1問1答 論文 虫歯

キシリトールは、ガムでしか効かないのか——ガム14研究中13研究で減り、キャンディ3研究では変わらなかった

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|キシリトールとプラーク蓄積・剤形(ガム/キャンディ)

「キシリトールのタブレット、うちの子に舐めさせています」——そう言われたとき、どう返しているでしょうか。噛むか舐めるかで結果が変わるのか。トゥルク大学のSöderlingらが、1971年から2020年までのランダム化比較試験を集めて、剤形ごとに並べ直しました。

論文
Effects of xylitol chewing gum and candies on the accumulation of dental plaque: a systematic review
著者
Söderling E, Pienihäkkinen K
掲載
Clin Oral Investig. 2022;26(1):119-129
種類
システマティックレビュー(RCT 14論文・16研究/1971-2020)
PMID
34677696

「タブレットを舐めさせています」に、どう返すか

キシリトールを勧めると、返ってくる形はさまざまです。ガム、タブレット、キャンディ、グミ。小さいお子さんには噛めないからと、舐めるタイプを選ぶご家庭も少なくありません。

そのとき僕らは、なんとなく「同じキシリトールだから、まあ良いのでは」と受け流してきたのではないでしょうか。

ここに、剤形で切り分けたレビューがあります。キシリトール研究の本家ともいえるフィンランド・トゥルク大学のSöderlingらによるものです。

先に結論: ガムの14研究のうち13研究でプラークが減った。一方、キャンディ/タブレットの3研究では、いずれもプラークは変わらなかった。ただし測っているのはプラークの量だけで、う蝕そのものではない。

1971年から2020年まで、条件を揃えて集める

PRISMAに沿ったシステマティックレビューで、データ収集の前にPROSPEROへ登録を申請しています(2020年11月11日)。

  • PubMed・Embase・Cochrane Libraryに加え、clinicaltrials.gov のグレーリテラチャーまで探索
  • 802件から重複を除いて424件、全文評価28件を経て、14論文(16研究)が残った
  • 対象は健常者のみ(機能性食品の健康強調表示を評価するなら、健康な人で検証すべきという理由)。矯正治療中・施設入所者・障害のある方の研究は除外
  • キシリトールがポリオールの50%以上を占める製品のみを介入とし、対照にキシリトールを含む製品は不可
  • 16研究の内訳は小児4研究・成人12研究。年齢5〜60歳以上、人数14〜485名、期間6日〜3年

バイアスリスクは低い2研究・不明12研究・高い2研究。1970〜90年代の研究が含まれるため、ランダム化や盲検化の記述が乏しいものが多い——ここは著者自身が正直に書いています。

ガムでは減り、キャンディでは減らなかった

0 4.7本 9.3本 14本 プラークの減少を示した研究の数 13本 0本 チューインガム(14研究中) キャンディ・タブレット(3研究中) 分母が14と3で大きく違う点に注意。またMerikallio 1995はガムとタブレットの両方を試した1研究で、両側に数えられている(14+3=17が16研究を超えるのはこのため)
剤形で結果が割れた。ただし分母は14と3で大きく違う

チューインガムの14研究のうち13研究で、プラーク量の有意な減少が確認されました。小児でも成人でも、短期(6〜30日)でも長期(1.5〜6か月)でも、同じ向きです。

そのうち6研究は、対照が「ソルビトールガム」でした。つまり同じシュガーレスガムを噛んだ相手に対しても差がついた、ということです。さらに3研究は、ガムベース(甘味料なし)または「ガムなし」を対照にしています。

0 16.7% 33.3% 50% プラークの減少(%) 46% 9% 15% 12% Akgül 2020(3週間) Steinberg 1992(1.5か月) 薄い棒=対照。対照はAkgülがガムベース(甘味料なし)、Steinbergがソルビトールガム。Steinbergでは「ガムなし」群に低下は見られなかった。いずれもプラーク指数での評価(Akgül=Silness-Löe、Steinberg=Quigley-Hein)で、本文のSöderling・Croninの数値は新鮮重量
個別研究での減少幅の例。対照が何かによって、差の大きさはかなり変わる

数字を拾うと、こうです。

  • Söderling 1989(2週間・成人):キシリトールガム/キシリトール・ソルビトールガムでプラーク新鮮重量が24〜29%減少。一方ソルビトール群ではむしろ増加
  • Cronin 1994a〜c(各2週間):a・bはキシリトール・ソルビトール配合ガム、cは純キシリトールガム。プラーク再形成の抑制は29%(a)、23〜32%(b・1日2粒以上摂取した群)、32〜38%(c)ソルビトール対照群の抑制は3研究をまとめて8〜10%と小さかった。とくにcでは純キシリトールガムがソルビトールガムに有意に勝っています(p<0.01)
  • Steinberg 1992(1.5か月):プラーク指数がキシリトール群で15%、ソルビトール対照群で12%低下。ガムなし群では低下なし——同じシュガーレスどうしだと、差は小さい
  • Akgül 2020(3週間):キシリトールガムで46%減少ガムベースでは9%
  • Mäkinen 2005(6か月・5歳児):1日4回・5分噛んでプラーク指数が8%低下、ソルビトール対照では変化なし
  • Al-Haboubi 2012(6か月・60歳以上):1日2回15分でプラークが低下、ガムなし対照では変化なし

対してキャンディ・タブレット・ロゼンジの3研究は、いずれもプラークに変化なしでした。3か月間・1日4回・4gのロゼンジ(Birkhed 1979)でも、3年間・1日3回・7.5gのキャンディ(Runnel 2013)でも動きません。Runnelの研究では、同じ設計のエリスリトールのキャンディはプラークを減らしたようだと報告されている一方、キシリトールとソルビトールでは効果が見られませんでした。

