1問1答 論文 虫歯

間食の回数が0回か4回以上かで、5歳児のう蝕は3倍ひらいていた

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|う蝕の病因(間食の頻度)

「甘いものを減らしましょう」——伝わっている実感はあるでしょうか。1960年、テネシー州の公衆衛生歯科チームは、就学前健診に来た783人の5〜6歳児に、前日の間食を親から聞き取りました。狙いは「量」ではなく「回数」だけを数えること。結果、間食0回の子はdef 3.3本、4回以上の子は9.8本。そしてこの論文の主題は、実はその数字をどう患者さんに伝えるかにあります。

論文
Between-meal eating habits and dental caries experience in preschool children
著者
Weiss RL, Trithart AH
掲載
American Journal of Public Health 1960;50(8):1097-1104
種類
横断研究。24時間思い出し法による食事調査と、その場での歯科診査を組み合わせた
対象
米国テネシー州西部13郡の就学前健診に来た62〜78か月(平均69.4か月)の子ども783人

「甘いものを減らして」は、伝わっているか

食生活の指導で、いちばん多く口にする言葉かもしれません。「甘いものを控えましょう」。

ただ、これが患者さんの生活のどこに着地しているのか、確かめたことはあるでしょうか。当時のアメリカでも、州の歯科部門の75%が「精製炭水化物を減らす」活動を掲げていました。それでも、その内容をどう具体化するかについての指針は、文献にほとんどなかったのです。

1956年春、テネシー州公衆衛生局のWeissとTrithartは、この問題に取り組みました(報告は1960年)。狙いは、誰でも数えられて、そのまま指導に使える指標を作ること。選んだのは「間食の回数」でした。

先に結論: 783人の5〜6歳児で、前日の間食が0回だった子はdef 3.3本、4回以上だった子は9.8本。回数が増えるにつれて、きれいに階段状に増えていました。

なぜ「食事」を数えないのか

設計で面白いのが、食事の回数を最初から数えていないことです。

理由はこう書かれています。この国のほとんどの人は1日3食で、その各回に精製炭水化物がかなりの量含まれる可能性が非常に高い。だから「1日3回の曝露」は定数とみなし、変わるのは食間だけだと考えた——だから食間の回数だけを数えた、と。

方法はきわめて簡素です。

  • 子どもが食べうる間食を網羅した品目リストを用意する(約半分は菓子類、残りはグラハムクラッカー・ペイストリー・パンと甘いスプレッド・ピーナッツバターなど)
  • 親に、前日にどれを何回食べたかを聞く(24時間思い出し法
  • う蝕はdef(う蝕・抜去適応・充填の乳歯)で表し、抜去された乳臼歯を加算する

24時間思い出し法を選んだ根拠も示されています。「対象者が多ければ、集団の食事摂取の特徴づけには1日分の記録で足りる」というChalmersらの報告です。

対象は西テネシー13郡の就学前健診に来た783人。年齢は62〜78か月(平均69.4か月=およそ5歳9か月)、72%が農村部、52%が男児でした。

回数が増えると、階段状に増えた

0 4 8 12 1人あたりのdef歯数(乳歯) 3.3 4.8 5.7 8.5 9.8 0回 1回 2回 3回 4回以上 横軸は前日の間食(砂糖が多い、または粘着性の高い品目)の回数。defには抜去された乳臼歯を含む
前日の間食の回数別に見た、1人あたりのdef歯数

まず集団全体の平均は、間食1.75回/日、def 5.88本でした。

ここで著者らは内部チェックを仕掛けています。男児・女児・農村・都市というサブグループで、間食の回数がほぼ同じなら、defもほぼ同じになるはずだと。実際そうなりました(男児1.77回/5.99本、女児1.73回/5.70本、農村1.71回/5.95本、都市1.87回/5.74本)。回数とdefが連動して動いているという最初の手がかりです。

そのうえで、回数を細かく分けて見ます(原著の図2では0回・1回・2回・3回・4回以上の5群に分けています)。

  • 0回:def 3.3本(4回以上の9.8本と比べると、およそ3倍の開きです。この比は本記事で計算しました)
  • 1回:4.8本
  • 2回:5.7本
  • 3回:8.5本
  • 4回以上:def 9.8

著者ら自身、「この方法はここまで細かい関係を示すほどの感度はないだろう」と予想していたと書いています。ところが実際には、「直接的かつ一貫した、偶然によるものではない関係」が現れました。

「う蝕ゼロの子」と「12本超の子」で見ると、もっとはっきりする

0 15% 30% 45% その頻度群に占める割合(%) 41.9% 5.4% 23.4% 5.5% 16.1% 5.7% 7.7% 26% 0回(129人) 1回(235人) 2回(211人) 3回以上(208人) 各組の左=う蝕のない子どもの割合、右=def 12本超の子どもの割合
頻度群ごとの、う蝕のない子どもとdef 12本超の子どもの割合

平均値だけでなく分布で見ると、絵はさらに鮮明になります。※こちらは原著の表3に合わせて、3回と4回以上をまとめた4群です(前の図とは区分が違います)。

  • う蝕のない子ども(def 0本)の割合:0回群で41.9% → 1回23.4% → 2回16.1% → 3回以上で7.7%
  • def 12本超の割合:0回群で5.4% → 1回5.5% → 2回5.7% → 3回以上で26.0%

