1問1答 論文 歯周病

「1日2回」は、11年後の歯周ポケットを変えるか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

「1日2回は磨いてください」——毎日口にしている言葉ですが、その根拠を問われたら何と答えるでしょうか。虫歯予防のエビデンスは厚い一方、歯周病についてはほとんどが横断研究でした。フィンランドの2つの全国調査をつないだ11年追跡が、この空白を埋めています。

論文
Toothbrushing behaviour and periodontal pocketing: An 11-year longitudinal study
著者
Joshi S, Suominen AL, Knuuttila M, Bernabé E
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2018;45:196-203
種類
前向きコホート研究(全国調査2本の連結・11年追跡)
PMID
29178189

虫歯には言えて、歯周病には言えなかったこと

歯みがきは個人の口腔衛生としてもっとも一般的な推奨であり、専門家による機械的清掃の重要な補助と位置づけられています。ただし著者らは、根拠の厚みが病気によって違うことを指摘します。

フッ化物配合歯磨剤と組み合わせた歯みがきがう蝕を予防することにはエビデンスがある一方、歯周病に対して同じ利益は明確には示されてこなかった——これが出発点です。

先行するシステマティックレビューは、歯みがき頻度が低いことと歯周炎の間に正の関連(オッズ比1.41、95%CI 1.25〜1.58)を報告しています。しかし統合されたのは12の横断研究と2つの症例対照研究で、異質性が大きく6研究では社会経済的地位や喫煙といった重要な交絡が調整されていませんでした。

過去の縦断研究も割れています。デンマークの若者を9〜10歳から20〜21歳まで追った研究では、1日2回未満のほうが2回超よりポケットのスコアが高かったのに対し、北カロライナで高齢者を7年追った研究では、頻度とアタッチメントロスに関連なし。答えは出ていませんでした。

先に結論: 11年で新たに4mm以上のポケットになる歯は、1日1回未満で4.6本、1日2回で0.5本明確な用量反応関係があり、2回で頭打ちになる。

全国調査を2本、11年でつないだ

使われたのはHealth 2000(8,028名)とHealth 2011という、フィンランド国立保健福祉研究所による全国調査です。両方に参加し、両方で歯周データが揃った1,025名が解析対象になりました。追跡期間は平均130か月(範囲122〜134か月)です。

アウトカムはPPD 4mm以上の歯の本数の11年間の変化1歯につき4点(遠心・近心・中央頬側・中央舌側)を、WHOプローブとヘッドランプを用いて計測し、いずれかの部位で4mm以上あればその歯はポケットありと記録——第三大臼歯と残根は除外されています。

歯みがき行動は5択(1日2回超・1日2回・1日1回・毎日ではない・磨かない)で自己申告。「磨かない」の回答者がごく少数だったため「毎日ではない」に統合されました。さらに2つの調査を通じて「1日2回以上」と答えた回数(0〜2)という累積指標も作られています。

調整した交絡は性別・年齢・教育(3段階)・糖尿病・毎日の喫煙・歯科受診パターン・歯数。喫煙の定義も「生涯100本以上かつ1年以上定期的に、直近が調査日か前日」と厳密です。

ベースラインの姿は、平均24.8歯が残存、うち4.2歯がPPD 4mm以上11年間の平均増加は1.0歯(SD 6.0)で、71.0%がベースライン時点で1日2回以上磨いていました。

きれいな用量反応関係が出た

0 1.8 3.7 5.5 11年間で増えた本数(PPD 4mm以上の歯) 4.6 2.1 0.5 0 1日1回未満 1日1回 1日2回 1日2回超 数値が小さいほど良い。1日1回と2回の間には有意差あり、2回と2回超には差なし(p=0.847)
ベースラインの歯みがき頻度別・11年間でPPD 4mm以上になった歯の増加本数(n=1,025)

数字はそのまま並べるだけで語ります。1日1回未満(93名)では11年で4.6歯増加。1日1回(635名)で2.1歯1日2回(263名)で0.5歯1日2回超(34名)で0.0歯

交絡を調整した回帰でも関係は保たれます。1日1回未満を基準にすると、1日1回で2.24歯(95%CI 0.13〜4.35)、1日2回で3.76歯(1.67〜5.85)、1日2回超で3.88歯(1.51〜6.26)少ない傾向性のp値は0.001未満です。

2011年時点の頻度で見ても同じで、それぞれ3.64歯、4.81歯、4.54歯少ないという結果でした。

ここで見逃せないのがどこで差がつき、どこでつかないかです。1日1回と1日2回の間には統計学的な差がある(p<0.001)。しかし1日2回と1日2回超の間には差がない(p=0.847)効果は2回で頭打ちになるということです。

0 1 2 3 11年間で増えた本数(PPD 4mm以上の歯) 2.5 1.8 0.3 両方とも2回未満 どちらか一方のみ 両方とも1日2回以上 「どちらか一方のみ」は2回未満群と有意差なし。続いた人だけが差をつけた(調整後1.96歯)
11年間ずっと「1日2回以上」だった人と、そうでない人(累積効果)