ただし著者らは、この2本について弁明も添えています。Birkhedの研究は他の研究に比べてベースラインのプラーク量が多く、用量も1日4gと低かった。Runnelの研究は1日3回・最後の摂取が14時ごろ・平日のみ(長期休暇中は摂取なし)と、処置そのものが比較的緩やかだった——と。「キャンディだから効かない」と断定できるだけの設計ではない、という含みです。

数え方に一つ、断りを「ガム14研究」と「キャンディ3研究」を足すと17になり、全16研究を超えます。これはMerikallio 1995がガムとタブレットの両方を試した1研究で、両側に数えられているためです。そしてこの研究はガム14研究のうち唯一プラークが減らなかった1本でもあります。著者らはその理由として、プラーク量から見て被験者(新兵)が野外の条件下で口腔清掃をまったく行っていなかった可能性を挙げています。「14中13 対 3中0」というきれいな対比の裏には、この重なりがあります。

著者らの仮説——咀嚼時間が交絡しているのではないか

この論文の考察でいちばん面白いのは、咀嚼時間をめぐる推論です。

キシリトールはガムから1分で唾液中の濃度がピークに達し、3分でほぼ溶け出し切ります(別の文献による溶出動態)。短時間で高濃度がプラークに届く。ここが作用機序の要ではないか、と著者らは考えています。

研究を事後的にグループ分けすると、こう見えます。

  • 噛む時間が短い(あるいは指定がない)研究では、キシリトールガムだけが減り、ソルビトールガム/ガムベースは減らなかった
  • 1日3〜5回×10分と長めに噛ませた3研究では、キシリトール・ソルビトール・マルチトールのどれもが、同じように小さく減った

著者らの説明はこうです。長く噛み続けると唾液分泌が高まり、かえってキシリトールが口から洗い流される(oral clearance)。だから長時間の咀嚼は、キシリトール特有の効果を見えにくくするのではないか、と。

ここは仮説であって、結論ではない著者ら自身が「咀嚼時間はガムの研究における交絡因子かもしれないという書き方をしており、さらに「評価したすべての研究がこの考えを支持したわけではない」と自ら但し書きを付けています。実際、上の③で最大の差を示したAkgül 2020は「1日3回×10分」=長く噛ませる設計です。これは事後的なグループ分けによる観察であって、咀嚼時間をランダム化して比べた結果ではありません。「長く噛ませるのは無意味」と読むのは早すぎます。現時点で言えるのは「長く噛ませる根拠は、思っていたほど強くない」までです。

なおガムベース(甘味料なし)を噛むだけでは、プラークの減少はゼロか7〜9%どまりでした。少なくともこのレビューの範囲では、「噛むだけ」では差が出ておらず、剤形で結果が割れている——ここまでが読み取れる範囲です。

明日の臨床へ

  • 剤形を確認してから話す。「キシリトール、続けています」と言われたら、ガムかタブレットかを聞く。プラーク量という指標に限れば、このレビューの3研究にキャンディで減ったという報告はありません
  • ただし「キャンディは効かない」と断じない。著者らは、本レビューの除外基準に該当した研究では、キシリトールのキャンディ/パスティルでプラーク減少が観察されている(フィンランド・クウェートの障害のある対象者)と明記しています。また冒頭ではパスティル・シロップ・ウェットティッシュでう蝕が減った報告にも触れています
  • 用量は、この論文からは決められない。著者らは「1研究を除き、用量は約5g以上で”キシリトール効果”に足りていた」と書いていますが、その5gという閾値は別文献(ミュータンス菌の研究)由来です。しかも例外の1研究は1日2.8gで効果あり、一方で1日7.5gのキャンディは無効でした
  • 「長く噛みなさい」の根拠は、思っていたほど強くない。ただし④のとおり、これは著者の仮説であって検証された結論ではありません
  • これはプラークの話であって、う蝕そのものの話ではない。キシリトールのう蝕予防効果については別のレビューがあり、結論は分かれています。著者ら自身も「キシリトールガムがブラッシングの代わりにならないことは明らかである」と釘を刺しています
ここだけ、冷静に補助線集められた16研究のうちバイアスリスクが低いのは2研究だけで、12研究は「不明」——古い研究が多く、ランダム化や盲検化の記述が足りません。資金にも注意が要ります。7研究が製品企業から部分的または全面的な資金提供を受けており、著者らはこれを資金バイアスの「不明」と評価しています(6研究は製品の無償提供のみ)。研究間の異質性が大きくメタ解析はできておらず、統合された効果量は存在しません。またキャンディ側はわずか3研究で、「効かない」を確定するには本数が足りません。プラーク指数を平均値で扱っている研究が多い点も、著者ら自身が「プラークは口の中で均等に付くわけではなく、指数はカテゴリカルなので、平均が蓄積量を正しく反映しない可能性がある」と限界に挙げています。それでも、「同じ成分でも剤形で結果が割れる」という一点は、明日の説明をはっきりさせてくれます。

今日のひとこと

プラーク量という指標に限れば、キシリトールの効果はガムの14研究中13研究で確認され、キャンディの3研究では確認されなかった。ただし測っているのはう蝕ではなくプラークであり、除外された研究にはキャンディで減ったという報告もある。

Söderling E, Pienihäkkinen K. Effects of xylitol chewing gum and candies on the accumulation of dental plaque: a systematic review. Clin Oral Investig. 2022;26(1):119-129. PMID: 34677696
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。