1問1答 論文 歯周病

歯間ブラシは、まっすぐか曲がっているか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase4 メインテナンス

歯間ブラシの毛の硬さや形は、清掃効率にほとんど影響しないことが分かっています。では持ち手ごと角度がついた製品はどうか。2013年、Jordanらは128名を無作為に分け、ストレート型とアングル型を比べました。答えは臼歯部ではっきり出ています。

論文
Efficacy of straight versus angled interdental brushes on interproximal tooth cleaning: a randomized controlled trial
著者
Jordan RA, Hong HM, Lucaciu A, Zimmer S
掲載
International Journal of Dental Hygiene 2014;12(2):152-157
種類
無作為化比較試験(単施設・単盲検・並行群間/ドイツ・128名を各64名に割り付け・12日間の慣熟後にPMTC+48時間のプラーク再形成・2分間のブラッシング前後で評価)
PMID
23879344

形の違いは、もう関係ないはずだった

歯間ブラシがフロスより隣接面のプラークを落とすことは、複数のシステマティックレビューで固まっています。歯ブラシ単独や、歯ブラシ+フロス/歯間楊枝の組み合わせより、歯ブラシ+歯間ブラシのほうがプラーク除去・歯肉の炎症・ポケット深さの改善に優れるという結論です。

では製品ごとの違いはどうか。ここも決着がついていました。毛の硬さも毛の形状も、in vitroで隣接面の清掃効率に有意な影響を与えないことが示され、臨床でも確認されている「毛の形と硬さは臨床成績に関係ない。歯ブラシとの併用こそが推奨される」——それが2013年時点の到達点でした。

ところが、まだ検証されていない変数がひとつ残っていました。ブラシヘッドと持ち手の「角度」です。そこでJordanらは、同じメーカーのストレート型とアングル型を、128名で正面から比べました

先に結論: 2分間のブラッシングによるmPPIの低下量は、ストレート型1.59に対しアングル型1.09(p<0.0001)差が出たのは臼歯部だけで、前歯部では両群同じ歯肉の擦過は128名全員でゼロ

48時間ためてから、2分だけ磨く

ドイツ・ヴィッテン/ヘルデッケ大学歯学部で、新聞広告により募集した20〜65歳の128名(平均33.8±9.9歳)15歯以上あり、運動機能に問題がないことが条件で、重度歯周炎(3歯以上に5mm超のポケットまたは5mm超の退縮)・矯正ブラケット・可撤性義歯は除外歯科の専門職と学生も除外されています。

手順が丁寧です。

  • スクリーニング時に、模型と本人の口の中で両方のブラシの使い方を実演・練習し、サイズ選択にはIAPプローブを使用
  • 12日間、1日1回の在宅使用で慣れてもらう(使い慣れていない道具で不利にならないようにする配慮)
  • PMTCでプラークと歯石を除去し、48時間すべての口腔清掃を禁止してプラークを再形成させる(食片圧入時の楊枝だけ例外)
  • 蛍光プラーク染色とLEDライトでmPPIとDanser歯肉擦過指数を記録(T0)→ 別室でストップウォッチ管理のもと2分間ブラッシング → 再染色して同一検者が再測定(T1)

割り付けは研究外の担当者がウェブの乱数生成器で1:1に作成し、封筒で伝達参加者と看護師は群を知っていますが、評価者と解析者は盲検です。検者内信頼性はκ=0.8脱落ゼロ、プロトコル逸脱ゼロで、ITT解析とper-protocol解析が一致しました。

比べたのは同一メーカー(TePe)のアングル型(試験)とストレート型(対照)で、毛の硬さは同一メーカーはブラシを提供しただけで、実施・解析・報告には関与していない研究者主導試験(IIT)と明記されています。

臼歯部だけで、はっきり差がついた

0 0.6 1.2 1.8 mPPIの低下量(2分間のブラッシングで) 1.6 1.1 1.5 1.4 1.2 0.8 全体 前歯部 臼歯部 数字が大きいほどプラークがよく落ちたことを示す。全体と臼歯部ではストレート型が有意に優る(いずれもp<0.0001)。前歯部では群間差なし
2分間のブラッシングによるmPPIの低下量。差が出るのは臼歯部だけ

48時間後(T0)のmPPIは両群で差がなく(アングル型2.06、ストレート型2.15)、ブラッシング後(T1)はどちらも有意に低下しました。低下量で見ると、アングル型1.09±0.20に対しストレート型1.59±0.28(p<0.0001)

部位別に見ると、話がはっきりします。

前歯部(切歯・犬歯)では、アングル型1.41、ストレート型1.50で群間差なし臼歯部(小臼歯・大臼歯)では、アングル型0.82±0.20に対しストレート型1.25±0.23(p<0.0001)ブラッシング後のmPPI自体も、臼歯部でアングル型1.39、ストレート型0.84と開いています

