1問1答 論文 保存修復

セルフエッチングの前、象牙質を何で削るかで接着強さは変わった——レギュラーのダイヤモンドは30.8 MPaで回転切削器具の中で最も低く、超微粒子は56.2 MPa。ただし超微粒子とカーバイドバーに有意差はなし(クリアフィルSEボンド・抜去歯の平らな象牙質・24時間)

1問1答 論文 保存修復

抜去した第三大臼歯の咬合面象牙質を、ダイヤモンドポイント3種・カーバイドバー2種・SiC研磨紙3種で削り、クリアフィルSEボンドの微小せん断接着強さを比べた実験研究(Lee ら 2010・大韓歯科保存学会誌、本文は韓国語)

セルフエッチングシステムの接着強さのデータは、多くがSiC研磨紙で平らに磨いた象牙質で測られています。けれど臨床で接着する面は、ダイヤモンドポイントやカーバイドバーで削った面です。削る道具が変われば、スミヤー層も変わる。では接着強さはどれくらい変わるのか。韓国・朝鮮大学校のグループが確かめました。

論文
상아질 삭제기구가 자가부식 접착제의 결합강도에 미치는 효과(Effect of cutting instruments on the dentin bond strength of a self-etch adhesive)
著者
Young-Gon Lee, So-Ra Moon, Young-Gon Cho(韓国 朝鮮大学校 歯科大学 歯科保存学教室)
掲載
大韓歯科保存学会誌(J Korean Acad Conserv Dent)2010;35(1):13-19. doi:10.5395/jkacd.2010.35.1.013
種類
in vitro 実験研究(本文は韓国語・英文抄録つき)。う蝕・修復のない上下顎第三大臼歯56本の咬合面をエナメル–象牙境直下で切断し、厚さ1.2 mmの象牙質板を作製、8群に7本ずつ無作為に割付。各器具で表面を約0.2 mm削除:①レギュラーダイヤ〔TF-12・106〜125 µm〕②ファイン〔TF-12F・53〜63 µm〕③超微粒子〔TF-12EF・20〜30 µm〕④クロスカットカーバイド〔No.557〕⑤プレーンカットカーバイド〔No.245〕⑥SiC研磨紙P120〔125 µm〕⑦P220〔60 µm〕⑧P800〔22 µm〕。クリアフィルSEボンドを塗布し、内径0.5 mmのTygonチューブでクリアフィルAP-Xを接着〔1枚に3本〕。蒸留水24時間後に微小せん断試験〔各群n=20〕。一元配置分散分析+Tukey法)
PMID
なし(PubMed未収載)

接着強さのデータは、どんな面で測られているか

セルフエッチングプライマーを使う2ステップの接着システムは、手順が短く、術者による差が出にくいことから広く使われています。プライマーの酸性モノマーがスミヤー層を通り抜けて下の象牙質を脱灰し、薄い樹脂含浸層を作る——だからスミヤー層を完全に除かなくても、リン酸エッチングと同等の接着強さが出る、と説明されてきました。

ただ、その接着強さの多くは、SiC研磨紙で平らに磨いた象牙質で測られています。臨床で接着するのは、ダイヤモンドポイントやカーバイドバーで削った面です。回転切削器具で削ると、器具ごとに違う粗さ・厚さのスミヤー層ができます。

先行研究では、ダイヤモンドよりカーバイドバーで削った面のほうが接着強さが高いという報告があります。ダイヤモンドの粒子の粗さについては、影響するという報告と差がないという報告があり、結果が割れていました。Leeらは、ダイヤモンドの粒度3種・カーバイドバーの刃の形2種・研磨紙の番手3種を1つの実験で並べて比べました。

