ペリオ|Phase1 初期治療
患者さんに「どのマウスウォッシュがいいですか」と聞かれたとき、何と答えているでしょうか。成分は山ほどあり、直接比べた試験はほとんどありません。この2016年のネットワークメタ解析は、83編の6か月試験を1枚の地図につないで、プラーク指数を基準に成分を並べ直しました。
①「どれが一番いいか」に、誰も答えられなかった理由
プラークコントロールの主役が機械的清掃であることは動きません。ただし実際のブラッシングは、望むほどきれいには落ちない。だから化学的な補助剤が売られ、6か月以上・自宅使用のRCTで効果を示すことが求められてきました。
問題は、その先です。「プラセボより効く」ことを示した試験は山ほどあるのに、成分同士を直接比べた試験がほとんどない。エッセンシャルオイルとクロルヘキシジンを同じ試験で戦わせたデータは限られ、順位をつける根拠がありませんでした。
そこで著者らはネットワークメタ解析(NMA)を使いました。共通の比較対象(プラセボ)を橋にして、直接比べられた組み合わせと、比べられていない組み合わせを同じ土俵に載せる手法です。
②ものさしを1本に絞った
採用されたのは6か月以上・自宅使用・機械的清掃に上乗せする形のRCT。集まった83編のうち、歯磨剤が49編、洗口液が32編、両方を扱ったものが2編でした。
ここで重要な割り切りがあります。評価項目をTureskyの改変Quigley-Heinプラーク指数(PlI)ひとつに固定したこと。歯肉炎指数や出血指数は測り方が試験ごとにばらついていた一方、このPlIは多くの論文が共通して使っていたため、ネットワークをつなぐ共通言語として最も安定していたからです。
さらに間接比較が成り立つ前提(推移性)を守るため、比較可能なプラセボ群を持たない論文、歯磨剤と洗口液を同じ群で併用した論文、若年者や高齢者だけを対象にした論文は除外されました。最終的にNMAには51研究が入り、歯磨剤で4,242人、洗口液で4,180人のデータが解析されています。
また歯磨剤のプラセボと洗口液のプラセボでは、6か月後の変化量そのものが違いました(歯磨剤プラセボ −0.35〜1.42、洗口液プラセボ −0.16〜0.78)。そのため剤形ごとに別々のネットワークが組まれています。歯磨剤と洗口液を横並びで比べていない点は、読むときの前提です。
③洗口液:エッセンシャルオイルとクロルヘキシジンが並んだ
プラセボとの差が最も大きかったのはエッセンシャルオイル(WMD −0.86、p<0.001、95%CI −1.05〜−0.76)と、アルコールを含まないエッセンシャルオイル(WMD −0.86、p<0.001、95%CI −1.30〜−0.42)。続いてクロルヘキシジン0.10%以上(WMD −0.78、p<0.001、95%CI −1.07〜−0.49)でした。
いちばん小さかったのはアレキシジン(WMD −0.18、p=0.40)で、プラセボとの差は統計学的に示せませんでした。低濃度(0.05%以下)のCPCとデルモピノールも、NMAではプラセボとの有意差なしです。
そして臨床的に効いてくるのが、この一行です。クロルヘキシジンとエッセンシャルオイルの差は WMD −0.09(p=0.58)。ノンアルコール版との差も −0.08(p=0.75)。つまりこの3つの間に統計学的な優劣はつきませんでした。一方でこの3つは、高濃度CPC・低濃度CPC・アレキシジン・デルモピノールに対しては有意に優れています。
順位づけの指標であるSUCRAでも、エッセンシャルオイル87.4/ノンアル版85.4/クロルヘキシジン78.6が上位3つを占め、プラセボは4.7と大きく離れました。ネットワークの不整合は小さく(Chi-square=11.17、p=0.344)、直接比較と間接比較の食い違いは目立ちません。
