1問1答 論文 虫歯

歯磨剤に「もう一つ」足すと、どれくらい上乗せされるのか──コクランの答えは10%

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|う蝕の病因(フッ化物の併用)

すでにフッ化物配合の歯磨剤は使っている。そこへ洗口液を足すか、ジェルを足すか、バーニッシュを塗るか。どれも効くと習いました。では「足したぶん、どれくらい上乗せされるのか」を数字で言えるでしょうか。2004年のコクランレビューの答えは、D(M)FS増加量が10%減る——上乗せはある、ただし控えめ、というものでした。

論文
Combinations of topical fluoride (toothpastes, mouthrinses, gels, varnishes) versus single topical fluoride for preventing dental caries in children and adolescents
著者
Marinho VCC, Higgins JPT, Sheiham A, Logan S
掲載
Cochrane Database of Systematic Reviews 2004, Issue 1. Art. No.: CD002781
種類
システマティックレビュー・メタ解析(ランダム化/準ランダム化比較試験のみ・変量効果モデル)
対象
16歳までの子どもを1年以上追跡した12研究(主要解析は9試験・4,026人)

「歯磨剤に、もう一つ足しますか」

う蝕リスクの高い子どもに、フッ化物の話をする場面を思い浮かべてください。

すでにフッ化物配合の歯磨剤は使っている。そこへ洗口液を足すか、ジェルを足すか、バーニッシュを塗るか。どれも効くと習いました。では「足したぶん、どれくらい上乗せされるのか」を、数字で言えるでしょうか。

2004年のコクランレビューは、そこを正面から集計しています。

先に結論: 上乗せはある。ただし控えめです。歯磨剤に他の局所フッ化物を足すと、D(M)FS増加量が10%減りました(95%CI 2〜17%・P=0.01・9試験4,026人)。著者らの言葉は “modest reduction”——「そこそこの減少」。劇的、ではありません。

個々の効果は分かっていた。足し算が分かっていなかった

局所フッ化物——歯磨剤・洗口液・ジェル・バーニッシュ——は、それぞれ単独でう蝕予防効果があることが確立していました。同じ著者らのグループが、それぞれについてコクランレビューを出しています。

ところが「2つ同時に使ったとき、上乗せがどれくらいあるのか」は、体系的に検討されていませんでした。過去半世紀の臨床試験の大半は1つの局所フッ化物を扱っており、併用を直接調べた試験はごく少数だったからです。

この問いは、実務にそのまま効きます。洗口液を勧めれば、保護者に手間と費用が発生する。バーニッシュを塗れば、チェアタイムとコストがかかる。「上乗せの大きさ」が分からなければ、その負担が見合うのか判断できません

ランダム化試験だけを、1年以上追ったものだけを

組み入れ基準は厳格です。

  • ランダム化または準ランダム化比較試験で、アウトカム評価が盲検化されているもの
  • 16歳までの子どもを1年以上追跡したもの
  • 主要アウトカムはD(M)FS増加量の変化
  • 効果指標は予防割合(prevented fraction, PF)=介入群と対照群の平均う蝕増加量の差を、対照群の増加量に対する割合で表したもの

12研究が組み入れられ、うち11研究がメタ解析にデータを提供しました。解析は変量効果モデルです。

上乗せは10%。しかし内訳を見ると

0 6.7% 13.3% 20% 予防割合 PF(%) 10% 7% 14% 全体(9試験) 洗口液を追加 ジェルを追加 有意なのは全体の10%のみ(95%CI 2〜17・4,026人)
フッ化物歯磨剤に他の局所フッ化物を追加したときの予防割合(PF)。灰色の3本はサブグループで、いずれも解釈に注意が要ります(下記参照)

主要な結果はこうです。

9試験・4,026人を統合した D(M)FS の予防割合は0.10(95%CI 0.02〜0.17、P=0.01)。歯磨剤単独より、併用のほうが有意に少ないう蝕増加量でした。異質性は大きくありません(I²=32%)。

