1問1答 論文 虫歯

RDAは口の中でも当てになりそうだ──研磨性の比2.22が、削れ方の比2.58になった

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|トゥースウェア(歯磨剤と摩耗)

歯磨剤のパッケージに書かれることもある「RDA」。実験室で測った研磨性の指標ですが、それが口の中で本当に意味を持つのかは、長らく分かっていませんでした。2002年、ブリストル大学のAddyらは、上顎の装置に人の象牙質片を埋め込んだボランティア10人に、RDA 85とRDA 189の歯磨剤で10日間みがかせました。削れた深さの比は2.58。RDA値の比2.22と、ほぼ揃っていました(ブラッシングは装置を外して試片に直接行っています)。

論文
Development of a method in situ to study toothpaste abrasion of dentine. Comparison of 2 products
著者
Addy M, Hughes J, Pickles MJ, Joiner A, Huntington E
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2002;29(10):896-900
種類
in situ研究。検者盲検・無作為化・2処置2期クロスオーバー(洗い出し期間2日半)
対象
健康な有歯顎のボランティア10人。上顎可撤式装置に、未萌出智歯から切り出した象牙質片2枚を埋め込んだ

「この歯磨剤、削れませんか」に答える数字はあるか

知覚過敏の患者さんや、くさび状欠損が気になる患者さんに、歯磨剤を選ぶ話をすることがあります。そのとき手がかりになるのがRDA(Relative Dentine Abrasivity=相対象牙質摩耗値)です。

ただ、この数字にはずっと弱点がありました。実験室で測った値であって、口の中で何が起きるかは分からない。歯の摩耗は摩耗・咬耗・酸蝕が絡み合う多因子の現象なので、「歯磨剤だけの影響」を人の口で測ること自体が難しかったのです。

2002年、ブリストル大学のAddyらは、酸蝕の研究で使われていたin situ法を摩耗用に作り変えて、この問いに挑みました。

先に結論: RDA 85とRDA 189の歯磨剤で、口腔内に置いた象牙質を10日間みがいたところ、削れた深さの比は2.58。RDA値の比2.22と、ほぼ揃いました。RDAの数字は、口の中でも当てになりそうです。

口の中に象牙質を置いて、10日間みがく

設計はこうです。健康な有歯顎のボランティア10人に、上顎の可撤式レジン装置を作りました。口蓋正中の両側に保持スロットがあり、そこに象牙質片を口腔側に向けて埋め込みます。

  • 象牙質は18〜30歳の未萌出智歯から切り出し、エポキシ樹脂に包埋して8×5×2 mmの試片に
  • 800番の研磨で平坦な面を出し、幅2 mmの窓を残してPVCテープでマスキング
  • 装着は9時から16時まで。装着中は水以外の飲食をしない
  • 10時・11時・14時・15時・16時の5回、装置を外して、小さめのヘッドの歯ブラシで各試片を60秒ずつブラッシング
  • プラークが付かないよう、装着前と1日の終わりに0.2%クロルヘキシジンに2分浸ける
  • 5日目と10日目にプロフィロメーター(表面形状測定器)で削れた深さを測る

これを10営業日(月〜金)で1期とし、2日半の洗い出しをはさんで、もう一方の歯磨剤で第2期を行うクロスオーバー設計です。試験した歯磨剤はRDA 85±3RDA 189±4の2種類(どちらもフッ化物配合)。

1日5回×60秒がどれくらいかというと、著者らの換算では、1日2回×2分・1歯あたり最大10秒の接触という前提で、およそ150日=3か月分のブラッシングにあたります。

RDAが高いほうが、実際に深く削れた

0 1 2 3 象牙質の摩耗の深さ(µm・10人の平均) 0.52 1.19 0.96 2.43 5日後 10日後 各組の左=RDA 85、右=RDA 189。ブラッシングは1日5回×60秒で、通常の2分×2回に換算するとおよそ3か月分にあたる。群間差は5日後 P=0.05/10日後 P=0.04(Permutation検定)。ばらつきは大きく、10日後の標準偏差はRDA 85で0.49、RDA 189で2.98
象牙質の摩耗の深さ(各組の左=RDA 85、右=RDA 189)

10人全員が脱落なく完走し、欠測もありませんでした。

両方の歯磨剤とも、全員で測定可能な摩耗が生じました。そして深さは、ほとんどの被験者で5日目より10日目のほうが大きくなっています。例外は3試片だけで、いずれも10日間ほとんど削れなかったものでした。

  • 5日後:RDA 85で0.52 µm、RDA 189で1.19 µm(P=0.05)
  • 10日後:RDA 85で0.96 µm、RDA 189で2.43 µm(P=0.04)

統計にはPermutation検定が使われています。データが正規分布に従わなかったため、ノンパラメトリックの手法を選んだと明記されています。

RDA値の比と、削れ方の比がほぼ揃った

0 1 2 3 RDA 85の歯磨剤を1としたときの比 2.22 2.58 RDA値の比 10日後の摩耗深さの比 実験室で測るRDA値の比(2.22)と、口の中で実際に削れた深さの比(2.58)がほぼ揃った。RDAの数字が臨床的な摩耗と結びつきうることを、初めて口腔内環境で示した結果である
実験室のRDA値の比と、口の中で削れた深さの比

