ペリオ|ペリオ論文100選
フラップを開けたとき、垂直性の骨欠損に出会う場所には、何か共通点があるのでしょうか。この研究は114回のフラップ手術で、隣り合う根面のあいだの距離を実測し、そこに骨縁下ポケットがあるかを数えました。結果は明快で、根と根の距離が広いほど骨縁下ポケットの頻度は上がる。ただし4.6mm以上になると、それ以上は増えませんでした。
①垂直性骨欠損は、どこに出やすいのか
フラップを開けて骨面が見えた瞬間、そこにすり鉢状の欠損があるかどうかが分かります。ではその場所には、何か共通点があるのでしょうか。
1984年、当時ニューヨーク大学にいたHaim Talが、この問いをひとつの数字で測りました。隣り合う根面のあいだの距離です。
②フラップを開けたその場で測る
対象は、ニューヨーク大学歯学部歯周病科を受診し、骨の露出とデブライドメントを含む歯周外科が予定されていた患者81人(男性43・女性38、24〜69歳・平均48.5歳)。114回のフラップ手術(上顎58・下顎56)で記録が取られました。
測ったのは2つです。
- 隣り合う2つの根面のあいだの距離:遠心側の根面の近心中央線と、近心側の根面の遠心中央線のあいだ。隣接部の歯槽骨頂の最も歯冠側の高さで測る
- その根面に面した骨縁下ポケットの有無
測定はすべて軟組織の掻爬を終えたあと、骨の整形を行う前に実施。ノギスで0.1mm単位まで読んでいます。ただしノギスの構造上1mm以下は測れないため「0〜1mm」としてまとめ、7.6mm以上は「7.6+」としてまとめられました(7.6mm以上の多くは、歯列の最遠心の根面や、離開・欠損部に隣接する場所でした)。
394か所の隣接部を目視し、そのうち374か所(上顎196・下顎178)で距離を測定。20か所は回転・転位した歯があるか、根分岐部病変があって正確に測れないため除外されています。この374か所に対し、117の骨縁下ポケットが記録されました。
③距離が広いほど増える——ただし4.6mmまで
全体では374か所の隣接部に対して117個の骨縁下ポケットが記録されました(1か所あたり31.3%)。同じ隣接部に2つある場合を含むので、「ポケットのある部位が31.3%」という意味ではありません。
距離との関係は次のとおりです。
- 全距離をまとめた相関:r=0.81(p<0.001)、傾き5.723。距離が広いほど頻度が高い
- 2.1〜4.5mmに絞ると:r=0.96(p<0.01)、傾きは19.87と一気に急になる。この範囲では、距離が1mm広がるごとに頻度が大きく跳ね上がる
- 4.6mm以上に絞ると:r=−0.36(p>0.4)で有意な相関なし。頻度はおおむね36.6〜50%で頭打ち
実数で見ると分かりやすい。距離が2.6mm以上の場所では骨縁下ポケットの頻度が20.5〜57.1%だったのに対し、2.6mm未満の場所では10.0〜16.6%にとどまりました(原著の考察は「5〜20%」と記していますが、Table 1の実測にこの下限にあたる階級はありません)。まとめて計算すると2.6mm未満は8/64=12.5%、2.6mm以上は109/310=35.2%——およそ2.8倍です(Table 1から計算)。ピークは4.1〜4.5mmの57.1%です。
④どの歯のあいだで多かったか
歯の位置で見ると、上下顎で傾向が違いました。
- 上顎:第一小臼歯に関連するものが最も多く、次いで犬歯、大臼歯、中切歯。第一小臼歯と犬歯のあいだが44.0%で最高
- 下顎:犬歯と側切歯が最も多く、次いで大臼歯、小臼歯、最後に中切歯
最も低かったのは、下顎では中切歯どうしのあいだ(11.1%)、上顎では側切歯と中切歯のあいだ(18.2%)でした。いずれも前歯部です(ただしこの研究は歯種ごとの根間距離を測っていないため、距離との結びつけは推測になります)。
⑤なぜそうなるのか
著者の説明はこうです。
隣接歯槽中隔が完全に(水平に)壊れてしまうことは、中隔の厚みと逆の関係にあるように見える。中隔が薄ければ、垂直性の欠損が形成される前に丸ごと吸収されてしまう。逆に中隔が厚ければ、片側の根面だけが壊れて骨縁下ポケットとして残る余地がある——という理屈です。
根拠として3つが挙げられています。①1.6mm未満の距離では骨縁下ポケットの頻度が5%未満と低いこと ②距離が広がるにつれて頻度が上がること(最大30%まで) ③両者のあいだに正の傾きと有意な相関があること。
この考えは、GlickmanやWeinmannが示した仮説——非常に薄い頬側・舌側の骨は、角状の欠損ができる前に吸収されてしまう——と同じ発想を、隣接部の中隔に当てはめたものです。
さらに著者は、AkiyoshiとMoriが示した歯槽中隔の中央部と歯根膜に隣接する部位の血管の走行に触れ、中隔内の血管経路が中隔の厚みに影響される可能性があると推測を述べています(ここは推測として書かれています)。
⑥明日の臨床へ
- X線で歯根が離れている隣接部を「垂直性欠損が出やすい場所」として意識する。とくに上顎の小臼歯・犬歯まわりは頻度が高く出ていました(ただし本研究の距離は術中の実測値で、X線上の見え方とは一致しません)
- 根が近接している部位で骨吸収が進んでいたら、垂直性ではなく水平性を想定する。この研究では2.6mm未満の頻度は10.0〜16.6%でした
- 「両隣とも欠損」は3.1mm未満では一度も起きていない。再生療法の適応を考えるとき、隣接部の広さは事前の見立てに使えます
- 距離は4.6mmで頭打ち。「広ければ広いほど危ない」ではありません。効いているのは、ある幅までの範囲です
- 根分岐部病変がある部位は、この研究では測定から外れています。分岐部の話は別枠で考える必要があります
⑦ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
114回のフラップ手術で374か所の根間距離を測り、117個の骨縁下ポケットを記録した(1か所あたり31.3%)。距離と骨縁下ポケットの出現頻度の相関はr=0.81(p<0.001)で、距離が広いほど頻度が上がる。2.1〜4.5mmの範囲に絞ると相関はr=0.96(p<0.01)・傾き19.87と非常に急だが、4.6mm以上では有意な相関が消える(r=−0.36、p>0.4)。距離2.6mm以上では骨縁下ポケットの頻度は20.5〜57.1%、2.6mm未満では10.0〜16.6%(Table 1から計算するとそれぞれ35.2%と12.5%)。同じ隣接部に2つの骨縁下ポケットが存在したのは、距離が3.1mm未満の場所では一度もなかった。著者は「隣接歯間の距離は、骨縁下病変の骨性部分の最終的な形態を決める、もうひとつの因子かもしれない」と結論している。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


