1問1答 論文 保存修復

ファイバーポストを入れると、根管への接着は弱くなる?——抜去歯の実験で、ポストを入れると接着強さは39.8→9.6 MPa(幅1.5 mm・歯冠側)に低下。幅を広げてレジン量を変えても有意差なし(24時間後の実験室研究)

1問1答 論文 保存修復

保存修復|ファイバーポスト・根管象牙質への接着・C-factor・レジン量。抜去ヒト小臼歯を使った実験室研究(Aksornmuang ほか 2011・Journal of Dentistry)

「ファイバーポストとレジンで一体化させれば、接着は安心」——支台築造でそう考えがちです。ポストが入る分だけレジンの量が減り、収縮も小さくなりそうだからです。けれど根管は深くて細い窩洞で、ポストを入れると接着面ばかりが増え、レジンが逃げられる自由面はほとんど残りません。タイと東京医科歯科大学のグループが、抜去歯の根管を使い、「C-factor(拘束の強さ)」と「レジンの量」のどちらが接着を左右するのかを調べました。著者らは、ポストを入れて高まったC-factorが接着を損なったと解釈しています。

論文
Effects of C-factor and resin volume on the bonding to root canal with and without fibre post insertion
著者
Juthatip Aksornmuang, Masatoshi Nakajima, Pisol Senawongse, Junji Tagami(プリンス・オブ・ソンクラー大学/東京医科歯科大学/マヒドン大学)
掲載
Journal of Dentistry 2011;39:422-429. DOI: 10.1016/j.jdent.2011.03.007
種類
実験室研究(in vitro)。矯正目的で抜去したヒト単根小臼歯12本を、窩洞の幅2種(1.5 mm/1.75 mm)×ファイバーポストの有無の4群(各3根)に分け、24時間後に微小引張接着試験(μTBS)で比較
PMID
21453745

ポストを入れると、根管への接着は弱くなる?

歯冠の崩壊が大きい失活歯では、コアの維持のためにポストが必要になります。象牙質に近い弾性をもつファイバーポストを、デュアルキュア型のレジンで接着する方法は広く使われています。

ポストを入れれば、その分レジンの量は減ります。量が減れば収縮も小さく、接着には有利そうに思えます。一方で、ポストを入れると接着面が根管壁とポスト表面の両方に増え、レジンが自由に縮める面はほとんど残りません。

結論を先に言うと、この実験ではポストを入れた根管で、接着強さが大きく下がりました。窩洞の幅を変えてレジン量を変えても、接着強さに有意差はありませんでした。

なぜC-factorとレジン量が気になるのか

レジンの重合収縮応力は、レジンの量(体積収縮)や窩洞の形など、いくつもの要因で決まるとされています。窩洞の形の指標がC-factorで、接着面と非接着面(自由面)の比です。著者らは、ポストを接着した根管ではC-factorが200を超えうるのに対し、歯冠の窩洞では1〜5程度という報告を紹介しています。

ただ、根管のように深く細い窩洞で、C-factorとレジン量のどちらが接着に強く効くのかは、はっきりしていませんでした。先行研究では、レジンブロックを使った実験でC-factorの影響は有意でなかった一方、根管充填材の理論モデルでは有意だった、と結果が割れていたからです。

実験のしかけ

研究デザイン:矯正目的で抜去したヒト単根小臼歯12本を歯頸部で切断し、深さ8 mmのポスト孔を形成した実験室研究(in vitro)です。
レジン量を変える工夫:ポスト孔の幅を1.5 mm1.75 mmの2種類にしました(各6根)。
C-factorを変える工夫:幅ごとに3根はコアレジンだけで満たし、3根には直径1.4 mmの透光性グラスファイバーポストを入れました。
材料:接着材はデュアルキュア型の1ステップ・セルフエッチ(20秒光照射)、コアレジンはデュアルキュア型。歯冠側から60秒光照射し、37 ℃の水中に24時間保管しました。
評価:各根から約0.6 mm角の棒状試料を切り出し、微小引張接着試験(μTBS)を実施。歯冠側4本・根尖側4本に分け、各群・各部位12本として解析しました。

結果:ポストを入れると、接着強さは大きく下がった

0 20 40 60 接着強さ μTBS (MPa) 39.8 20.4 9.6 7.3 36.4 23.2 8.7 8.6 幅1.5mmポストなし 幅1.5mmポストあり 幅1.75mmポストなし 幅1.75mmポストあり 歯冠側 根尖側 抜去ヒト小臼歯・各群3根・24時間水中保管後の平均値(原著 表2)。ポストあり群はポストなし群より有意に低く、幅1.5mmと1.75mmの間に有意差なし。ポストなし群だけ根尖側が歯冠側より有意に低い。一部群は切断中の破損試料を除外(測定数10〜12本)
窩洞の幅とポストの有無ごとの、根管象牙質への接着強さ(原著 表2から作図)

幅1.5 mmでは、ポストなしの歯冠側39.8 MPaに対し、ポストありは9.6 MPa。根尖側でも20.4 MPaが7.3 MPaに下がりました。幅1.75 mmでも、歯冠側36.4→8.7 MPa、根尖側23.2→8.6 MPaと同じ傾向です。平均値で比べると、ポストありはポストなしの歯冠側で約4分の1、根尖側で3分の1強でした(著者らは「ポストなしが約3〜4倍高い」と表現)。

三元配置分散分析では、接着強さに有意に影響したのはポストの有無と部位(p<0.0001)で、窩洞の幅は影響していませんでした(p=0.996)。ポストの有無と部位の交互作用も有意でした(p<0.0001)。同じ部位同士で、幅1.5 mmと1.75 mmの間に有意差はありませんでした。

