1問1答 論文 歯周病

動機づけ面接を1回足すと、3年後どうなるか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

初期治療の直後は、みなさん驚くほどきれいに磨いてくれます。問題はその先。1年、2年と経つうちに元へ戻っていく——この「後戻り」を止められないかと、心理士による動機づけ面接(MI)を1回だけ足してみた研究があります。3年後を追いかけた結果は、少し意外なところに着地しました。

論文
A brief motivational interviewing as an adjunct to periodontal therapy—A potential tool to reduce relapse in oral hygiene behaviours. A three-year study
著者
Stenman J, Wennström JL, Abrahamsson KH
掲載
International Journal of Dental Hygiene 2018
種類
ランダム化比較試験の3年追跡調査
PMID
28836375

教えるだけでは、続かない

歯周炎の進行を止める鍵は感染のコントロールが確立することで、そのためには患者さん自身が適切な口腔清掃を続けてくれることが要ります。ところが著者らはこう書きます。高い水準の口腔衛生行動を長期にわたって維持することは、歯周炎患者にとって難しい課題であり、患者の動機づけを高めることを狙った従来型の教育的介入の長期効果には疑問が呈されてきた

そこで注目されたのが動機づけ面接(motivational interviewing/MI)です。患者中心でありながら方向づけを持つ療法で、行動変容への「準備性」を高めることを狙います。指示や説得ではなく、変化への抵抗をその場で解きほぐすのが特徴です。

この研究チームは先行するRCTで、MIを1回足すと6か月後にどうなるかをすでに調べていました。答えは「短期的な上乗せ効果は認められない」。ただし両群とも全顎MBIが20%を下回る良好な水準に達していたため、差が出にくかったとも言えます。

ならば問いは次に移ります。MIの価値は「効果を上げること」ではなく「後戻りを防ぐこと」にあるのではないか。MIは他の治療プログラムの前置きとして使われたとき、効果が持続する、あるいは時間とともに増大することさえあると報告されていたからです。3年という時間軸で見れば、差が現れるかもしれない——それがこの追跡研究の仮説でした。

先に結論: 3年後も両群に差はなかった(MBI 14.7% 対 15.4%)。ただし本当の発見は別にある。3年後を予測できた唯一の因子は「治療直後の出血指数」だった。

26名を3年後に呼び戻した

元のRCTには慢性歯周炎の39名が参加していました。性別と喫煙習慣で層別化したうえでMI群と対照群にランダム化され、6か月の追跡を完了しています。

MI群だけが、歯周治療の開始前に臨床心理士によるMIを1回受けました。面接では患者自身の健康観、口腔の状態をどう捉えているか、それが過去・現在・未来の行動とどう結びつくかが扱われ、行動変容への自己効力感が探索され、支持されます。所要は平均44分(範囲20〜90分、中央値40分)全セッションが録音され、50%(11件)は独立した評価者がMITI 3.0で評価という、手技の質を担保する設計です。

それ以外は両群とも完全に同じ4名の経験ある歯科衛生士が、従来型の教育介入と機械的な感染コントロールを、平均で合計4時間のセッションとして提供しました。

3年後、39名に郵送と電話で連絡し、26名(各群13名)が再検査に応じました。評価は1本あたり6点(近心頬側・中央頬側・遠心頬側・遠心舌側・中央舌側・近心舌側)で、MBI=プロービング後の出血の有無PI=染め出し後のプラークの有無を記録。検査は群割り付けを知らない、それまで治療に関与していない1名の歯科衛生士が担当しています。

出血は3年間、保たれた

0 15% 30% 45% 全顎の辺縁出血指数 MBI(%) 37.8% 32.1% 17.1% 16.3% 14.7% 15.4% ベースライン 6か月 3年 濃い棒=MI群。すべての時点で群間差なし(各群13名)
全顎の辺縁出血指数(MBI・%)の推移。どの時点でも群間差なし(n=26)

ベースラインの全顎MBIはMI群37.8%、対照群32.1%6か月で17.1%と16.3%まで下がり、3年後は14.7%と15.4%すべての時点で統計学的な群間差はありません

注目すべきはむしろ時間軸のほうです。3年後の平均が15%——これは能動的治療の直後(6か月)の水準と同等かそれ以上でした。隣接面に限っても、6か月の20〜21%から3年後には16%へ、わずかながら下がっています

被験者の73%が、3年後もMBI 20%以下という望ましい水準を保っていました(MI群69%・対照群77%、p>0.05)。

0 20% 40% 60% 全顎のプラークスコア PI(%) 49.6% 38.4% 25.3% 15.7% 42.1% 41.9% ベースライン 6か月 3年 濃い棒=MI群。6か月から3年で両群とも有意に悪化(p<0.01)。出血指数とは逆の動き
全顎のプラークスコア(%)の推移。6か月から3年で両群とも有意に悪化した

ところがプラークスコアは別の動きを見せます6か月時点でMI群25.3%・対照群15.7%だったものが、3年後には42.1%と41.9%へ。両群とも6か月から3年にかけて有意に上昇しました(p<0.01)。PIが20%以下だったのは、MI群39%・対照群31%にとどまります。

