1問1答 論文 エンド

根管長測定器、機種で精度は違う?——患者5人・23本の歯で3機種の「0.0」をマイクロCTで確かめると、根尖孔から±0.5mm以内に止まったのはRoot ZX II 100%、Woodpex III 87%、Propex Pixi 52%(2023年)

1問1答 論文 エンド

エンド|根管長測定器(電気的根管長測定器・EAL)の「0.0」表示は、本当に根尖孔の位置を指しているのか。抜歯予定の歯で3機種を口の中で使い、抜歯後にマイクロCTでファイル先端と根尖孔の距離を測った研究(De-Deus 2023・Journal of Endodontics)

根管長測定器は今や作業長決定の標準の道具です。では、機種によって「0.0」の止まる位置は違うのか。著者らは抜歯予定の患者5人・23本の歯で、Root ZX II・Woodpex III・Propex Pixiの3機種を同じ根管に使い、表示が「0.0」になった位置でファイルにストッパーを固定。抜歯後にマイクロCTで、ファイル先端と根尖孔(major foramen)の距離を測りました。根尖孔から±0.5mm以内に入った割合は、Root ZX II 100%、Woodpex III 86.96%、Propex Pixi 52.17%(P<.05)。Propex Pixiは23根管中8根管(34.78%)で1mmを超えてずれ、その多くは根尖孔の手前(短い側)でした。一方で、どの機種でも4割以上の根管で先端が根尖孔を越えていました(Root ZX IIは47.83%で、すべて0.5mm以内)。ただし5人・23本の小さな研究で、治療成績までは調べていません。

論文
Clinical Accuracy and Precision of 3 Multifrequency Electronic Apex Locators Assessed through Micro-Computed Tomographic Imaging
著者
Gustavo De-Deus, Viviany Cozer, Erick Miranda Souza, Emmanuel João Nogueira Leal Silva, Felipe Gonçalves Belladonna, Marco Simões-Carvalho, Marco Aurélio Versiani(ブラジル)
掲載
Journal of Endodontics 2023;49(5):487-495. doi:10.1016/j.joen.2023.02.011
種類
臨床での測定+抜去歯のマイクロCT評価(生体内の精度比較)。歯周病や補綴の理由で抜歯予定の患者5人(41〜60歳)・前歯と臼歯23本(各歯1根管)。局所麻酔・ラバーダム下で髄腔開拡し、手用K-ファイルで3機種(Root ZX II・Woodpex III・Propex Pixi、順番はランダム)の「0.0」表示まで進め、5秒安定した位置でシリコンストッパーを接着固定。抜歯後、ファイルを入れた状態と入れない状態でマイクロCTを撮って重ね合わせ、ファイル先端から根尖孔の縁を結ぶ接線までの距離を、機種を知らない評価者が測定。±0.5mm以内を「正確」とし、Friedman検定などで比較(有意水準5%)
PMID
36848949

①その「0.0」、どの機種でも同じ場所ですか?

ファイルを進めて、根管長測定器のバーが「0.0」で点滅する。そこを根尖孔の目安にして作業長を決める。多くの医院で毎日くり返している手順です。

では、機種が変わっても「0.0」は同じ場所に止まるのか。この研究は、抜歯予定の患者さんの歯で3機種(Root ZX II・Woodpex III・Propex Pixi)を同じ根管に使い、抜歯後にマイクロCTでファイル先端と根尖孔の距離を実際に測りました。

結論を先に言います。根尖孔から±0.5mm以内に止まった割合は、Root ZX II 100%、Woodpex III 86.96%、Propex Pixi 52.17%。Propex Pixiは23根管中8根管で1mmを超えてずれていました。そしてもう1つ、どの機種でも4割以上の根管で、先端が根尖孔を越えていました。

②なぜ「機種ごとの実力」がわかりにくかったのか

根管長測定器の精度は、これまで電子顕微鏡や実体顕微鏡、X線写真などで確かめられてきました。ただ、これまでの方法ではファイル先端と根尖の立体的な位置関係までは見られませんでした。

マイクロCTを使った研究もありますが、ファイルを入れずに撮った根管の長さと比べる方法が多く、「ファイルの先端が実際にどこにあるか」を直接見ていないものがありました。金属のファイルを入れたまま撮ると、ノイズ(アーチファクト)で先端の位置がぼやけるからです。

・Root ZX II(モリタ):Root ZXシリーズは最もよく調べられてきた機種で、新しい機種の比較の基準とされることが多い
・Propex Pixi(デンツプライ):ポケットサイズの多周波数型。実験室の研究での正確さは、基準にする位置によって63〜93%と幅がある
・Woodpex III(Woodpecker):新しいアルゴリズムを載せた多周波数型。著者らによれば、PubMedに載った研究はまだない

