ペリオ|歯周病の診断・予後評価
非外科的歯周治療を、何回に分けて行っていますか。4分割で4回、あるいは6回。それが「普通」だと教わってきました。では、患者さん自身のプラークコントロールが仕上がるまで器具を入れず、仕上がってから超音波で一気に、というやり方はどうでしょう。スウェーデンの一般歯科59医院・615人で、この2つを正面から比べた試験があります。
①SRP、何回に分けていますか
歯周基本治療の予約を組むとき、私たちはたいてい「4分割で4回」「6ブロックで6回」と決めています。初診で説明して、TBIをして、次から順番に器具を入れていく。学生時代からそう習ってきましたし、実際それで治ってきました。
でも、ときどき引っかかることがあります。3回目に来たときも、1回目に触った場所のプラークがまだ残っている。そのまま次のブロックへ進んでいいのか。器具を入れる順番と、患者さんの手が仕上がる順番は、本当に噛み合っているのか。
スウェーデンの研究グループが、この問いを一般歯科の現場でそのまま試験にしました。患者さん自身のプラークコントロールが十分になるまで、あえて縁下器具を入れない。仕上がってから、超音波で一気に1回で終わらせる。これをGPIC(guided periodontal infection control=誘導型の歯周感染コントロール)と呼びます。
②なぜ「効果があるか」ではなく「実地で効くか」を調べたのか
歯周治療のエビデンスの多くは、大学病院や専門クリニックで、熟練した術者が、時間をかけて行った研究から出ています。これはefficacy(効能=理想的な条件で効くか)の研究です。
一方、私たちが知りたいのはeffectiveness(実地効果=ふだんの診療で効くか)です。予約は限られ、患者さんの背景はばらばらで、術者も一人ではない。この落差は歯周治療でとくに大きくなります。
そこで著者らは、地域の公的歯科サービスに勤める歯科衛生士95人(59医院)を、まるごとランダムに2群へ割り付けました。患者ではなく術者を割り付けるのがこの試験の肝です。ふだんのやり方が混ざらないようにするためです。
③比べた2つのやり方
介入はとてもシンプルです。
GPIC群:まず患者教育とセルフケアの確立に集中する。患者さんが十分なプラークコントロールを実演できるようになってから、超音波器具による縁下デブライドメントを1回のセッションで行う。
CNST群(従来法):ふだんどおり。患者教育とスケーリング・ルートプレーニングを複数回の予約に分けて組み込む(”business as usual”=各衛生士の判断に任せる)。
どちらの群も3か月時点で再評価し、残っているポケットは再インスツルメンテーションします。主要評価項目は6か月後のポケット閉鎖(PPD 4mm以下)。解析対象は615人(GPIC 280人/CNST 335人)です。
④結果:治り方は同じ、時間だけが違った
6か月後のポケット閉鎖率です。深さ別に見ても、ほぼ重なります。
BOPも同じでした。ベースラインで77.0%(GPIC)・82.1%(CNST)だったものが、6か月で36.8%・34.0%まで下がっています。どちらのやり方でも、炎症は同じように収まった。
はっきり差がついたのは治療時間です。
初期治療フェーズだけで見ると96分 対 120分、3か月時の再治療まで含めた総時間で134分 対 161分。約27分、率にして17%短い。麻酔の使用もCNSTのほうが多く使われていました。有害事象はどちらの群にもありません。
⑤では、何が結果を決めていたのか
マルチレベル解析が示したのは、治療プロトコルは予測因子ではなかったという事実です。代わりに効いていたのは次の3つでした。
初診時のポケットの深さ:1mm深くなるごとに閉鎖の確率がオッズ比0.33(95%CI 0.31–0.36)に落ちます。実際、5〜6mmのポケットは7割強が閉じたのに対し、7mm以上は3割ほどしか閉じていません。
部位:臼歯は前歯・犬歯に比べてオッズ比0.41(0.35–0.48)。根分岐部やアクセスの悪さを考えれば、納得のいく数字です。
喫煙:現喫煙者は非喫煙者に比べてオッズ比0.56(0.37–0.85)。年齢も有意で、高齢の患者さんほど反応が鈍い傾向でした。一方でBMIは影響していません。
⑥明日の臨床へ
この試験は「SRPを1回にまとめろ」という話ではありません。読み替えるとこうなります。
1.セルフケアが仕上がる前に器具を急がなくてよい。指導に時間を使っても、6か月後の結果は落ちない。むしろ総時間は短くなります。「まず患者さんの手を仕上げる」は、遠回りではなかった。
2.過剰なインスツルメンテーションを避ける材料になる。著者らも「必要性を評価し、やり過ぎを避ける」と明記しています。全顎を機械的に何度もなぞることが、そのまま結果につながるわけではありません。
3.禁煙支援は”付け足し”ではない。喫煙のオッズ比0.56は、術式選択より大きなインパクトです。患者教育の中に、喫煙が治りにくさに直結することを必ず入れる——著者らの結論の一文もそこにあります。
4.深いポケットは最初から期待値を共有する。7mm以上が3割しか閉じないという数字は、外科への移行を説明するときの正直な材料になります。
⑦ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
「衛生指導を仕上げてから1回で超音波(GPIC)」と「従来どおり複数回に分けたSRP(CNST)」で、6か月後のポケット閉鎖率もBOPも差はありませんでした。違ったのは時間で、GPICは平均27分短く済みます。結果を左右したのは治療法ではなく、初診時のポケットの深さ、臼歯かどうか、そして喫煙でした。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


