1問1答 論文 歯周病

歯間の炎症に、洗口液は届いていたのか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

クロルヘキシジン洗口液が歯肉炎を抑えることは、たくさんの研究で示されてきました。ただしそれらが測っていたのは、ほとんどが頬側と舌側の歯肉です。歯周病がいちばん始まりやすい場所——コンタクトの直下、視診では見えない歯間乳頭部——に、その効果は届いているのでしょうか。1993年、Catonらはそこだけを狙って測りました。

論文
Comparison between mechanical cleaning and an antimicrobial rinse for the treatment and prevention of interdental gingivitis
著者
Caton JG, Blieden TM, Lowenguth RA, Frantz BJ, Wagener CJ, Doblin JM, Stein SH, Proskin HM
掲載
Journal of Clinical Periodontology 1993;20(3):172-178
種類
3群比較の臨床試験(92名/3か月)
PMID
8450082

その研究は、歯間を測っていなかった

抗菌性洗口液が歯肉縁上のプラークと歯肉の炎症を減らすことは、1970年代から繰り返し示されてきました。0.12%クロルヘキシジン洗口液が歯肉炎を有意に減らしたという報告も複数あります。

ところが著者らは、それらの研究の測っていた場所に注目します。「これまでの臨床研究は、頬側と舌側の歯肉における炎症の変化に焦点を当てており、歯間の中央部は除外されていた」

理由は評価方法にあります。これらの研究で使われた歯肉指数は、プローブで歯肉縁を刺激して、視覚的な徴候(色)と歯肉出血を評価するものこの方法では、歯間乳頭部の内側までは評価できないのです。

そして著者らは核心を突きます。「歯間の中央部を、視覚的な炎症の徴候や歯肉溝出血指数を使って評価できないということは、歯肉のかなりの部分が炎症について未検査のまま残されているということだ」歯周病がいちばん始まりやすい場所が、ちょうど死角になっていた

さらに現実的な疑問も添えられます。「歯間部はアクセスできないため、クロルヘキシジンのような抗菌性洗口液は、治療効果を発揮できる濃度でその領域に到達しない可能性がある」

先に結論: 歯間の出血部位は、機械的清掃群で56.09%→5.70%まで落ちた。一方CHX洗口群は54.65%→47.08%、対照群は47.50%→40.46%で、どちらも有意な減少なし

歯間だけを、3か月測り続けた

対象は18〜28歳(平均23.3歳)の健康な男性92名頬側・舌側の両方で歯間の出血部位が8か所以上あることが参加条件でした。

評価に使ったのはEastman歯間出血指数(EIBI)木製の歯間清掃具を、咬合面と平行に、頬側から歯間へ挿入して乳頭を1〜2mm押し下げるこれを4回出し入れし、15秒以内に頬側・舌側の歯間表面で出血があるかを記録します。視診では見えない、コンタクト直下の炎症だけを拾う方法です。

ベースライン検査のあと、全員が口腔衛生指導とスケーリング・研磨(プラーク・歯石・着色の除去)を受けました。そのうえで年齢と出血部位数で層別化して3群へ振り分けます。

洗口液群(34名)は0.12%クロルヘキシジン洗口液を1日2回30秒、歯みがきに加えて使用。機械的な歯間清掃は一切行いません機械的清掃群(32名)は木製の歯間清掃具を1日2回、歯みがきに加えて使用対照群(26名)は普段どおりの歯みがきを継続し、口腔衛生指導も与えられていません

コンプライアンスの管理も丁寧です。全員が毎日の実施時刻を記録する日誌をつけ、毎月の検査時にコンプライアンス質問票に回答検査の合間には電話で確認もされています。検者は2名で、事前に26名を対象に校正を行い、検者内一致率91.3〜93.1%・検者間一致率82.8〜87.6%を確認しました。

結果:洗口液は、動かなかった

0 20% 40% 60% 歯間で出血した部位の割合(%) 56.1% 5.7% 54.6% 47.1% 47.5% 40.5% 歯間清掃+歯みがき CHX洗口+歯みがき 歯みがきのみ 淡い棒=3か月後。有意な減少を示したのは機械的な歯間清掃を行った群だけだった(n=92)
歯間で出血した部位の割合。有意な減少を示したのは、機械的な歯間清掃を行った群だけ

機械的清掃群は56.09%→13.17%(1か月)→6.65%(2か月)→5.70%(3か月)1か月の時点でベースラインから有意に減少し、2か月でさらに有意に減少しました。効果は1か月以内に現れ、2か月で完全な効き目に達したという形です。

一方洗口液群は54.65%→48.54%→50.83%→47.08%対照群は47.50%→46.45%→44.55%→40.46%どちらも、研究のどの時点でも有意な出血の減少を示しませんでしたそしてこの2群のあいだにも、どの時点でも有意差はありません

部位の傾向も一貫していました。臼歯部で出血する部位の割合は、常に前歯部より高い上顎と下顎、頬側と舌側では有意差なしでした。ただし機械的清掃群だけは、3か月時点で前歯部(5.85%)と臼歯部(7.17%)の差がほぼ消えていました(ベースラインは43.25%と67.65%)——難しい場所も含めて、一様に低い水準へ引き下げたということです。

