1問1答 論文 歯周病

その歯周炎、何ステージ?──「慢性/侵襲性」をやめた2017新分類の使い方

歯周病 / 診断・分類

今日の1本 — エビデンスを臨床に

その歯周炎、何ステージ?──「慢性/侵襲性」をやめた2017新分類の使い方

「慢性歯周炎」「侵襲性歯周炎」——その呼び分けは2017年の世界ワークショップで姿を消しました。代わりに登場したのが、重症度のステージと進行リスクのグレードで表す2軸の診断。今日の診断基準そのものを、要点だけ整理します。

論文
2017年 世界ワークショップ・ワークグループ2 コンセンサスレポート(歯周炎の新分類)
著者
Papapanou PN, Sanz M, ほか(AAP/EFP 合同)
掲載
Journal of Periodontology 2018;89(Suppl 1):S173-S182
種類
コンセンサスレポート(分類体系の合意)
PMID
29926951

「慢性?侵襲性?」の線引きに限界

長く使われた1999年分類の「慢性」「侵襲性」は、境界が曖昧で重なりが大きいのが難点でした。進行の速さや病態で明確に分けきれず、診断のばらつきも生む。そこで2017年、AAPとEFPが合同で分類そのものを作り直しました

新分類の骨格——「歯周炎」を2軸で表す

「慢性」「侵襲性」は廃止され、すべて単一の「歯周炎」に統合。そのうえで、ステージ(重症度と治療の複雑さ)グレード(進行の速さとリスク)の2軸で1人ひとりを記述します。さらに範囲(限局性〈30%未満〉/広汎性/大臼歯・切歯パターン)を添えます。

ステージ=重症度と複雑さ(I〜IV)

初期判定は隣接面の付着喪失(CAL)、無ければ骨吸収で。歯周炎による歯の喪失や、深いポケット・垂直性骨欠損・根分岐部病変などの「治療の複雑さ」でステージが上がります。

Stage I Stage II Stage III Stage IV
CAL(隣接面) 1〜2mm 3〜4mm ≥5mm ≥5mm
骨吸収 歯冠側1/3
(<15%)
歯冠側1/3
(15〜33%)
根の中央1/3
以遠
根の中央1/3
以遠
歯の喪失
(歯周炎による)
なし なし ≤4歯 ≥5歯
複雑さ PD≤4mm
水平性
PD≤5mm
水平性
PD≥6mm・垂直骨欠損≥3mm
分岐部II/III
咀嚼障害・咬合崩壊
残存20歯未満 等
ステージはCAL(または骨吸収)で初期判定し、複雑さの因子があれば上位へ。治療でステージは下がりません(最高到達点を記録)。

グレード=進行の速さとリスク(A〜C)

グレードは「これからどれだけ進みそうか」を表します。直接証拠(5年の骨吸収・CAL変化)か、無ければ骨吸収÷年齢で推定。まずGrade Bと仮定し、喫煙・糖尿病という修飾因子で上げ下げします。

Grade A
遅い
Grade B
中等度
Grade C
速い
骨吸収 ÷ 年齢 <0.25 0.25〜1.0 >1.0
5年のCAL変化 なし <2mm ≥2mm
喫煙 非喫煙 <10本/日 ≥10本/日
糖尿病 なし HbA1c<7.0% HbA1c≥7.0%
グレードの修飾因子は喫煙と糖尿病。リスク管理(禁煙・血糖コントロール)がグレードを動かしうる、という発想です。
つまり: 診断は「歯周炎・ステージ◯・グレード◯・範囲◯」の1行で表せる。重症度(今どこ)と進行リスク(これからどう)を分けて書けるのが新分類の強みです。

明日の臨床へ

カルテや説明で「ステージIII・グレードB・広汎性」のように記すと、重症度と見通しが同僚にも患者にも伝わります。とくにグレード=喫煙・糖尿病で動くので、「禁煙すれば進行を遅くできる」という会話の入り口になります。ステージで治療の複雑さを、グレードでリコール間隔の根拠を考える——前回までのリスク評価の話とも地続きです。

ここだけ、冷静に補助線

ここだけ、冷静に補助線
これは研究データではなく専門家の合意(コンセンサス)で、症例定義は「ガイドラインであり、臨床判断と併せて使う」とされています。ステージIIIとIVの線引きなどグレーゾーンでは判断が分かれることも。とはいえ世界共通の物差しとして、診断・連携・研究の土台になっています。

今日のひとこと

「慢性/侵襲性」は廃止。歯周炎は〈ステージ(重症度・複雑さ I〜IV)×グレード(進行リスク A〜C)×範囲〉の2軸+範囲で記述する。グレードは喫煙・糖尿病で動く=リスク管理が予後を変える、という設計。

Papapanou PN, Sanz M, et al. Periodontitis: Consensus report of workgroup 2 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions.
J Periodontol. 2018;89(Suppl 1):S173-S182. PMID: 29926951.
※本記事は論文の要点を歯科医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
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