1問1答 論文 保存修復

根管治療後の歯頸部、何のレジンで埋める?——抜去小臼歯の実験室研究で短繊維強化CRが最も高い破折荷重(健全歯には届かず)

1問1答 論文 保存修復

保存修復|根管治療した下顎小臼歯の歯頸部象牙質(PCD)を4種類のコンポジットレジンで修復し、破折荷重を比べた実験室研究(Lakshmi Durga ほか 2022・Journal of Conservative Dentistry)

根管治療後の歯は割れやすいと言われ、歯頸部は力が集中しやすいとする解析もあります。インド・ヴィシュヌ歯科大学のグループは、抜去した下顎小臼歯50本を5群に分け、根管治療後の歯頸部を4種類のコンポジットレジンで修復して、歯の長軸方向に割れるまで押しました。平均の破折荷重は、健全歯 1,483N、短繊維強化CR 1,238N、ナノハイブリッドCR 846N、デュアルキュアCR 697N、従来型ハイブリッドCR 554N。5群のすべての組み合わせで有意差がありました。ただし従来型CRの群だけは根充材の高さが違い、比べ方には注意が要ります。

論文
Comparative evaluation of the effect of adhesive restorative composite resins on the reinforcement of peri-cervical dentin: An in vitro study
著者
Indukuri Sai Lakshmi Durga, K. Madhu Varma, Girija S. Sajjan, R. Kalyan Satish, Gadde Praveen(インド・ヴィシュヌ歯科大学 保存修復・歯内療法学講座/公衆衛生歯科学講座)
掲載
Journal of Conservative Dentistry 2022;25(2):151-155. DOI: 10.4103/jcd.jcd_487_21
種類
実験室研究(in vitro)。矯正・歯周病の理由で抜去した単根管の下顎小臼歯50本を5群(各10本)にランダムに分けた。健全歯の群/根充材を歯頸部(CEJ)まで入れて従来型ハイブリッドCRで修復した群/根充材を歯頸線から5mm下までにとどめ、その上をデュアルキュアCR・ナノハイブリッドCR・短繊維強化CRで修復した3群。歯の長軸方向に1mm/分で荷重をかけ、破折した荷重(N)を一元配置分散分析とTukey検定で比較
PMID
35720820

根管治療後の歯頸部、何で埋めていますか

根管充填が終わった小臼歯。根充材の上を、いつものCRで埋めて終わりにするか。根充材を少し下げて、その分をレジンで埋めるか。材料は何を選ぶか。割れやすさを考えると、気になるところです。

この論文は、抜去した下顎小臼歯でその材料を比べました。根充材を歯頸線から5mm下までにとどめ、その上を短繊維強化CR(everX Posterior)で埋めた群が、ナノハイブリッドCR・デュアルキュアCRの群より破折荷重が有意に高かった。一方で、健全歯の群には有意に届きませんでした。

なぜ「歯頸部の象牙質」なのか

根管治療をした歯が割れやすい理由として、著者らは先行研究を引いて、咬頭・辺縁隆線・髄室の天井といった支えの構造と、象牙質そのものが失われることを挙げています。

そこで注目されているのが歯頸部象牙質(peri-cervical dentin:PCD)です。引用された文献では、歯槽骨頂の上4mmから下4mmの範囲の象牙質を指し、かみ合わせの力を歯根の長軸方向へ伝える「歯の首」にあたる部分とされています。残っているPCDの量が歯の長期保存や破折抵抗と関係する、という研究も紹介されています。

接着性のレジンを根管内・歯冠内に入れると根管治療歯の破折抵抗が上がったという報告はある。けれど、短繊維強化CRでPCDを補強する効果を調べた文献はまだ少ない。これが著者らの出発点です。

今回の実験:4種類のCRで歯頸部を修復

実験の骨格:矯正・歯周病の理由で抜去した、う蝕や修復のない単根管の下顎小臼歯50本を、5群(各10本)にランダムに分けた。10倍の手術用顕微鏡で亀裂がないことを確認。
下準備:歯冠を切って高さをそろえ(原著では隣接面の歯頸線の最も高い点の1mm下から4mm)、エナメル質を全面削除。40本はProTaper F3まで根管形成し、NaOClとEDTAで洗浄。
群1:健全歯(根管治療なし)
群2:根充材(ガッタパーチャ+AH Plus)をCEJの高さまで入れ、従来型ハイブリッドCR(Te-Econom Plus)で修復
群3〜5:根充材を歯頸線から5mm下までにとどめ、その上をデュアルキュアCR(MultiCore Flow)/ナノハイブリッドCR(Tetric N-Ceram)/短繊維強化CR(everX Posterior)で修復
評価:歯根をアクリルレジンに埋め、シリコーン印象材で歯根膜を模した。金属の圧子で歯の長軸方向に1mm/分で押し、荷重が25%落ちた時点を破折として、その荷重(N)を記録。一元配置分散分析とTukey検定。

結果:短繊維強化CRが最も高く、健全歯の約83%(平均値から計算)

0 533.3 1066.7 1600 破折した荷重の平均 (N) 1483 554 697 846 1238 健全歯 従来型ハイブリッドCR デュアルキュアCR ナノハイブリッドCR 短繊維強化CR 原著の表2の平均値(小数点以下を四捨五入)。各群10本。健全歯以外は根管治療後。従来型ハイブリッドCRの群だけ根充材がCEJまで、ほかの3群は歯頸線から5mm下まで。5群のすべての組み合わせで有意差あり(Tukey検定)
破折した荷重の平均(N)。原著の表2の平均値を小数点以下で四捨五入。各群10本。灰=健全歯、オレンジ=従来型ハイブリッドCR(根充材はCEJまで)、淡いオレンジ=デュアルキュアCR、淡いティール=ナノハイブリッドCR、ティール=短繊維強化CR(3群とも根充材は歯頸線から5mm下まで)

