1問1答 論文 歯周病

再生材料を足さなくても、結果は同じだった

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase2 歯周外科

骨縁下欠損の再生療法では、エムドゲインや骨移植材を「足す」ことが当たり前になっています。では、術式そのものを極限まで低侵襲に磨いたら、材料は要らなくなるのでしょうか。2011年、CortelliniとTonettiは45症例を3群に分け、M-MIST単独・EMD併用・EMD+骨補填材併用を正面から比べました。3群は、驚くほどよく似た結果を出しています。

論文
Clinical and radiographic outcomes of the modified minimally invasive surgical technique with and without regenerative materials: a randomized-controlled trial in intra-bony defects
著者
Cortellini P, Tonetti MS
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2011;38(4):365-373
種類
3群並行ランダム化比較試験(パイロット・45名/各群15名・1年)
PMID
21303402

再生医療の25年は、2本の道を歩いてきた

歯周組織再生の研究は、大きく2つの方向に進んできました。1つは材料と製品の開発(膜・移植材・成長因子)もう1つは術式そのものの革新です。

そして術式の側の進歩は、想像以上に大きなものでした従来のフラップでは軟組織の創閉鎖が100%失敗していたのに対し、近年の術式では10%未満まで低下——著者らはそう書いています。

M-MIST(modified minimally invasive surgical technique)は、その到達点のひとつです。設計思想は3つ。①弁の安定性を高める、②再生のためのスペースを維持する、③歯槽頂と乳頭の血液供給をできるだけ残す

そのために頬側に小さな三角弁を作るだけで、欠損に隣接する歯間乳頭には一切触れません乳頭は歯槽頂側の歯根のセメント質に、歯槽頂上線維でつながったまま残されます口蓋・舌側の組織も手術に関与しません

ここで疑問が生まれます。術式がこれだけ洗練されたなら、材料を足す意味はどれだけ残っているのか

先に結論: M-MIST単独と、EMD併用、EMD+骨補填材併用で、CAL獲得も骨の充填率も差がなかった

3群に分けて、同じ術式で入る

対象は進行した歯周炎で、孤立した深い歯間部の骨縁下欠損を1つ以上持つ患者45名原因除去療法(SRP・動機づけ・口腔衛生指導)を終えて3か月後に登録されました。1人につき1つの欠損を治療します。

全例がまずM-MISTでアクセスされ、肉芽組織を鋭利に除去して根面を器械的に清掃、EDTAゲルで2分間処理ここで初めてランダム化の封筒が開けられ、群が決まります

M-MIST単独(15名)は、何も置かずに縫合M-MIST+EMD(15名)は、洗浄・乾燥した根面にEMDを塗布M-MIST+EMD+BMDX(15名)は、EMDと骨ミネラル由来異種骨を混ぜて欠損に置きます(詰め込まず、過剰充填もしない)

縫合は歯間部に1本の内側マットレス縫合のみ手術はすべて手術用顕微鏡(4〜16倍)とマイクロ器具で行われました。ベースラインの欠損条件(PPD・CAL・骨縁下成分の深さ・骨壁数)は3群でよく揃っています

術後は6週間の週1回リコール、その後は3か月ごとのメインテナンス評価は1年後です。

3群の数字が、ほとんど重なった

0 1.7 3.3 5 1年後のCAL獲得 (mm) 4.1 4.1 3.7 M-MIST単独 +EMD +EMD+骨補填材 3群に統計学的な差はない(p=0.639)。2mm未満しか獲得できなかった部位は1つもなかった
1年後のCAL獲得。3群に統計学的な差はない

1年後のCAL獲得は、M-MIST単独 4.1±1.4mm、EMD 4.1±1.2mm、EMD+BMDX 3.7±1.3mm群間比較はp=0.639で差がありません。

PPDの減少は4.4±1.6mm、4.4±1.2mm、4.0±1.3mm(p=0.657)残存ポケットは3.1mm、3.4mm、3.3mmまで浅くなっています。

0 33.3% 66.7% 100% 骨縁下欠損のエックス線的な充填率 (%) 77% 71% 78% M-MIST単独 +EMD +EMD+骨補填材 3群に統計学的な差はない(p=0.603)。手術時間はM-MIST単独52.9分に対し骨補填材の併用で58.9分(p=0.036)
エックス線的に見た骨縁下欠損の充填率。こちらも3群で差がない

エックス線的な骨の充填率は、M-MIST単独 77±19%、EMD 71±18%、EMD+BMDX 78±27%(p=0.603)骨の獲得量は3.5mm、3.3mm、3.3mmでした。

そして歯肉退縮です。3群とも増加は平均0.3mmにとどまりましたベースラインとの差が統計学的に有意になったのはEMD群のみ(p=0.02)で、他の2群では有意ではありません低侵襲な術式が、歯肉縁の位置をほぼそのまま保ったということです。

