1問1答 論文 虫歯

砂糖は「量」を減らすのか、「回数」を減らすのか——切り分けは難しいが、「量だけ」では有効に見えない

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|砂糖の量と摂取回数・用量反応・フッ化物という交絡

「甘いものを控えましょう」——この一言を、僕らは毎日のように口にします。ですが控えるのは、量でしょうか、それとも回数でしょうか。WHOが「遊離糖は総エネルギーの10%未満、できれば5%未満」(1日2,000kcalなら50g、できれば25g)という量の目標を示したいま、歯科の側はどちらを言うべきなのか。アムステルダムのvan Loverenが、証拠を並べて整理しています。

論文
Sugar Restriction for Caries Prevention: Amount and Frequency. Which Is More Important?
著者
van Loveren C
掲載
Caries Res. 2019;53(2):168-175
種類
総説(Current Topic・ORCA-EADPH合同シンポジウム由来)
PMID
30089285

「甘いもの、控えてくださいね」の中身

食事指導のたびに使う言葉です。ですが、控えるのはでしょうか、回数でしょうか。

WHOのガイドラインは量で語ります。遊離糖を総エネルギーの10%未満、できれば5%未満へ——1日2,000kcalと仮定すれば1日50g、できれば25gにあたります。数字が明快で、栄養や肥満の文脈にも乗ります。

一方で僕らが習ってきたう蝕の生物学は回数で語ります。1回ごとに脱灰の時間が生まれ、その間は再石灰化に使えない。だから「ダラダラ食べない」と。

この二つは、どちらを患者さんに渡すべきなのか。アムステルダム(ACTA)のvan Loverenが、証拠を並べて整理した総説です。

先に結論: 量と回数はr=0.64で強く相関しており、どちらが主犯かを統計的に分けるのは難しい。それでも著者は「量だけ減らして回数はそのまま」は有効に見えず、逆は有効に見えると整理する。そして砂糖の係数は、フッ化物を毎日使えている人で小さくなる

フッ化物が広まると、砂糖との相関が薄れていく

この総説がまず崩しにかかるのは、「砂糖の消費量とう蝕は素直に比例する」という素朴なイメージです。

フッ化物が普及する前の1970年代後半、Sreebnyは47か国の12歳児を比べました。砂糖供給が年18kg未満の21か国でDMFT 1.2±0.6、44kgを超える7か国では8±2.4。回帰すると1日25gごとにDMFTが1本増えるという、きれいな用量反応が見えていました。

この時代のデータと戦時中の食事の記録から、Sheihamは関係はS字(シグモイド)だと提唱しています——年15kg未満ならほとんど発症せず、15〜35kgで急に増え、35kgを超えると頭打ちになる。西欧のように年40kg前後の社会で個人差がう蝕差に出にくい理由の説明です。ただしこのシグモイドを確認した研究は他にありません。多くの研究は「関連なし」「直線」「対数直線」のいずれかを報告しています。

そして、フッ化物が広まった時代の比較では、関係そのものが薄れていきます。

0 10% 20% 30% う蝕のばらつきのうち砂糖供給量で説明できた割合(%) 26% 1% 途上国 61か国 工業国 29か国 Woodward & Walker 1994。個人ではなく国単位の比較。工業国は原著では「1%未満」と報告されている(図では1%として表示)
Woodward & Walker 1994。国単位の比較で、同じ「砂糖供給量」で説明できるう蝕のばらつきが途上国と工業国でまるで違う
  • 途上国61か国では、う蝕のばらつきの約26%が砂糖供給量で説明できた。工業国29か国では1%未満(Woodward & Walker 1994)
  • ヨーロッパ29か国の12歳児では、砂糖の供給量(消失量)とDMFTがむしろ逆相関(r=−0.561、p<0.01)。著者らは「主にフッ化物配合の歯磨剤が広く使われていることが、高い砂糖消費の害を打ち消しているのではないか」と説明しています(Downer 2008)
  • 1995〜2006年の疫学研究10本のうち5本は関連なし、1本が正の関連、4本は「特定の集団でのみ関連あり」。その”特定の集団”とは——1日1回以下しか歯を磨かない群でした(Ruxton 2010)
  • 1980〜2000年の69研究では、強い食事−う蝕の関連を示したのは2本。ただし中等度16本・弱い関連18本があり、「関連がない」という結果ではありません(Burt & Pai 2001)