④歯磨剤:上位はクロルヘキシジンとトリクロサン共重合体
歯磨剤側でプラセボとの差が最大だったのはアロエベラ(WMD −0.82、p=0.02)、次いでクロルヘキシジン(WMD −0.76、p<0.001、95%CI −1.21〜−0.32)。最も小さかったのはトリクロサン/クエン酸亜鉛(WMD −0.13、p=0.65)でした。
成分同士の比較で統計学的な差がついたのは1組だけです。フッ化第一スズは、クロルヘキシジン(差0.57、p=0.02)にもトリクロサン共重合体(差 −0.34、p=0.00)にも劣りました。それ以外の組み合わせでは差はつきません。
SUCRAの並びはアロエベラ79.6/クロルヘキシジン79.1/クエン酸亜鉛70.9/チオシアン酸・過酸化尿素63.9/トリクロサン共重合体59.4、下位にフッ化第一スズ26.0、プラセボ8.3という順です。
ただしこの並びを額面どおり読んではいけません。 著者ら自身が釘を刺しています。1位のアロエベラを支える試験は1本だけ。3位・4位の成分も1本ずつ。一方で5位のトリクロサン共重合体には16本の試験があり、クロルヘキシジンには3本あります。SUCRAは「効果の大きさ」と「ばらつき」を反映しますが、試験本数の偏りまでは順位の見た目に出てきません。
⑤明日の臨床へ
1つ目。洗口液で迷ったら、エッセンシャルオイルかクロルヘキシジンのどちらかで考える。 この2つの間に統計学的な優劣はつきませんでした。選択の軸は効果の大小ではなく、着色・味・使用期間の制約といった実務的な条件のほうに移ります。長期に自宅で使い続ける想定なら、この結果は使いやすい材料です。
2つ目。アルコールの有無は、プラーク抑制の効果を落としていない。 ノンアルコールのエッセンシャルオイルはWMDも SUCRAもほぼ同等でした。ただしこれを支える試験は1本(107人)である点は添えておきます。アルコールが苦手な患者さんへの選択肢としては十分に説明できます。
3つ目。「歯磨剤に何が入っているか」は結果を変えうる。 歯磨剤側で唯一はっきり差がついたのがフッ化第一スズ対クロルヘキシジン/トリクロサン共重合体でした。プラーク量を積極的に下げたい時期の患者さんには、成分を見て選ぶ意味があります。
4つ目。前提を外さない。 すべて機械的清掃に「上乗せ」した場合の効果です。ブラッシングの置き換えではありません。ここを患者さんに伝えないと、洗口液が歯ブラシの代わりになってしまいます。
今日のひとこと
6か月以上・自宅使用のRCT83編(歯磨剤49・洗口液32・両方2)を集め、Tureskyの改変Quigley-Heinプラーク指数(PlI)を共通のものさしにして、直接比較と間接比較をつないだネットワークメタ解析。解析には51研究が入り、歯磨剤で4,242人、洗口液で4,180人のデータが使われました。洗口液ではプラセボとの差(WMD)がエッセンシャルオイル −0.86(p<0.001)、ノンアルコールのエッセンシャルオイル −0.86(p<0.001)、クロルヘキシジン0.10%以上 −0.78(p<0.001)と大きく、アレキシジンは −0.18(p=0.40)で有意差なし。クロルヘキシジンとエッセンシャルオイルの差は −0.09(p=0.58)で、両者に統計学的な差はありませんでした。歯磨剤ではアロエベラ −0.82(p=0.02)、クロルヘキシジン −0.76(p<0.001)が上位で、フッ化第一スズはクロルヘキシジン(差0.57、p=0.02)とトリクロサン共重合体(差−0.34、p=0.00)に劣りました。ただしアロエベラを支える試験は1本だけで、トリクロサン共重合体は16本。順位はエビデンスの量が極端に偏ったまま並んでいることを前提に読む必要があります。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


