エンド|体温で形を変える「くねくね」ファイル XP-endo Shaper(FKG)は、折れにくいのか。同じ蛇行形状のTRUShape(Dentsply)と、繰り返し疲労(曲がった根管で回し続ける)とねじり(先端が噛み込んだままねじる)の2つの試験で比べた実験室の研究(Silva 2018・Journal of Endodontics)
ファイル破折には、曲がった根管で回し続けて金属が疲れて折れる「繰り返し疲労」と、先端が噛み込んだまま根元が回ってねじ切れる「ねじり」の2つの型があります。著者らは、体温で蛇行形状に変わる新しいファイルXP-endo Shaper(#30・初期テーパー0.01)と、同じく蛇行形状のTRUShape(#30・0.06v)を10本ずつ使い、2つの型それぞれで折れるまで試しました。結果、37℃の曲がった人工根管では、XP-endo Shaperは破折までの回転数が平均1653回(TRUShapeは496回)、時間でも124秒対99秒と長くもちました。一方、先端3mmを固定してねじる試験では、折れたときのトルクは0.84 Ncm対1.68 NcmとXP-endo Shaperが半分。ただし折れるまでにねじれた角度は776°対400°と大きく、よく曲がる・ねじれる柔らかいファイルだという姿が見えました。「曲がりには強いが、噛み込ませて力で回すのには弱い」——この2面を知って使うのが、この研究の持ち帰りです。
①体温で曲がるファイル、折れにくいの?
冷やすとまっすぐ、根管に入れて温まるとくねくねの蛇行形状に変わる——XP-endo Shaperを初めて手にしたとき、「こんなに細くて柔らかいファイル、折れないの?」と感じた先生も多いのではないでしょうか。
この論文が出た時点で、XP-endo Shaperの破折のしにくさを測ったデータはまだ無かったと著者らは書いています。そこで、同じ蛇行形状のTRUShapeと並べて、2種類の「折れ方」で試したのがこの研究です。
結論を先に言います。曲がった根管で回し続ける試験ではXP-endo Shaperのほうが長くもち、先端を固定してねじる試験では、折れたときのトルクがTRUShapeの半分でした。「曲がりには強いが、力で回すのには弱い」という2面を持ったファイルです。
②ファイルが折れる2つの型
ニッケルチタン(NiTi)ロータリーファイルは、ステンレスの手用ファイルより速く、根管の中心を保って形成できます。その一方で、破折のリスクがついて回ります。折れ方には2つの型があります。
・ねじり(torsional):先端が根管に噛み込んで止まったのに、根元が回り続けてねじ切れる。
この2つを減らすために、メーカーは断面の形を変えたり、熱処理した新しい合金を使ったりしてきました。今回の2本はどちらもその流れにあるファイルです。
XP-endo Shaper(FKG):独自合金(MaxWire)。冷えているとまっすぐな#30・テーパー0.01だが、体温で蛇行形状に変わり、この1本で少なくとも#30・0.04まで形成できるとされる。
③今回の一手:同じ条件で「回し続ける」「ねじり切る」
・繰り返し疲労試験:ステンレス製の人工根管(角度60°・曲率半径5mm・先端径0.4mm・テーパー0.06。曲がりの中心は先端から5mm)を37℃の蒸留水で満たし、メーカー指定の条件(XP-endo Shaper 800rpm・1 Ncm/TRUShape 300rpm・3 Ncm)で折れるまで回転。折れるまでの時間を測り、回転速度×時間で破折までの回転数を出した。
・ねじり試験(国際規格ISO 3630-1に準拠):新品の先端3mmを固定し、2rpmで時計回りにねじって、折れたときの最大トルクと回転角を測った(37℃の箱の中)。
・折れた断面はすべて走査型電子顕微鏡(SEM)で観察。
ポイントは37℃で試したことです。XP-endo Shaperは体温で性質が変わる合金なので、室温で試しても本来の姿は見えません。著者らは臨床に近づけるため、両方のファイルを37℃の条件でそろえました。
④結果①:曲がった根管で回し続けると、XP-endo Shaperのほうが長くもった
