51→0.57mm³)。触れる壁が増える効果が有意に出たのは、根管全体と歯冠側1/3。
・これは抜去歯の実験室研究で、「25回にすると治りがよくなる」「細菌が減る」を示したものではない。

「何回にするか」を一律に決める研究ではなく、回数を足すと何が得られて何を払うかを数字で見せた研究、という距離感で使うのがよさそうです。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは抜去歯12根の実験室研究(micro-CT)です。評価したのは「器具が触れた面積」と「削った量」で、著者ら自身も、細菌の減り方や、歯の破折しにくさへの影響は今後の研究が必要としています。XPS25は同じ根管にXPS15の続きとして形成したもので、PTNとの比較は別の根管どうしの比較です。
ここからは筆者の読みです。12根をどう2群に分けたか(各群の本数)は本文に明記がありません。また、micro-CTの解像度が本文では21µm、図1では10.5µmと書かれていること、結果の文章に「根尖側1/3だけで群間差があった(P>0.05)」という、表(根尖側は群間差の印なし)と食い違う一文があることなど、本文の記載にいくつか揺れがあります。この記事では表の数字を優先しました。それでも、同じ根管で「追加の10回」の効果と代償を分けて示した点は、XPSを使う先生が回数を考える材料になります。

今日のひとこと

XP-endo Shaperを作業長に届いてから15回→25回に増やすと、楕円形の遠心根管で器具が触れていない壁は4.13%→2.35%に減りました(有意差は根管全体と歯冠側1/3)。その代わり削り取る象牙質は2.95→3.54mm³に増え、形成時間は90秒→116秒に延びました。著者らは、回数を増やして機械的な清掃を取るか、少ない回数で歯質を残すかは慎重に考えるべきとしています。抜去歯の実験室研究で、細菌の減り方・破折しにくさ・治療成績は調べていません。持ち帰るのは「追加の10回には、触れる壁が増える効果と、歯質が減る代償の両方がある」という見方です。

Poly A, Tseng WJL, Marques F, Setzer FC, Karabucak B. Micro-computed tomographic analysis of the shaping ability of XP-endo Shaper in oval-shaped distal root canals of mandibular molars. Eur Endod J. 2021;6:271-277. doi:10.14744/eej.2021.44153. PMID: 34967337
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。