そしてこの研究の白眉が累積指標です。2000年と2011年の両方で「1日2回以上」と答えた678名は11年で0.3歯しか増えず、どちらでも答えなかった209名は2.5歯増えました。調整後で1.96歯の差(95%CI 0.98〜2.93)です。

一方で「どちらか一方だけ」の138名は、まったく磨かない群と有意差がありません(−0.61歯、95%CI −1.88〜0.65)一時期だけ頑張っても、11年の帳尻は合わない——習慣として続いたかどうかが効いています。

誰に、いちばん効いているのか

著者らは感度解析でベースラインの歯周状態によって効果が変わるかを調べています。結果は明確でした。

ベースラインでPPD 4mm以上の歯が1本もない人では、歯みがき頻度による差は見られませんでした。一方で平均4歯(サンプル平均)、あるいは10歯(平均+1SD)のポケットを持つ人では、頻度と増加本数が逆相関していた。すでにポケットを持っている人ほど、歯みがきの保護効果が強いのです。

効果の大きさも実務的な言葉に置き換えられています。著者ら曰く、1日2回以上磨く成人は、1日1回未満の人に比べて、最大で4歯分の「浅いポケットの発生」を防いでいる。そして1日1回でも臨床的な利益は十分にあり、平均2歯分のポケットが防がれている

ここが要点: 0回→1回の一歩が最も大きく、1回→2回でさらに伸び、2回→3回では伸びない。そしてすでにポケットがある人ほど、この効果は大きい

明日の臨床へ

1つ目。「1日2回」に、ようやく縦断研究の裏づけができた。 これまで歯周病に対する歯みがき頻度の根拠は横断研究が中心でした。11年という時間軸で、しかも交絡を調整したうえで用量反応が示された意義は大きく、日々の指導にそのまま使えます。

2つ目。「3回磨いてください」とは言わなくてよい。 1日2回と1日2回超に差はありません(p=0.847)。ただし著者らは「2回超の回答者が少なかったためかもしれず、この水準のセルフケアを思いとどまらせるべきではない」とも書き添えています。やめさせる理由はないが、増やすよう求める根拠もない——このバランスで伝えるのが正確です。

3つ目。すでにポケットがある人にこそ、頻度を確認する。 ベースラインでポケットのない人には差が出ませんでした。歯周治療後の患者さんやリスクの高い患者さんでは、頻度そのものが予後を動かす——問診の重みが変わります。

4つ目。「一時期だけ」では届かないと伝える。 どちらか一方の調査でだけ2回以上だった人は、まったく磨かない群と差がありませんでした継続してはじめて数字が動くという、この研究にしか言えない事実です。メインテナンスで習慣を確認し続ける根拠になります。

ここだけ、冷静に補助線。 これは介入試験ではなく観察研究なので、因果を断定はできません(丁寧に磨く人は、ほかの健康行動も良好である可能性が残ります)。著者ら自身も限界を4つ挙げています。①対象はフィンランド5地域のうち南部・北部の2地域のみで、全国民に一般化できない②ポケット深さは「現在の活動性」を映すもので、蓄積した過去の疾患量(アタッチメントロス)とは違う③1歯につき最悪のコードだけを記録したため、有病率と重症度を過小評価している④2000年の検者間一致は中等度(77%、κ=0.41)で、一定の測定バイアスがある。加えて歯みがき行動は自己申告です。ただし著者らは「自己申告の歯みがき頻度と口腔衛生指標には良好な相関があるという証拠があり、何よりプラークコントロールに関する現在の推奨は、臨床的なプラーク量ではなく習慣的な歯みがき行動に基づいている」と応じています。観察研究の限界を踏まえてなお、「毎日の2回を、11年続ける」という助言の重みを支える1本です。

今日のひとこと

フィンランドの全国調査Health 2000とHealth 2011の両方に参加した有歯顎成人1,025名(30〜89歳・平均46.6歳)を、約11年(平均130か月)追跡。アウトカムはポケット深さ4mm以上の歯が何本増えたかです。ベースラインは平均24.8歯が残存、うち4.2歯がPPD 4mm以上で、11年間の平均増加は1.0歯でした。結果は明快な用量反応関係。ベースライン時点で1日1回未満しか磨かない人は11年で4.6歯増えたのに対し、1日1回で2.1歯、1日2回で0.5歯、1日2回超で0.0歯。交絡(性別・年齢・教育・糖尿病・喫煙・受診パターン・歯数)を調整しても、1日1回で2.24歯(95%CI 0.13〜4.35)、1日2回で3.76歯(1.67〜5.85)、1日2回超で3.88歯(1.51〜6.26)少なくて済んでいます。さらに累積効果も認められ、2000年と2011年の両方で「1日2回以上」と答えた人は、どちらでも答えなかった人より1.96歯(95%CI 0.98〜2.93)少ないという結果でした。一方で1日2回と1日2回超の間には統計学的な差がなく(p=0.847)効果は2回で頭打ちになっています。またベースラインでポケットのない人には差が出ず、既にポケットを持つ人ほど効果が大きいことも示されました。

出典:Joshi S, Suominen AL, Knuuttila M, Bernabé E. Toothbrushing behaviour and periodontal pocketing: An 11-year longitudinal study. J Clin Periodontol 2018;45:196-203. PMID: 29178189
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。