歯周病予防

日本人の8割がかかっている??歯周病の病態と進み方をイラスト解説

みなさんこんにちは、歯科医師の大原です!

さて、みなさんの虫歯の知識はだいぶバージョンアップされてきたと思うので、今回から歯周病のお話もしていこうと思います!

まずは歯周病とはなんぞや!から解説していきます

 <歯周病は2種類>

日本人の成人の8割がかかっている、世界で最も多い病気としてギネスブックに載っている。それはなぜか?

歯周病が軽くみられるからです!歯科医師として悲しい!

まぁその原因でもあると思うのですが、歯周病は重症のものと軽症のものの2種類を混合した言い方です。

1つは歯肉炎。もう一つは歯周炎。

歯肉炎は歯グキの10%以上の箇所から出血がある場合に診断されます。

歯周炎は歯肉炎が進行し、歯グキの下の骨が溶けていく病気です。

歯肉炎は歯磨きで治るんでしょ?と軽くみられがちです

糖尿病・高血圧のように日々の習慣が悪いと徐々に蝕まれていくのですが、

糖尿病・高血圧のように死に直結しそうなイメージが湧かないので重要度が低いことも軽くみられる原因かもしれません

どちらにしろ生活習慣(歯磨き)を変えなければ治りません。ちゃんと検診・指導を受けずに我流でやろうとすると多くの人が歯を失っていくわけです。

歯周病が十分に進行している人が多い50代以降は平均3-4年で1本歯を失います。

これ2017年の日本人の平均ですよ!?みなさんはちゃんと歯を磨けていると自信を持って言えるでしょうか??

さて、ここからは歯周病にどうやってなっていくかを皆さんに知っていただこうと思います

 <① 唾液中のバイ菌が歯につく>

虫歯と同じように、唾液の中のバイ菌が歯につくところから始まります

最初から特別なバイ菌が感染しているわけではありません。

歯についたばかりのバイ菌は毒性も低く、特に問題を起こしません。

歯磨きはこのつきたてのバイ菌を毎日除去するために行います

 <② 磨き残したバイ菌が成熟する>

磨き残したバイ菌は3日程度で成熟します。

成熟するとバイ菌の量(歯垢=プラーク)が増えていきます

そしてプラーク中で毒性・活動性の高いバイ菌の種類と量が増えていきます

 <③ 活動性の高い菌が歯グキに侵入しようとしてくる>

スピロヘータとか検索してもらうとわかるんですが、運動性のやばそうな菌が歯グキに感染しようとします。

口の中に元々いる菌なんですが、局所に集まると悪さをするんです

不良と同じですね。群れると危険な存在です

免疫細胞はそんな不良な細菌の侵入を防ごうとします

 <④ 免疫細胞が仲間を呼ぶ>

免疫細胞は悪いものが入ると倒そうとするだけでなく、仲間を呼びます

この時、免疫細胞はただ仲間を引き寄せるだけでなく、血流を増やすことで仲間がたくさん来れるようにします

風邪をひいた時も同じことが起きています。のどに侵入してきたウイルスを倒すために、のどに血流が増えるので腫れたり、熱感があるわけです

歯ぐきでは歯磨きで血が出ることが一つのサインです

 <⑤ 血液を餌にするバイ菌が増える>

バイ菌と免疫細胞の攻防により歯周ポケットの上皮はバリアが破壊されてしまい、常に血液成分が歯周ポケットに溢れているような状態になります

そうすると血液を栄養とする菌が急激に増殖しはじめます

この中でもP.gingivalis菌というのが厄介者です

 <⑥ バイオフィルムと免疫の均衡が崩れる>

P.g菌はお口の中に普通にいる菌ですが、出血がない状態の時は栄養不足のため増殖があまりできません

しかし、血液を餌に増殖し始めると、毒素を出したり、免疫細胞の働きを弱めるといった働きをします

そうすると毒素によって歯グキの組織は壊されたり、免疫細胞がうまく働かなくなり、頑張ってに抑え込んでいた他の悪い菌たちもどんどん増殖し、歯グキの組織に侵入していきます

バランスが崩れるという意味では虫歯と同じですね!

虫歯は「再石灰化」と「脱灰」のバランスが脱灰に傾いている状態が続くと歯に穴が空くんでしたね

過去の投稿を参照

歯周病は「免疫」と「バイオフィルム(菌塊)」のバランスが、バイオフィルムの病原性が上がった状態が続くことで歯の周りの組織(歯周組織)が破壊されていく病気です

 <⑦ 自分の骨が自分で溶かされる!?>

バイオフィルムの病原性が上がることで歯周組織が攻撃されます

ここまで聞くと、ああだから骨も壊されていくのか。と思うかもしれませんが実はそうではありません。

骨は「菌vs免疫」の最前線よりも1.5mm以上離れているので通常は壊されないのですが、

菌と免疫細胞の戦いがずっと続く(慢性炎症と言います)ことで免疫細胞が徐々に徐々に自分の細胞を壊していってしまうために起きてしまうんです。

だんだん戦いの前線を押し下げられるようなイメージでしょうか、

歯周病治療をしなければこの戦いは歯が抜け落ちるまで続きます

 <⑧ 歯を支える骨がなくなる>

歯が揺れるな〜と思って歯周病治療を受けにいったときには時すでに遅し

歯周組織は破壊され尽くされて再生する足場も無くなってしまっています

こうなると現代の高度な再生医療を持ってしても全く効果がありません。

足場がないところに臓器を作ることはできないんです。

そのため歯を抜くしか無くなってしまいます。

歯が揺れる頃には手遅れなことが多いのでみなさん日頃から定期検診行ってください!

 <子供は歯周炎になりにくい?>

実はP.g菌は子供からは検出されません

18歳前後で感染すると言われますが、その感染経路もわかっていません

子供は大量の磨き残しがあって、大量の出血があってもP.g菌がいないので重度の歯周炎にほとんどの場合なりません

ただし、虫歯にはなります。歯磨きからの出血はバイ菌が大量にいる証拠なので虫歯リスクが心配なところです。

大人の場合は早い人(感受性が高い人)で22-28歳の間に発症、30〜40代に発症することがほとんどです(Thorbert-Mros Sら2017、Kassebaum NJら 2010)

18歳前後で感染したP.g菌が身を潜め、徐々に徐々にバイオフィルムの病原性を上げて歯周組織を破壊していくといった感じでしょうか

痛みもなく、症状もほとんどないため、歯に関心がないと揺れてくるようになるまで放置してしまう人も多くいます

 <歯周病セルフチェック>

歯周病はsilent disease(沈黙の病)と言われ、気付いたときには手遅れになってしまうことがあります

セルフチェックを用意しましたのでチェックしてみてください!

次回は歯周病検査について書こうと思います!またのお楽しみに!

質問があればコメントお願いします!では!

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