ここからが大事なところです。種類別に分けると、歯磨剤単独に対して明確に勝ったと言えるものが残りません

  • 洗口液+歯磨剤 vs 歯磨剤(5試験・2,738人):PF 0.07(95%CI 0.00〜0.13、P=0.06)——あと一歩で有意。信頼区間は狭い
  • ジェル+歯磨剤 vs 歯磨剤(3試験・1,217人):PF 0.14(95%CI −0.09〜0.38)——幅が広く、試験間のばらつきも大きい(I²=61%)
  • バーニッシュ+歯磨剤 vs 歯磨剤(1試験・71人):PF 0.48(95%CI 0.12〜0.84、P=0.009)——統計的には有意。ただし著者らは「偽の結果である可能性が高い」と評価しています
48%という数字に飛びつかない: この値は統計的には有意です(P=0.009)。それでも著者らはアブストラクトで「有意差は非常に小規模な試験に由来しており、偽の結果である可能性が高いと思われる」と書きました。71人・二重盲検でない1試験だけの結果だからです。実際、メタ解析の中で最も重みが小さい試験ほど、極端な値(−0.15や0.48)を出しています。「有意かどうか」と「信じてよいか」は別の問いだという良い例です。

10%を、何人分の手間に翻訳するか

0 5.3人 10.7人 16人 1面を防ぐのに必要な人数(NNT) 13人 4人 年0.8面の集団 年2.5面の集団 1年に1面を防ぐのに併用を続ける必要のある人数
1年に1面のう蝕を防ぐために、併用を続ける必要のある子どもの人数(NNT)。う蝕がよく出る集団ほど、少ない人数で1面を救える

「10%減る」は、現場の感覚に翻訳しないと意味を持ちません。著者らはNNT(治療必要数)に直しています。

  • 年間のう蝕増加が0.8 D(M)FSの集団(組み入れ試験の最も低い側):絶対的な減少は年0.08面。NNT 13(95%CI 8〜63)
  • 年間のう蝕増加が2.5 D(M)FSの集団(最も高い側):絶対的な減少は年0.25面。NNT 4(95%CI 3〜20)

つまり、う蝕がよく出る集団では4人に併用を続ければ年1面を救えるが、う蝕の少ない集団では13人分の手間が要る。同じ「10%」でも、集団によって重みがまったく違います。

もう一つ、興味深い結果があります。ジェル+洗口液 vs ジェル単独(2試験・497人)では、PF 0.23(95%CI 0.04〜0.43、P=0.02)と有意でした。一方洗口液+ジェル vs 洗口液単独(1試験・252人)では PF 0.02(95%CI −0.20〜0.24、P=0.86)で差なし。著者らは「これは間接的に、単独で使うならジェルより洗口液のほうが大きな減少を得られる可能性を示唆する」と読んでいます。

安全性については、答えが出ていない

このレビューでもう一つ確認しておくべきは、有害事象について結論できなかったことです。試験がほとんど報告していませんでした。

代わりに測れたのは「途中で脱落した割合」=治療の受け入れにくさです。5試験・1,998人でリスク比1.06(95%CI 0.93〜1.22。解析表の値。本文には0.96〜1.21とあり、原著内でわずかに食い違います)、異質性なし(I²=0%)。併用したからといって、脱落が増えることはありませんでした

受け入れやすさは確認できた。しかしフッ素症などの有害事象は、そもそもデータがない——ここは正直に押さえておく必要があります。

明日の診療で、何を1つ変えるか

「足すかどうか」ではなく「誰に足すか」: 上乗せが10%なら、もともとのう蝕増加量が大きい人ほど、足す価値が大きくなります——NNTの13対4がそれを示しています。ただし著者ら自身は、そこで立ち止まるように書いています:この考え方は予防を高リスク集団へ絞り込むことを強めるが、新しく発生するう蝕の大半は、リスクが低い側の「多数派」に起きている、と。