そして著者は、ここに念を押します。「相関が低いことは、砂糖を減らさなくてよいという免許ではない」。ただし食事指導の場でもフッ化物の重要性は必ず一緒に伝えるべきだ、と。

量と回数——数字はどこまで言えるか

本題です。フィンランドの成人を4〜11年追った研究(Bernabé 2016)では、DMFTの増加は砂糖の摂取回数が1回増えるごとに+0.15、砂糖10gごとに+0.1でした。

ここで正直に書いておくべきことがあります。両方を同時にモデルへ入れると、有意に残ったのは「量」のほうだけ(係数0.09)でした。この研究単体で見れば、回数ではなく量に軍配が上がっています

ではこの4つの係数を、フッ化物の使用頻度で層別するとどうなるか。

0 0.2 0.4 0.6 4〜11年でのDMFT増加(回帰係数) 0.08 0.12 0.26 0.43 フッ化物を毎日使う人 フッ化物の使用頻度が低い人 Bernabé et al. 2016(フィンランド成人)。薄い棒=摂取回数。単位が違う(10gあたり と 1回あたり)ため、量と回数の棒どうしは比べられない。読み取れるのは、フッ化物を毎日使えている人では両方が小さいということ
同じ集団を、フッ化物を毎日使う人と使用頻度が低い人に分けたときの係数。量と回数は単位が違うため、棒どうしの高さは比較できない
  • フッ化物を毎日使う人:量(10gごと)0.08/回数(1回ごと)0.12
  • 使用頻度が低い人:量 0.26/回数 0.43

⚠️ 「回数のほうが係数が大きいから回数が重要」とは読めません。0.08は砂糖10gあたり、0.12は摂取1回あたりで、単位が違うからです。原著がこの4つの数字に付けた結論は別のところにあります——「これもまた、フッ化物を毎日使うことの重要性を強く示している」どちらの係数も、フッ化物を毎日使えている人では3分の1以下に縮んでいる(0.26→0.08、0.43→0.12。本文の係数から計算)。この総説でいちばん一貫している数字は、砂糖ではなくフッ化物のほうにあります。

では回数側の根拠はどこにあるのか。著者は疫学と実験の別の系統を並べます。

  • Vipeholm研究食事中に砂糖を300g上乗せしてもう蝕は増えず、甘い間食を食間に足すと有意に増えた——70年前の、いまだに動かない一撃です
  • Rugg-Gunn 1984:う蝕との相関は、砂糖の変数を「食事全体」より「間食だけ」で計算したときのほうが高かった
  • Burt 1988:総糖・食事中の糖では低う蝕群と高う蝕群に有意差がなかったが、間食由来の糖では有意差が出た
  • ブラジルの低所得層の3歳児(保育所)で、砂糖の摂取回数が最多の群(1日4±5回)は最少の群(1±2.9回)に比べ、1年間の高いう蝕増加のオッズ比 4.7(95%CI 2.7–8.2、p<0.001)。量で切った場合(1日32.6g超)はオッズ比 2.99(1.82–4.91)でした。ただしこの二つは互いに比較されておらず、信頼区間も大きく重なります(Rodrigues & Sheiham 2000)
  • オランダの9歳児で、1日の飲食回数が7回を超えるかどうかによる乳歯う蝕の有病のオッズ比は2.78(1.21–6.40)。ただし同じ9歳の乳歯う蝕の”経験”ではオッズ比0.97(0.65–1.44)で有意差なし、15歳・21歳の永久歯でも有病・経験とも差はありませんでした——4つのアウトカムのうち有意だったのは1つだけです(Dusseldorp 2015)

著者の整理はこうです。量と回数はr=0.64で強く相関するため、統計的にどちらが主犯かを切り分けるのは難しい。しかし脱灰と再石灰化の時間で説明するモデルには、回数(と粘着性)のほうが素直に収まる。そして「量を減らしても回数を減らさない」戦略は有効に見えず、逆は有効に見える——と。

「砂糖を減らした商品」は、どこまで減らせば意味があるのか

もう一つ、実務で効く指摘があります。製品の糖濃度を少し下げても、口の中の酸産生はほとんど変わらないという話です。

プラークpHのテレメトリー測定では、酸産生は10%スクロース、あるいはそれをやや超えたあたりで頭打ちになります(Imfeld 1977)。同じ総説が引く別の実験では、唾液の乳酸産生は15%スクロースまで増え、それ以上で頭打ちでした(Linke & Birchmeier 2000)。「ここから下なら安全」という一点は、まだ決まっていません。

