1問1答 論文 歯周病

全身抗菌薬の上乗せ、どれだけ効くか

1問1答 論文 歯周病

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SRPに抗菌薬を足すべきか。足すならどの薬か。報告は山ほどありますが、結論は割れています。2003年、Forsyth InstituteのHaffajeeらが29研究・36比較を集め、付着レベルの変化という一点に絞ってメタアナリシスを行いました。上乗せ効果は確かにある。ただし、その大きさをどう受け取るかが問われる結果でした。

論文
Systemic Anti-Infective Periodontal Therapy. A Systematic Review
著者
Haffajee AD, Socransky SS, Gunsolley JC
掲載
Annals of Periodontology 2003;8(1):115-181
種類
システマティックレビュー+メタアナリシス(PubMed 1966年〜2002年5月+3誌のハンドサーチ/1か月以上の対照群をもつRCT・準実験研究・コホート研究/29研究36比較を採用、うち27比較をメタアナリシスに使用/被験者は各群600名以上)
PMID
14971252

「効く」と「どれだけ効く」は違う

SRPに抗菌薬を足すべきか。足すならどの薬か。この問いに関する報告は膨大にありますが、結論は割れています。理由ははっきりしていて、抗菌薬の種類・用量・投与期間・併用する機械的治療・対象患者・アウトカムの選び方が、研究ごとにばらばらだからです。

そこでHaffajeeらは、アウトカムを「臨床的付着レベル(AL)の変化」1つに絞り、その群間差だけを集めてメタアナリシスを行いました。効くか効かないかではなく、「どれだけ効くのか」を数字で出すための設計です。

先に結論: 抗菌薬の上乗せ効果は全体で0.386mm(27比較・994名、P<0.001)侵襲性歯周炎では0.718mm、慢性歯周炎では0.240mm深いポケット(6mm以上)での平均ベネフィットは0.45mm薬剤間の効果量は0.188〜0.555とほぼ横並びだった

526本から29研究、27比較でメタアナリシス

  • PubMed(1966年〜2002年5月)+ J Clin Periodontol・J Periodontol・J Periodontal Research のハンドサーチ
  • 採用:1か月以上・対照群をもつRCT、準実験研究、コホート研究。侵襲性/慢性/再発性歯周炎、歯周膿瘍が対象
  • 除外:低用量ドキシサイクリン、局所+全身抗菌薬の併用、対照群にも全身抗菌薬が入っているもの、動物実験・in vitro
  • 主要アウトカムは臨床的に測定された付着レベルの変化。これが無い研究は除外
  • 526研究をスクリーニングし、446本が基準を満たさず、68本を全文評価。最終的に29研究36比較を採用(評価者間の一致率97.7%)
  • うち27比較をメタアナリシスに使用(付着レベル変化が%でしか示されていない、SDやSEMがない、1部位のみ評価、といった研究は除外)
  • 固定効果モデルとランダム効果モデルの両方で確認し、異質性はCohen’s dとHedges’s gの両方で検定

研究期間は6週間から5年、9か国で実施され、被験者は各群600名以上26研究がRCT、3研究が準実験研究でした。

効果はある。ただし0.386mm

0 0.3mm 0.5mm 0.8mm 付着レベル変化の群間差 (mm) 0.7mm 0.4mm 0.2mm 侵襲性歯周炎 全体 慢性歯周炎 侵襲性10比較231名/全体27比較994名/慢性17比較763名。いずれも抗菌薬群が有意に優れた
患者集団別に見た、抗菌薬併用による付着レベルの上乗せ効果

全27比較(994名)を合わせた効果量は0.386mm(P<0.001)抗菌薬群が対照群より統計学的に有意に良好で、異質性の検定はいずれも有意でなく、研究間で結果は一貫していました

そして、患者集団で明確に割れました。

  • 侵襲性歯周炎:0.718mm(10比較・231名)
  • 慢性歯周炎:0.240mm(17比較・763名)

この差は統計学的に有意で、著者らは「侵襲性歯周炎の群のほうが、より大きな上乗せ効果を得ていた」と結論しています

0 0.2mm 0.4mm 0.6mm 抗菌薬による付着レベルの上乗せ (mm) 0.3mm 0.3mm 0.5mm 浅い部位 4mm未満 中等度 4〜6mm 深い部位 6mm以上 抗菌薬が対照を上回った比較の割合は、順に7/8・8/10・19/23
ベースラインのポケット深さ別に見た、抗菌薬による平均ベネフィット

ポケットの深さ別でも傾向が出ました。6か月時点に最も近いデータを用いた解析で、深いポケット(6mm以上)では23比較中19(83%)で抗菌薬が対照を上回り、平均ベネフィットは0.45mm中等度(4〜6mm)は10比較中8(80%)で0.29mm、浅い部位(4mm未満)は8比較中7(87%)で0.29mm深い部位ほど得られるものが大きいという、直感と一致する結果です。

