エンド|歯根端切除のあと、根管充填のガッタパーチャ(GP)を熱した器具で平滑にするだけの方法と、超音波で逆根管窩洞を形成してMTAを充填する方法を比べたランダム化比較試験の1年成績(Christiansen ら 2009・International Endodontic Journal)。対象は前歯と小臼歯52歯・術者1人
歯根端切除のあと、逆根管充填をしてもしなくても治る。そういう臨床報告が過去にはあり、根管がガッタパーチャ(GP)で十分に充填されていれば逆根管充填は要らないのでは、と議論されてきました。オーフス大学のChristiansenらは、根管充填が十分な前歯・小臼歯52歯を、切断面のGPを熱した器具で平滑にするだけの群と、超音波で深さ3mmの逆根管窩洞を形成してMTAを充填する群にくじで割り付け、1年後のX線を、治療法が分からないようにして判定しました。原著が報告する成功率はGP群52%、MTA群96%です(表4の完全治癒+不完全治癒で数えると13/25歯と25/26歯)。治癒の判定を6段階の順位にして比べた群間差は有意でした(P<0.001)。MTA群は超音波での窩洞形成も行っており、材料だけの比較ではありません。追跡は1年、対象は前歯と小臼歯です。
①歯根端切除、切って整えるだけで逆根管充填は要らない?
歯根端切除をするとき、根管がガッタパーチャ(以下GP)で十分に充填されていれば、切断面を整えるだけでよいのではないか。逆根管充填は本当に必要なのか。この問いには、長く決着がついていませんでした。逆根管充填の有無にかかわらず治るという臨床報告がある一方で、ex vivo(生体外)の実験は、漏れを防ぐには逆根管充填が必要だと示唆していたからです。
オーフス大学のChristiansenらは、この問いをランダム化比較試験で確かめました。
・原著が報告する1年後の成功率は、GPを平滑にしただけの群52%、超音波で形成してMTAを充填した群96%(表4の完全治癒+不完全治癒で数えると13/25歯と25/26歯)
・完全治癒だけで見ると、GP群7歯(28%)、MTA群22歯(85%)
・治癒の判定を6段階の順位にして比べた群間差は有意(P<0.001)
・著者らは、歯根端切除のあとに逆根管充填を置くことの重要性が示されたと述べている
②どんな試験だったのか
ポイントは、根管充填が十分に見える歯だけを集めたことです。選択基準は厳しい、と著者らも書いています。
・切歯・犬歯・小臼歯(大臼歯は除外)。患者44人・52歯、平均54.6歳
・根管充填の長さと密度がX線で十分
・根尖病変(PAIスコア3〜5)が、2年以上変わらないか拡大している
・手術中、切断面を手術用顕微鏡で観察。充填材と象牙質の壁の間に隙間が見えた歯は、割り付けの前に除外(6歯)
・くじ(赤と白の玉を26個ずつ)を助手が引いて割り付け。術者はくじに関わらない
・割り付けは患者単位。2歯を手術した8人は、1歯目をくじで決め、2歯目は反対の方法にした
・手術は1人の術者が、決まった手順で行った。根尖は歯軸に直角に2〜4mm切除
・GP群(26歯):窩洞は形成せず、熱した器具で切断面のGPを平滑にするだけ
・MTA群(26歯):超音波チップで深さ3mmの逆根管窩洞を形成し、白色MTAを充填
・術後1週と12か月のX線を比べる
・根尖の充填部を灰色で隠し、どちらの方法か分からないようにした
・3名(術者・放射線科医・歯内療法医)が独立に判定し、多数の判定を採用(3名とも割れた1歯は中央の判定)
・X線の判定は4段階(完全治癒/不完全治癒=瘢痕/不確実/不満足)。これに、症状による再手術と、歯根破折による抜歯を加えた6段階の順位で群を比べた
③結果:1年後の判定
12か月のX線が撮れたのは46歯です。残る6歯のうち、GP群の3歯は痛みのため再手術、2歯(各群1歯)は歯根破折で抜歯となり、この5歯は失敗として解析に含められました。GP群の1歯は患者と連絡がとれず、解析から除かれています。
・完全治癒:7歯(28%)
・不完全治癒(瘢痕):6歯(24%)
・不確実:6歯(24%)
・不満足:2歯(8%)
・再手術(痛み):3歯
・抜歯(歯根破折):1歯
・完全治癒:22歯(85%)
・不完全治癒(瘢痕):3歯(12%)
・不確実・不満足・再手術:0歯
