1問1答 論文 虫歯

グラスアイオノマーにボンディングを足したら、製品の差が消えた——弱いほうが大きく伸びた

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|レジン強化型グラスアイオノマー・象牙質接着・前処理

レジン強化型グラスアイオノマー(RmGIC)を象牙質に着けるとき、各社の指示どおりに前処理して充填する。それが標準です。では、そこにボンディング材をひと手間足したらどうなるのか。東京医科歯科大学のグループがウシ象牙質96面で測ったところ、指示どおりの群ではフジII LCが13.4 MPa、ビトレマーが7.4 MPaと差がありました。ところがボンディング材を挟むと、ビトレマーは12.0〜17.3 MPaまで伸び、2製品の統計学的な差が消えました。

論文
Adhesion of resin-modified glass ionomer cements using resin bonding systems
著者
P.N.R. Pereira, T. Yamada, S. Inokoshi, M.F. Burrow, H. Sano, J. Tagami(東京医科歯科大学歯学部 齲蝕制御学分野/メルボルン大学/北海道大学)
掲載
Journal of Dentistry 1998;26(5-6):479-485
種類
in vitro 研究(ウシ象牙質96面・せん断接着試験+SEM観察)
PMID
9699441

グラスアイオノマーに、ボンディングは要りますか

深い窩洞の裏層にレジン強化型グラスアイオノマー(RmGIC)を使う。付属のプライマーやポリアクリル酸で前処理して、盛って、光を当てる。各社の指示どおり——それで完結しているはずです。

ただ、RmGICには弱点があります。硬化時の収縮です。光照射で初期硬化は速いものの、化学反応は24時間続き、その間におよそ3%の体積収縮が起きる。この応力が、歯と修復物の界面で接着の破綻を招きうると考えられてきました(著者らは、この内部応力が後の吸水によってある程度は緩和されうる、とも併記しています)。

そこで東京医科歯科大学のグループが試したのが、RmGICと象牙質のあいだにボンディング材を挟むという一手でした。

先に結論: 指示どおりの群ではフジII LC 13.4 MPa 対 ビトレマー 7.4 MPaと差があった。ところがボンディング材を挟むと2製品の差が消えた。伸びたのは弱いほうで、ビトレマーは最大17.3 MPaまで上がった。

何をどう比べたか

  • 被着体:ウシ象牙質の平坦面96面。1000番の耐水研磨紙で仕上げた面
  • 材料:RmGIC 2種(フジII LC・ビトレマー)× 前処理4条件=8群、各12試料
  • 前処理:コントロール=各社の指示どおり(フジII LCは10%ポリアクリル酸、ビトレマーは専用プライマー)。これに対しクリアフィル フォトボンド/ライナーボンド/ライナーボンドIIの3種を介した群
  • 条件:37℃の水道水に24時間保管後、万能試験機でせん断接着試験(クロスヘッド速度1mm/分)
  • 観察:ヒト第三大臼歯の象牙質ディスク(600番研磨)で界面をSEM観察。アルゴンイオンビームエッチングと、リン酸+次亜塩素酸処理でハイブリッド層とレジンタグを描出

比べているのは「材料の指示どおり」対「そこにボンディング材を追加」です。手間はひと工程増えます。

差が消えた

0 7.3 14.7 22 せん断接着強さ (MPa) 13.4 7.4 14.5 12 15 12.6 17.3 17.3 コントロール(各社の指示どおり) Photo Bond Liner Bond Liner Bond II 濃い棒=フジII LC、淡い棒=ビトレマー。各群12試料・ウシ象牙質・24時間後。標準偏差は順に フジII LCが1.6/2.6/2.9/6.3、ビトレマーが2.6/2.0/1.8/4.9
24時間後のせん断接着強さ。コントロールで開いていた2製品の差が、ボンディング材を挟むと縮まる

コントロール群では、フジII LC 13.4 MPaに対しビトレマー 7.4 MPa。ほぼ2倍近い開きで、統計学的にも有意でした。

ところがどのボンディング材を使っても、2製品のあいだの有意差は消えました(P>0.05)。そしてライナーボンドIIでは、両者とも17.3 MPaで完全に並びます。

ボンディング材どうしを比べると、フォトボンドとライナーボンドは同等(P>0.05)で、ライナーボンドIIだけが有意に高い(P<0.001)という順番でした。

伸びたのは、弱いほうだった

0 4 8 12 コントロールからの増分 (MPa) 1.1 4.6 1.6 5.2 3.9 9.9 Photo Bond Liner Bond Liner Bond II 表2の平均値から計算した差(原著に直接は載っていない導出値)。括弧内のP値は増分そのものの検定ではなく、各群と対照群との比較の結果。フジII LCではフォトボンドとライナーボンドが対照と有意差なし(P>0.05)、ビトレマーは3剤とも対照より有意に高い(P<0.005/P<0.01/P<0.001)
コントロールからの増分。ビトレマーは3剤すべてで有意に上がり、フジII LCはライナーボンドIIでのみ上がった

増分で見ると構図がはっきりします。ビトレマーは7.4 MPaから、フォトボンドで12.0(P<0.005)、ライナーボンドで12.6(P<0.01)、ライナーボンドIIで17.3(P<0.001)へ。3剤すべて、対照との比較で有意に高くなりました。

いっぽうフジII LCは13.4 MPaから、フォトボンド14.5・ライナーボンド15.0で、対照と有意には変わりません(P>0.05)。ライナーボンドIIの17.3で上がりましたが、著者らは「その差はフジII LCでは小さかった」と書いています。

著者らの言い方を借りれば、ビトレマーのほうがボンディング材の影響を受けやすい。もともと象牙質への接着が弱い材料ほど、外から足した仕組みが効いた、ということです。二元配置分散分析では接着システムとRmGICの交互作用は有意ではありませんでした。

