AAP再生ワークショップ・骨縁下欠損のコンセンサスレポート(Reynolds 2015・J Periodontol)
GTR、骨補填材、エムドゲイン、rhPDGF-BB——骨縁下欠損に使える手は増えました。ではどれを選ぶのか。AAPの委員会は、それぞれを支えるランダム化比較試験の本数と推奨強度を1枚の表に並べています。GTRが22件、併用療法が14件、DFDBAが7件——ただし本数は効果の大きさの順位ではありません。そして再生の可能性を最も高めるのは、材料の選択より前にある「早い段階で手を打つこと」だと結論づけました。
①骨縁下欠損に、何を入れますか
エックス線に垂直性の骨欠損が写る。フラップを開けると、3壁性のしっかりした骨縁下欠損。ここで手が止まります。
GTRの膜を置くか。骨補填材を入れるか。エムドゲインか。それとも組み合わせるか。
どれも「効く」と聞いたことがある。学会でも講演でも、それぞれの支持者がいる。ではどれがいちばん厚いエビデンスに支えられているのか——この問いに、AAPの再生ワークショップの委員会は表で答えました。ランダム化比較試験の本数と、推奨強度のグレードを並べた表です。
②「効く」を、根拠の厚みで並べ直す
この文書はコンセンサスレポートですが、事前に系統的な検索が行われています。
そもそも歯周組織再生とは何か。この文書は定義から始めています。過去に病んだ根面の上に、新しいセメント質・歯槽骨・機能する歯根膜が形成されること。3つが揃ってはじめて「再生」です。
③支持するRCTの本数を並べるとこうなる
本数だけ見ればGTRが22件で最多、次いで併用療法が14件、DFDBA(脱灰凍結乾燥骨同種移植材)が7件、脱タンパクウシ骨移植材が4件。FDBA(脱灰していない凍結乾燥骨同種移植材)は該当するランダム化比較試験が0件で、グレードCとされました。
グレードで見ると、GTR・併用療法・DFDBAの3つがA(一貫した良質の患者志向エビデンス)、脱タンパクウシ骨がB(一貫しないか、限られた質の患者エビデンス)、FDBAがCです。
そのうえで委員会は、生物学的製剤についてこう述べています。エムドゲイン(EMD)と、β-リン酸三カルシウムを足場としたrhPDGF-BBは、GTR・脱タンパクウシ骨基質・DFDBAといった既に評価されたアプローチと同等の再生結果をもたらしうる——これは一貫した良質の患者志向エビデンスに支持されている、と。
ただしこの図はあくまで「支持するRCTの本数」であって、効果の大きさの順位ではありません。原著は現時点で最も大きなエビデンスの集積があるのはDFDBA(7件)だとはっきり書き、骨縁下欠損の再生における予測性のある材料として支持されているとしています。本数の多さと集積の厚みは別の話だということです。なお Table 1 にはエムドゲインやrhPDGF-BB+β-TCPの行そのものが無いので、この図には主役が写っていない点にも注意が要ります。
併用については明確です。2つ以上の再生療法(骨補填材、GTR、生物学的製剤)を組み合わせる臨床応用を支持するエビデンスがある——グレードAで14件のRCTがこれを支えています。
一方で、石灰化FDBA(上の表の「脱灰していない」FDBAと同じ材料)、自家骨移植、根面処理、低侵襲手術、およびそれらの併用については、エビデンスがより弱く、今後の研究が必要とされました。使えないという意味ではなく、根拠の量が足りていないという意味です。
④材料より先に効く「時期」と「因子」
臨床推奨の書き出しは、材料の名前ではありませんでした。
「骨縁下欠損を再生療法で早期に管理することが、歯周組織再生の成功に向けた最大の可能性をもたらす」。
そして材料選択については、こう続きます。再生療法あるいはその組み合わせの選択と適用は、臨床家自身の経験と、再生生物学・技術への理解に基づいて行われるべきである。どれか1つを名指しで推奨する書き方をしていません。
そのうえで、この意思決定は再生に悪影響を与えうる因子——喫煙、口腔清掃の不良、歯の動揺、欠損形態——を考慮に入れるべきだとされました。
ここは本文と表で書きぶりが違うので、丁寧に読む必要があります。本文は「喫煙と口腔清掃の不良が結果に負の影響を与える」と述べ、続けて「より低いレベルのエビデンスとして歯の動揺が結果に負の影響を与えうる」「欠損形態も全体の結果や最適な治療戦略に影響しうる」と書いています。ところが同じ論文の Table 2 が付けたエビデンスのグレードは、喫煙がA、歯の動揺と欠損形態がB、バイオフィルムコントロール(口腔清掃)と糖尿病がC。つまり口腔清掃の根拠はいちばん低いグレードです。抄録に至っては「再生に負の影響を与える因子には喫煙と過度の歯の動揺が含まれた」と書かれており、口腔清掃は挙がっていません。
読み取れるのは、喫煙だけがグレードAではっきりしているということ。ほかの因子も考慮に値しますが、根拠の厚みは同じではありません。
興味深いのは術者要因の扱いです。術式と技術はあらゆる外科の成否に決定的であると認めつつ、その関係は現在利用できる文献では十分に特徴づけられていないと正直に書いています。
最後に、長期的な成功には効果的なメインテナンスプログラムを組み合わせることが推奨に加えられました。安定性についての記述は、原著の中でも場所によって幅があります——本文の要約は「新しく形成された歯周組織が5年を超えて安定する」、Table 1 の長期安定性の欄はGTR・併用療法・脱タンパクウシ骨が10年まで、DFDBAが5年、そして抄録の結論部は「10年を超える長期にわたって維持されうる」。いちばん控えめに読むなら「5年を超える」です。
⑤明日の臨床へ
いちばん実務的な持ち帰りは、骨縁下欠損を見つけたときに「様子を見る」を選びにくくなったことです。早期に管理することが最大の可能性をもたらす——この一文は、深くなるのを待たずに動く根拠になります。
材料については、「どれが正解か」より「自分がどれを理解して扱えるか」を委員会は前に置きました。GTR、DFDBA、併用療法はいずれもグレードA。エムドゲインとrhPDGF-BB+β-TCPも同等の結果をもたらしうる。選択肢が並列に置かれている以上、慣れた手技を丁寧にやることが、珍しい材料に手を出すより理にかなっています。
そして術前に落とす要因を落とす。なかでも喫煙はグレードAで示された唯一の因子なので、禁煙支援は再生手術の前提に置く価値があります。プラークコントロールはグレードCですが、外科後の維持を考えれば整えておいて損はありません。動揺と欠損形態(ともにB)も考慮に入れる。いずれも材料費のかからない一手です。
術後はメインテナンス。効果的なメインテナンスプログラムと組み合わせることは、臨床推奨に明記されています(ただし長期安定性のデータそのものが、メインテナンス下の結果として報告されているわけではありません)。
⑥ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
骨縁下欠損の再生は、過去に病んだ根面の上でも起こる——付着の獲得、ポケットの減少、エックス線的な骨の高さの増加として確かめられ、5年を超えて安定しうる(抄録の結論部では10年を超えると書かれている)。だが委員会が「最大の可能性」と書いたのは、材料の名前ではなく介入の時期だった。早い段階で再生療法を当てること。そして喫煙は、Table 2 で唯一グレードAが付いた「結果を下げる因子」である。


