エンド|再根管治療の予後・CBCT vs デンタル
再根管治療から1年。デンタルを1枚撮って「透過像、小さくなっていますね」で終診にしていませんか。同じ98歯を1年後にデンタルとCBCTの両方で判定したら、成功率は93%と77%。しかも変わったのは数字だけではなく、終診にするか経過を追うかという「次の一手」でした。
①1年後のリコール、デンタル1枚で「終診」と言っていいか
再根管治療から1年。約束どおり来院してもらい、デンタルを1枚撮る。術前の画像と並べて「透過像、小さくなっていますね」——ここで終診にするか、もう半年見るか、外科を考えるかが決まります。
この判断はすべて、2次元の画像1枚に乗っています。では、まったく同じ歯をCBCTで見たとき、同じ結論になるのでしょうか。ロンドンのキングス・カレッジのグループが、98歯で正面から確かめました。
②なぜ判定はずっとデンタルだったのか
根尖病変の検出における現在の基準は、依然としてデンタルです。一方で、1枚のデンタルには解剖学的ノイズ・幾何学的な歪み・2次元であること、という制約がある——原著はこの整理から話を始めます。
そして、根管充填された歯でCBCTとデンタルを比べた臨床研究は、いずれもCBCTのほうが20〜35%多く病変を見つけると報告してきました(原著が引用する複数の先行研究)。再根管治療の成功率は既報で28〜83%と大きな幅がありますが、そのすべてがデンタルで評価されたものです。入り口で病変を取りこぼす道具で予後を測っていいのか。それが原著の問題意識でした。
③今回の一手:同じ歯を、術前と1年後に、両方で撮る
対象は、Guy’s and St Thomas’(ロンドン)へ根管充填歯の問題で紹介された患者。専門医、または専門医の直接指導下の大学院生が、標準化された手順書に沿って再根管治療を行いました(手順から外れた歯は除外)。
148歯から始まり、最終的に組み入れ可能だったのが117歯。うち3歯は1年を待たずに介入が必要になり(外科2歯・破折による抜歯1歯)、残る114歯(101名)のうち98歯(84名)が1年後に来院しました(リコール率=歯86%・患者83%)。
術前と1年後の両方で、平行法のデンタルとCBCT(FOV 40×40mm・ボクセル0.08mm)を撮影。較正済みのエンドドンティスト2名によるコンセンサスパネルが、根ごと・歯ごとに6つのカテゴリーで判定しました。
④結果:93%と77%。ずれは「治った」の中身で起きた
画像所見にもとづく判定で、デンタルで見ると成功は歯で93%(根で96%)。同じ歯をCBCTで判定すると歯で77%(根で87%)。この差は統計的に有意でした(歯 P=0.0001/対応がとれた根 P<0.0001)。
淡い棒=CBCTで判定
内訳を見ると、ずれているのは「治癒中(縮小)」ではなく「治癒」と「不成功」です。完全に治癒したと判定されたのはデンタル77%に対しCBCT61%。不成功はデンタル7%(7歯)に対しCBCT23%(23歯)でした。
不成功の中身も違います(原著Table 4・歯単位)。新しい透過像が現れたと判定されたのはデンタル0歯・CBCT2歯、拡大は2歯 vs 8歯、不変は5歯 vs 13歯。新生透過像は、術前に透過像の無かった12歯のうち2歯(16.7%)をCBCTだけが捉え、デンタルでは1歯も検出されていません。
もうひとつ目を引くのが、「術前も1年後も透過像が無く、健全なまま」と判定された根の数です。両方で対応がとれた206根のうち、デンタルでは109根(53%)がこれに当たったのに対し、CBCTでは56根(27%)。同じ根の集まりを、デンタルは半数以上「最初から最後まできれい」と読み、CBCTは4根に1根ほどしかそう読まなかった、ということです。
そして部位差。差が開いたのは大臼歯でした(原著Table 5・歯単位の成功率)。上顎大臼歯はデンタル91%に対しCBCT66%、下顎大臼歯は97%に対し75%。一方で上下の前歯・犬歯・小臼歯はほとんど差がありません(下顎の前歯・犬歯と小臼歯はどちらの画像でも100%)。ただし、サブグループの検定で有意差がついたのは下顎大臼歯(P=0.02)だけで、上顎大臼歯はP=0.08、上顎小臼歯はP=0.48。群ごとの症例数が小さいことは押さえておきたいところです。
