ペリオ|Phase2 歯周外科
骨縁下欠損に、フラップだけで臨むか、骨移植を足すか、GTRまで踏み込むか。1998年、Laurellらは過去20年の研究から1,057の欠損を集めて並べ、それぞれが返してくる数字を比べました。見えてきたのは「4mm」という線です。
①3つの選択肢が、それぞれ何mmを返すのか
骨縁下欠損を前にしたとき、手元にある選択肢はおおむね3つです。フラップを開けて掻爬するだけ(OFD)/骨移植材を足す/GTRで膜を置く。
歯周外科の目的は3つあります。①病変部へのアクセスを得て十分に清掃する ②ポケットを減らすか除去する ③疾患で失われた歯周組織を回復する(新付着=歯周組織再生)。この3つ目こそが、歯周治療の究極の目標としばしば言われるものです。
1970年代終わりの創傷治癒研究で、修正Widmanフラップは単独でも骨移植材との併用でも、真の新付着を形成しないことが明らかになりました。この知見と、その後の創傷治癒研究が、GTRの開発につながります。
ただし問題がありました。骨縁下欠損の治療に関する論文は数多いのに、その多くは術前後のポケット深さとアタッチメントレベルは示すものの、欠損の深さのベースラインデータを欠いている。これでは、ある術式の評価は不確かどころか不可能です。
そこでこのレビューは、「ベースラインと最終のプロービング深さ、術中に計測した骨縁下欠損の深さ、そしてアタッチメント獲得か骨充填のデータが揃った研究」だけを選んで集計しました。
②1,057の欠損を、同じ物差しに載せる
方法はシンプルです。治療カテゴリごとにデータをプールし、各研究のデータと検出力を、治療した欠損の数で重み付けします。
具体的には、各研究・各治療カテゴリについて、欠損数(n値)にその研究が示した平均値(プロービング深さ、骨縁下欠損深さ、アタッチメント獲得、骨充填)を掛け、合計を全n値で割る——これで治療カテゴリごとの評価済み平均値が出ます。
加えて、研究間の一貫性を推定するため、各研究の平均値をひとつの観察として標準偏差を計算。個々の欠損データが示されている研究では、欠損の深さが治療成績(アタッチメント獲得・骨充填)に及ぼす影響を、単回帰分析で評価しました。これは各治療後の結果の予知性を評価するためです。
集まった欠損数は、OFD単独305、OFD+骨移植207、GTR 545——合計1,057。症例研究と対照研究の両方を含んでいます。
③返ってくる数字は、はっきり違う
OFD単独(305欠損):平均4.3mmの欠損に対し、プロービング深さは7.0→4.0mmへ減少、アタッチメント獲得1.5mm、骨充填1.1mm。
OFD+骨移植(207欠損):平均3.8mmの欠損に対し、プロービング深さは6.9→4.4mm、アタッチメント獲得2.1mm、骨充填2.2mm。
GTR(545欠損):平均5.8mmの欠損に対し、プロービング深さは8.5→3.4mm、アタッチメント獲得4.2mm、骨充填3.2mm。
ここで注意したいのが、そもそも治療されている欠損の深さが違うことです。GTRが扱っていた欠損は平均5.8mmと、OFD(4.3mm)やOFD+骨移植(3.8mm)より深い。だから絶対値の比較だけでは公平ではありません。
そこで著者らは「欠損の深さと成績の関係」を見にいきます。
④深い欠損が「報われる」のはGTRだけ
OFD単独:欠損の深さとアタッチメント獲得のあいだに、有意な相関はありませんでした(R=0.16、P=0.14)。これは、アタッチメントの変化が「限定的である」ということ以外に予測できない、という意味だと著者らは書いています。骨充填には統計的に有意な相関がありましたが(R=0.3、P<0.001)、回帰係数は0.25と小さく、浅い欠損と深い欠損の差はごくわずかでした。
実際、個別データを見ると、欠損の大半は3〜5mm深で、大半の欠損は欠損深さにかかわらず1〜2mmのアタッチメントまたは骨の獲得を示していただけです。
OFD+骨移植:アタッチメント獲得(R=0.25)と骨充填(R=0.43)の両方が欠損深さと有意に相関しましたが(P≤0.001)、回帰係数は0.25と0.37と、やはり小さい。
GTR:アタッチメント獲得R=0.52、骨充填R=0.53と有意に相関し(P≤0.001)、回帰係数は0.54と0.58——3つの治療のなかで最大でした。
この違いが意味するところは明快です。OFDや骨移植では、欠損が深くても返ってくる量はあまり増えない。GTRでは、欠損が深いほど返ってくる量が増える。
そして著者らは、各治療の成績を並べた結果として——「GTRの手技から利益を得るには、骨縁下欠損が少なくとも4mmの深さでなければならないことが明らかになった」と結論します。浅い欠損では、GTRの上乗せ分が出てこないということです。
