1問1答 論文 保存修復

ブリッジ支台の形成で歯質はどれだけ削る?——レジン模型歯の実験では平均でインレー形2〜3割、全部被覆冠は約7割

1問1答 論文 保存修復

保存修復|臼歯のブリッジ支台として10種類の形成デザインを行い、削り取った歯冠の重さの割合を比べた実験室研究(Edelhoff・Sorensen 2002・Int J Periodontics Restorative Dent)

臼歯の1歯欠損。両隣を全部被覆冠で支えるか、インレーやアンレー、接着用の小さな形成で支えるか。選ぶときに気になるのは「どれだけ健全な歯質を削るか」です。ドイツ・アーヘン大学と米オレゴン健康科学大学の2人は、上下の小臼歯・大臼歯のレジン製模型歯を顎模型に並べ、ブリッジ支台として10種類の形成を各10本ずつ行い、削る前後の歯冠の重さから削除量の割合を出しました。4歯種の平均では、接着用ボックス(A2)が約5.5%、MODインレー(I3)が約27.2%、全部被覆冠は67.5〜75.6%でした。

論文
Tooth Structure Removal Associated with Various Preparation Designs for Posterior Teeth
著者
Daniel Edelhoff, John A. Sorensen(ドイツ・アーヘン大学 補綴科/米オレゴン健康科学大学 補綴科)
掲載
The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry 2002;22(3):241-249
種類
実験室研究(in vitro)。レジン製の模型歯(上顎右側第一小臼歯・第一大臼歯、下顎左側第二小臼歯・第二大臼歯)を、下顎左側第一大臼歯が欠損した顎模型上でブリッジ支台として形成。接着用アタッチメント2種・インレー3種・アンレー・部分被覆冠・ハーフクラウン(大臼歯のみ)・全部被覆冠3種を各10本、著者の1人が形成し、エナメル-セメント境で歯根を切り離して重さを測定。削る前の歯冠の平均重量に対する削除量の割合(%)を分散分析で比較
PMID
12186346

ブリッジの支台、どこまで削っていますか

臼歯の1歯欠損をブリッジで補うとき、両隣の支台は全部被覆冠にするのが長く定番でした。一方で、支台歯がう蝕も修復もない健全歯だと「ここまで削っていいのか」とためらう場面もあります。

この論文は、そのためらいに具体的な割合を置きます。レジン製の模型歯でブリッジ支台の形成を10種類行い、削った量を重さで比べると、4歯種の平均で接着用ボックス(A2)は歯冠の約5.5%、MODインレー(I3)は約27%、全部被覆冠は約68〜76%でした。メタルボンド冠(F3)の削除量は、A2の約14倍にあたります。

なぜ「削る量」が問題になるのか

著者らは序論で、形成の侵襲と歯髄の合併症を結びつける過去の報告を引用しています。たとえば文献レビューでは、10年での失活率がインレー5.5%、全部被覆冠14.5%とされています(今回の研究ではなく引用)。一方で、インレー支台のブリッジは全部被覆冠より長持ちしにくいという報告も、著者らは併せて紹介しています。

そこへ、透光性の高いセラミックとレジンセメントの登場で、エナメル質を残す接着前提の形成が選べるようになった。では、新しい形成と従来の冠の形成で、実際にどれだけ削る量が違うのか。これを重さで量ったのが本研究です。

今回の実験:模型歯で10種類の形成を量る

対象:天然歯のばらつきを避けるため、レジン製の模型歯4歯種(上顎第一小臼歯・第一大臼歯、下顎第二小臼歯・第二大臼歯)を、下顎第一大臼歯が欠損した顎模型に並べた。
形成(ブリッジ支台として各10本・著者の1人が形成):
・接着用アタッチメント:A2=ボックス形、A3=ウイングとグルーブ(金属用)
・インレー:I2=MOまたはDO、I3=MOD
・O=MODアンレー、PC=部分被覆冠、HC=ハーフクラウン(大臼歯のみ)
・全部被覆冠:F1・F2=オールセラミック、F3=メタルボンド
測定:形成後に歯根を切り離して歯冠の重さを測り、削る前の歯冠の平均重量との差から削除量の割合(%)を算出。分散分析で比較。

結果:部分的な形成は約5〜47%、全部被覆冠は約68〜76%

0 33.3% 66.7% 100% 削った歯質の割合・4歯種の平均 (%) 5.5% 10% 20% 27.2% 35.5% 39% 46.7% 67.5% 72.3% 75.6% A2 A3 I2 I3 HC O PC F1 F2 F3 A2接着ボックス/A3接着ウイング(金属用)/I2 MO・DOインレー/I3 MODインレー/HCハーフクラウン/Oアンレー/PC部分被覆冠/F1・F2オールセラミック冠/F3メタルボンド冠。原著本文の平均値・レジン模型歯各10本。HCは大臼歯2歯種のみ。I2*は本文に平均値が無いため載せていない。I2は本文値。図から読む平均は約16%
形成デザインごとの歯質削除量(4歯種の平均、%)。原著本文に記載された平均値の全10種類。ティール=接着用アタッチメントとインレー、灰=ハーフクラウン・アンレー・部分被覆冠、オレンジ=全部被覆冠。HCは大臼歯2歯種のみの平均

