1問1答 論文 歯周病

ノンアルコールの洗口液は、効果が落ちるのか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

「刺激が強くて使えない」と言われて、ノンアルコールの洗口液を勧める場面があります。ただ、アルコールはエッセンシャルオイルを溶かし込むための溶媒でもある。抜いたら効果はどうなるのか——370名・6か月のランダム化比較試験が、この素朴な疑問に答えています。

論文
The effects of essential oil mouthrinses with or without alcohol on plaque and gingivitis: a randomized controlled clinical study
著者
Lynch MC, Cortelli SC, McGuire JA, Zhang J, Ricci-Nittel D, Mordas CJ, Aquino DR, Cortelli JR
掲載
BMC Oral Health 2018;18:6
種類
ランダム化比較試験(単施設・検者盲検・並行群間・6か月)
PMID
29321067

アルコールは、ただの刺激ではない

エッセンシャルオイル洗口液におけるアルコールの役割を、著者らはこう説明します。保存料であると同時に、エッセンシャルオイルを可溶化して、その生物学的利用能を保つ働きを担っている。つまり抜けば単に「まろやかになる」のではなく、有効成分が溶けていられるかどうかに関わるということです。

一方で、アルコールが入っていることが使用を妨げてきた集団があります。著者らが挙げるのは小児、アルコール依存症の方、味覚の刺激に敏感な方、特定の宗教的信条を持つ方、そして口腔粘膜炎の患者さん。臨床で「これは勧めにくい」と感じる場面と、そのまま重なります。

そこでノンアルコールのエッセンシャルオイル洗口液(AFM)が開発されました。in vitroとin vivoで抗菌性が示され、短期の臨床試験でプラークと歯肉炎の減少も確認されています。ただし著者らは限界を明記します。アルコール含有版と直接比較した長期(6か月以上)の研究は、それまで存在しなかった

先に結論: アルコールの有無で差はつかなかった。歯肉炎の減少は28.2%対26.7%、プラークは37.8%対37.0%で、2剤の直接比較はどの時点でも有意差なし

成分を揃え、アルコールだけを抜いた

この試験の要は「比べているのがアルコールの有無だけ」という点にあります。両剤とも4種のエッセンシャルオイルを同一の固定配合で含み——ユーカリプトール0.092%、メントール0.042%、サリチル酸メチル0.060%、チモール0.064%——ノンアルコール版だけがラウリル硫酸ナトリウムとプロピレングリコールを追加して溶解性を確保しています。

対象は18歳以上、全身・口腔とも健康(軽度〜中等度の歯肉炎は許容)、20歯以上が残存する方。ベースラインで修正歯肉指数1.95以上かつプラーク指数1.95以上という条件があり、中等度〜進行した歯周炎、固定・可撤性の矯正装置や義歯のある方は除外されています。

全員が同じフッ化物配合歯磨剤と同じ軟毛歯ブラシを受け取り、1日2回のブラッシングを指示されました。洗口液群はこれに加えてブラッシング後に20mLで30秒の洗口を1日2回日誌を記録し、ボトルを毎月計量して申告量と実使用量を照合するというコンプライアンス管理まで行われています。

盲検も丁寧です。検査は訓練された1名の同じ検者が全期間を通じて担当し、割り付けを知らされていません投与物は盲検包装で、それを扱う担当者は検査に一切関与しない設計になっています。

結果:どちらも効き、差はつかなかった

0 0.9 1.7 2.6 6か月後の修正歯肉指数 MGI 2.2 1.6 1.6 機械的清掃のみ ノンアルコール アルコール含有 小さいほど炎症が少ない。機械的清掃のみに対し26.7%減と28.2%減。2剤の差はp=0.198
6か月後の修正歯肉指数(MGI)。数値が小さいほど歯肉の炎症が少ない

機械的清掃のみの群と比べて、アルコール含有版は歯肉炎を28.2%減少(差 −0.620、95%CI −0.670〜−0.570、p<0.001)ノンアルコール版は26.7%減少(差 −0.587、95%CI −0.637〜−0.538、p<0.001)1か月・3か月の時点でも同様に有意でした。

そして問いの核心である2剤の直接比較6か月時点のMGIの差は −0.033(95%CI −0.083〜0.017、p=0.198)1か月で0.006(p=0.756)、3か月で −0.004(p=0.878)——どの時点でも差はありません

0 1.1 2.3 3.4 6か月後のプラーク指数 PI 2.9 1.8 1.8 機械的清掃のみ ノンアルコール アルコール含有 機械的清掃のみに対し37.0%減と37.8%減。2剤の差はp=0.371
6か月後のプラーク指数(PI)。こちらも2剤間に差はなかった

プラークでも同じ絵になります。機械的清掃のみと比べて、アルコール含有版で37.8%減、ノンアルコール版で37.0%減(いずれもp<0.001)2剤の差は −0.024(p=0.371)歯肉出血指数も1・3・6か月のすべてで有意に減少し、2剤間に差はありませんでした。