・抜歯(歯根破折):1歯
原著は成功率をGP群52%、MTA群96%と報告しています。何を成功に数えたかは明記されていませんが、表4の完全治癒と不完全治癒を足すと13/25歯と25/26歯で、この数字と一致します。破折した2歯にはどちらもポストが入っていました。
もう1つ、治癒に関わっていたのが頬側の皮質骨の開窓です。病変が頬側の骨を破っていた歯は、破っていなかった歯より治癒が有意に劣りました(P=0.011)。それ以外の臨床項目は、治癒に有意な影響を示しませんでした。
④なぜこれほど差が出たのか
著者らは、差に影響したかもしれない要因を、考察でいくつか挙げています。
・MTA群の超音波での形成には、イスムスの形成と、変色した部分の除去が含まれていた。そこには細菌やその産物が残っている可能性がある。GP群では、こうした清掃は行っていない
・MTA群では、形成した窩洞にMTAをしっかり詰めて封鎖を図った
・GP群の平滑化が、根尖の封鎖を良くしたかどうかは疑わしい。器具の直径(1.5mm)が切断後の根管より大きく、根管内のGPに届かない症例がいくつかあった
・GPはしばしばもろく、封鎖を良くしようとすると崩れやすかった
ここからは筆者の読みです。この試験の2つの群は、材料が違うだけではありません。MTA群は「超音波で逆根管窩洞を形成して充填する」、GP群は「何も足さずに整える」で、手順そのものが違います。差のどこまでがMTAという材料によるものかは、この試験からは分けられません。
⑤明日の臨床へ
・このランダム化比較試験は、歯根端切除のあとに逆根管充填を置くことの重要性を示した
・MTAは、12か月の時点で治癒率96%の、成功した逆根管充填材だった
・MTAで処置した歯は、GPを平滑にしただけの歯より、有意に治癒が良かった
・頬側の皮質骨の開窓は、根尖の骨の治癒に不利に働いた
・GP群で「不確実」と判定された6歯は、さらに経過を追う予定
・X線で根管充填が十分に見え、顕微鏡で切断面に隙間が見えない歯でも、整えるだけの群で1年後に成功と判定されたのは約半分でした。「根管充填が良いから逆根管充填は省く」という判断は、この試験の結果とは合いません
・歯根端切除を行うなら、超音波チップでの逆根管形成と逆根管充填までを1つの手順として考えることになります。超音波チップ、手術用顕微鏡、MTAなどの材料がそろっているかが前提です
・紹介する側としては、紹介先が逆根管形成と逆根管充填まで行っているかを確かめておくと、患者さんへの説明の材料になります
1つめ。2つの群は材料だけでなく手順が違い、MTAと他の逆根管充填材の優劣を示した試験でもありません。
2つめ。術前・術中の項目は、骨の開削部の縦の大きさ(P=0.037)を除いて、群の間に有意差はありませんでした(P≧0.07)。ただ、治癒に不利だった頬側の骨の開窓は、有意差はないもののGP群13歯、MTA群9歯で、著者らも考察で触れています。開窓の影響を調整した解析は示されていません。性別には偏りがあり、GP群に女性が多くなりました(P=0.036)。
3つめ。追跡は1年で、判定はX線です。術者は1人で、判定者3名のうちの1人でもあります(充填部は隠して判定)。対象は前歯と小臼歯で、大臼歯は含まれていません。GP群の「不確実」6歯がその後どうなったかは、この論文では分かりません。
MTAは製品名(ProRoot)が書かれていますが、入手の経路は書かれていません。資金はデンマーク歯科医師会の助成です。
それでも、「根管充填が良ければ逆根管充填は要らないのでは」という長年の問いに、ランダム化比較試験で答えの1つを示した1本です。歯根端切除を「切る手術」ではなく「切って、形成して、封鎖する手術」と捉え直す材料になります。
今日のひとこと
根管充填が十分に見える前歯・小臼歯でも、歯根端切除のあとにGPを平滑にしただけの群の1年後の成功率は52%、超音波で窩洞を形成してMTAを充填した群は96%でした(6段階の順位で比べて P<0.001)。著者らは、歯根端切除のあとに逆根管充填を置くことの重要性が示されたと述べています。著者らは差に影響したかもしれない要因として、超音波での逆根管形成(イスムスの清掃を含む)も挙げています。術後1年・術者1人・前歯と小臼歯の試験です。


