1問1答 論文 歯周病

1日1回のブラッシングで落ちるのは4割——歯磨剤が効いていたのは、そのあとだった

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|プラーク再形成・歯磨剤・ブラッシング回数

毎日ちゃんと磨いている人の口に、なぜプラークが残り続けるのか。1979年、寄宿学校の少年約200名を28日間、毎日2分間の監督下ブラッシングで追った研究が、その理由を数字で見せています。28日目、1日1回のブラッシングで落ちていたのは、たまったプラークの約4割。残りは毎日そこに居続けていました。そしてもう一つ。この研究は途中で歯磨剤あり群となし群に分けて、磨いた直後だけでなく4時間後・8時間後・24時間後まで測っています。歯磨剤の差は、磨いた瞬間ではなく、そのあとに現れました

論文
Plaque Growth and Removal With Daily Toothbrushing
著者
De la Rosa M, Guerra JZ, Johnston DA, Radike AW(ヌエボレオン大学歯科研究センター/MDアンダーソン病院/プロクター・アンド・ギャンブル社)
掲載
Journal of Periodontology 1979;50(12):661-664
種類
監督下ブラッシングによる28日間の臨床研究(寄宿学校の10代男子。約200名を募集し、28日目の解析対象は179〜180名。14日目に歯磨剤あり群・なし群へ割り付け。エリスロシン染色後、2名の盲検下の検査者が0〜4のスケールで判定)
主題
1日1回のブラッシングでプラークはどれだけ落ち、どれだけ戻るか。歯磨剤はその過程のどこに効くか

毎日磨いているのに、なぜ残るのか

「きちんと磨いています」と言う患者さんの口を染め出すと、しっかり染まる。よくある場面です。

嘘をついているわけではありません。本当に毎日磨いていても、プラークは残り続ける——それが普通なのです。

では、どれくらい残るのか。そして、歯磨剤はこの過程のどこで働いているのか。1979年、寄宿学校の少年たちを28日間追った研究が、これを分単位・時間単位で測っています。

先に結論: 28日目、1日1回のブラッシングで落ちていたのは約40%。そして歯磨剤の差は磨いた直後には出ず(1.108 対 1.144でほぼ同じ)、時間が経つほど開いていった(24時間後 1.987 対 1.793)。歯磨剤は落とす道具ではなく、戻りを遅らせる道具だった。

条件をそろえるために、寄宿学校を選んだ

対象は、寄宿学校に暮らす10代の男子。約200名が募集され、実際に解析されたのは180名前後(28日目の各測定でn=179〜180)。この選び方には理由があります。食事も生活環境も比較的均一だからです。

  • 参加者は全員受け入れ。専門的な歯科ケアを受けたことのない子も多かったため、まず歯石を除去する完全な清掃を実施
  • 4週間の予備期間:ブラッシング指導を行い、毎日2分間、監督下で練習。歯磨剤は使わない
  • 0日目:ラバーカップとパミスで再び清掃し、プラークスコアをゼロ
  • そこから28日間、毎日1回2分間の監督下ブラッシングを継続

評価は毎回0.6%エリスロシン液15mLで30回(右頬側・左頬側・唇側を各10回)洗口してから、経験ある2名の検査者が独立して判定。歯面をプラークが覆う割合を0〜4のスケール(1単位=歯面の4分の1)で記録します。検査者は割り付けを知らされていません。

14日目に、その時点のスコアをISODATAというクラスタリング法で似た者どうしにまとめ、各クラスタ内から無作為に2群へ割り付けました。

  • Ⅰ群:歯磨剤なしのまま継続
  • Ⅱ群:同じブラッシングに約1.5g(1インチのリボン状)のフッ化物配合歯磨剤(1,000ppmF・NaF)を追加

歯ブラシと歯磨剤はブラッシングの合間は監督者が保管し、毎回監督者が直接ブラシに載せる、という徹底ぶりです。

28日目——落ちていたのは4割

まず、群を分ける前の全体像です。予防処置後の日数ごとに、ブラッシング直後その24時間後のスコアが測られました。

  • 7日目:24時間後 0.753
  • 14日目:直後 0.982/24時間後 1.604
  • 28日目:直後 1.127/24時間後 1.886

ここから何が読めるか。28日目、24時間かけて溜まった1.886のうち、2分間のブラッシングで落ちたのは1.886−1.127=0.759。割合にして約40%です。

そして日を追うごとに、ブラッシング直後のスコアそのものが上がっていきます(0.982→1.127)。毎日磨いていても、落としきれなかった分が積み上がっていくのです。

著者らの言い方が容赦ない: 「平均的な人は効果的な磨き手ではなく、毎日1回磨いていても、おそらく常に大量のプラークとともに生きている」——1979年に、監督下で2分間磨かせて、この結論です。

歯磨剤の差は、時間とともに現れた

0 0.7 1.5 2.2 プラークスコア(0〜4) 1.108 1.144 1.405 1.324 1.524 1.419 1.987 1.793 直後 4時間後 8時間後 24時間後 28日目に測定。濃い棒=歯磨剤なし/淡い棒=歯磨剤あり。検査者2名の合算値。直後はむしろ歯磨剤ありのほうがわずかに高く、時間が経つにつれて逆転して差が開いていく
28日目のブラッシング後24時間のプラークスコア。直後は差がなく、時間が経つほど歯磨剤あり群が低く推移する