8通りに削った象牙質に、同じボンドで接着

研究の骨格: う蝕も修復もない上下顎の第三大臼歯56本を使用。咬合面のエナメル–象牙境のすぐ下で平らに切断し、厚さ1.2 mmの象牙質板を作って、8群に7本ずつ無作為に割り付けた。
各群の器具で象牙質表面を約0.2 mm削除①レギュラーダイヤモンド(TF-12・粒子106〜125 µm)②ファイン(TF-12F・53〜63 µm)③超微粒子(TF-12EF・20〜30 µm)④クロスカットのカーバイドフィッシャーバー(No.557)⑤プレーンカット(No.245)⑥SiC研磨紙P120(125 µm)⑦P220(60 µm)⑧P800(22 µm)。削りかすはエアウォーターシリンジで洗って乾燥。
クリアフィルSEボンドのプライマーを20秒→エアで乾燥、ボンドを塗って弱くエア→10秒光照射(500 mW/cm²)。内径0.5 mm・高さ1 mmのTygonチューブにクリアフィルAP-X(A3)を詰めて40秒光照射し、1枚に3本の円柱を接着した。
蒸留水に24時間保管後、0.3 mmのワイヤーを掛けて微小せん断試験(1.0 mm/分)。各群n=20。一元配置分散分析+Tukey法(有意水準5%)。

結果——同じボンドでも、30.8から59.2 MPaまで開いた

0 23.3 46.7 70 微小せん断接着強さ(MPa) 30.8 42.5 56.2 45.7 46.1 32.1 45.3 59.2 ①レギュラーダイヤ ②ファインダイヤ ③超微粒子ダイヤ ④クロスカットカーバイド ⑤プレーンカットカーバイド ⑥SiCP120 ⑦SiCP220 ⑧SiCP800 原著Table 2の8群すべて(各n=20、平均)。標準偏差は①6.1 ②12.0 ③14.8 ④15.9 ⑤13.5 ⑥10.6 ⑦16.8 ⑧11.8。Tukey法の文字表記:①a ②a,b ③c,d ④b,c ⑤b,c,d ⑥a ⑦b,c ⑧d(同じ文字を共有する群どうしは有意差なし)。④⑤の番号は原著Table 1と本文に従った(英文抄録だけ4群と5群の割り当てが逆に書かれている)
象牙質を削った器具ごとのクリアフィルSEボンドの微小せん断接着強さ(原著Table 2、各n=20)

いちばん低かったのは①レギュラーダイヤモンドの30.8 MPa、いちばん高かったのは⑧SiC研磨紙P800の59.2 MPaです。回転切削器具だけで見ると、③超微粒子ダイヤモンド56.2 MPa、⑤プレーンカットカーバイド46.1 MPa、④クロスカットカーバイド45.7 MPa、②ファイン42.5 MPa、①レギュラー30.8 MPaの順でした。

回転切削器具どうしで、統計的に言えること

数字の順番と、有意差があるかどうかは別です。Tukey法の結果を整理すると次のとおりです。

①レギュラーは、③超微粒子・④⑤カーバイドより有意に低い。②ファインとは有意差がありません。②ファインは、③超微粒子より有意に低いが、④⑤カーバイドとは有意差がありません。そして③超微粒子は、④⑤カーバイドより数値は高いものの、有意差はありません。④クロスカットと⑤プレーンカットの間にも有意差はありませんでした。

つまり、統計で言えるのは①レギュラーは③超微粒子・④⑤カーバイドより低く、②ファインも③超微粒子より低かった、ということです。「超微粒子でなければならない」「カーバイドより超微粒子が上」とまでは、この研究の統計からは言えません。

著者らは、粒子の粗いレギュラーダイヤモンドは粗く厚いスミヤー層を作り、リン酸よりpHの高いSEプライマーが、スミヤー層を通り抜けて下の健全な象牙質まで十分に届かなかったためと考えています。ただし、この研究ではスミヤー層の厚さや表面の粗さは測っていません。

研磨紙の番手でも、接着強さは変わった

SiC研磨紙はP120 32.1 MPa、P220 45.3 MPa、P800 59.2 MPaで、3つの番手は互いにすべて有意差がありました。同じボンドでも、研磨紙の番手だけで接着強さの数字が大きく変わるということです。