そもそも見えている解剖の量も違いました。CBCTでは215根が同定されたのに対し、デンタルでは206根。9根はデンタルに写っていません。しかもその9根のうち1根には新しい透過像が、1根には拡大した透過像がありました。
⑤明日の臨床へ:変わるのは数字ではなく「次の一手」
成績表の数字だけなら、記事の中の話で終わります。この研究が重いのは、その先の方針まで変わってしまったところです(P=0.01)。
淡い棒=CBCTで判定
デンタルだけで判断すると70歯が終診。CBCTで判断すると終診は49歯に減り、経過観察が26歯から40歯へ、外科や再根管治療が2歯から9歯へ増えました。
もっと具体的な数字もあります。CBCTは、臨床症状だけでは拾えない不成功を15歯で見つけました。このうちデンタルでも不成功と読めたのは2歯だけ。残る13歯のうち4歯は経過観察に回されたはずですが、9歯はデンタルだけなら終診になっていた——原著の言葉では「誤って終診にされた(incorrectly discharged)」歯です。
では明日から全例CBCTか、というとそうではありません。被曝量の観点から、CBCTは経過観察のルーチンには現在推奨されていません(原著が引く2015年のレビュー)。この研究自体も、倫理承認を得た研究として撮影しています。
実務に落とすなら、3つでしょうか。第一に、1年後のデンタルが良く見えたときの言い方を「画像上は改善しています」に留めること。
第二に、1年で病変が拡大した9根(8歯・CBCTでの判定)のうち5根には、MB2が探索されていなかった上顎第一大臼歯のMB根3根・CBCTでは見えていたのに再治療中に到達できなかった上顎小臼歯の遠心頬側根・下顎大臼歯の穿孔、という背景がありました。再治療後の大臼歯で症状が続くなら、見落とし根管や穿孔を疑って画像の適応を考える価値があります。ただし、ここは公平に付け加えておきます——残る4根(3歯)には手技的なエラーも見落とし根管も無く、専門医または最終学年の大学院生が良好な水準で仕上げた歯でした。拡大した9根のうち約半数は、うまく治療できていても拡大しているのです。原著は理由として、根尖分岐・イスムス・象牙細管に残る微生物を挙げています。
第三に、症状も所見も無いのに「念のため」で撮る1枚の意味を、いちど考え直すこと。
じつは著者らも最後にそこへ踏み込んでいます。成功する症例がもともと多く、しかもデンタルは不成功を捉えるのが苦手なのだから、術後に症状が無い症例——とくに術前に透過像が無かった症例や、直径2mm未満の透過像だった症例——では、1年後にデンタルで経過観察することが本当に正当化されるのかを問い直してよい、と。
この研究には組織学的なゴールドスタンダードがありません。示されたのは「2つの画像の判定が食い違う」ところまでで、どちらが真実に近いかを、この研究自体が確かめたわけではないのです(原著も「組織学的評価が理想の基準だが、臨床研究では不可能」と明記しています)。原著はイヌの組織学的検討や屍体を使った研究など他の研究を引いてCBCTのほうが鋭敏・特異的だと論じており、そこは引用であってこの研究の結果ではありません。逆に「CBCTは厳しすぎる」と決めつける材料も、この研究にはありません。加えて追跡は1年と短く(著者らは未治癒例の経過を追い続けているとしています)、単一施設・専門医水準の再治療で、部位別の検定で有意だったのは下顎大臼歯のみ。ちなみに検者間の一致度はデンタル0.53に対しCBCT0.72(Fleissのκ)で、読み手のブレという意味でもデンタルのほうが揺れていた——そこまで含めて面白い一本です。
今日のひとこと
同じ98歯を1年後に判定すると、成功率はデンタルで93%、CBCTで77%。治療成績が変わったのではなく、判定に使う道具で見える範囲が違う。そして変わったのは成績表より「終診にするか」という次の一手だった(終診70歯→49歯)。1年後の1枚に、断定を乗せすぎないこと。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


