ペリオ|ペリオ論文100選
下顎頬側のClassII根分岐部に、ePTFE膜と脱灰凍結乾燥骨移植(DFDBA)を併用する。この組み合わせで、どのくらいの割合が「閉じる」のか。そして、閉じる症例と閉じない症例は何が違うのか。2003年、Bowersらが43名・86部位を前向きに追い、閉鎖率だけでなく「どの形態なら閉じるか」を数字で示しました。術前に予後を読むための1本です。
①「閉じるかどうか」は、開ける前にどこまで読めるか
下顎大臼歯の頬側ClassII根分岐部。再生療法で閉じることがあるのは知っている。問題は、目の前のこの一歯が閉じる側なのか、閉じない側なのかを、フラップを開ける前にどこまで読めるかです。
この論文は、そこに数字を与えました。43名・86部位にePTFE膜とDFDBA(脱灰凍結乾燥骨移植)の併用療法を行い、1年後の根分岐部の状態を、治療に関与していない較正済みの歯周病専門医が判定しています。しかも術中に、根分岐部の形態を8種類の実測値で記録しているのが特徴です。
②術中に、欠損の形を測っている
この研究の肝は測定です。フラップ翻転・デブライドメント後に、較正済みプローブで8つの直線距離を記録しています。
- CEJ〜根分岐部の天井(ROF)=ルートトランクの長さ
- 根分岐部の天井〜欠損の底(ROF-BOD)、天井〜骨頂(ROF-COB)
- 骨頂での根の離開度(RDCB)
- 根分岐部入口での水平的欠損の広がり(HBOD-F)と、骨頂レベルでのそれ(HBOD-C)
- 隣接面骨の高さが根分岐部の天井と同じかそれ以上か(PBH-ROF)を、二値で記録
- 根の陥凹の有無も二値で記録
術式は全例で統一されています。粘膜骨膜弁を翻転し、拡大鏡と補助照明下でハンド・回転・超音波器具によりデブライドメント。エナメル突起は除去し、必要に応じて骨髄穿孔(intramarrow penetration)を行う。クエン酸(pH1.0)を綿球で3分間、根面に作用させたのち生理食塩水で洗浄。DFDBAはテトラサイクリン(DFDBA 250mgに対し125mg)と混和し、隣接する歯槽突起の形態を模して填入。ePTFE膜は欠損縁から3mm以上覆うようトリミングし、歯冠側移動した弁で被覆。膜は6〜9週(平均6.8週)で除去しています。
術後はペニシリンVK→ドキシサイクリンを膜留置期間中投与し、0.12%クロルヘキシジン洗口を1日2回、メチルプレドニゾロン漸減を6日間。術後1・2・4・6・8週、以後3か月まで隔週、その後3か月ごとのメインテナンス。かなり手厚い管理です。
③74%が閉じた。閉じなかった部位も、多くは縮小した
完全閉鎖(プローブが根分岐部へ入らない)は74%=64/86部位。残った22部位のうち15部位(68%)はClassIまで縮小し、ClassIIのまま残ったのは7部位=全体の8%だけ。ClassIIIへ進行した部位は一つもありませんでした。
そして、予後を分けた最大の因子は病変の初期の大きさです。
- 水平的付着レベル(PAL-H)4mm以下の早期病変:90%が完全閉鎖/5mm以上:53%
- 骨頂レベルの水平的欠損深さ(HBOD-C)4mm以下:84%/5mm以上:52%
- 根分岐部の天井〜欠損底(ROF-BOD)が4mm以上:63%
- 天井〜骨頂(ROF-COB)が2mm以下:90%を超える/3mm以上:67%
臨床指標も改善しています。プロービングデプスは4.08mm→2.46mm、垂直的付着レベルは4.02mm→2.69mm。退縮は0.27mm→0.66mmで、増加は1mm未満にとどまりました。
④骨と根の「形」で読む
大きさ以外にも、術前・術中に読める形態因子が2つ挙がりました。
ひとつは隣接面の骨の高さ。近心または遠心の隣接面骨が根分岐部の天井と同じかそれより上にある部位は94%(15/16)が完全閉鎖したのに対し、天井より下にある部位は70%(49/70)。移植材を支える壁が、周囲にどれだけ残っているかという話です。
もうひとつは骨頂での根の離開度。離開が3mm以下なら93%、4mm以上なら61%。根が広がっているほど、閉じるべき空間が大きくなる——直感どおりの結果ですが、数字で押さえられているのが有用です。