CAL獲得の分布を見ると、さらに印象的です。2mm未満しか獲得できなかった部位は、45部位中1つもありません4mm以上を獲得したのは、M-MIST単独で73.3%、EMDで60%、EMD+BMDXで46.6%でした。

患者さんの負担も、ごく小さい

この研究のもう一つの読みどころは、患者さん側のアウトカムです。

一次閉鎖は45部位すべてで達成され、6週間の早期治癒期間を通じて閉鎖が保たれなかったのは1部位のみ(EMD+BMDX群・2.2%)その1部位も、抜糸時にわずかな不連続が見られただけで、2週目には閉じていました浮腫や血腫はどの部位にも生じていません

術中・術後の疼痛を訴えた患者はゼロ軽度の不快感を報告したのは各群3〜4名で、鎮痛薬を必要としたのも同程度服用量は平均0.3〜0.5錠、最大でも3錠)でした。

手術時間は、M-MIST単独が平均52.9±5.6分で最も短く、EMD 54.2±7.4分、EMD+BMDX 58.9±6.2分この差は統計学的に有意(p=0.036)です。材料を足すほど時間がかかるが、それに見合う成績の差は出なかった——という構図になります。

ここが要点: 術式を磨けば、材料の上乗せ分は見えなくなったただし「不要と証明された」わけではなく、この規模では0.96mm未満の差を検出できない

明日の臨床へ

1つ目。乳頭を触らないという選択肢を知っておく。 M-MISTは、歯間乳頭を挙上せず頬側だけからアクセスします孤立した歯間部の骨縁下欠損という条件に合えば、歯肉退縮を0.3mmに抑えながら4mmのCAL獲得が狙えます。

2つ目。適応は限られる。 著者ら自身が「M-MISTは常に適用できるわけではない」と明記しています。欠損が歯の舌側に回り込んでいる場合は、歯間軟組織の挙上が必要になり、通常のMISTが選択される——ここは押さえておくべき線引きです。

3つ目。材料の判断は、術式の完成度とセットで考える。 この結果は「EMDが無効」という意味ではありません顕微鏡下でここまで低侵襲に、弁を安定させ血餅を守れる術式においては、材料の上乗せ分が見えなくなったと読むべきものです。

4つ目。患者さんに伝えられることが増える。 「痛みを訴えた患者はゼロ、鎮痛薬もほとんど不要」再生療法に踏み切れない患者さんへの説明材料として、この数字は使えます

ここだけ、冷静に補助線。 各群15名のパイロット研究で、著者ら自身が「この研究の検出力は0.96mmまでの差しか検出できない」と明記しています。「差がなかった」は「差がないと証明された」ではありません。また観察は1年までで、M-MISTでの治癒が組織学的に「歯周組織再生」であるかは確認されていません著者らは「臨床的な治癒が必ずしも再生を意味しない」と書いています)。単一施設・熟練した術者・顕微鏡下という条件も、そのまま一般化する前に踏まえるところです。それでも、術式そのものが結果を作りうることを、材料を対照に置いて示した意味は大きい。「何を足すか」の前に「どう入るか」を問い直させる一本です。

今日のひとこと

孤立した歯間部の骨縁下欠損を持つ45名を、M-MIST単独/M-MIST+EMD/M-MIST+EMD+骨ミネラル由来異種骨(BMDX)の3群に15名ずつランダムに割り付け1年後の臨床・エックス線所見を比べた研究。M-MISTは、欠損に隣接する歯間乳頭を一切挙上せず、頬側だけに小さな三角弁を作る術式で、手術用顕微鏡(4〜16倍)とマイクロ器具を使って行われます1年後のCAL獲得はM-MIST単独 4.1±1.4mm、EMD 4.1±1.2mm、EMD+BMDX 3.7±1.3mm(p=0.639)エックス線的な骨欠損の充填率は77±19%、71±18%、78±27%(p=0.603)PPD減少は4.4mm、4.4mm、4.0mm(p=0.657)——どの項目でも3群に統計学的な差はありませんでした歯肉退縮の増加はいずれも平均0.3mmにとどまり一次閉鎖は45部位中44部位(97.8%)で維持術中・術後の疼痛を訴えた患者はゼロでした。2mm未満のCAL獲得しか得られなかった部位は1つもありません。ただしこの規模では0.96mm未満の差は検出できず、著者らも「材料が不要と証明したわけではない」という慎重な立場を取っています。

出典:Cortellini P, Tonetti MS. Clinical and radiographic outcomes of the modified minimally invasive surgical technique with and without regenerative materials: a randomized-controlled trial in intra-bony defects. J Clin Periodontol 2011;38(4):365-373. PMID: 21303402
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。