界面で何が起きていたか

SEM観察では、ボンディング材が象牙質側にハイブリッド層とレジンタグを作っている構造が見えました。

フォトボンドは下の象牙質を強く脱灰し、4〜5μmの厚いハイブリッド層を作っていました。興味深いことに、フォトボンドの試料ではRmGICとハイブリッド層のあいだにボンディングレジンの層が見えません。それでも両者の相互作用は良好で、レジンタグも形成されていました。ライナーボンドIIでは、象牙細管に入る長いレジンタグと薄いハイブリッド層がはっきり観察されています。

目を引くのは、RmGICの粒子がレジンタグの中には見られなかったことです。著者らはここから「接着レジンを介した場合、RmGICが象牙質接着に及ぼす影響はほとんど認められなかった」と書いています。接着の主役がボンディング材のほうへ移る——製品差が消えたことと、方向としては噛み合う所見です。

ただし著者らは「RmGICはHEMAなどの樹脂成分を含むので、ボンディングレジンと化学的に結合できた」とも書いており、RmGICが単に載っているだけだとは述べていません。そして「接着強さの上昇に何が寄与したのかを明らかにするための研究を現在進めている」と結んでいます。機序はこの論文の時点では未確定だということです。

乾燥と高真空にさらしても界面に剥離は生じませんでした。破断様式は全材料が「材料の凝集破壊とボンディングレジン/象牙質間の接着破壊の混合」と分類され、ただしライナーボンドIIの3試料では象牙質内の凝集破壊——接着界面より歯のほうが先に壊れた例が出ています。

明日の臨床へ

  • 裏層のRmGICが「弱いほう」の製品なら、一手間が効く可能性がある。この実験ではビトレマーが7.4から最大17.3まで伸びました。ただし数字はウシ象牙質・24時間・平坦面のものです。
  • すでに強い製品では、増分は小さい。フジII LCはフォトボンド・ライナーボンドを足しても有意には変わりませんでした。ひと工程増やすコストに見合うかどうかは、使っている材料によって変わります。
  • この試験の中では、ボンディング材の世代が効いていた。同じ「足す」でも、ライナーボンドIIだけが他の2剤より有意に高かった。ただし比べられたのは1998年当時の3製品なので、現行品の順位をそのまま示すものではありません。
  • 界面の主役がどちらかを意識しておく。レジンタグの中にRmGICの粒子は見られませんでしたが、著者らはRmGICとボンディングレジンの化学的結合にも触れています。機序は未確定のまま、と押さえておく。
  • ただしこれは接着強さの試験であって、臨床成績ではない。辺縁封鎖・二次う蝕・歯髄反応・長期の耐久性は、この論文からは何も言えません。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線ウシ象牙質の平坦面に対する、24時間後のせん断接着試験です。窩洞ではないのでC因子(窩洞形態由来の収縮応力)が入っていません——RmGICの収縮が問題になるのはまさに窩洞内なので、この点は小さくない留保です。保管は24時間のみで、サーモサイクルなどの耐久試験は行われていません。せん断試験は界面の応力分布が不均一になりやすく、絶対値をそのまま臨床の強さと読むこともできません。標準偏差も無視できず、ライナーボンドII群はフジII LCで6.3、ビトレマーで4.9とばらついています(他群は1.6〜2.9)。材料はすべて1998年当時の製品で、現行品ではありません。なお対照群における2製品の差のP値は、抄録がP<0.005、本文がP<0.001と原著内で割れています。それでも、接着を担っているのはボンディング材であってRmGICではないという構造をSEMまで含めて示した点は、いま材料を選ぶときの読み筋として使えます。

今日のひとこと

ウシ象牙質の平坦面96面を8群(各12試料)に分け、2種類のレジン強化型グラスアイオノマー(フジII LC・ビトレマー)を、ボンディング材3種(クリアフィル フォトボンド/ライナーボンド/ライナーボンドII)を介した場合と、各社の指示どおりの場合とで、24時間後のせん断接着強さを比べた。指示どおりの群ではフジII LC 13.4 MPa 対 ビトレマー 7.4 MPaで有意差があった。ところがボンディング材を挟むと、その差が消える(P>0.05)。ビトレマーはフォトボンド12.0(P<0.005)、ライナーボンド12.6(P<0.01)、ライナーボンドII 17.3(P<0.001)と3剤すべてで有意に上昇。いっぽうフジII LCはフォトボンド14.5・ライナーボンド15.0で対照13.4から有意には変わらず、ライナーボンドIIの17.3で上がった。ライナーボンドIIの群は他の2剤より有意に高く(P<0.001)、両RmGICとも17.3 MPaで並んだ。二元配置分散分析で接着システムとRmGICの交互作用は有意でなかった。SEMではフォトボンドが4〜5μmの厚いハイブリッド層を作っていた。ライナーボンドIIでは象牙細管に入る長いレジンタグと薄いハイブリッド層が観察された。レジンタグの中にRmGICの粒子は見られなかったが、著者らは考察でRmGICがHEMA等の樹脂成分を含むためボンディングレジンと化学的に結合しうるとも述べており、何が接着強さの上昇をもたらしたかは検討中だとしている。破断は全材料が材料の凝集破壊とボンディングレジン/象牙質間の接着破壊の混合と分類され、ライナーボンドIIの3試料では象牙質内の凝集破壊が見られた。

Pereira PNR, Yamada T, Inokoshi S, Burrow MF, Sano H, Tagami J. Adhesion of resin-modified glass ionomer cements using resin bonding systems. J Dent. 1998;26(5-6):479-485. PMID: 9699441. DOI: 10.1016/s0300-5712(97)00059-6
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。