この結果からは、次のような言い方ができます。

  • まず歯磨剤を確実に使ってもらう。上乗せは、その土台があってはじめて10%です
  • 足す優先順位をつけるなら、う蝕がよく出ている子から。ただし低リスクの子を切り捨てる理屈にはしない(新規う蝕の大半はそちらで起きる、と著者らは釘を刺しています)
  • 保護者への説明は「これを足すと虫歯が半分になります」ではなく、「10%ほど上乗せできます。お子さんは出やすいほうなので、その10%が効きます」のほうが正確です
  • 歯磨剤に何を足すかについては、このレビューは明確な優劣を出していません(著者らも「明確な推奨はできない」と書いています)。続けやすいものを選ぶ、で構わないと読めます

ここだけ、冷静に補助線

誠実なレビューです。ただし読むときの注意が3つ: 第一に、検索は2000年5月まで(MEDLINEは2000年1月まで)、内容の最新性評価は2003年11月——20年以上前のエビデンスであり、その後のフッ化物濃度の主流(1,450ppm)や、この20年の局所フッ化物の使い方の変化は反映されていません(なお組み入れられたバーニッシュ試験は、当時すでに22,600ppm Fのものを使っています)。第二に、介入の中身が試験ごとにかなり違います——洗口液のフッ素濃度は100〜900ppm、ジェルの塗布頻度は年2回から年22回まで幅があります(なお背景の水道水フッ化物添加については、著者らは全試験で曝露の有無が報告されており、そこに効果が依存する証拠は見つからなかったと述べています)。第三に、サブグループの結果は、信頼区間が広いか、単一の小規模試験に依存しています。この10%という数字は「歯磨剤に何かを足す」というまとまり全体の平均であり、「洗口液なら7%、ジェルなら14%」と個別に断定できるものではありません。それでも、4,000人超のランダム化試験を統合して「上乗せは控えめ」と数字で言い切ったことの価値は大きく、保護者への説明を誠実にするための土台になります。

今日のひとこと

フッ化物歯磨剤に、洗口液・ジェル・バーニッシュのいずれかを追加した場合の上乗せを集計したコクランレビュー。9試験・4,026人を統合したD(M)FSの予防割合(PF)は0.10(95%CI 0.02〜0.17、P=0.01)で、併用が有意に有利だった(異質性I²=32%)。著者らの表現は “modest reduction”——控えめな減少である。種類別に分けると、歯磨剤単独に明確に勝ったと言えるものが残らない:洗口液+歯磨剤 PF 0.07(95%CI 0.00〜0.13、5試験2,738人)、ジェル+歯磨剤 PF 0.14(95%CI −0.09〜0.38、3試験1,217人、I²=61%)、バーニッシュ+歯磨剤 PF 0.48(95%CI 0.12〜0.84、P=0.009)は統計的には有意だが、71人・非二重盲検の1試験のみで、著者ら自身がアブストラクトで「偽の結果である可能性が高い」と書いている。10%をNNTに翻訳すると、年間う蝕増加0.8 D(M)FSの集団でNNT 13(95%CI 8〜63)、2.5 D(M)FSの集団でNNT 4(95%CI 3〜20)——同じ10%でも、う蝕がよく出る集団ほど価値が大きい。他の組み合わせではジェル+洗口液 vs ジェル単独のPF 0.23(95%CI 0.04〜0.43、P=0.02)のみ有意だった。有害事象については、報告が乏しく結論できなかった(脱落率の比較ではリスク比1.06・95%CI 0.93〜1.22で差なし)。ただし検索は2000年5月まで、内容の最新性評価は2003年11月である。また著者らは、高リスクへの絞り込みについて「新規う蝕の大半はリスクの低い多数派に起きる」と釘を刺している。

出典:Marinho VCC, Higgins JPT, Sheiham A, Logan S. Combinations of topical fluoride (toothpastes, mouthrinses, gels, varnishes) versus single topical fluoride for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev 2004, Issue 1. Art. No.: CD002781. DOI: 10.1002/14651858.CD002781.pub2. PMID: 14973992
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。