生殺与奪の権を、他人に握らせない──自己決定権という幸福の条件
幸福度を決めているのは、腕前でも肩書きでもなく「自分で決められるかどうか」なのかもしれません。

日本は、大人になるほど自由が減っていく
日本人の幸福度が低い理由について、こんな仮説を聞いたことがあります。
海外では、子どもの行動はかなり厳しく制限されています。国によっては、通学バスの乗り降りまで親が付き添うのが当たり前。子どものうちは自由に動けない代わりに、十八歳を超えたら「あとはあなたの自由です」と、一気に手綱を放される。
日本はその逆で、子どもの頃はずいぶん自由に遊べるのに、大人になるにつれて行動が縛られていきます。組織の決まり、周囲の期待、暗黙の役割。年齢を重ねるほど、自分で決められる範囲が少しずつ削られていく。その「自己決定権が減っていく感覚」こそが、幸福度を下げているのではないか、という見方です。
本当にその通りかは分かりません。ただ、腑に落ちるところはありました。

「やりたくない治療」を断れるかどうか
これは、僕らの仕事にそのまま当てはまります。
本来、歯科医師は自分で診て、自分で診断して、自分ができる最善の治療を提供すべき職業です。ところが、そこに医院の方針やノルマが乗ってくると、話が変わってきます。売上のために、本当は触らなくていい隣の歯まで削る。そんな選択を迫られる場面が、この業界にないとは言えません。
一度でもそれをやってしまえば、自分の判断は自分のものではなくなります。技術が上がっても、指名が増えても、幸福度は上がっていかない。むしろ削られていく。やりたくないと思っていることをやり続けるのは、想像以上に強いストレスです。

自己決定権を支えているのは、勉強とお金
ではどうすれば、ノーと言えるようになるのか。
答えは身も蓋もなくて、しっかり勉強して、お金を貯めることです。実力があり、手元にキャッシュがあれば、納得できない指示に逆らうことができる。逆に、明日の生活が誰かの決定に握られている状態では、どれだけ信念があっても従うしかありません。
「二十代はがむしゃらに働き、三十代で自由になる道筋をつくり、四十代で完全に自由になる」。全員に勧められるやり方ではありませんが、振り返ってみると、僕自身がやってきたのはそれに近いことでした。
『鬼滅の刃』に「生殺与奪の権を他人に握らせるな」という有名な台詞がありますが、まさにその通りだと思います。自分の人生の決定権を、他人の手に預けたままにしない。そのために勉強し、そのために蓄える。
おわりに
自己決定権があるということが、どれだけ大きな価値を持つのか。まずはそれを理解しておくことが大事だと思っています。
九月の歯科助手・受付事務向けの勉強会では、投資の話と、詐欺に遭わないための「守る力」について、AIも絡めながらお話しする予定です。興味のある方は覗いてみてください。