とくに「12本超」の割合が、2回群まではほぼ横ばい(5%台)なのに、3回以上で一気に26%へ跳ねるのが目を引きます。

子どもたちは、何を食べていたか

もうひとつ、この論文が丁寧なのは実際の品目を数えていることです。前日に食べた子どもの割合で、多い順に。

  • ガム:35.5%(およそ3人に1人)
  • キャンディ:32.5%
  • 菓子類(クッキー・パイ・ケーキ・グラハムクラッカー):26.3%
  • 清涼飲料:26.1%
  • アイスクリーム:19.2%
  • パン・クラッカー類(甘いスプレッドやピーナッツバターとの組み合わせ):15.1%

上位5品目のうち4つは市販の菓子で、家庭で作られることの多い菓子類(3位)だけが例外でした(原著は商業菓子4種を先に挙げ、その次に菓子類を置いています)。品目の入手しやすさはどのサブグループでもほぼ同じで、著者らは「実質的な差はない」と書いています。とはいえ細かく見ると、男女差は最大で清涼飲料の6ポイント(男児が多い)都市農村差は清涼飲料で7ポイント、菓子類で11ポイント、いずれも都市の子どものほうが多く食べていました。

この論文のいちばんの主張は「伝え方」だった

考察を読むと、著者らの狙いがはっきりします。

彼らが批判するのは、「甘いものをやめましょう」「砂糖を減らしましょう」「果物やポップコーン、ナッツに置き換えましょう」といった一般論です。こう書いています——「こうした一般論は、公衆にとって理解しにくく、日々の生活を通じて実行しにくい。教える側にとっても、学ぶ側にとっても、意味を失ってきていると考える理由がある」

著者らの提案: 「間食に選ばれる品目は、そもそも砂糖が多いか粘着性が高いものが大半なのだから、品目の種類を細かく気にするプログラムより、単純に回数を減らすことに絞ったプログラムのほうが、実りが大きいかもしれない」。数えられる指標があれば、個人ごとにリスクを明示でき、行動の目標が立てられる——それが著者らの主張です。

明日の臨床へ

  • 「何を食べているか」より「1日に何回か」を聞く。数えられる指標のほうが、患者さんの行動に翻訳しやすい
  • 「3回」がひとつの目安になる。この研究では、def 12本超の割合が2回群までは5%台で、3回以上で26%へ跳ねた
  • ガム・キャンディ・清涼飲料は上位常連。品目を挙げて聞くと、思い出してもらいやすい
  • 一般論をやめて、数字で返す。「甘いものを控えて」ではなく「間食を1日◯回までにしましょう」と言えるかどうか
  • そのうえで、回数は保護者の生活リズムに規定される。数えたあとに一緒に組み直す時間が要る

ここだけ、冷静に補助線

読むときの注意: これは横断研究です。間食の回数は調査の前日1日分を親の記憶から聞き取ったもので、defは過去に積み上がったう蝕経験。時間の向きが揃っていません。「前日の1日」が、その子の何年かの食習慣を代表しているという前提に立っています。著者ら自身、う蝕の発生(incidence)を使う選択肢もありえたと述べたうえで、有病(prevalence)のほうを選んでいます。加えて、調査票にはフッ化物添加水の欄があるのに、解析では扱われていません。1956年の米国南部で、フッ化物の曝露が集団内で均一だったとは考えにくく、交絡の可能性が残ります。社会経済的な背景も同様です。それでも、783人という規模で、頻度が上がるほどdefが階段状に増えるという所見は明快で、その後の食事指導の議論の出発点のひとつになりました。そして何より、この論文が「基礎研究の知見は、患者に翻訳できなければ公衆衛生的には価値が乏しい」と言い切っているところは、いま読んでも刺さります。

今日のひとこと

間食の回数とう蝕経験の関係を、就学前児783人で調べた横断研究。前日に食べた間食を親に聞き取り(24時間思い出し法)、砂糖が多いか粘着性の高い品目の回数を数え、乳歯のdef(抜去された乳臼歯を含む)と突き合わせた。集団全体の平均は間食1.75回/日、def 5.88本で、男女・都市/農村のどのサブグループでもほぼ同じだった。回数別に見ると関係は明快で、0回で3.3本、1回で4.8本、2回で5.7本、3回で8.5本、4回以上で9.8本——著者らは「直接的かつ一貫した、偶然によるものではない関係」と表現している。分布で見ても、う蝕のない子どもの割合は0回群で41.9%、3回以上群では7.7%まで下がり、逆にdef 12本超の割合は5.4%から26.0%へ跳ね上がる。人気の間食は多い順にガム35.5%・キャンディ32.5%・菓子類26.3%・清涼飲料26.1%・アイスクリーム19.2%。ここから著者らは、「品目の種類を細かく気にするより、回数を減らすことに絞ったほうが、公衆衛生プログラムとしては実りが大きいかもしれない」と述べている。ただしこれは横断研究であり、間食の回数は前日1日分の親の記憶に頼っている。フッ化物曝露も調査票にはあるが、解析では扱われていない。

出典:Weiss RL, Trithart AH. Between-meal eating habits and dental caries experience in preschool children. Am J Public Health 1960;50(8):1097-1104. PMID: 13843752
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。