どの薬を選ぶか——という問いには答えが出なかった

臨床でいちばん知りたいのは「で、どれを出せばいいのか」でしょう。ところがここは、はっきりしませんでした。

抗菌薬の種類別(8種類・27比較)に分けた効果量は0.188〜0.555の範囲で、ほぼ横並びスピラマイシンだけが0.06と低い値でした統計学的に有意な上乗せ効果が示されたのは、テトラサイクリン(5研究・135名)とメトロニダゾール(9研究・125名)の2つだけ。ただしこれは薬の優劣ではなく、「症例数が足りて検出力があった薬だけが有意になった」と著者らは説明しています。残りの薬は研究数1〜3・被験者8〜120名にとどまり、アモキシシリン+メトロニダゾールは境界域でした

スピラマイシンだけは、2研究で計120名と十分な症例数がありながら効果が示されず、「上乗せ効果がない」ことを示唆できた唯一の薬です。

併用する機械的治療でも違いが出ました。SRPへの併用では明確に有意。一方、機械的治療なしの単独投与ではP=0.093、SRP+外科への併用ではP=0.055と、いずれも境界域ただしどの解析でも、すべての研究が抗菌薬群に有利な方向を示していました

0.386mmを、どう受け取るか

この数字の受け取り方が、この論文の本題です。

全体で0.386mm、慢性歯周炎に限れば0.240mm。プローブの読み取り精度が1mm単位であることを考えると、個々の部位で臨床的に体感できる差ではありません。一方で、侵襲性歯周炎の0.718mmは無視できない大きさですし、深いポケットに限れば0.45mmです。

そして忘れてはならないのが、抗菌薬には副作用と耐性の問題があることです。この研究でも17比較で有害事象が記録され、アモキシシリン+メトロニダゾール投与群では被験者の39%が下痢を呈した例があります最も多かった有害事象は下痢でした。得られる0.24mmと、これらのコストを天秤にかける必要があります。

明日の臨床へ

  • 全員に出す薬ではない。慢性歯周炎への一律の併用で期待できるのは0.24mm。副作用と耐性のコストに見合うかを個別に判断する
  • 侵襲性歯周炎、そして深いポケットが多く残る症例では、上乗せ効果が大きい。ここが使いどころ
  • 薬剤の選択は、効果量ではほとんど決まらない。アレルギー歴・併用薬・服薬コンプライアンス・副作用プロファイル・地域の耐性状況で選ぶ
  • スピラマイシンは、十分な症例数で効果が示されなかった唯一の薬

ここだけ、冷静に補助線

2003年時点のレビューであり、その後アモキシシリン+メトロニダゾールの併用については、より大規模で質の高いRCT(Feres 2012、Mombelli 2013など)が積み上がっています。当時の研究の質も高くはなく、無作為化の方法を記載していたのは11比較、割付の隠蔽を定義していたのは6比較のみ。脱落者の扱いも明示されない研究が多く、多くは最後まで残った被験者だけを解析しているように見える、と著者ら自身が書いています。それでも、効果を「ある/ない」ではなくmm単位で示し、患者集団と部位によって使いどころが違うことを数字で分けたことの意義は大きい1本です。

今日のひとこと

抗菌薬は効く。問題は、0.24mmのために出すかどうか。効果量を知っておくと、「念のため出す」から「ここで使う」に変わります。侵襲性歯周炎と、深いポケットが多く残る症例。この2つが、数字が支持している使いどころです。

今日のひとこと

フォーカスクエスチョンは「歯周炎患者において、全身投与された抗菌薬は対照と比べて臨床的付着レベルにどのような効果をもたらすか」526研究をスクリーニングし、29研究・36比較が基準を満たし、うち27比較(両群あわせて994名)がメタアナリシスに使われた全体の効果量(付着レベル変化の群間差)は0.386mm(27比較・994名、P<0.001)患者集団で分けると、侵襲性歯周炎では0.718mm(10比較・231名)、慢性歯周炎では0.240mm(17比較・763名)で、侵襲性歯周炎のほうが上乗せ効果は大きかった異質性の検定はいずれも有意でなく、研究間で結果は一貫していたベースラインのポケット深さ別では、深いポケット(6mm以上)で23比較中19(83%)が抗菌薬有利・平均0.45mm、中等度(4〜6mm)で10比較中8(80%)・平均0.29mm、浅い部位(4mm未満)で8比較中7(87%)・平均0.29mm抗菌薬の種類別の効果量は0.188〜0.555の範囲で(スピラマイシンのみ0.06)、有意差が示されたのはテトラサイクリン(5研究・135名)とメトロニダゾール(9研究・125名)だったSRPへの併用では明確に有意、機械的治療なしの単独投与とSRP+外科への併用では境界域(P=0.093、P=0.055)著者らの結論は「補助的な全身抗菌薬は付着レベルにおいてより大きな改善をもたらすと考えられるが、多くの抗菌薬で効果量は同程度であり、症例ごとの選択は他の要因に基づいて行う必要がある」

出典:Haffajee AD, Socransky SS, Gunsolley JC. Systemic anti-infective periodontal therapy. A systematic review. Ann Periodontol 2003;8(1):115-181. PMID: 14971252
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。