回転切削器具と粒子の大きさが近い組み合わせで比べると、①レギュラー(106〜125 µm)と⑥P120(125 µm)、②ファイン(53〜63 µm)と⑦P220(60 µm)、③超微粒子(20〜30 µm)と⑧P800(22 µm)は、いずれも有意差がありませんでした。著者らは、実験室で臨床の切削面(ファインダイヤモンドやカーバイドバーで削った面)に近い条件を再現するなら、P220の研磨紙が使えるだろうと述べています。

明日の臨床へ

①セルフエッチングの前に、レギュラーのダイヤモンドで削ったままの面にしない。この研究では、レギュラーで削った面が回転切削器具の中で最も低く、超微粒子やカーバイドより有意に低かった。
②超微粒子ダイヤモンドは回転切削器具の中では数値が最も高いが、カーバイドバーと有意差はない。著者らは超微粒子を勧めているが、「超微粒子でなければならない」とまでは言えない。
③接着強さの論文を読むときは、象牙質の面を何で作ったかを見る。同じボンドでも、SiC研磨紙P120とP800の平均には約27 MPaの開きがあった(原著の平均値から計算)。研磨紙の番手が違えば、論文どうしの数字は単純に比べられない。
④この結果は、クリアフィルSEボンド1製品・24時間の値である。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:
第一に、抜去した第三大臼歯の平らな咬合面象牙質での試験で、窩洞の形・深さ・部位(窩壁や歯頸部)は再現していません。
第二に、接着材はクリアフィルSEボンド1製品、評価は24時間後だけで、耐久性(熱サイクル・長期水中保管)は見ていません。
第三に、各群は7本の歯から作った20本の試験体で、同じ歯から複数本を取っているため独立したデータではありません。1枚に3本ずつなら21本になりますが、解析は各群20本で、1本を除いた理由は書かれていません。標準偏差も最大16.8 MPaと大きめです。
第四に、スミヤー層の厚さ・表面粗さ・破壊様式は観察されておらず、器具で差が出た理由は著者らの推測です。
第五に、本文は韓国語で、英文抄録だけ、4群と5群に割り当てたカーバイドバー(プレーンカットNo.245/クロスカットNo.557)が逆に書かれています。記事は表1・表2の脚注・韓国語の本文と抄録に従いました。研究は朝鮮大学校の学術研究費の支援によるものです。

それでも、「どの道具で作った面か」で接着強さの数字が大きく変わる(①レギュラー30.8 MPaと⑧P800 59.2 MPaでは2倍近い開き。平均値から計算)ことを、臨床の器具と実験室の研磨紙を並べて見せた点は、窩洞の仕上げと論文の読み方の両方を見直すきっかけになります。

今日のひとこと

クリアフィルSEボンドの象牙質への微小せん断接着強さは、削る道具で大きく変わった。回転切削器具ではレギュラーダイヤモンド30.8 MPa、ファイン42.5 MPa、超微粒子56.2 MPa、クロスカットカーバイド45.7 MPa、プレーンカットカーバイド46.1 MPa。レギュラーは超微粒子・カーバイドより有意に低く、ファインは超微粒子より有意に低かった。一方、超微粒子とカーバイドバー、ファインとカーバイドバーの間には有意差がなかった。SiC研磨紙はP120 32.1、P220 45.3、P800 59.2 MPaと番手ごとにすべて有意差があり、P220はファインやカーバイドと有意差がなかった。著者らは超微粒子ダイヤモンドを勧めているが、数値で言えるのは「回転切削器具ではレギュラーのダイヤモンドで作った面が不利で、ファインも超微粒子より有意に低かった。超微粒子とカーバイドバーの優劣はつかなかった」までである(抜去歯の平らな象牙質・24時間・1製品)。

이영곤, 문소라, 조영곤(Lee YG, Moon SR, Cho YG). Effect of cutting instruments on the dentin bond strength of a self-etch adhesive. J Korean Acad Conserv Dent. 2010;35(1):13-19. doi:10.5395/jkacd.2010.35.1.013
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。