部位の「運命」を追ったら、もっとはっきりした

0 33.3% 66.7% 100% 該当した部位の割合(%) 89.3% 12.3% 32.9% 55% 36.4% 46.9% 歯間清掃+歯みがき CHX洗口+歯みがき 歯みがきのみ 淡い棒=新たに出血し始めた割合。歯間清掃は「治す」だけでなく「起こさせない」方向にも働いた
個々の部位を追跡した結果。歯間清掃は治すだけでなく、新たに起こさせない方向にも働いた

この研究の面白さは、平均値だけでなく、個々の部位のその後を追いかけたところにあります。

ベースラインで出血していた部位が、3か月のうちに出血しなくなった割合は、機械的清掃群で89.3%対照群36.4%、洗口液群32.9%でした。1か月時点だけで見ても、機械的清掃群は76.1%が止まっているのに対し、対照15.2%・洗口液14.0%です。

逆方向も見ています。ベースラインで出血していなかった部位が、その後に出血し始めた割合は、機械的清掃群で12.3%対照群46.9%、洗口液群55.0%

著者らのまとめは明快です。「機械的清掃を用いた場合、もともと出血していた部位は出血を止めやすく、これはこの方法が歯間の歯肉炎を治療する有効性を示している。一方、機械的清掃群では、もともと出血していなかった部位が出血を始めることは起こりにくく、これは予防の有効性を示している。他の2つの方法では、いずれも当てはまらなかった」

ここが要点: 洗口液は、歯間には届いていなかった。著者らの表現では「うがいでは、この薬剤が有効な濃度で歯間部へ侵入できない」。届かない場所に、薬は効かない。

明日の臨床へ

1つ目。「洗口液を使っているから大丈夫」を、そのまま受け取らない。 頬側・舌側の歯肉が改善しても、歯間は別です。著者らは「歯肉組織にさまざまな程度の歯間歯肉炎を示す集団において、抗菌性洗口液を通常のブラッシングへの有効な補助として使うことには疑問が呈されうる」とまで書いています。

2つ目。歯間清掃は「治療」であり「予防」でもある。 出血が止まった89.3%新たに出血し始めたのが12.3%だけ——この2方向の効果は、患者さんに伝える価値があります。「いま出血しているところを治す」だけでなく「いま大丈夫なところを守る」道具だ、という説明ができます。

3つ目。1か月で数字が動く。 76.1%が1か月で止まったという速さは、モチベーションの材料になります「1か月後にもう一度測りましょう」と約束できる根拠です。

4つ目。洗口液が無意味なわけではない。 著者らも「薬剤が到達できる、あるいは送達できる部位での抗菌性洗口液の有効性に疑問の余地はない」と明記しています。退縮して歯間が開いた部位外科後では話が変わります。役割を場所で切り分けるのが正確な理解です。

ここだけ、冷静に補助線。 対象は18〜28歳の健康な男性92名——歯周炎ではなく歯肉炎の集団で、しかも性別も年齢も偏っています3か月という期間も、長期の歯周組織の帰結を語るには短いものです。加えて著者らが率直に認めている点として、機械的清掃群の参加者はほぼ全員が木製の歯間清掃具に不慣れであり、慣れて上手くなったことが2か月時点のさらなる改善に寄与した可能性があります。また資金の一部を歯間清掃具のメーカーが提供していることも開示されています(研究デザインへの影響を示す記述はありません)。評価に使った木製清掃具そのものが、診断のたびに歯間を刺激しているという懸念については、半分の口を毎月、もう半分をベースラインと3か月だけ評価するという設計で検証され、「月ごとの検査が出血スコアに有意な影響を与えていない」ことが確認されています。ここまで手当てしたうえで「洗口液では歯間の炎症は動かない」と示した意義は大きく、歯間清掃を指導の中心に置く根拠として今も参照されています。

今日のひとこと

18〜28歳の健康な男性92名を3群に分け、3か月間追いかけた研究。洗口液群(34名)は0.12%クロルヘキシジンで1日2回30秒の洗口+歯みがき(歯間清掃は一切なし)機械的清掃群(32名)は木製の歯間清掃具を1日2回+歯みがき対照群(26名)は普段どおりの歯みがきのみ。評価にはEastman歯間出血指数——木製の清掃具を歯間へ挿入し、15秒以内の出血の有無を見る方法を使い、コンタクト直下という視診できない部位だけを対象にしました。結果は劇的です。出血部位の割合は、機械的清掃群で56.09%→13.17%(1か月)→6.65%(2か月)→5.70%(3か月)。対して洗口液群は54.65%→48.54%→50.83%→47.08%対照群は47.50%→46.45%→44.55%→40.46%洗口液群と対照群は、どの時点でも有意な減少を示しませんでした。さらにベースラインで出血していた部位が3か月のうちに出血しなくなった割合は、機械的清掃群89.3%に対して対照36.4%・洗口液32.9%逆に出血していなかった部位が新たに出血し始めた割合は、機械的清掃群12.3%に対して対照46.9%・洗口液55.0%でした。

出典:Caton JG, Blieden TM, Lowenguth RA, et al. Comparison between mechanical cleaning and an antimicrobial rinse for the treatment and prevention of interdental gingivitis. J Clin Periodontol 1993;20(3):172-178. PMID: 8450082
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。