そこで著者らは、患者さんの口の中で測り、その位置をマイクロCTで直接確かめる方法で、3機種を同じ根管で比べました。

③今回の一手:口の中で測って、抜歯後にマイクロCTで答え合わせ

対象=歯周病や補綴の理由で抜歯予定だった患者5人(41〜60歳)の前歯・臼歯23本(各歯1根管。Table 1から数えると生活歯15本・失活歯8本)
・測定:局所麻酔・ラバーダム下で髄腔開拡し、#08・#10のK-ファイルで根尖側3分の1まで進める。根尖で止まる太さのステンレスK-ファイルで、3機種をランダムな順番で使用。表示が「0.0」で5秒安定した位置で、歯冠に作った基準面に合わせてシリコンストッパーを接着剤で固定
・答え合わせ:抜歯後、ファイルを入れずに1回、3機種それぞれのファイルを入れて3回マイクロCTで撮影し、画像を重ね合わせて金属のノイズを除去(ダブルスキャン法)
・評価:ファイル先端から根尖孔の縁を結ぶ接線までの距離を、機種を知らない評価者が測定。根尖孔を越えれば+、手前なら−。±0.5mm以内を「正確」とした

臨床操作は経験15年の術者が拡大下で行いました。必要な歯の数は事前に計算されていて(最低18本)、23本はそれを満たしています。

④結果①:±0.5mm以内に入ったのは100%・87%・52%

0 33.3% 66.7% 100% 根尖孔から±0.5mm以内に止まった割合(%) 100% 86.96% 52.17% Root ZX II Woodpex III Propex Pixi 原著Table 2・要旨(23根管)。3機種の差は有意(P=.001)。Propex PixiはRoot ZX II(P=.001)・WoodpexIII(P=.021)より有意に低い
根尖孔から±0.5mm以内に止まった根管の割合(原著Table 2・要旨、23根管)

正確さ(±0.5mm以内に入った割合)は、Root ZX II 100%(23/23)、Woodpex III 86.96%(20/23)、Propex Pixi 52.17%(12/23)で、3機種の差は有意でした(P=.001)。

2機種ずつ比べると、Propex PixiはRoot ZX II(P=.001)とWoodpex III(P=.021)のどちらよりも有意に低く、Root ZX IIとWoodpex IIIの間には有意差がありませんでした(P=.083)。先端がちょうど根尖孔の線上(0.0mm)にあったのは、Root ZX IIとWoodpex IIIでそれぞれ4根管(17.39%)です。

ずれの平均(標準偏差)は、Root ZX II 0.01mm(0.12)、Woodpex III −0.08mm(0.29)、Propex Pixi −0.58mm(1.87)。ばらつき(精密さ)でも3機種に差があり(P=.034)、Propex PixiはRoot ZX IIより有意にばらついていました(P=.035)。Woodpex IIIは、どちらの機種とも有意差がありませんでした。

歯髄の状態(生活歯か失活歯か)と正確さの間には、有意な関連が見られませんでした(P>.05。Root ZX IIは全根管が正確だったため計算できず)。

⑤結果②:どの機種も4割以上で根尖孔を越えていた

0 20% 40% 60% 根管の割合(%) 47.8% 0% 43.5% 0% 43.5% 34.8% Root ZX II Woodpex III Propex Pixi 先端が根尖孔を越えた(+側) 1mm超ずれた(どちら向きも) 原著Table 2の度数から計算(23根管)。オレンジ=1mm超ずれた根管(Propex Pixiのみ)。その8根管のうち5根管は根尖孔の手前に1mm超、3根管は先に1mm超
先端が根尖孔を越えた根管と、1mmを超えてずれた根管の割合(原著Table 2の度数から計算、23根管)

Propex Pixiが外した11根管のうち、8根管(34.78%)は1mmを超えてずれていました。その内訳は、根尖孔の手前に1mm超が5根管、先に1mm超が3根管。外れ方は「行き過ぎ」だけでなく、「手前で止まる」側にも大きく出ていたことになります。Root ZX IIとWoodpex IIIには、1mmを超えてずれた根管はありませんでした。

一方で、先端が根尖孔を越えた(+側)根管は、Root ZX IIで47.83%(11根管)、Woodpex IIIで43.48%(10根管)、Propex Pixiで43.48%(10根管)ありました。Root ZX IIの11根管はすべて0.5mm以内の越え方で、Woodpex IIIは1根管だけ0.51〜1.0mm、Propex Pixiは3根管が1mm超でした。