著者らはさらに事後の非劣性解析を行っています。6か月時点のMGI最小二乗平均の比(AFM/ACM)は1.021=102%、90%Fieller信頼区間は99〜105%米国歯科医師会の基準では、90%信頼区間の全体が110%以下であれば非劣性が成立するため、「少なくとも同等(at least as good as)」が統計的に示されたことになります。

安全性という、もう一つの答え

洗口液を長期に勧めるとき、効果と並んで気になるのが副作用です。この試験はベースラインと毎月の受診時に口腔内を診査し、軟組織・硬組織への影響を監視していました。

結果、すべての治療は良好に忍容され、報告された有害事象は軽度または中等度重篤な有害事象はゼロで、有害事象を理由に脱落した被験者もいませんでした。

製品との関連が判定された有害事象は3名(0.8%)にとどまります。内訳はアルコール含有群とノンアルコール群で各1名の知覚過敏、アルコール含有群で1名の消化不良いずれも治療を要さず消失しています。

ここが要点: ノンアルコール版は「効果を犠牲にした妥協案」ではない。ADAの非劣性基準を満たし、安全性でも差がない。選択の理由を、患者さんの事情だけで決めてよい。

明日の臨床へ

1つ目。アルコールが苦手な患者さんに、堂々と勧められる。 6か月・370名で、効果に差がないことが示された——しかもADAの非劣性基準を満たす形でです。「刺激が強くて続かない」という訴えに、効果を落とさない代替を提示できます。

2つ目。選ぶ基準を「刺激・味・生活背景」に置いてよい。 効果で優劣がつかない以上、続けられるかどうかが唯一の判断軸になります。この研究は小児・口腔粘膜炎・宗教上の理由・アルコール依存といった具体的な場面を挙げていますが、単に「ヒリヒリして嫌」も十分な理由です。

3つ目。前提は変わらない——機械的清掃への「上乗せ」である。 3群のうち2群はどちらも「機械的清掃+洗口液」で、洗口液単独の群は存在しません。歯ブラシの代わりではない、という説明はここでも必要です。

4つ目。数字を持っておくと説明が早い。 機械的清掃だけの人に比べて、歯肉炎が約27〜28%、プラークが約37%減る。この2つを覚えておくと、洗口液を足す意味を患者さんに一言で伝えられます。

ここだけ、冷静に補助線。 最初に押さえるべきは利益相反です。著者の多くは試験製品を製造する企業に所属しており、試験もその企業のバイオメトリクス部門が設計した無作為化スキームで運用されています。結果の方向がスポンサーに有利であることは念頭に置くべきです。ただし単施設・検者盲検・6か月・370名という設計はしっかりしており、非劣性の判定にADAの外部基準を用いている点は評価できます。対象は軽度〜中等度の歯肉炎の方で、中等度以上の歯周炎は除外——歯周炎の患者さんにそのまま当てはめられません。また「アルコールの有無」の比較であって、エッセンシャルオイルと他の成分(クロルヘキシジンやCPC)の比較ではない点にも注意が要ります。とはいえ2016年のEscribanoらによるネットワークメタ解析でも、ノンアルコール版のエッセンシャルオイルは通常版と同等(プラセボとの差はともに −0.86)と出ており、別の手法で同じ結論に届いているのは心強いところです。

今日のひとこと

ブラジル・タウバテ大学で行われた6か月の3群比較RCT370名が登録し、348名が完遂しました。3群は①機械的清掃のみ(MOH・n=123)②機械的清掃+ノンアルコールのエッセンシャルオイル洗口液(AFM・n=124)③機械的清掃+アルコール含有のエッセンシャルオイル洗口液(ACM・n=123)2剤の有効成分は同一で、ユーカリプトール0.092%・メントール0.042%・サリチル酸メチル0.060%・チモール0.064%という固定配合。1日2回、ブラッシング後に20mLで30秒洗口します。主要評価項目は6か月時点の修正歯肉指数(MGI)。結果、機械的清掃のみに比べて歯肉炎はACMで28.2%、AFMで26.7%減少(いずれもp<0.001)プラークはACMで37.8%、AFMで37.0%減少(p<0.001)。そして肝心の2剤の直接比較では、6か月時点のMGIで差 −0.033(95%CI −0.083〜0.017、p=0.198)、PIで −0.024(p=0.371)と、どの時点・どの指標でも統計学的な差はありませんでした。事後の非劣性解析でもAFM/ACMのMGI比は1.021=102%(90%Fieller CI 99〜105%)で、米国歯科医師会が定める非劣性基準(90%CI全体が110%以下)を満たしています有害事象は軽度〜中等度のみ、製品関連は3名(0.8%)で、重篤なものはありませんでした。

出典:Lynch MC, Cortelli SC, McGuire JA, Zhang J, Ricci-Nittel D, Mordas CJ, Aquino DR, Cortelli JR. The effects of essential oil mouthrinses with or without alcohol on plaque and gingivitis: a randomized controlled clinical study. BMC Oral Health 2018;18:6. PMID: 29321067
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。