0 0.6 1.2 1.8 mPPIの低下量(面別) 1.4 1 1.2 0.9 頬側から 口蓋・舌側から どちらの面から入れてもストレート型が有意に優る(いずれもp<0.0001)。歯肉の擦過は128名全員でゼロだった
頬側から入れても口蓋・舌側から入れても、ストレート型が優った

面別でも同じです。頬側からのブラッシングでアングル型1.01対ストレート型1.44、口蓋・舌側からでアングル型0.86対ストレート型1.24——いずれもp<0.0001

安全性については、128名全員でDanser指数の歯肉擦過が生じず、群間差もありません(p=1.0)効果量1.99、事後の検出力は100%でした。

なぜ臼歯部だけなのか

著者らの説明はシンプルです。「明らかに、ブラッシングヘッドと持ち手の角度は、ブラッシングの空間が明確に限られている遠心側の口腔領域で、意味のある役割を果たす」

前歯部は「到達が容易な領域」なので、道具の形が結果を左右しません。ところが臼歯部では、頬粘膜と下顎枝に挟まれた狭い空間へブラシを持っていく必要があり、持ち手の角度がその出し入れを制約する——というのが著者らの読みです。

臨床的な重みも添えられています。「人生の30代・40代では、実質的なう蝕と歯の喪失が、とくに大臼歯と小臼歯で起きる。う蝕の生涯経験は前歯で最も少ない」つまり道具の差が出た部位は、実際に歯を失う部位と重なっている

また、この研究がクロスオーバーではなく並行群間で組まれた理由も述べられています。「並行デザインでは各被験者が1つの製品しか使わないため、意識的にも無意識的にも一方の製品に有利な判断をすることがない」。前回紹介したKiger 1991のクロスオーバーとは、狙いが逆向きの設計です。

明日の臨床へ

第一に、臼歯部が主戦場なら、まずストレート型を渡す臼歯部で0.82対1.25という差は、2分間という短い介入で出た数字です。それが毎日積み上がると考えれば、選ぶ価値のある差でしょう。

第二に、前歯部だけならどちらでもよい著者ら自身が「前歯部の残存歯が少ない患者では、隣接部へ到達しやすいため、歯間ブラシのデザインは清掃効率に有意な影響を与えないかもしれない」と書いています。持ちやすさや本人の好みで選んでよい領域です。

第三に、「全員に同じものを勧める」から降りる著者らの結論は「すべての歯間ブラシをすべての患者に勧めるべきかという議論において、その人に応じてもっと絞り込むべきだ」どの部位に使わせたいのかを決めてから、道具を選ぶ——それがこの論文の実装形です。

ここだけ、冷静に補助線。これは「2分間1回のブラッシング」を評価した試験で、長期のプラークコントロールや歯肉の炎症、ましてポケット深さの変化までは見ていません。48時間プラークを溜めさせるという条件も、日常の口腔とは違います。著者ら自身が「臨床的にコントロールされた条件下で得られた結果であり、公衆衛生の観点からは批判的に見られうる」と書いています。加えて重度歯周炎の患者は除外されているので、鼓形空隙が大きく開いた歯周治療後の患者にそのまま当てはめることもできません。それでも、割り付けの隠蔽・評価者の盲検化・脱落ゼロという実施の質は高く、「毛の形も硬さも関係ない」という定説の外に、まだ意味のある変数が残っていたことを示した点で価値があります。

今日のひとこと

20〜65歳・15歯以上の128名を、ストレート型(対照)とアングル型(試験)の歯間ブラシに64名ずつ無作為割り付けした単盲検RCT毛の硬さは同一。12日間の在宅慣熟期間ののちPMTCを行い、48時間プラークを再形成させたうえで、2分間のブラッシング前後を比較)。主要評価項目のmPPI(改良隣接面プラーク指数)の低下量は、アングル型1.09に対しストレート型1.59で、ストレート型が有意に優った(p<0.0001)差が出たのは臼歯部で、アングル型0.82対ストレート型1.25(p<0.0001)。前歯部では両群に差がなかった頬側でも口蓋・舌側でもストレート型が優る(いずれもp<0.0001)安全性評価(Danser歯肉擦過指数)では、128名全員に歯肉の擦過が生じていない著者らは「すべての歯間ブラシをすべての患者に勧めるのではなく、その人に合わせて選ぶべきだ」と結論している

出典:Jordan RA, Hong HM, Lucaciu A, Zimmer S. Efficacy of straight versus angled interdental brushes on interproximal tooth cleaning: a randomized controlled trial. Int J Dent Hyg 2014;12(2):152-157. PMID: 23879344
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。