破折までの回転数は、XP-endo Shaperが平均1653回(標準偏差235)、TRUShapeが496回(標準偏差20)で、差は統計的に有意でした(P<.05)。
折れるまでの時間も、XP-endo Shaperが平均124秒(標準偏差17)、TRUShapeが99秒(標準偏差4)で、XP-endo Shaperのほうが有意に長くなりました(P<.05)。回転数でも時間でも、XP-endo Shaperのほうが長くもったことになります。
長くもった理由として、著者らはMaxWire合金に加え、テーパーの小ささ(0.01対0.06v)と断面の違いが関わっている可能性を挙げています。
⑤結果②:ねじりには、折れる力は半分・ねじれる角度は約2倍
先端3mmを固定してねじると、折れたときのトルクはXP-endo Shaperが平均0.84 Ncm、TRUShapeが1.68 Ncm。XP-endo Shaperはちょうど半分の力で折れました(P<.05)。著者らは、TRUShapeの断面積が大きいことと合金の種類が効いていると考えています。
一方、折れるまでにねじれた角度はXP-endo Shaperが776°、TRUShapeが400°。XP-endo Shaperは約2倍ねじれてから折れていました(P<.05)。
SEMで見た破断面は、2本とも同じような姿でした。どちらの試験でも、金属が粘って引きちぎれたときの延性破壊の特徴(小さなくぼみ=ディンプル)が見られ、ねじり試験では回転の中心近くに、ねじり破折に典型的な同心円状の擦れ跡がありました。
⑥なぜ「曲がりに強く、ねじりに弱い」のか
著者らは、どちらの結果にも細さ(テーパー)・断面・合金の違いが関わっていると推測しています。
曲がった根管で回るとき、ファイルの外側と内側は伸び縮みを繰り返します。細くてしなやかなファイルほど、その負担は小さくなると考えられ、著者らはXP-endo Shaperの柔軟性の高さを長くもった理由の1つに挙げています。一方、先端が噛み込んだときのねじりに耐えるには断面の太さ(断面積)が効き、断面積の大きいファイルほどねじり強さが高いという過去の報告があります。著者らは、TRUShapeが強かったのは断面積の大きさと合金の種類によるのだろうと述べています。
なお、XP-endo Shaperを使う前には#15・テーパー0.02までのグライドパス(通り道)を作るようメーカーが指示しています。著者らは、この事前の拡大がねじりの負担を減らしうると述べています。
⑦明日の臨床へ
・先端を噛み込ませて力で回すのには弱い。ねじり破折のトルクはTRUShapeの半分(0.84 Ncm対1.68 Ncm)。
・#15・0.02までのグライドパスを先に作る(メーカーの指示)。著者らは、この事前の拡大がねじりの負担を減らしうると述べている。
・2本はメーカー指定の条件(800rpm対300rpm)で回した比較で、まったく同じ条件での1対1の比較ではない。数字の差をそのまま「何倍折れにくい」と読まない。
・よくねじれるファイルなので、引き上げたら変形がないか見る習慣が、破折の手前で気づく助けになる。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
この研究では、XP-endo Shaperは曲がった人工根管で回し続けても折れにくく(破折まで平均1653回・124秒、TRUShapeは496回・99秒)、ねじり切れるまでの角度も大きい(776°対400°)一方、折れたときのトルクはTRUShapeの半分(0.84 Ncm対1.68 Ncm)でした。曲がりには強いが、先端を噛み込ませて力で回すのには弱い——メーカーは使う前に#15・0.02までのグライドパスを求めており、著者らはこの事前の拡大がねじりの負担を減らしうると述べています。ただし回転速度・トルクはメーカー指定の条件で2本で違う(800rpm対300rpm)ため1対1の比較ではなく、10本ずつの実験室の結果で、口の中の破折率を見た研究ではありません。