それでも実務的な含意はあります。小売業者が使う「糖分が高い=100gあたり29g超/中〜高=17〜29g/低〜中=5〜17g/低い=0〜5g」という4段階に当てはめると、上の3カテゴリのあいだでは、う蝕原性の差は見分けられないことになる。最下位カテゴリについて著者は「う蝕原性でないかもしれないし、あるかもしれない」と判断を保留しています。そもそも「最小のう蝕誘発濃度は、影響する因子が多すぎて推定できない」という指摘(Kandelman 1997)もある。

「微糖にしたから大丈夫」が、口の中では成立しにくい理由がここにあります。

ついでに、よく聞かれる二つにも著者は触れています。

  • 果物の”内在性の糖”は安全か:構造の中に閉じ込められたままなら寄与しない。ですが噛めば糖は出るため、果物の摂取が果汁と同程度にう蝕原性になりうるという in situ の実験報告があります(Issa 2011、Zaura 2005)。砂糖の多い食品を果物に置き換えるのは良い——ただし回数が増えないよう気をつけること
  • 30分ルールの根拠:「1回のpH低下は30分」という前提はStephan & Millerに由来しますが、テレメトリーではpH低下が30分を大きく超えて続くことがある。一方でイタリアの16歳を調べた研究では、すべての飲食を別々に数えた場合の相関がr=0.30、45分以内のものを一つにまとめた場合が0.31と、ほとんど変わりませんでした。「2回」をどこで区切るかは、まだ確定していません(Arcella 2002)

明日の臨床へ

  • 目標は「回数」で立てるほうが実行しやすい。著者も、回数のほうが患者さんにとって手応えのある(tangible)目標になると書いています。「1日50g以内」は台所では測れませんが、飲食の回数は数えられる。オランダの国の指針では1日7回が推奨される上限の目安になっています
  • 減らすのではなく、まとめる。砂糖の供給源は清涼飲料・菓子・加糖乳製品(牛乳を除く)に集中しており(オランダの全国調査で遊離糖の約80%)、これらは「やめる」より「まとめる・食事に寄せる」ほうが実行しやすい。Vipeholmが示したのは、砂糖の置き場所で結果が変わるということです
  • 食事指導の最後に、必ずフッ化物の話をする。この総説でいちばん一貫している数字は、砂糖ではなくフッ化物のほうにありました
  • 「微糖」に安心しない。酸産生が10%かそれをやや超えたあたりで頭打ちになる以上、少し減らした製品どうしの差は口の中では出にくい
  • 他職種と矛盾しない言い方をする。著者は、歯科の助言が栄養指導とぶつかると受け入れられないと注意しています。脂質や塩分を増やす「砂糖の代わり」を勧めてしまわないこと
ここだけ、冷静に補助線これは総説であって、新しいデータではありません。しかも著者自身が冒頭で断っているとおり、砂糖とう蝕の関係を調べた質の高いランダム化比較試験は存在しません(倫理的に組めない)。ここに並ぶのは生態学的比較・コホート・横断研究であり、国単位の相関は個人には当てはめられない(生態学的誤謬)という限界がついて回ります。フッ化物で相関が消えて見えるのも、「砂糖はもう関係ない」ではなく「フッ化物という強い交絡因子が入った」と読むべきところです。オッズ比についても一言。上に挙げた4.7・2.99・2.78はいずれもオッズ比で、原著からは両群の割合が取れないためリスク比は計算できません。う蝕のようにアウトカムが高頻度の集団では、オッズ比は「何倍なりやすいか」より大きめの数字になります(Dusseldorpの研究では15歳・21歳のう蝕有病率が約52%・78%と報告されています)。数字をそのまま「4.7倍なりやすい」と読み替えないこと。それでも、量と回数のどちらを患者さんに渡すかという実務の問いに、この総説は使える整理を与えてくれます。「甘いものを控えて」を、明日は「回数を決めましょう」に言い換えられる——それだけでも読む価値があります。

今日のひとこと

量と回数はr=0.64で強く相関し、どちらが主犯かを統計で切り分けるのは難しい。それでも著者は「量だけ減らして回数はそのまま」は有効に見えず、逆は有効に見えると整理する。そして砂糖の係数は、フッ化物を毎日使えている人で小さくなる。

van Loveren C. Sugar Restriction for Caries Prevention: Amount and Frequency. Which Is More Important? Caries Res. 2019;53(2):168-175. PMID: 30089285
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。