4歯種の平均では、A2が5.5%、A3が10%、I2が20%、I3が27.2%、HCが35.5%、Oが39%、PCが46.7%、F1が67.5%、F2が72.3%、F3が75.6%の順に増えました。メタルボンド冠(F3)はウイング形の接着アタッチメント(A3)の約8倍、ボックス形(A2)の約14倍を削っていた計算です。

ほかに示された結果
ハーフクラウン(大臼歯)はアンレーと同程度の削除量で、全部被覆冠のおよそ半分
メタルボンド冠(F3)は、オールセラミック冠F1より約8ポイント多く削った(67.5%→75.6%)
・大臼歯のMOインレーで横走隆線または中心溝を残すと、上顎第一大臼歯で約6%、下顎第二大臼歯で約8%の歯質を温存できた
・同じ形成でも歯の形で削除量が変わった(A3で7.3〜13.8%)

なぜオールセラミック用のインレー支台は削る量が増えたのか(著者らの考察)

似た方法で金属用の形成を量った先行研究(Reiber ほか 1994)では、ゴールドのMODインレー支台が平均16%でした。本研究のオールセラミック用MODインレーは約27%です。アンレー(34%対39%)と部分被覆冠(38%対47%)については、著者ら自身が「同程度」と表現しています。

著者らは多く削った理由を、オールセラミックの材料上の要求で説明しています。ブリッジに荷重がかかると連結部に応力が集中し、梁の法則では連結部の高さは曲がりにくさに3乗で効き、幅は比例でしか効かない。そのため連結部の高さを最低5mmとし、ポンティック側のボックスもそれに合わせて設計した、という理由です。

なお結論の「メタルボンド冠はゴールドの全部被覆冠より約20%多い」は、考察に出てくる先行研究のゴールド冠(0.6mm形成で56%)との比較と読めます(筆者の読み)。

明日の臨床へ

著者らの結論:歯質の保存を考えると、接着用アタッチメントとインレー支台が好ましい。メタルボンド冠(F3)の削除量は接着用ボックス(A2)の約14倍。オールセラミック冠の形成はメタルボンド冠より有意に侵襲が小さい(ただし図12の下顎第二小臼歯では、F2とF3に有意差なしと示されている)。ハーフクラウンはアンレーと同程度で全部被覆冠の約半分。
補足(筆者の読み):
・健全歯を支台にするか考えるとき、「模型歯の平均では、冠で歯冠の約7割、インレー形で2〜3割」という量の目安になりそうです。
・ただし著者ら自身が、材料の要求だけを考えた理想的な形成の数字であり、実際の形成は歯の状態・審美・機能・傾き・保持・咬合・患者の希望で決まる、と明記しています。
・インレー支台のブリッジは、う蝕リスクの低い歯列が前提とされています。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、レジン製の模型歯を顎模型上で形成した実験室研究です。天然歯のエナメル質・象牙質、う蝕や既存修復、歯髄の大きさは反映されていません。形成は著者の1人が可能な範囲でテンプレートを使って行った理想形で、傾きのない支台歯だけ、各群10本です。第二に、結果は削った重さの割合で、歯髄までの距離や残った歯の強さ、ブリッジの長期成績や失活の頻度は調べていません。第三に、統計は歯種ごとの図で「同じ文字の柱どうしは有意差なし」と示されるだけで、多重比較の方法や標準偏差の数値は本文にありません。4歯種の平均のうちHCは大臼歯2歯種だけの平均で、I2*は歯種ごとの図にしか載っていません。考察ではF3を「75.7〜77.8%」としていますが、本文の平均は75.6%、図14の上顎第一大臼歯は73.1%で、本文と図の数字が一部合いません。I2も本文20%に対し、歯種ごとの図(図13・14の数値と図11・12の柱)からは平均約16%と読めます。第四に、表1の出典は、ハーフクラウンが文献31・33、インレー支台が文献32・33で、いずれも著者らの過去の報告(33はIPS Empress 2の論文)とされ、自分たちの提案した形成を評価している構図です。資金の一部はドイツ研究振興協会(DFG)とオレゴン健康科学大学の補綴材料研究室で、利益相反の記載はありません。それでも、「どの形成を選ぶと、歯冠のどれくらいを失うか」を形成デザイン横並びで示した数字は、支台の設計を考えるときの具体的な物差しになります。

今日のひとこと

著者らの結論:歯質の保存という点では、接着用アタッチメントとインレー支台が好ましく、メタルボンド冠(F3)の削除量は接着用ボックス(A2)の約14倍だった。オールセラミック冠の形成はメタルボンド冠より侵襲が小さく(一部の歯種では有意差なし)、大臼歯のハーフクラウンはアンレーと同程度で全部被覆冠の約半分。ただし数字はすべてレジン模型歯で理想的な形成をした実験室の平均で、ブリッジの長期成績や歯髄への影響は調べていない。

Edelhoff D, Sorensen JA. Tooth structure removal associated with various preparation designs for posterior teeth. Int J Periodontics Restorative Dent. 2002;22(3):241-249. PMID: 12186346
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。