平均±標準偏差は、健全歯 1,483.11±148.78N、短繊維強化CR 1,238.07±64.09N、ナノハイブリッドCR 846.06±58.84N、デュアルキュアCR 696.85±51.43N、従来型ハイブリッドCR 553.83±78.76Nでした。

統計の結果(表3のTukey検定)
5群のすべての組み合わせで有意差あり(P<0.05)
・短繊維強化CRは健全歯より平均245N低い(95%信頼区間 133〜357N)
・短繊維強化CRはナノハイブリッドCRより平均392N、デュアルキュアCRより平均541N高い
・平均値を健全歯と比べると(筆者計算)、短繊維強化CR 約83%、ナノハイブリッドCR 約57%、デュアルキュアCR 約47%、従来型ハイブリッドCR 約37%

ここで見落としたくないのは、従来型ハイブリッドCRの群だけ、根充材の高さがCEJまでと違うことです。この群と他の3群の差には「材料の違い」と「根充材を5mm下げてレジンに置き換えたこと」の両方が混ざっていて、どちらの効果かは切り分けられません。材料どうしを同じ条件で比べられているのは、群3〜5の3つです。

なぜ短繊維強化CRが高かったのか(著者らの推察)

著者らは、引用文献をもとに次のような理由を挙げています。短繊維強化CRのレジンは、架橋したBis-GMA・TEGDMAと直鎖状のPMMAが絡み合う構造(semi-IPN)で、靭性を高めるとされる。表面から突き出た短いガラス繊維が象牙質と機械的にかみ合い、接着を助けるという報告もある。弾性係数は12.3GPaで、今回使った他のCRより高い。繊維が亀裂の進行を止め、多方向に補強する。

従来型CRの群が最も低かった理由については、ガッタパーチャの弾性係数(約77MPa)が象牙質(約16GPa)よりはるかに低く、歯根を補強する力がほとんどないため、と説明しています。いずれもこの研究で測ったものではなく、引用文献に基づく推察です。破折の様式(修復できる割れ方か)や、繊維と象牙質の界面の観察は報告されていません。

明日の臨床へ

著者らの結論:この実験室研究の範囲では、根管治療歯の歯頸部象牙質を接着性のCRで修復すると、従来型CRの群より破折荷重が有意に高く、中でも短繊維強化CRがナノハイブリッドCR・デュアルキュアCRより有意に高い補強効果を示した。
補足(筆者の読み):
・同じ「根充材を5mm下げてレジンで埋める」条件なら、材料で破折荷重に差が出た、というのがこの研究から持ち帰れる数字です。どのCRで埋めるかを考えるときの、実験室での参考値になります。
・一方で、根充材を5mm下げること自体の効果は、同じ材料で深さだけ変えた群がないため、この論文からはわかりません。
・荷重は長軸方向だけで、臼歯部で問題になりやすい斜めからの力や、繰り返しの力は試していません。
・歯冠を切ってエナメル質を落とした状態での試験で、咬頭が残った歯やクラウンをかぶせた歯の結果ではありません。接着の手順や光照射の条件、表層を別のCRで覆ったかどうかも書かれていないので、実際に使うときは各製品の添付文書の手順で確認を。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、抜去した下顎小臼歯を使った実験室研究で、各群10本です。荷重は長軸方向に1回押して割る静的な試験で、温度サイクルなどの劣化処理の記載もありません。臨床での破折率や長期の予後は調べていません。第二に、従来型CRの群だけ根充材の高さが違い、この群との差を材料の効果とは言い切れません。第三に、方法の記述が少なく、接着・光照射の手順、窩洞の形や大きさ、破折の様式は報告されていません。健全歯の群は、方法では「陰性対照・根管治療なし」、表では「陽性対照」と表記が揺れ、全試料の歯冠を切ったという記述と「健全のまま」という記述のどちらが当てはまるかも読み取れません。資金提供はなく、利益相反もないと記載されており、著者に製品メーカーの所属者はいません。それでも、「同じ深さに埋めるなら、材料で破折荷重に差が出た」という結果は、根管治療後の歯頸部の修復材を選ぶときの、ひとつの物差しになります。

今日のひとこと

著者らの結論:この実験室研究の範囲では、根管治療後の歯頸部象牙質を接着性のCRで修復した3群は、従来型CRの群より破折荷重が有意に高く、その中でも短繊維強化CR(everX Posterior)の群が最も高かった(平均1,238N)。(筆者注)表では短繊維強化CRの群も健全歯(平均1,483N)より有意に低かった。従来型CRの群だけ根充材の高さ(CEJまで)が違うため、この群との差を材料だけの効果とは言い切れない。抜去歯を長軸方向に1回押して割る試験で、臨床での破折率は調べていない。

Lakshmi Durga IS, Varma KM, Sajjan GS, Satish RK, Praveen G. Comparative evaluation of the effect of adhesive restorative composite resins on the reinforcement of peri-cervical dentin: An in vitro study. J Conserv Dent. 2022;25(2):151-155. PMID: 35720820. DOI: 10.4103/jcd.jcd_487_21
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。