著者らは、「根尖孔の手前0.5mm以内だけを合格」とする厳しい基準にすると、正確さはRoot ZX II 52.1%、Woodpex III 47.8%、Propex Pixi 21.7%まで下がると計算しています。そのうえで、「0.0」で作業長を決めるなら、根管の中に収めるための調整が要ると述べています。

⑥なぜ差が出たのか——著者らの見立て

「0.0」は、メーカーが根尖孔(major foramen)の位置を示すとしている表示です。どの機種も、周波数の違う電気の流れにくさ(インピーダンス)の変化から位置を割り出しています。

Propex Pixiの成績がこれまでの実験室の研究より低かった理由について、著者らは方法の違いに加えて、臨床での使いにくさを挙げています。Propex Pixiだけが、表示が安定するまでに時間がかかり、5秒安定させるために何度もやり直したそうです。Woodpex IIIがRoot ZX IIに近い成績だったことは、メーカーのいうノイズ対策のアルゴリズムが効いているのかもしれない、としています(どちらも著者らの推測)。

また、根尖孔を越えた測定の多くは失活歯で根尖性歯周炎のある歯で見られたとして、そうした歯で「0.0」を基準にするときはオーバーインストゥルメンテーション(根尖孔外への器具の突き出し)の可能性を意識するよう勧めています。

⑦明日の臨床へ

・「0.0」は根尖孔の目安で、作業長そのものではない。この研究では、成績の最もよかったRoot ZX IIでも約半数の根管で先端が根尖孔をわずかに(0.5mm以内)越えていた。「0.0」から少し戻して作業長を決める考え方と合う(約0.5mm戻すという提案もあるが、広く合意された値ではなく、先生によって考えが分かれる、と著者らも書いている)。
・表示がなかなか安定しないときは要注意。この研究で成績の低かった機種は、安定するまで時間がかかった。数値が落ち着くまで待ち、X線写真でも確かめる。
・根尖性歯周炎のある失活歯では、行き過ぎの可能性を頭に置く。
・機種を替えたら、自院の手順を見直す。同じ「0.0」でも、止まる位置のばらつきは機種によって違いうる。

「どの機種を買うべきか」の答えというより、「0.0をどう読むか」を見直す材料として使うのがちょうどよさそうです。

⑧ここだけ、冷静に補助線

これは患者5人・23本の歯での研究です。著者ら自身も、提供者が5人で年齢も41〜60歳に限られ、口の中の条件の幅が小さいことを限界に挙げています。測ったのは各機種1回ずつ、1人の術者で、治療の成績(治癒や痛み)は調べていません。
ここからは筆者の読みです。要旨と結論では「3機種の精密さは同程度」とまとめていますが、結果の項ではPropex PixiはRoot ZX IIより有意にばらついていた(P=.035)と書かれていて、言い方にずれがあります。Propex Pixiの外れ方は手前で止まる側が多く(手前に1mm超が5根管・先に1mm超が3根管)、「行き過ぎやすい機種」と一言でまとめるのは言い過ぎです。また、Root ZX IIは著者らが基準機種として扱っていて、機種の順番はランダムでも同じ根管で3回続けて測っているため、順番の影響がまったくないとは言い切れません。なお、著者らは利益相反はないとしています。それでも、口の中で測った位置をマイクロCTで直接確かめ、3機種を同じ根管で比べた点は、日々の「0.0」の読み方を考え直す手がかりになります。

今日のひとこと

3機種の「0.0」で止めた位置をマイクロCTで確かめると、根尖孔から±0.5mm以内に入ったのはRoot ZX II 100%、Woodpex III 86.96%、Propex Pixi 52.17%。Propex Pixiは23根管中8根管で1mmを超えてずれ、他の2機種より正確さで劣りました。一方でどの機種も4割以上の根管で先端が根尖孔を越えていたため、著者らは「0.0」をそのまま作業長にするなら少し戻す調整が要ると述べています。持ち帰るのは「0.0は根尖孔の目安。作業長は少し手前に置く」「機種によって止まる位置のばらつきは違う」の2点。ただし患者5人・23本の小さな研究で、治療成績までは調べていません。

De-Deus G, Cozer V, Souza EM, Silva EJNL, Belladonna FG, Simões-Carvalho M, Versiani MA. Clinical accuracy and precision of 3 multifrequency electronic apex locators assessed through micro-computed tomographic imaging. J Endod. 2023;49(5):487-495. doi:10.1016/j.joen.2023.02.011. PMID: 36848949
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。