28日目、ブラッシング後の0時間・4時間・8時間・24時間に測定した結果です(検査者2名の合算)。

  • 直後(0時間):歯磨剤なし 1.108/歯磨剤あり 1.144——ほぼ同じ。むしろ歯磨剤ありのほうがわずかに高い
  • 4時間後:1.405/1.324
  • 8時間後:1.524/1.419
  • 24時間後:1.987/1.793

出発点が同じ(というよりわずかに不利)なところから、時間が経つほど差が開いていきます。

再形成の速度で見ると、27%抑えていた

0 15% 30% 45% 歯磨剤による再形成の抑制率(%) 39.2% 20% 20.7% 27% 直後〜4時間 4〜8時間 8〜24時間 24時間全体 各区間で再形成したプラークの1時間あたりの量を、歯磨剤なし群と比べた減少割合(原著Table IVのper hour列より)。抑制がいちばん大きいのは磨いた直後〜4時間で、時間が経つと差は縮む
区間ごとの再形成抑制率。効いているのは磨いた直後からの数時間で、時間が経つと差は縮む

各区間で「新しく増えたプラークの量」を取り出すと、歯磨剤の働きがはっきりします。

  • 直後〜4時間:歯磨剤なし 0.297/あり 0.180 → 抑制率 39.2%
  • 4〜8時間:0.119/0.095 → 20.0%
  • 8〜24時間:0.463/0.374 → 20.7%
  • 0〜24時間の合計:0.879/0.649 → 27.0%(原著Table IVの抑制率は1時間あたりの量から算出されています)

著者らはこれを「28日目の歯磨剤使用群における、プラーク再形成速度の平均27%の減少」と表現しています。そして24時間後の群間差については、t検定で p=0.001 の有意差があったと明記しています。

いちばん効いているのは、磨いた直後からの数時間です。なお、この現象がなぜ起きるのか(薬用成分の残留によるのか、別の要因か)を、この研究は検証していません。

明日の臨床へ

  • 「1回で落ちるのは4割」を、そのまま伝える。責める話ではなく、だから回数が要るという話として
  • 歯磨剤の役割を「落とす」から「戻りを遅らせる」へ言い換える。落とすのはブラシ、遅らせるのが歯磨剤
  • 効いているのは磨いた直後からの数時間。抑制率は直後〜4時間で39.2%、その後は20%前後まで落ちる
  • ブラッシング直後のスコアが日を追って上がることを見せる。取り残しは積み上がる。ここが染め出しの説得力になる
  • 「毎日磨いているのに」と落ち込む人に、この数字は救いになる。あなただけではありません、と言える根拠です
ここだけ、冷静に補助線読み方の注意を四つ。第一に、著者の一人はプロクター・アンド・ギャンブル社の所属で、使われた歯磨剤も同社製品(Gleem・1,000ppmF as NaF)です。当時の論文なので利益相反の開示欄そのものはなく、著者脚注と製品脚注から読み取るしかありません。第二に、対象は寄宿学校の10代男子のみ——生活が均一という強みは、そのまま一般化しにくいという弱みでもあります。第三に、ブラッシングは1日1回という設定です。著者ら自身が「1日3回の監督下ブラッシングで同じ研究をしてみたい」と書いており、この40%や27%は「1日1回」という条件下の数字です。第四に、被験者は60名ずつ3つのセグメントに分けて3日がかりで測定されており、7日目は「直後」の値が欠測、24時間値も検査者Bの欠測を補正した値です。それでも「歯磨剤は落とすところではなく、そのあとに効く」という構図は、40年以上あとの研究とも矛盾していません。

今日のひとこと

歯磨剤は「落とす」ところではなく、「戻ってくるのを遅らせる」ところに効いていた。寄宿学校の10代男子約200名に、4週間の予備期間ののち全歯を清掃してプラークをゼロにし、そこから28日間、毎日1回2分間の監督下ブラッシングを行いました。28日目の結果——ブラッシング直後のプラークスコアは1.127、その24時間後は1.886。つまり1回のブラッシングで落ちていたのは約40%で、残りは常時そこにありました。14日目に2群へ分け、Ⅰ群は歯磨剤なし、Ⅱ群は1回あたり約1.5gのフッ化物配合歯磨剤(1,000ppmF・NaF)を使用。28日目の測定では、ブラッシング直後は 歯磨剤なし1.108・歯磨剤あり1.144でほぼ同じ(むしろ歯磨剤ありがわずかに高い)。ところが時間が経つにつれて差が開き、4時間後 1.405 対 1.324、8時間後 1.524 対 1.419、24時間後 1.987 対 1.793。再形成量で見ると0〜24時間の抑制率は27.0%で、とくに直後〜4時間の抑制率が39.2%と大きい(4〜8時間は20.0%、8〜24時間は20.7%)。24時間後の群間差は t検定で p=0.001と報告されています。著者らはさらに率直で、「平均的な人は効果的な磨き手ではなく、毎日1回磨いていてもおそらく常に大量のプラークとともに生きている」と書いています。

出典:De la Rosa M, Guerra JZ, Johnston DA, Radike AW. Plaque Growth and Removal With Daily Toothbrushing. J Periodontol 1979;50(12):661-664. PMID: 294479
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。