一方で、年齢・性別・術者の経験年数(30年超 vs 15年以下)は閉鎖率と関連しませんでした。ルートトランクの長さも有意な関連はなく、むしろ長い(5〜6mm)ほうが閉鎖率は高い傾向(100% vs 71%)でした。根の陥凹がある歯では不完全閉鎖がやや多い傾向(第一大臼歯で46% vs 16%)でしたが有意差には届いていません。
⑤喫煙は「閉じるか」ではなく「どこまで縮むか」に効いた
喫煙の出方が興味深いところです。完全閉鎖率そのものは、喫煙者75%・非喫煙者74%でほぼ同じ。ところが、ClassIIのまま残った部位の割合は喫煙者62.5%(5/8)・非喫煙者14.3%(2/14)で、喫煙者のほうが有意に高い。
つまり喫煙者では、閉じなかったときの「残り方」が悪い。著者らは、Rosenberg & Cutlerが「ClassII根分岐部へのGTRの失敗の80%が喫煙者で起きた」と報告していることにも触れ、喫煙が歯周組織の再生に不利に働くという蓄積しつつある知見を裏づける結果だとしています。
もう一つ、実務的に心強い所見があります。膜の露出は63.5%の部位で起きましたが、露出した部位の完全閉鎖率は74.5%、被覆が保たれた部位は77.8%で、差はありませんでした。膜の留置期間(6〜9週)も、閉鎖率とは関連しませんでした。
⑥明日の臨床へ
- ClassII根分岐部は「閉じうる」病変として扱ってよい。この条件下では74%が完全閉鎖し、ClassIIIへ悪化した部位はなかった
- 予後は術前・術中に読める。水平的な広がりが4mm以下、隣接面骨が根分岐部の天井以上、根の離開が3mm以下——この3つが揃うほど閉じやすい。逆に水平5mm以上・根離開4mm以上なら、閉鎖は半々と見積もって説明する
- 進行した病変でも投げない。高度病変でも50%が完全閉鎖し、残った欠損の68%はClassIへ縮小した。ClassIになれば清掃性は大きく変わる
- 喫煙者には「閉じにくい」ではなく「閉じ切らなかったときに残りやすい」と伝える。禁煙支援の言葉が変わる
⑦ここだけ、冷静に補助線
⑧今日のひとこと
再生療法の予後は、材料より先に「形」が決めている。水平的にどこまで進んでいるか、隣接面の骨がどこにあるか、根がどれだけ広がっているか。フラップを開ける前と、開けた直後の数分で読める情報が、1年後の結果をかなりの精度で予告します。
今日のひとこと
水平プロービング3mm以上の下顎頬側ClassII根分岐部を2部位ずつもつ43名(86部位)に、ePTFE膜と脱灰凍結乾燥骨移植(DFDBA)の併用療法を行い、1年後の根分岐部の状態(閉鎖/ClassI/ClassII)を、治療に関与しない較正済みの歯周病専門医が判定した。完全閉鎖は74%(64/86部位)。残存した22部位のうち68%(15/22)はClassIへ縮小し、ClassIIのまま残ったのは全体の8%(7/86)。ClassIIIへ進行した部位はゼロ。水平的な付着レベル(PAL-H)が4mm以下の早期病変は90%が閉鎖したのに対し、5mm以上では53%。骨頂で測った水平的欠損深さが4mm以下なら84%、5mm以上なら52%。隣接面の骨の高さが根分岐部の天井と同じかそれ以上なら94%(15/16)、天井より下なら70%(49/70)。骨頂での根の離開度が3mm以下なら93%、4mm以上なら61%。喫煙者と非喫煙者で完全閉鎖率は同等(75% vs 74%)だったが、ClassIIのまま残った割合は喫煙者62.5%・非喫煙者14.3%と有意に高かった。膜の露出は63.5%の部位で起きたが、閉鎖率に差はなかった(露出74.5% vs 被覆77.8%)。プロービングデプスは4.08mmから2.46mmへ、垂直的付着レベルは4.02mmから2.69mmへ改善した。著者らの結論は「高度に進行した病変でも50%で完全閉鎖が得られ、残存欠損の68%はClassIへ縮小した。進行した病変の臨床的な解決は達成可能な目標である」。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


