ペリオ|プラーク再形成・歯磨剤・ブラッシング回数
毎日ちゃんと磨いている人の口に、なぜプラークが残り続けるのか。1979年、寄宿学校の少年約200名を28日間、毎日2分間の監督下ブラッシングで追った研究が、その理由を数字で見せています。28日目、1日1回のブラッシングで落ちていたのは、たまったプラークの約4割。残りは毎日そこに居続けていました。そしてもう一つ。この研究は途中で歯磨剤あり群となし群に分けて、磨いた直後だけでなく4時間後・8時間後・24時間後まで測っています。歯磨剤の差は、磨いた瞬間ではなく、そのあとに現れました。
①毎日磨いているのに、なぜ残るのか
「きちんと磨いています」と言う患者さんの口を染め出すと、しっかり染まる。よくある場面です。
嘘をついているわけではありません。本当に毎日磨いていても、プラークは残り続ける——それが普通なのです。
では、どれくらい残るのか。そして、歯磨剤はこの過程のどこで働いているのか。1979年、寄宿学校の少年たちを28日間追った研究が、これを分単位・時間単位で測っています。
②条件をそろえるために、寄宿学校を選んだ
対象は、寄宿学校に暮らす10代の男子。約200名が募集され、実際に解析されたのは180名前後(28日目の各測定でn=179〜180)。この選び方には理由があります。食事も生活環境も比較的均一だからです。
- 参加者は全員受け入れ。専門的な歯科ケアを受けたことのない子も多かったため、まず歯石を除去する完全な清掃を実施
- 4週間の予備期間:ブラッシング指導を行い、毎日2分間、監督下で練習。歯磨剤は使わない
- 0日目:ラバーカップとパミスで再び清掃し、プラークスコアをゼロに
- そこから28日間、毎日1回2分間の監督下ブラッシングを継続
評価は毎回0.6%エリスロシン液15mLで30回(右頬側・左頬側・唇側を各10回)洗口してから、経験ある2名の検査者が独立して判定。歯面をプラークが覆う割合を0〜4のスケール(1単位=歯面の4分の1)で記録します。検査者は割り付けを知らされていません。
14日目に、その時点のスコアをISODATAというクラスタリング法で似た者どうしにまとめ、各クラスタ内から無作為に2群へ割り付けました。
- Ⅰ群:歯磨剤なしのまま継続
- Ⅱ群:同じブラッシングに約1.5g(1インチのリボン状)のフッ化物配合歯磨剤(1,000ppmF・NaF)を追加
歯ブラシと歯磨剤はブラッシングの合間は監督者が保管し、毎回監督者が直接ブラシに載せる、という徹底ぶりです。
③28日目——落ちていたのは4割
まず、群を分ける前の全体像です。予防処置後の日数ごとに、ブラッシング直後とその24時間後のスコアが測られました。
- 7日目:24時間後 0.753
- 14日目:直後 0.982/24時間後 1.604
- 28日目:直後 1.127/24時間後 1.886
ここから何が読めるか。28日目、24時間かけて溜まった1.886のうち、2分間のブラッシングで落ちたのは1.886−1.127=0.759。割合にして約40%です。
そして日を追うごとに、ブラッシング直後のスコアそのものが上がっていきます(0.982→1.127)。毎日磨いていても、落としきれなかった分が積み上がっていくのです。
④歯磨剤の差は、時間とともに現れた
28日目、ブラッシング後の0時間・4時間・8時間・24時間に測定した結果です(検査者2名の合算)。
- 直後(0時間):歯磨剤なし 1.108/歯磨剤あり 1.144——ほぼ同じ。むしろ歯磨剤ありのほうがわずかに高い
- 4時間後:1.405/1.324
- 8時間後:1.524/1.419
- 24時間後:1.987/1.793
出発点が同じ(というよりわずかに不利)なところから、時間が経つほど差が開いていきます。
⑤再形成の速度で見ると、27%抑えていた
各区間で「新しく増えたプラークの量」を取り出すと、歯磨剤の働きがはっきりします。
- 直後〜4時間:歯磨剤なし 0.297/あり 0.180 → 抑制率 39.2%
- 4〜8時間:0.119/0.095 → 20.0%
- 8〜24時間:0.463/0.374 → 20.7%
- 0〜24時間の合計:0.879/0.649 → 27.0%(原著Table IVの抑制率は1時間あたりの量から算出されています)
著者らはこれを「28日目の歯磨剤使用群における、プラーク再形成速度の平均27%の減少」と表現しています。そして24時間後の群間差については、t検定で p=0.001 の有意差があったと明記しています。
いちばん効いているのは、磨いた直後からの数時間です。なお、この現象がなぜ起きるのか(薬用成分の残留によるのか、別の要因か)を、この研究は検証していません。
⑥明日の臨床へ
- 「1回で落ちるのは4割」を、そのまま伝える。責める話ではなく、だから回数が要るという話として
- 歯磨剤の役割を「落とす」から「戻りを遅らせる」へ言い換える。落とすのはブラシ、遅らせるのが歯磨剤
- 効いているのは磨いた直後からの数時間。抑制率は直後〜4時間で39.2%、その後は20%前後まで落ちる
- ブラッシング直後のスコアが日を追って上がることを見せる。取り残しは積み上がる。ここが染め出しの説得力になる
- 「毎日磨いているのに」と落ち込む人に、この数字は救いになる。あなただけではありません、と言える根拠です
今日のひとこと
歯磨剤は「落とす」ところではなく、「戻ってくるのを遅らせる」ところに効いていた。寄宿学校の10代男子約200名に、4週間の予備期間ののち全歯を清掃してプラークをゼロにし、そこから28日間、毎日1回2分間の監督下ブラッシングを行いました。28日目の結果——ブラッシング直後のプラークスコアは1.127、その24時間後は1.886。つまり1回のブラッシングで落ちていたのは約40%で、残りは常時そこにありました。14日目に2群へ分け、Ⅰ群は歯磨剤なし、Ⅱ群は1回あたり約1.5gのフッ化物配合歯磨剤(1,000ppmF・NaF)を使用。28日目の測定では、ブラッシング直後は 歯磨剤なし1.108・歯磨剤あり1.144でほぼ同じ(むしろ歯磨剤ありがわずかに高い)。ところが時間が経つにつれて差が開き、4時間後 1.405 対 1.324、8時間後 1.524 対 1.419、24時間後 1.987 対 1.793。再形成量で見ると0〜24時間の抑制率は27.0%で、とくに直後〜4時間の抑制率が39.2%と大きい(4〜8時間は20.0%、8〜24時間は20.7%)。24時間後の群間差は t検定で p=0.001と報告されています。著者らはさらに率直で、「平均的な人は効果的な磨き手ではなく、毎日1回磨いていてもおそらく常に大量のプラークとともに生きている」と書いています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