磨けていないのに、出血は増えていない——この一見矛盾する結果を、著者らはこう説明します。PIは検査したその瞬間の口腔清掃状態の一断面を写すにすぎないが、MBI(主要評価項目)は、患者が長期にわたって自己管理による感染コントロールを維持できたかどうかを照らし出す指標である

本当の発見は、回帰分析のほうにあった

著者らは3年後にMBI 20%以下を達成できるかを予測するロジスティック回帰を組みました。投入した変数は治療群(MIの有無)・性別・喫煙・6か月時点のMBIの4つです。

統計学的に有意な説明変数は、ただ1つ「6か月時点のMBI」(OR 0.81、95%CI 0.67〜0.98、p=0.03)だけでした。MIを受けたかどうか(OR 0.46、p=0.53)も、喫煙(p=0.16)も、性別(p=0.76)も、予測に寄与していません。モデルの説明力はR²=0.51と決して低くありません。

相関分析も同じ方向を指しています。3年後の全顎MBIは、6か月時点のMBIと強く相関(rs=0.73、p<0.01)ベースラインのMBIとの相関(rs=0.52)よりも強い。もう一つ、3年後にMBIが低い人は、歯間清掃の頻度が高い(rs=0.43、p<0.05)という相関も出ています。実際、62%が毎日の歯間清掃を報告していました。

ここが要点: 3年後を決めるのは、面接を受けたかどうかではなく「治療を終えた時点でどこまで到達できていたか」。到達点そのものが、その後の予後を運んでいく。

明日の臨床へ

1つ目。初期治療の「出口の数字」を、本気で詰める。 3年後を予測したのは治療直後のMBIでした。「だいたい良くなったので終了」で切り上げた分だけ、3年後の姿が変わるという読み方ができます。終了ラインを甘くしないことに、長期の意味があります。

2つ目。出血で管理する。プラークだけを見ない。 この研究でプラークは大きく戻ったのに、出血は保たれていました。染め出しの数字が悪いと落ち込みがちですが、患者さんが長期に維持できているかを映すのは出血のほうです。評価の軸を持ち替えると、指導の言葉も変わります。

3つ目。歯間清掃の頻度は、追いかける価値がある。 3年後にMBIが低い人ほど歯間清掃の頻度が高いという相関が出ています。問診票に1行足すだけで、リスクの見当がつきます。

4つ目。それでも「支持療法」が効いている。 1名を除く全員が、この3年間も定期的な受診を続けていました。著者らは「能動的治療後に提供された定期的な支持療法が、良好な口腔衛生行動の維持に寄与したと考えられる」と書いています。1回の面接より、通い続けてもらう仕組みのほうが効いている——ここが実務的にいちばん大きな示唆です。

ここだけ、冷静に補助線。 3年後に再検査できたのは26名(各群13名)と小さく、著者ら自身が事後の検出力を40%と算出しています(80%の検出力には各群35名が必要)。つまり「MIに効果がないと証明された」のではなく、この規模では差を検出しきれない状態です。さらに著者らは「対照群のうち2名は6か月から3年にかけて明らかな後戻りを示しており、MI群にそれが見られなかったことは、行動の後戻りを防ぐ効果を示唆しているのかもしれない——これは今後のより大きな研究が答えるべき問い」とも書き添えています。加えて、参加者はもともと専門クリニックに紹介されてきた治療意欲の高い集団で、著者らは「すでに両価性の段階を通り過ぎていたため、MIが役に立ちにくかった可能性」を挙げています。MIは「変わる気になれない人」にこそ効く手法だとすれば、この集団は最初から適応の外だったのかもしれません。MIそのものを捨てる読み方ではなく、誰に使うかを選び直す読み方が妥当です。

今日のひとこと

スウェーデン・イエテボリの歯周専門クリニックで行われた6か月RCTの3年追跡。元の39名のうち26名(MI群13名・対照群13名)が再検査を受けました。MI群だけが、歯周治療の開始前に臨床心理士による動機づけ面接を1回(平均44分)受け、それ以外は両群とも同じ従来型の教育と非外科的歯周治療(歯科衛生士による平均4時間のセッション)を受けています。主要評価項目は辺縁出血指数(MBI)。結果、全顎MBIはベースラインでMI群37.8%・対照群32.1%、6か月で17.1%・16.3%、3年で14.7%・15.4%と、どの時点でも群間差なし3年後は両群とも平均15%で、治療直後の水準を3年間ほぼ保っていました。一方プラークスコアは6か月の25.3%/15.7%から、3年後には42.1%/41.9%へ有意に悪化——磨けてはいないのに、出血は増えていないという対比です。ロジスティック回帰で3年後にMBI 20%以下を保てるかを予測できた唯一の因子は「6か月時点のMBI」(OR 0.81、95%CI 0.67〜0.98、p=0.03)で、MIを受けたかどうかは予測因子になりませんでした被験者の73%が3年後もMBI 20%以下を維持しています。

出典:Stenman J, Wennström JL, Abrahamsson KH. A brief motivational interviewing as an adjunct to periodontal therapy—A potential tool to reduce relapse in oral hygiene behaviours. A three-year study. Int J Dent Hyg 2018. PMID: 28836375
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。