この論文がいちばん注目された点はここです。

2つの歯磨剤のRDA値の比は2.22(189 ÷ 85)。そして著者らは、10日後の平均摩耗深さの比を2.58と記載しています(表1の平均値0.96と2.43から計算すると約2.5で、わずかにずれます)。いずれにせよ、桁も傾きも合っています。

著者らはこれを、「in vitroの研磨性試験と、口腔内での臨床的な効果とのあいだに関係がありそうだと初めて示された」と表現しました。それまでRDAは「メーカーが製品を並べるための順位づけ」であって、臨床的な意味を持つ数字とは言い切れなかったのです。

ただし、ばらつきが凄まじい

ここは見落とせません。この研究のいちばん強いメッセージは、実は「人によって・試片によって、削れ方がまったく違う」ことかもしれません。

  • 10日後のRDA 189で、最も削れなかった人は0.19 µm、最も削れた人は10.36 µm
  • 同じ人が同じ歯磨剤で使った2枚の試片ですら、値が大きく違った(ある被験者では19.12 µmと1.39 µm)
  • 10日後のRDA 189の標準偏差は2.98で、平均値2.43を上回っている

試片間(P<0.01)も被験者間(P<0.01)も、差は統計的に有意でした。著者らは、生物学的な象牙質の抵抗性の違い、被験者ごとのみがき方の違い、同じ人の中でも試片ごとにみがき方が違うこと、そして歯磨剤の研磨性——これらすべてが効いているが、どれがどれだけ効いたかは今の時点では分けられない、と正直に書いています。

裏を返せば、これは「同じ歯磨剤でも、削る人と削らない人がいる」という臨床の実感そのものです。

明日の臨床へ

  • RDAの数字は、口の中の摩耗をある程度は反映する。「実験室の話だから関係ない」とは言えなくなった
  • ただし桁で考える。10日(=3か月相当)で削れた平均は0.96〜2.43 µm。ただし個人差が大きく、10 µmを超えた人もいた
  • 削れ方の個人差のほうが、製品差より大きいことがある。歯磨剤を変える前に、みがき方(力・ストローク)を見るほうが効くかもしれない
  • 象牙質が露出している患者では、高RDAの製品を選ばない理由がある。この試験の対象は象牙質であって、エナメル質ではない
  • この研究は装着中の飲食を避ける設計(水以外を飲むときは装置を外す)で、酸蝕の影響が入りにくい。実際の口では酸蝕と摩耗が重なるので、削れ方はもっと大きくなりうる

ここだけ、冷静に補助線

読むときの注意: この論文の主目的は「方法の開発」であって、製品の優劣を決めることではありません。タイトルからしてそうです。被験者は10人と少なく、比較したのは2製品だけ。RDA 85と189という離れた2点を結んだ直線であり、その間の値でどうなるかは分かりません。加えて、ブラッシングは口の外(ex vivo)で試片に直接行われています。実際の口の中では、頬・舌・唾液の膜・歯列の形が、ブラシの当たり方を変えるでしょう。摩耗の絶対量をそのまま臨床に持ち込むことはできません。また著者5名のうち3名はUnilever Dental Researchの所属で、歯磨剤メーカーの研究部門です。原著には資金源・利益相反の開示は記載されていませんし、供試した2製品の製造元も明かされていません。

今日のひとこと

実験室で測る研磨性(RDA)が、口の中の摩耗とどう結びつくのかを確かめたin situ研究。ボランティア10人が上顎装置に象牙質片を入れて9時〜16時まで装着し、1日5回、装置から外して60秒ずつブラッシングする(通常の2分×2回に換算しておよそ3か月分)。これを2種類の歯磨剤で10営業日ずつ、クロスオーバーで行った。結果、10日後の平均摩耗深さはRDA 85で0.96 µm、RDA 189で2.43 µm(Permutation検定 P=0.04)。5日後も1.19 µm対0.52 µmで有意(P=0.05)。注目は比で、RDA値の比が2.22、著者らが記載した摩耗深さの比が2.58とほぼ一致した(表1の平均値から計算すると約2.5)。著者らはこれを「in vitroの研磨性試験と口腔内での効果が結びつくことを初めて示した」と述べている。ただし個人差・試料差が非常に大きく(10日後の標準偏差はRDA 189で2.98と平均2.43を上回る)、10日後のRDA 189で最小0.19 µm・最大10.36 µmという開きがあった。著者3名はUnilever Dental Researchの所属である。

出典:Addy M, Hughes J, Pickles MJ, Joiner A, Huntington E. Development of a method in situ to study toothpaste abrasion of dentine. Comparison of 2 products. J Clin Periodontol 2002;29(10):896-900. PMID: 12445221
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。