⑤このレビューが冷たく指摘していること
このレビューは、当時の楽観にいくつか冷や水を浴びせています。
①骨移植の上乗せは支持されなかった。 「骨縁下欠損の治療においてOFD単独より骨移植を使うことの利点は、この解析では支持されない」。ただし著者らは、対象となった欠損が総じて浅く、欠損深さの変動も小さかったため、骨移植材の潜在能力に対する真の挑戦になっていなかったとも付け加えています。
②「欠損深さに対する%」での提示は誤解を招く。 回帰係数が小さいことは、成績を「初期欠損深さに対する割合」で示す慣習に疑問を投げかけます。「%での提示は、欠損深さと無関係な”その術式の潜在能力”として誤って解釈されうる。実際には回帰分析から明らかなように、深い欠損のほうが浅い欠損より%は小さくなる」。
③GTRでも欠損は埋まりきらない。 16の研究を集計しても、欠損の深さに等しいアタッチメント獲得や骨充填を達成した研究はひとつもありませんでした。アタッチメント獲得は欠損の約70%にとどまり、残存する骨縁下欠損は約1.4mmです。
④再エントリーでは骨頂が下がる。 骨充填を再エントリーで評価した研究は、治療にかかわらず平均約1mmの骨頂吸収を示しました。
⑤上乗せの多くは効かなかった。 クエン酸による根面処理はGTRのアタッチメント獲得も骨充填も高めず(OFDでも同じ)、DFBAをGTRに足す効果を検討した3つの研究はいずれもGTR単独を上回る結果を示せませんでした。非吸収性バリアと生体吸収性バリアを分けて比べても、どの変数にも差はありませんでした。
逆に、成績を左右する因子としてCortelliniらの研究が挙げられています。アタッチメント獲得は、①欠損の深さ ②膜を除去したときに膜下に見つかった新生肉芽組織の量 ③新しく形成された組織をフラップで覆えるかどうか——に正相関し、欠損の幅とフルマウスプラークスコアには逆相関しました。早期のバリア露出とその部位のプラークも、アタッチメント獲得と逆相関しています。
⑥明日の臨床へ
①4mmを、術式選択の目安に置く。 「GTRから利益を得るには欠損が少なくとも4mm」。浅い骨縁下欠損に高侵襲・高コストの再生療法を持ち込む根拠は、このレビューの範囲では弱いことになります。
②OFD単独の期待値を、正しく低く見積もる。 アタッチメント獲得1.5mm、骨充填1.1mm、しかも欠損が深くてもあまり増えない。「開けて掃除すれば少しは埋まる」という期待は、数字にすると1mm前後です。
③「%で埋まった」という表現に注意する。 深い欠損ほど%は小さく出ます。症例を見るときも、発表を聞くときも、初期の欠損深さと絶対値の両方を確認する。
④GTRを選んでも、欠損は全部は埋まらない。 獲得は欠損の約70%、残存欠損は約1.4mm。患者説明の期待値をここに合わせておくほうが誠実です。
⑤膜の露出とプラークが、結果を削る。 早期のバリア露出とプラークがアタッチメント獲得と逆相関していました。術式の選択より、フラップで覆いきる設計と術後のプラークコントロールのほうが、手元で動かせる変数です。
今日のひとこと
骨縁下欠損の外科治療について、過去20年の研究をプールして治療法ごとの成績を比べたレビュー(術前後のプロービング深さ、術中に計測した骨縁下欠損の深さ、アタッチメント獲得と骨充填のデータが揃った研究のみを採用し、各研究の欠損数で重み付けしてメタ解析)。フラップ単独(OFD)は305欠損で、初期欠損深さ4.3mmに対しアタッチメント獲得1.5mm・骨充填1.1mm。プロービング深さは7.0→4.0mm。OFD+骨移植は207欠損で、初期欠損深さ3.8mmに対しアタッチメント獲得2.1mm・骨充填2.2mm。GTRは545欠損で、初期欠損深さ5.8mmに対しアタッチメント獲得4.2mm・骨充填3.2mm。プロービング深さは8.5→3.4mm。欠損の深さとの相関を見ると、OFD単独ではアタッチメント獲得に有意な相関がなく(R=0.16、P=0.14)、GTRではアタッチメント獲得R=0.52・骨充填R=0.53と最も強い相関を示しました(回帰係数0.54・0.58)。著者らの結論は「GTRの手技から利益を得るには、骨縁下欠損が少なくとも4mmの深さでなければならない」。なおGTRでも欠損の深さと等しい獲得を達成した研究はなく、アタッチメント獲得は欠損の約70%、残存する骨縁下欠損は約1.4mmでした。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