C-factorとレジン量を、数字で見る

0 120 240 360 C-factor(接着面÷非接着面) 22.33 327.79 19.29 94.21 幅1.5mmポストなし 幅1.5mmポストあり 幅1.75mmポストなし 幅1.75mmポストあり 原著の計算式による値(表3)。ポストありの2群はC-factorが327.79と94.21で大きく違うのに、接着強さに有意差はなかった
各群のC-factor(原著 表3。原著の計算式による値)

原著の計算では、ポストなしのC-factorは22.33(幅1.5 mm)と19.29(幅1.75 mm)。ポストを入れると327.79と94.21に跳ね上がりました。レジン量はポストなしで14.14 mm³と19.25 mm³、ポストありで1.82 mm³と6.93 mm³です。

面白いのは、ポストありの2群です。C-factorは327.79と94.21で大きく違うのに、接着強さに有意差はありませんでした。ポストとの間のレジン層の厚みは、幅1.5 mmで約50 μm、1.75 mmで約175 μm。著者らは、層が薄い範囲では、わずかな厚みの違いでC-factorの計算値は大きく変わる一方、実際の収縮応力は100 μmほどの厚みの差ではほとんど変わらないという先行研究を引き、2群の応力は同程度だったのだろうと考察しています。

レジン量については、幅を広げると約5 mm³増えましたが、ポストの有無にかかわらず接着強さはほぼ同じでした。著者らはここから、レジン量の変化は接着に有意な影響をもたらさなかったとしています。

壊れ方と、歯冠側・根尖側の差

部位の差が出たのは、ポストなしの群だけでした。ポストなしでは根尖側が歯冠側より有意に低く、ポストありでは歯冠側と根尖側に有意差はありませんでした。

著者らの考察では、ポストなしの根尖側が低かったのは、1ステップ接着材に含まれる水やエタノールが、深く細い根尖側では飛ばしにくいためかもしれない、とされています。ポストありで部位差が出なかったのは、透光性のポストを通った光がポスト周りの薄いレジンを硬化させたためではないか、という見立てです。いずれも、この実験で直接確かめたものではありません。

破壊の様式は、ポストなしでは主に象牙質とレジンの界面か、界面とレジンの混合でした。ポストありでは約3分の1がポストの内部で破壊し、残りは象牙質とレジンの界面で壊れていました。著者らは、この1ステップ接着材では、ポストを入れた根管で象牙質との界面を保つだけの接着が得られなかった、と述べています。

明日の臨床へ

著者らの結論:ポスト挿入で生じる高いC-factorは、根管象牙質への微小引張接着強さを大きく損なった。一方、窩洞の幅を変えたレジン量の変化は、接着強さに有意な影響を与えなかった。
補足(筆者の読み):
①ポストの要否を決める論文ではありません。ポストを使うかは残った歯冠の量で決まり(著者らも序論でそう述べています)、この実験は「ポストを入れた根管では、接着界面がかなり厳しい条件に置かれる」ことを示したものです。
②接着を良くする目的でポスト孔を広げる根拠は、この実験からは見当たりません。幅1.5 mmと1.75 mmで接着強さに有意差はなく、著者らは、根管を大きく形成すると歯根の破折抵抗が大きく下がるという研究も紹介しています。
③接着材によって結果が変わる可能性があります。著者らの以前の研究(2ステップ・セルフエッチ使用)では、同じポストでポスト内部の破壊だけが見られたと紹介されていますが、別の実験で条件も違うため、直接は比べられません。エッチ&リンス系はこの研究では調べていません。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、抜去歯を使った実験室研究で、各群は3根です。1本の根から複数の試料を切り出して各部位12本として解析しているので、試料同士は完全に独立ではありません。第二に、評価は24時間後だけで、熱サイクルなどの耐久試験はしていません。第三に、切断中に壊れた試料は平均から除いており(著者らは0 MPaとして扱うと平均を不当に下げるためと説明)、接着の弱い群ほど実際より高めに出ている可能性があります。第四に、ポストを入れるとC-factorだけでなく、レジン層の厚みやポストそのものも同時に変わります。ポストありの約3分の1はポスト内部で壊れていて、「C-factorが原因」は著者らの解釈です。また、幅の差は0.25 mm(レジン量で約5 mm³)だけで、幅を変えるとC-factorや象牙質の深さも同時に変わるため、「レジン量は関係ない」と一般化はできません。接着材・コアレジン・ポストも各1種類でした。それでも、「レジン量が減るからポストを入れた根管は接着に有利」とは言えないことを、数字で見せてくれる研究です。

今日のひとこと

抜去歯の根管を使った実験室研究で、ファイバーポストを入れるとC-factorが大きく上がり、24時間後の根管象牙質への接着強さは、レジンだけで満たした場合の約4分の1(歯冠側)〜3分の1強(根尖側)に下がった。一方、窩洞の幅を1.5 mmから1.75 mmに広げてレジン量を変えても、接着強さに有意差はなかった。著者らは、ポスト挿入で生じる高いC-factorが接着を大きく損ない、幅によるレジン量の変化は有意な影響をもたらさなかったと結論している。ただし接着材・コアレジン・ポストは各1種類で、各群3根の短期の結果であり、ポストを使うかどうかの判断や修復の予後を直接示すものではない。

Aksornmuang J, Nakajima M, Senawongse P, Tagami J. Effects of C-factor and resin volume on the bonding to root canal with and without fibre post insertion. J Dent. 2011;39:422-429. PMID: 21453745. DOI: 10.1016/j.jdent.2011.03.007
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。